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空也上人がいた 山田太一
今を老いる老人にしか書けない小説、
更に言うなら大衆に向けた創作で糊口をしのいできた老人にしか書けない小説だった。
昨今、娯楽が細分化され、各ジャンルが満たされまくっていいるからこそ、最近書かれた小説のほとんどが、文学好き以外の人々の心を喜ばせないものであるのに対し、この小説は今を生きる人々に開かれたものであると感じる。
「ふぞろいの林檎たち」を執筆していた頃から全く感性が曇っていない。脚本だ
TUVALU ファイト・フェルマー
アントンは生まれ育ったプール、つまり人工の海という父親に庇護された環境で、与えられた仕事をこなし続けている。
しかしトラブルの解決のため、父親の元を離れて、生まれて初めて家の外へ飛び出すことになる。
そしてアントンは父親無しでも生きていける強さを得て、夢だった航海の旅に出る。
本物の海は、汚れも波も本物で、これからは誰も守ってくれない、自分で全て決めねばならない。
シンプルで王道の筋書きに
岡本太郎と日本の祭り
御柱祭について、
「樹齢の長い大木の生命を絶ち、山から引きずり下ろすのだから、まさしく人間側にとっても命がけの祭りになる」
というニュアンスの文が載っていた。
祭りは本来、タガを外し、臨界点を突破する代物であるという前提を忘れた今となっては、毎度の如く死人の出るにも関わらず続けられる不可思議な祭りであると感じられるが、岡本太郎の眼を通すと、異なる文脈が浮かび上がってくる。
いのちの窓 河井寛次郎
仙厓や寛次郎には、見えないものが見えている。
太陰大極図のように陰陽でありつつも、それは必ずしも未来永劫定まったものではなく、「陽極まれば、陰となり陰極まれば、陽となる」。見方や状況によって反転するもの。
いのちが窓を開ければ、つまり心を開いたり、見つめたり、心がけを変えたりしてみれば、見えないものが見えてくる。
本を読めなくなった人のための読書論 若松英輔
おすすめの本を羅列した書籍は数多あるが、読めずに困っている人と向き合う本にははじめて出会った。
人によって食の好みや食べる量が異なるように、本の読み方も距離の取り方ももっと自由になればいい。
こんな本を求めている人、たくさんいると思う。