見出し画像

第5期パウパー神を反省する


■ はじめに


 ご無沙汰しております。MOではHeterodoxという名前でプレイしています、ゆーきと申します。
先日11月3日に第5期パウパー神挑戦者決定戦が開催されました。私事ではありますが、先日の合格発表に伴い引退宣言を完全に撤回。本気で競技パウパーに取り組めるようにもなり、いよいよ自身の悲願であるトップ8、ひいては挑戦権の獲得を狙える最高のタイミングが巡ってきたと言えます。

 そして余談ではありますが、前回神決定戦に関して執筆した記事から神決定戦に関して何か執筆するということはありませんでした。
というのも、第2期では愛機である青白ファミリアを使用し4-2-2、第3期は諸事情により欠場、第4期は試験勉強のこともあり上振れ狙いでカルドーサレッドを使用して5-3と、特にこれといって文字に起こすに値する動きを出来ていなかったことが大きな要因です。
 しかしながら、その中でもパウパー神をちゃんと頑張る会(以下パ頑会)のメンバーは結果を残し続けてくれました。第3期~第4期の間に開催されていたPauper Summit Cupではつばさ君が愛機カウゲートにて優勝第4期パウパー神挑戦者決定戦では第2期の挑戦者でもあるpraeさんベスト8、加糖が9位入賞するなど、チームメイトの活躍には暇に枚挙がありません。
その活躍は個人戦に留まらず、椎葉さん48さんやぎさんが組んだチームはチームパウパーで瞬く間に5-0優勝し、パ頑会は個々の実力もさることながら三人寄ると文殊すらも超越するということを戦績で証明していました。

 そんな活躍するメンバー達を横目に、「俺とみんなの差はなんだろう」と思考を巡らせる日々が多くなりました。僕といえばこれまで特にこれといって目立った活躍をすることが出来ず、先日の第5期パウパー提督決定戦では決勝の超有利マッチアップを敗北するなど、どこか惜しいところまでは行ったとしてもとにかく詰めの甘さが如実に戦績に表れているという印象です。

勝ち続ける人間は確かに存在していますし、それはパ頑会のメンバー個々人が体現してくれています。素晴らしい環境に身を置けているのにも関わらず、それを活かせていない俺は一体何なのか?何故俺はこんなに弱いのか?というか"パ頑会"って響きめっちゃダサくないか?等、あることもないことも心に浮かんでいく毎日を過ごし、パウパーの環境を追うことが辛くなる日もありました。

 らしくもない惰眠を貪る悶々とした日々を送る中、第4期の挑戦者決定戦が終わった日にpraeさんから受け取った言葉が僕の転換点となります。

「俺はゆーき君がトップメタを使って皆を轢き殺しているのが見たいよ」

■ 弱さを隠すということ


 トップメタを使う、ということは僕の中でどこか一歩足が竦んでしまう要素でした。
「トップメタを使っているのに勝てない」と戦績が示すときに、自身の中で堆積していた無駄なプライドがそんな自分を絶対に許すことが出来ません。
トップメタを使うということに対し、自身のプレイに関して他者との劣等感を覚えていることも確かです。セオリーを知っていることと、最適なプレイをすることは全く違います。
トップメタを使うことなく歩んできたMTG人生の中で、今までの自分はいわゆる逃げの選択肢に走っていたということを、praeさんの言葉をもって痛感することとなります。

 よく考えれば、劣等感を抱くのはそのはずでした。例の記事の文末にも書いたように、僕のMTG人生の中で最も付き合いの長い親友にプレイングスキルで勝ったことはありません。
何よりパ頑会にはゲート全一のつばさ君、親和全一のpraeさん、テラー全一の48さん、エルフ全一の椎葉さん等々…そして第4期から加入したコントロールの神、龍海さんもいらっしゃいます。
僕の唯一の得意デッキともいえるかもしれないファミリアに至っても、加糖のほうが圧倒的に上手いです。

 そんな環境の中で自分もトップメタを握ろう!と決意出来る程に僕は僕を評価していませんし、そんなメンタリティも持ち合わせていません。
トップメタを握らないという僕の隠された信条を見透かされ、言い当てられ、「トップメタを握っているところが見たい」と言われることの、なんと恥ずかしいことか。僕にとってのMTG観が大幅に刷新されるような感覚でした。

 そして第5期挑戦者決定戦が差し迫るとき、僕はとあるデッキを握ることを決めます。

パ頑会グループでの決意表明


■ カウゲートのエトセトラ


 幸いパ頑会にはつばさ君と龍海さんという二人のカウゲートマスターがいるため、デッキのセオリーを知るということに関しては全く問題がありませんでした。
第2期挑戦者決定戦の時にはターボイニシアチブに対するメタデッキとして本腰を入れて調整していた経験もありますし、あらゆるデッキを広く浅く使ってきたことで、急遽の使用に堪えうるスキルセットを知らず知らずのうちに身に付けていたことをここで自覚します。

 そして何より、下記の記事たちの存在は巨大でした。


 カウゲートのスキルセットがワールドクラスであるGn42がデッキガイドを著したのは僥倖です。それをSaidin.rakenと共に解説した動画まで投稿してくれるのですから、カウゲートを握るには絶好の機会が与えられていたと言えます。
世界最大のファミリア専門discordである”Pauper Familiars”のメンバーとしてこの2人から直接話を聞くことが出来たのも大きな要因です。分からなかったら上手い人に聞くのが一番で、その上手い人の回答サンプルが多ければ多いほど、平均値も取りやすく正着を見出しやすいでしょう。
 高校三年生の時に腰の骨が曲がるまで英語を勉強してた甲斐がありました


(左)10/28 Pauper Showcase Qualifierのメタゲーム一部
(右)10/14 Pauper Challengeのメタゲーム

 そして、10/28に行われたPauper Showcase Qualifierの結果や、データが集計されている直近のPauper Challengeを見るとカウゲートは明確に立ち位置がいいことが表されています。突如隆盛した青黒フェアリーに対しても「普通に有利」とつばさ君は断言していますし、雑多なデッキを刈り取るという性能に関して右に出るデッキもメタゲーム上にはいません。

 さらに言及するならば、青単テラーが流行したことによって環境内のグリクシス親和がほぼ死滅し、《塵は塵に》で圧迫されていたサイドボードのスロットが4枠空いたことも非常に大きいと言えるでしょう。もともと必要悪と化していたスロットではありましたが、愈々愛好家以外の使用者を見かけなくなった為に75枚から抜けるようになりました。
 8-blastと4枚の《塵は塵に》で既に12枚もサイドボードを使用していたのですから、その枠を他のデッキに割く余裕ができたということはカウゲートにとって福音以外の何物でもありません。

 とはいえ、カウゲートのリストにも様々な形/流派があり、どれを選択するかは各々のプレイヤーに委ねられています。どれが最適であると明言することは出来ませんが、3つの形を紹介したいと思います。
 (ここから文体を変えます)

◇ Gn42式

10/28 Pauper Showcase QualifierでGn42が使用

 Gn42が使用しているリストの特徴は大きく2つ。

①メインボードのソフトカウンター枠が無く、《払拭》を採用している。
 ⇒通常採用されている《呪文貫き》が、流行している青黒フェアリーに対してあまり有効なカードではなく、寧ろ《当世》で捨ててしまう機会の方が多いため、メタゲームに合わせてカウンターの種類を変えているものと思われる。

《多元宇宙の警告》を採用している。
 ⇒これも上記の理由と重複して、青系デッキとのミラーマッチを見据えたカードであると推察される。序盤のカウンターの構え合いの中で予顕してマナ効率良くアドを稼ぐも良し、予顕せずとも後半に上から引いてそのままキャストしても良し。
ただ、以前からずっとこのカードを気に入ってるようなので、趣味枠の可能性がある。

◇ Mvanni式

10/28 Pauper Showcase Qualifier 及び Pauper ChallengeでMvanniが使用

Mvanniが使用しているリストの特徴は大きく4つ。

《アゾリウスのギルド門》を1枚《理想的な浜方》に変えている。
 ⇒《ロリアンの発見》から白マナを調達できるようにしている。ゲーム中盤~後半にかけて、《バジリスク門》を二回起動した時に修正値が2つ違うというデメリットを差し引いても、白マナを安全に確保することに重きを置いていると思われる。

②ソフトカウンター枠を増量している。
 ⇒《呪文貫き》2枚と《払拭》1枚を採用し、後述する《ロリアンの発見》を4枚採用することに関してゲームレンジの帳尻を合わせる算段だと思われる。また、青白親和に対してどちらも《きらきらするすべて》周りの攻防で役に立つことも採用理由だと思われる。

《黎明運びのクレリック》を1枚《邪悪を打ち砕く》に変えている。
 ⇒メタゲームの変遷的に赤系アグロが数を減らすとの予想から、それに反して数を増やすであろう青単テラーや青白親和をメインボードから意識した選択だと思われる。サイドボードにも追加の《邪悪を打ち砕く》が3枚採用されており、テラーと青白親和を強く意識した構築であることが伺える。

《定業》を不採用とする代わりに《ロリアンの発見》を4枚採用している。
 ⇒青黒フェアリーに対して唱えづらい《定業》を不採用とし、序盤の土地基盤の安定を図る《ロリアンの発見》に換えているものと思われる。アンタップインの《島》を確実に持ってこれるという点で非常に優れており、安定して土地を伸ばしたい青系のミラーマッチ等で非常に優秀。土地が伸びた後の素キャストが強いのは言わずもがな。

◇ Selkcahs式

11/2 Pauper LeagueにてSelkcahsが使用

Selkcahsが使用しているリストの特徴は大きく3つ。

①Mvanni式と同じく、《アゾリウスのギルド門》を1枚《理想的な浜方》に変えている。
 ⇒前述した通り。

②《島》を1枚減らして、《岡門》を1枚増量している。
 ⇒青系のミラーマッチを強く意識した構成だと思われる。基本的に青系と対面した時はカウンターの構え合いになるため、その中で土地の枚数の差を加速度的につけることが出来るのは青系ミラーにおける優位点。他デッキに対して《対抗呪文》が構えづらくなるデメリットとトレードオフではあるが、青系が爆増するというメタゲームを読んでの調整だと推察出来る。

③《黎明運びのクレリック》2枚が《息詰まる噴煙》に換わっている。
 ⇒青黒フェアリーの台頭に合わせたチューンナップと思いきや、不利マッチと考えられるカルドーサレッドや、増加するであろうミラーマッチに対して有効に働くカードに差し替えたものと思われる。《黎明運びのクレリック》も同様のマッチアップで有効なカードではあるが、劇的ではない為。


 それらのエッセンスを抽出して、今の日本におけるテーブルトップ事情を鑑みた結果、僕やつばさ君が使用したリストは以下のもの。

◆ 使用したリスト

11/3 第5期パウパー神挑戦者決定戦にてゆーきとつばさ君が使用

 念のため記しておくが、当日の僕の《島》は《冠雪の島》を使用している。理由はない。あえて言うなら1ターン目に《島》置いてターンを返した時に対戦相手が青赤系のフェアリーかテラーと勘違いする可能性がある程度である。
 そして、つばさ君は《理想的な浜方》を《アゾリウスのギルド門》の4枚目にしてリストを提出したことも記しておく。メリット/デメリットは既に記述した通り。

 さて、使用したリストのベースとなるのはGn42式のカウゲートであり、Gn42式に搭載されていた《多元宇宙の警告》《払拭》を抜いてその枠を《呪文貫き》2枚にしている。
一度《呪文貫き》を抜いたリストでお互いに回していたものの、あらゆるデッキに対してサイドボード後も特に抜くことがなく、タップインが多いカウゲートのテンポ損を補うカードとしてどこまでも重宝するという結論に至った。
《払拭》がメインボードでないのは、上記の役割を担うことが出来ない為である。
 また、MVanni式の《定業》不採用型は僕とつばさ君の宗教観によって検討すらしなかったので、これに関しては僕らの至らなかったポイント。

◆ サイドボードについて

《赤霊破》4枚
 ⇒いつもの枠。最近のリストにおいて減少傾向ではあったが、日本のテーブルトップは青を使用するプレイヤーが多いため4枚で固定。《紅蓮破》でない理由は後述する。

《青霊破》4枚 《水流破》1枚
 ⇒いつもの枠。赤系は減少するであろうとの見込みでギリギリ5枚に留めてはいるものの、いつでも増やしたい。こちらに関しては《青霊破》を優先している理由は特にない。スペルブック版の《青霊破》がカッコいい程度の理由。

③《払拭》1枚
 ⇒《水流破》の2枚目だった枠。赤に尖らせるサイドボーディングを嫌った為に、融通の利くカードとして採用。当日1番弱いカードだった可能性がある。

④《邪悪を打ち砕く》3枚
 ⇒青系テラー、青白親和、ミラー、ボーグル等々へのサイドボーディングが期待できる、環境随一のユーティリティカード。メインボードの《黎明運びのクレリック》とは対応する役割が違う為、同じ役割を与えてメインボードから採用するということはしなかった。

《軍旗の旗手》2枚
 ⇒恐らく現環境の白が用いる最強のサイドカード。不利マッチを一撃で捲り得る上、ミラーマッチにおいてサイドボード後の鍵となるカードである。
3枚目を採用しなかったのは、そもそも1枚か2枚かで検討していた為。しかしながらゲーム中に3枚目が必要になるとも思わない為、最適な枚数であると考えている。

【おまけ】検討していたサイドカード

①《塵と化す
 ⇒憎き壁コンボと、カルドーサレッドを始めとする1/1の横並びデッキに対してサイドカードとして使用可能。しかしながら、2つ以上のモードを同時に強く使える対面が環境上にないこと、ソーサリーなのが弱すぎた為不採用。

②《電謀》《息詰まる噴煙》
 ⇒ミラーにおけるキラーカード、そして1/1の横並びに対する回答札として候補に挙げられた。ミラーにおけるゲームの焦点が変わってしまった(後述)ことにより不採用。

③《門口の断絶
 ⇒つばさ君の天啓枠。《解呪》に無色の2/2トークンがついてくる。《当世》を除去しながら《ギルドパクトの守護者》を無視して殴りに行ける等、主にミラーマッチにおいて強力とされたがマジで気のせいだった

④《ブレス攻撃》《アームズ・オヴ・ハダル
 ⇒無理マッチであるエルフや、赤系アグロのタフネス2のクリーチャーも纏めて処理することが出来る全除去枠。エルフに対して全除去が特に必要ではなくなったことや、青単フェアリーに対してすら《ブレス攻撃》が不要であったこと、《アームズ・オヴ・ハダル》は何故か4マナもかかるソーサリーである為に不採用。

⑤《大祖始の遺産
 ⇒環境上における墓地利用系のデッキに対して軒並み有利である為不採用。サイクリングストームやリアニメイトは知らない。
とはいえ、Paupar Showcase Qualifierで優勝したOscar_Francoの青単テラーには《大慌ての棚卸し》がリソース札として採用されており、ここが唯一の懸念点だった。それに関しても「まぁなんとかなるっしょ」で不採用へと至った。
 尚、つばさ君の持論で「カウゲートのサイドからレリックが減っている時はカウゲートが強い時」というものがある。謎の信憑性あり。

⑥《霊魂放逐
 ⇒最も採用したい対面であるカルニブラックはトーナメントを勝ち上がれない為不採用。何故カルニブラックが勝ち上がれないのかは以前の僕の記事を参照。


◆ 主要デッキへのサイドボーディング

■ミラーマッチ
-4 《未達への旅》
-2 《呪文貫き》
+2 《軍旗の旗手》
+3 《邪悪を打ち砕く》
+1 《払拭》

 ⇒ 乗り手の腕とプランニングが出る試合。鍵となるのは《軍旗の旗手》。相手の《バジリスク門》の対象を曲げることが出来る。どちらかの《軍旗の旗手》の着地後、出された側はどうにかして《軍旗の旗手》を除去しなければならないが、《未達への旅》は《黎明運びのクレリック》《邪悪を打ち砕く》の存在から除去としての信頼性が無いためサイド後は抜けてしまう
故にお互い《軍旗の旗手》を出すところがサイド後のミラーマッチのスタートであり、お互いに《軍旗の旗手》が着地するとゲームの焦点が飛行クロックと《ギルドパクトの守護者》になる
 旗手能力は最低1つの旗手を対象にすればよい為、対戦相手がコントロールする《軍旗の旗手》を《バジリスク門》で強化して《邪悪を打ち砕く》によって処理するのが最もスマートな対処手段ではある。
しかしながら、《邪悪を打ち砕く》は《当世》を破壊する手段として最も優れている為手札に抱えていられるとも限らず、仮にこの動きが成功したとしても《バジリスク門》の起動と《邪悪を打ち砕く》のキャストでソーサリータイミングの動きに5マナを必要としている為、返しに《ロリアンの発見》や《戦隊の鷹》から《渦まく知識》を打たれるリスクも伴ってしまう。総じて割り切りではなく駆け引きが非常に重要なマッチアップ

 とはいえ駆け引きに持ち込む為には土地を並べていかなければならず、土地が止まることはつまり敗北を意味する。それゆえ《岡門》の有無は明確に勝利を決する為、初手に《岡門》があるかどうかはひとつの重大なキープ基準に値する。

 お互いが《軍旗の旗手》をコントロールしているときに《当世》の裏である《ベクターの滑空者》が大きな存在感を放つことになるが、後引きでも《ベクターの滑空者》を処理できる《赤霊破》はここにおいて重大な役割を持つ。《紅蓮破》だと旗手能力によって対象を曲げられる為《ベクターの滑空者》を処理することが出来ないが、《赤霊破》はキャストする時に青いパーマネントを対象としているため、旗手能力を無視して除去することが可能である。
 これだけ書いたが、《赤霊破》をサイドボード後に使わないのは《海門》や《砦門》で赤を指定することがミラーマッチにおいて致命傷となりかねない為である。《赤霊破》によって最も消したい《ロリアンの発見》と《渦まく知識》のキャストされるタイミングに備えてマナ基盤を歪めないといけない上、その赤指定により自身の動きも阻害されてしまう為である。

■青単テラー
-4 《虹色の断片
-2 《黎明運びのクレリック》
-2 《当世》
+4 《赤霊破》
+3 《邪悪を打ち砕く》
+1 《払拭》
※青黒も同様

 ⇒ 基本的に有利とされているマッチアップ。一見効果的な《虹色の断片》はそれ自体で特に何かをしている訳ではないためサイドアウトする。
サイドボード後の焦点はメインと変わらず《秘密を掘り下げる者》であり、飛行3/2クロックを如何にして止めるかが問題となる。故に《赤霊破》は5/5を阻害する為にも用いるが、《秘密を掘り下げる者》を除去することに使うことがしばしば。
故に《未達への旅》は5/5だけでなく《秘密を掘り下げる者》や《謎めいた海蛇》も盤面にいる時にキャストしたい。《未達への旅》をめぐるカウンター合戦は、必ずこちら側が《ギルドパクトの守護者》や《戦隊の鷹》+《渦まく知識》を持つ時に追いかけると、カウンター合戦を追いかけた対戦相手にプレッシャーを与えやすい。

■バーン
-2 《ギルドパクトの守護者》
-2 《黎明運びのクレリック》
-1 《当世》
-1 《渦まく知識
+5 《青霊破》《水流破》
+1 《払拭》

⇒ 比較的五分に近いマッチアップ。《聖なる猫》を如何に定着させるかが鍵となる。相手の安定したクロックが《僧院の速槍》以外に存在しない為、《黎明運びのクレリック》は一見強力に見えるものの実際していることは2点のライフをもたらしているだけなのでサイドアウト。
また、手札に嵩張ると一瞬で負けに繋がる《当世》や、《戦隊の鷹》と組み合わせたい《渦まく知識》はゲームレンジの都合サイドアウトするようにしている。

■カルドーサレッド(ステッカーなし、《ケッシグの炎吹き》or《ドワーフの炉の詠唱者》入り)

-2  《ギルドパクトの守護者》
-2 《対抗呪文》
-1 《当世》
-1 《渦まく知識》
+5 《青霊破》《水流破》
+1 《払拭》

⇒ 基本的に不利なマッチアップ。3ターン目までに盤面を作られるとほとんど勝つことは出来ない。故にバーンに対するサイドボードとほぼ同じではあるが、1/1のゴブリントークンを止める、《ドワーフの炉の詠唱者》を止めるという役割を持つ《黎明運びのクレリック》はサイドアウトしない。
対バーン戦では《対抗呪文》が機能することもあったが、カルドーサレッド戦では《対抗呪文》の青青を構え続けることがそのまま敗北に繋がる為サイドボード後は減らすようにしている。

■ステッカーカルドーサ
-2 《ギルドパクトの守護者》
-2 《未達への旅》
-2 《対抗呪文》
+5 《青霊破》《水流破》
+1 《払拭》

⇒ 上述のカルドーサレッド戦とほとんど同じ。《未達への旅》は追放する対象が《僧院の速槍》しかなく、《僧院の速槍》よりも《Name Sticker Goblin》をめぐる攻防に参加したい為サイドボード後は減らすようにしている。《Name Sticker Goblin》が爆発した場合は運が悪かったと割り切る他にない。

■青白親和
-4 《虹色の断片》
-2 《ギルドパクトの守護者》
+3 《邪悪を打ち砕く》
+2 《軍旗の旗手》
+1 《払拭》

⇒ メインボードの勝率がほぼ0割のマッチアップ。サイドボードからはクリティカルなカードが複数枚搭載される為、ある程度は相性が改善する。
しかしながら、青白親和は基本的に”理想とされる回り方”をすることが難しいデッキであり、対峙する感覚はボーグルズに近い。故にぶん回られたらそれは諦めよう。
心を一つに》や《物読み》を打ち消すために《赤霊破》をサイドから投入するプランもあったが、相手が複数枚のドローソースを回したとしても辿り着くべきカードは《きらきらするすべて》であり、それ以外のプランはカウゲートに対しては脆弱なプランである為、《赤霊破》は不要であると判断した。
もっとも、《赤霊破》を使う為に《海門》《砦門》を赤指定でセットすることはカウゲートにとって大きなリスクとなる為、相手の回り方に依存することなく、《きらきらするすべて》を中心としたゲームプランを崩すことに焦点を当てている。

■青黒フェアリー
-4 《虹色の断片》
-1 《黎明運びのクレリック》
+4 《赤霊破》
+1 《払拭》

⇒ 急増した古代兵器に対しては、カードアドバンテージを意識した立ち回りが重要となる。《虹色の断片》は相手の《深き刻の忍者》のドローを阻害する力を持つものの、それ以外の盤面で有効に使うことが出来ない為にサイドアウトしてしまう。
そもそも青黒フェアリーがカウゲートに対して《深き刻の忍者》を忍術するタイミングは普通ゲームの終盤であり、それ以外に忍術が成功してゲームを支配する時はカウゲート側の落ち度である。
とはいえ、《深き刻の忍者》や《黒薔薇の棘》といったカードが存在する以上は、カウゲートのミラーマッチと同じく構え合いが中心のゲームとなる。
《黎明運びのクレリック》は《深き刻の忍者》や《ボーラスの占い師》をブロックすることや、《息詰まる噴煙》の除去対象でない程度の役割しか持たない為に、1枚減らすこととなる。

■カルニブラック
-2 《虹色の断片》
+1 《邪悪を打ち砕く》
+1 《払拭》

⇒ 特に意識しなくとも勝てるマッチアップ。《ギルドパクトの守護者》の定着を意識し、相手の《命取りの論争》を可能な限り《対抗呪文》等のカウンターで打ち消していくプランが最も正道である。搭載している土地がほとんど同じ枚数であり、ドロー操作の無い分カルニブラック側が先にマナスクリュー/マナフラッドする。
意識するべきは《黒薔薇の棘》《復讐する狩人》であり、《墓所のネズミ》は強力なスイーパーであるものの敗北に直結するカードではない。
カウンターの当てどころを間違えると敗北してしまうマッチアップでもあるが、《ギルドパクトの守護者》がすべてを解決してしまう為、どこまでいっても《ギルドパクトの守護者》がゲームの焦点となる。


■ 当日のマッチアップ


 さて、つばさ君と共に万全の準備をして臨んだ当日ですが、僕としてはお腹が痛くてしょうがなく、喫煙所よりもトイレに籠っている時間の方が長かった気がします。緊張がお腹に来るタイプです。とはいえそんなに休憩時間もないので、すぐに事を済ませて次の試合へ向かうという繰り返しでした。

 お腹の不安もある中、いよいよ予選の開始です。

① 青単テラー

PlayFirst 〇〇
 ⇒ 僕の《砦門》青指定の返しに相手が《島》を置いてターンを返してきたので、そこで早くも青単テラーであると確信しました。
相手の《トレイリアの恐怖》を巡るカウンター合戦に相手がついてきてくれたので、返しに《ギルドパクトの守護者》をキャストすると一瞬でゲームセット。
二本目もこちらが仕掛けたカウンター合戦に相手が応じ、返しの《ギルドパクトの守護者》によって相手のゲームプランが瓦解。15分程度で2本を先取し、幸先の良いスタートとなります。

 すぐに試合が終わって周りのメタゲームを調査している僕を見たつばさ君は、「赤単に轢き殺されてすぐ終わったんだな」と思っていたそうです。あまり俺を舐めるなよ。

② 青黒テラー

PlayFirst 〇×〇
⇒ 某パンダさんが対戦相手。普段からトッププレイヤーたちに揉まれていたことが項を奏したのか、特に物怖じすることもなく順当にプレイしていました。
問題は二本目で、こちらの後手2ターン目のエンドにプレイされた《渦まく知識》。これをカウンターすることは無いのですが、そのまま対戦相手が先手3ターン目でプレイした《ファラジの考古学者》は必ずカウンターするべき対象でした。そこで得るはずだったテンポアドバンテージを損失し、そのまま5/5集団によって殴り倒されてしまいます。
 普段は《渦まく知識》の後に打たれた《思考掃き》や《留意》を問答無用でカウンターしているのですが、久々にキャストされた《ファラジの考古学者》を前に面食らっていたものと思われます。冷静にプレイしようね。

③ ボロスシンセサイザー

DrawFirst 〇×〇
⇒ 古豪、たつみさんとの戦いです。
勝利した一本目も三本目もギリギリの勝負で、お互いに一手間違っていたら僕が敗北していたでしょう。すべてを見透かされている感覚でプレイしていましたし、未だに対戦していて一番緊張するのはこの方です。恐らく現在の日本のテーブルトップ・パウパーで最もプレイが鋭いプレイヤーの一人です。
 
たつみさんに勝利したことにより自信も付き、続く4戦目へと意気揚々と向かうことになります。

④ カルドーサレッド

PlayFirst ××
⇒ 完敗。人間は許容範囲を超える恐怖を知覚すると記憶を削除するらしいのですが、その生存本能が機能したのか対戦内容をあまり覚えていません
二本目の凄惨な負け方だけは走馬灯のように覚えています。
《僧院の速槍》《僧院の速槍》《カルドーサの再誕》《カルドーサの再誕》《ゴブリンの奇襲隊……これを止める手段はパウパー環境にはまだ存在していません。
「いや~ 事故事故!w」と割り切ることも重要ですが、2本目のキープ基準が曖昧だったと感じた僕はつばさ君にすぐさま相談。カルドーサレッドに対するキープ基準を今一度確認した上で、負けられない5戦目以降へと挑みます。

⑤ カルドーサレッド(きよあきさん)

PlayFirst 〇〇
⇒ お相手は大宮勢のきよあきさん。前回の第4期神挑戦者決定戦の付近に日本で一番パウパーで勝っていたプレイヤーです。故に今回も相当仕上がっているとお見受けし、気を引き締めて席に着きます。
そして早速4戦目の敗北が活きる形に。対戦相手の方が1本目も2本目も1ターン目に《稲妻の連鎖》を顔面に打ち込んできたので普通はデッキを絞れないままプレイするのですが、なんと4戦目に隣でプレイしていた方がそのまま対戦相手となっていた為、相手のデッキを知った上でのプレイが出来ました。これに関してはラッキーという他にありません。
 つばさ君から教えられたカードの使い方を遂行し、危ない橋を渡りながらも結果としてはストレート。苦手だったカルドーサレッドに勝利したことで山場を越えた感覚を得ていました。

⑥ バーン

DrawFirst 〇〇
⇒ 5回戦目に48さんが勝利していた対戦相手であることを認識していました。つまり赤単であることは把握していましたが、どのタイプの赤単かを聞くことは出来ずそのまま着席。
すると相手の1ターン目に繰り出されたクリーチャーは、鋸刃の餓鬼
一時は話題になったクリーチャーではありますが、実際に対峙したのは今回が初。《未達への旅》を切る価値があるのか非常に悩み、その悩んでいる間に1マナクリーチャーとは思えない出力からライフを削られていきました。
とはいえ相手のクリティカルなカードをカウンターしつつ《聖なる猫》が着地。《虹色の断片》でバックアップしつつ、《バジリスク門》によってダメージレースが一瞬で入れ替わり1本目はなんとか勝利。
 続く2本目は僕が《青霊破》と《水流破》を5枚引いたので察してください。

 そしてようやく5-1と、あと一勝でベスト8に大きく近付くことの出来るラインまでやってきました。
ここで次勝てば8、次勝てば8と念じている最中、Magic Companionの表示は無情にも彼の名前を表示するのです。

⑦ エルフ(椎葉さん)


 え~~~~~、無理です。
カウゲートを使っている方ならお分かりだと思いますが、対エルフの相性は本当に終わっています。《ギルドパクトの守護者》を着地させても易々と勝つことは出来ませんし、こちらの《バジリスク門》3枚分程度の出力ならいともたやすく《森林守りのエルフ》が修正値を与えます。届きそうになったライフは《幸運を祈るもの》によって20点近く離されますし、アドバンテージゲームは《紆余曲折》《暴走の先導》《遠くの旋律》によってまるで歯が立ちません。
そんなマッチアップを、こんなタイミングで、チームメイトでありエルフ全一である椎葉さんとマッチアップ。敗北を覚悟しました。間違いなく当日一番の山場です。
 しかし着席した瞬間、その日で最も高い集中力と殺気を纏っていたようです(友人談)。完全に無意識です。目の前の対戦相手を薙ぎ倒すことしか考えていません。マッチアップ不利なんて全く気にもなりませんでした。
そしてその結果が、メイン1本を先取された後のサイド2本取っての勝利です。

PlayFirst ×〇〇
⇒ 1本目はとにかく歯が立ちませんでした。予想通りのマナ加速と、予想通りのアドバンテージ量。《ギルドパクトの守護者》こそ着地したものの、返しのターンで《遠くの旋律》から7枚ドロー。返すターンでさらに《遠くの旋律》で十数枚のカードをドローしており、《森林守りのエルフ》から一瞬でゲームは終わりました。
 2本目からは、こちらのサイドボードに潜ませている虎の子《軍旗の旗手》が火を吹きます。《軍旗の旗手》は《森林守りのエルフ》や《クウィーリオン・レインジャー》を封殺する役割を持ち、特に2ターン目にさえ着地してしまえば、エルフ側は余り余った大量のマナを有効に使うことが出来ず、ゲームのフィニッシャーを《エルフの先兵》と《気前のよいエント》に頼ることとなります。
そのようなゲームになった場合はこちらのもので、強化された《エルフの先兵》や《気前のよいエント》はサイドボードの《邪悪を打ち砕く》や《未達への旅》の最適な対象となります。後は飛行クロックによって相手のライフを攻め立てるのみです。

 そして迎えた2本目、僕が引き込んできた《軍旗の旗手》で相手の《クウィーリオン・レインジャー》や《森林守りのエルフ》を牽制すると、椎葉さんは《蜘蛛糸の鎧》をキャストします。

自軍に+0/+1修正と到達を与えるエンチャント

これはしまった。こちらの勝利手段は《バジリスク門》で強化した飛行クロックによる攻撃であり、《蜘蛛糸の鎧》下では群れを成したエルフたちが僕の飛行クリーチャーに対して身を挺してライフを維持させてきます。
 横に並ぶは徐々に強化されていく《エルフの先兵》、そしてライフを供給しつつ頼れるボディを持つ《気前のよいエント》。
こちらの手札には《未達への旅》、《邪悪を打ち砕く》がありますが、チャンプブロックでライフが保つ分には除去を切るのは時期尚早です。《バジリスク門》で強化した《戦隊の鷹》で殴って相手のエルフを削りながらも、段々とこちらの《虹色の断片》もチャンプブロッカーも減っていきます。
さすがにこれ以上強力なクロックで殴られ続けるのは…と《未達への旅》を《エルフの先兵》へと差し向けたその返し。
 椎葉さんが意気揚々とキャストするのは、このカードでした。

ヴァラクートの発動者

 有り余ったマナを火力へと変換し、一瞬にしてゲームを決する必殺のサイドカードです。もちろん《青霊破》なんて入れていませんし、《未達への旅》は先ほど使ったばかり。手札には《ヴァラクートの発動者》に当たらない《邪悪を打ち砕く》とどうにも当たらない腐った《赤霊破》ら。

…ん?《邪悪を打ち砕く》?

《蜘蛛糸の鎧》のテキストを今一度確認し、”自身がコントロールするすべてのクリーチャー”に修正値が入ることを確認しました。つまり、今の《ヴァラクートの発動者》のパワー・タフネスは”2/4”
そして盤面に叩き付けます。《邪悪を打ち砕く》を《ヴァラクートの発動者》へ!

 このムーブによって、完全に「流れ」を掴んだように思います。ドローが急激にノリ始め、駆け付けた《ギルドパクトの守護者》が間に合い始めました。かなりの長丁場になっており、こちらの盤面には《バジリスク門》が3枚。一撃で+33/+33修正が入った《ギルドパクトの守護者》で椎葉さんを捻じ伏せました。

 そして1-1へとこじつけました。電光盤を見ると、試合時間は残り5分。まず間違いなく決着は付かないと諦めつつも、最短距離での勝利を掴むために初手の7枚を確認します。…弱ぇ!マリガン!
しかしもっと勝てるハンドが来るはず!チェック!………..マリガン!

超不利対面、残り時間5分、ダブルマリガン。あまりの激戦に、ここから先はあまり覚えていません。明確に覚えているのは、「どこかで刺さらないと負ける」と思って残した《呪文貫き》が《否認》を打ち消し、変異でキャストされた《樺の知識のレインジャー》を《未達への旅》で除去し、《ギルドパクトの守護者》が完走したことです。
時間切れ間近のトップで《バジリスク門》を引き、+10/+10修正を得た《ギルドパクトの守護者》が夢への道をこじ開けてくれました。

 そんなこんなで圧倒的な不利対面を覆し、6-1にて最終戦を迎えることとなります。マッチングする相手次第ですが、そこまでオポーネントも低くない為、IDが成功すればほぼほぼトップ8が確定するというところです。

 しかし運命の悪戯は続くもので、最終戦のマッチング相手は…パ頑会のメンバーでもあり同じカウゲートを用いる龍海さんだったのです。

⑧ カウゲート(龍海さん)

 先に結論から述べると、IDさせて頂きました。非常に際どいラインでしたが、8回戦目開始時のスタンディングでは僕が5位、龍海さんが7位。オポーネントは龍海さんより僕がかなり高く、ここでIDをすると龍海さんがほとんど間違いなく9位以下で落ちてしまう——だけならまだしも、7回戦目に上位卓で引き分けが発生した為により複雑化し、僕すらも8位以内に残れる可能性が危ぶまれていたのです。
 ここにきて経験値の差が如実に出てきました。大型大会で際どいラインを見極めてIDを判断できるほどの能力を持ち合わせていません。かといって大型大会で対戦相手ではない他人に助言を求めたり、他の卓を参考にして決めることは禁じられています。龍海さんも配られたスタンディングを睨んで悩んでいるようです。
どこまでもついてないなと自嘲しつつ、ここは潰し合うしかないのか…とデッキを取り出そうとしたその瞬間、
「どうせ落ちるの俺だし、IDでいいよ」
と、龍海さんが優しく声をかけてくださいました。

「でもちょっとフリプしようよ」なんて気を遣って下さったり、僕の申し訳ない感情を少しでも薄れさせようと話しかけて下さいました。龍海さんをパ頑会にお呼びして良かったと思ったのと同時に、仮にベスト8に残ったならば背負うものが違うんだな、と背中にのしかかる”何か”を感じる一時でもありました。

 さて、龍海さんとのフリプも終わり(ボコボコにされました)、8回戦の終了の通知が携帯を揺らす時。オレンジ色に灯る自分の名前の順位に、思わず柄にもない声を上げました。

7位。念願の神決定戦ベスト8を達成したのです!

 僕が喜びを表している横で、チームメイトである48さんも同じく6-1-1でベスト8に入っていました。まるで当然のように「入った~」と言う48さんとの経験値における差を感じつつも、ようやく手にした明確な実績に、溢れ出る喜びが止まりませんでした。
苛まれてきた劣等感、無駄に積み重なったプライド。自分の人生観/価値観を刷新して取り組んだ大会で、ついに結果を出すことができたのです。

 僕が喜びに浸るそんな時、チームメイトであり、第1期の神決定戦以前より一緒に切磋琢磨してきた加糖がTCに応援しに来てくれました。
彼が到着する前、パ頑会の皆に対して「今加糖に会ったら絶対泣く」と宣言してはいましたが、実際に会うと一瞬で涙腺が決壊。まだSEも始まっていないのにも関わらず、みんなの前でボロボロと泣き出してしまいました。
 第1期に10位、第2期に9位。第4期で再び9位入賞した加糖は、大型大会で結果を出す難しさとベスト8の遠さを最も知るプレイヤーであることを知っていましたし、先日の報告と共に、神決定戦を休むことも知っていました。
 感情の波が押し寄せて止まらない僕は、ぐちゃぐちゃになりながらもなんとか言葉を紡いで加糖に言葉を投げつけます。

「お前の分も勝てて良かった」

龍海さんとIDした時に感じた”何か”の正体を知った一瞬でもありましたし、最後まで勝ち切ることを決意した瞬間でもありました。

 そして、ここから完全に頭の中の何かが一段階上がったように感じました。
いわゆるゾーンというものなのか、口角が上がりっぱなしになり、笑顔をたたえたままでプレイし続け、しかし相手のアクションは透けて感じるような——とにかく普段の僕からは想像できないクリーンな好青年のプレイをするようになったのです。これからもそのようにプレイするよう心がけます。

 何はともあれ、そこからシングルエリミネーションへと突入していきます。

SE1: 青黒テラー

Draw First ×〇〇
⇒ とても気さくな中国の方で、楽しくプレイしたのを覚えています。
彼のアップキープに《渦まく知識》や《思考掃き》等のアクションをするプレイスタイルが非常に特徴的で、かといってこちらのエンドにもしっかり強気なプレイをする、陽動を狙っているようにも思えるプレイヤーでした。
 一本目は《殺し》を3枚持たれていて、返しに5/5が3体駆け抜けて敗北。二本目からは順当にこちらが相手の初動をカウンターしつつ立ち回り、《聖なる猫》や《ギルドパクトの守護者》で攻め立ててゲームセットとなりました。
 印象的なのは、彼のアップキープに打った《思考掃き》のドローを通常ドローと勘違いしたのか、そのままメインフェイズに入ってアクションをしようとしたところです。「通常ドロー忘れてるよ」とマッチ中に3回指摘しました。予選ラウンドでも同じ間違いをしてそうで、対戦相手から指摘されていなければどこかで損をしていそうだなぁと今になって思っています。皆さんもフェイズ移行に意識を向けて、ドローを忘れないよう気を付けて下さいね。

SE2: バントゲート

DrawFirst 〇〇
⇒Hareruya Prosの平山さんが相手です。使用しているのは先日のPTQで結果を残した《開門》入りのカウゲートであり、土地基盤に《屋敷門》を採用していることが特徴です。サイドボードに《サルーリの門番》を複数枚採用することによって、赤系アグロに対するガードを如実に上げています。

 しかし《屋敷門》を採用している影響は大きく、ミラーマッチにおいては土地基盤の脆弱性が顕著に表れる為に《対抗呪文》を構えるのが非常に難しくなっています。各種《門》の色指定で手札が透けることも往々にしてあり、「《開門》を搭載しているからミラー有利」という俗説は僕は否定派です。
とはいえ、実際のゲーム結果は《戦隊の鷹》+《渦まく知識》を一方的に決めた僕が《虹色の断片》の枚数差で1本目を先取。2本目は《屋敷門》で白を宣言せざるを得なくなった平山さんが土地事故に苛まれてしまい、一瞬でゲームが終わりました。
 平山さん決死の《軍旗の旗手》は2ターン目に着地したものの、ミラーを練習してきた成果が少しは発揮できたように思います。


 と、いうことで決勝です。全く実感がありません。というかほとんど記憶がありません。
フィーチャーテーブルでパ頑会やコミュニティのみんなに囲まれる中、対戦相手が着席します。僕のお相手は第1期からの知り合いで、知る人ぞ知るパウパー界の有名プレイヤー、DQさんでした。

SE3: カルドーサレッド(DQさん)

DrawFirst ××


1:43:40~より参照。

これは勝てない

 今まで幾度となくテーブルトップ・Magic Online問わずカルドーサレッドと対峙してきましたが、こんだけノッてるカルドーサレッドは初めて見ました。完全にDQさんの日。プレイしながら、なんだか面白くなってきちゃって笑ってたのを少しだけ覚えています。
 加えて、どんなカルドーサレッドなのかと思ったら《ゴブリンの爆風走り》を採用した、最もカウゲートが苦手としているタイプです。
対赤系アグロは《戦隊の鷹》《聖なる猫》《黎明運びのクレリック》のチャンプブロックでどうにか狼煙を上げる時間を稼ぐのですが、《ゴブリンの爆風走り》型に対しては無力です。
2倍のスピードでチャンプブロッカーが減り、無視すれば《秘密を掘り下げる者》も真っ青…真っ赤になってしまうクロックスピードです。
 「よりにもよってキツいカルドーサに爆風走り入ってて草」なんて思いながら、1本目の盤面を即座に片付けます。

 とはいえ、2本目のキープはよろしくありません。

《バジリスク門》《ロリアンの発見》《当世》《未達への旅》《未達への旅》……….《青霊破》《水流破》

仮にこの7枚をキープするにしても、《ロリアンの発見》から持ってくるのは《島》が適切でしょう。まさかDQさんが《倒壊》をサイドボードに入れているなんて知らずとも、テンポが命取りのマッチアップで白マナ欲しさにタップインを持ってくるのはあまりよろしくありません。
2枚の《青霊破》があまりにも魅力的すぎて目が眩んだ、というと、正しくマリガンも出来ない人間みたいに聞こえますよね。僕もそう思います

 終わった後に後ろで見ていたつばさくんに聞いても「まぁマリガンだったね」と優しく言ってくれたので、普段の野試合で同じキープをしていたら殴られていたと思います(つばさ君はそんなことしません)。

「放送席に俺の苦悩が伝われ」と、少し手札をカメラ側に傾けてゆっくりハンドシャッフルしたりしながら悩みつつ、キープを宣言しました。
僕が《倒壊》を食らったあたりの石川さんが最高なので是非放送を見てください。

 そのあとのゲーム展開はお察し下さい。


ブラザーの握手

 「神倒すの自分しかおらん~!」の握手です。
というわけで0-2ストレート負け、試合内容だけ見るとめちゃくちゃ一方的でしたね。一方的な試合内容にしてしまったのは僕なんですが。

 とはいえ、結果として見てみれば準優勝です。ベスト8どうのこうの言っていたらあれよあれよと決勝の舞台まで辿り着いてしまいました。
悔いの残るプレイ内容ではあったものの、ここまで戦えたことにまずは感謝です。シングルエリミネーションに入ってから、僕が勝利する度に喜んでくれるパ頑会やコミュニティのみんなを見てこんなに心強いことがあるかと、心の底から落ち着いてプレイ出来ていました。ハイでしたけどね

 そしてその2日後、DQさんは勢いそのままに神を打ち倒し、第5期パウパー神に就任となりました、本当におめでとうございます!
僕も応援に駆けつけていましたが、1日置いても尚右手がノリノリで後ろから見てて鳥肌が止まりませんでした。
 こうなったらいつかまた同じこのテーブルで戦いたいものですね。それまでそこの座を守り抜いて下さいね。

■ 本音(おわりに)




 いや悔し~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!111111111111111

 あと、あともう少しで神の挑戦権を得れたんです。悔しくない訳ありません。
神決定戦の当日、バーチャル喫煙所に所属しているレガシー勢のミナミさんから「決勝まで行った嬉しさと、決勝で負けた悔しさ、どっちが大きい?」と聞かれ、「神を倒すならDQさんが一番良いと思います」なんて、どっちでもない回答をしてしまいました。
悔しさを感じたくなかったんだと思います。
今はまだ喜びに浸っていたいし、あの場に立てたことがもう既に出来すぎた結果だと、そう思っていたのです。
 しかし2日も3日も経つと、自分の奥底にしまい込んでいた本音の部分がドロドロと見え始めるようになっています。

勝ちたかった~!
悔しい~!

 しかしながら、あそこまで勝てたのが出来すぎだということは本当にその通りで、僕一人の力では絶対に辿り着けない領域だったと今でも思っています。
パ頑会のみんな、コミュニティのみんな、家族、友達、相方、いろいろな方からの応援と助けがあり到達した場所だと本当に思っています。
今回は俺が出来すぎでしたが、次は俺を含め、俺じゃないみんなもこの舞台にふさわしいレベルまで引き上げようと思います。

 今回もちゃんと頑張りました!

また第6期で!


【おまけ】

パウパー神をちゃんと頑張る会のTシャツ、作成中です

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?