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少額訴訟でお金を取り返す方法

数年前知人に50万円というお金を貸し、未だに返金がないため、とうとう訴訟をすることにしました。(2021年12月現在)

この記事は、私と同じように「お金を貸したのに返金してもらえない!」「取り返したいお金がある!」といった方に向けて、一人で少額訴訟をする方法を解説した記事です。

まずは、私がお金を貸したおバカな背景からお話したいと思います。

私がお金を貸した背景

約3年前のことです。知人Aから「知り合いで一時的にお金に困っている人(知人Bとします)がいるから助けてほしい」

と連絡がありました。

当時私は会社を経営しており、その会社の役員に入っていたのが知人Aにあたる人物です。

つまり、お金を貸した人物は知人Aの知人ということになり、私からしたら完全に知らない人になるため、最初は断りました。金額も大きいですからね。

しかし、知人Aは「僕も過去にお金を貸したことがあるけど、ちゃんと返ってきたし、少し利子を付けて返してくれるから。僕が保証人にもなるし。今後会社を経営していく上でも、いろいろ助けてくれる人物だから」と私を説得してきました。

そんなに言うのであれば自分で貸せば良いだろう、と知人Aに伝えたのですがまとまったお金がすぐには用意できないとのことでした。

また、私がお金を貸した知人Bは、1ヶ月後にはお金が用意できるからその時に返すということも言われました。

私はかなり悩みましたが、知人Aが保証人になってくれる+一応当時は会社を一緒に経営していたので、知人Aのことも信用していました。

そのため、今後の関係性も考えて50万円もの大金を見ず知らずの知人Bに貸すことにしました。今考えるとどうかしています。笑

そして、貸してから4年が経とうとした現在、約半分返金があったものの、元本である50万には到底届いておりません。

保証人になってくれていた会社の役員だった知人Aは、その後音信不通に。電話をしても出ず、LINEやメールも返信がない状態。。。役員からは音信不通になる少し前に、会社の役員から自ら離れていたことも、今となっては音信不通になる前触れだったのかもしれないと思っています。

以上が私がお金を貸した背景になります。

少額訴訟の具体的な説明に入る前に皆さんにお伝えしたいのが、「お金を貸す時は、あげるつもりで貸した方が良い」ということです。

お金を誰かに借りなくてはいけないような人は、それだけ窮地に追い込まれている人です。普通に働いて普通に生きていればお金を誰かに借りなくてはいけないほど困ることはないのです。

利子をつけて返すことなど到底無理と考えた方が良いですし、元本すら返ってこないと思った方が良いでしょう。そして、私の背景を読んでいただければわかると思いますが、保証人もあてにはなりません。

私も諦めようとも思っていたのですが、偶然にも私の周りに似たような状況で泣き寝入りしている人たちがおり、自分が訴訟をして取り返すことができればそういった方たちの助けになるかもしれないと思い、行動に移すことにしました。

前置きが長くなりましたが、背景は以上でここからが本題です。

訴訟をするまでの手順と必要なものを時系列で細かく説明していきます。

なぜ支払い督促ではなく、少額訴訟なのか

支払い督促は、少額訴訟よりも簡単です。紙面一枚で証拠も不要。相手に裁判所から支払い要求を送ることができます。

しかし、デメリットもあります。

それは、相手に異議申し立てをされると、通常の裁判に自動的に移行してしまうことです。

通常の裁判に移行すると、非常に面倒である上に、裁判は相手の住所で管轄する裁判所で行われてしまいます。

もし相手が遠方にいる場合は、自らその裁判所まで出向かなくてはいけなくなり、交通費も余計にかかることになります。

異議を絶対に申し立てられない自信があれば良いですが、相手が支払うことには同意しても、分割払いを要求してきた場合も、異議申し立てをしたことになり、通常の裁判に移行します。

私の場合、お金を貸しているので、さすがに「借りていない」という無茶苦茶な異議申し立てはされないと思いましたが、分割払いの要求はされる可能性がありました。

また、お金を貸した相手である知人Bはかなり遠方に住んでおり、通常の裁判に移行してしまった場合、かなり大変なことになると思ったので、支払い督促は諦め、少額訴訟を選択しました。

支払い督促がよく使われる例としては、一度に多くの人を訴訟するケースです。

例えば、携帯会社が携帯料金が長期間未払いの人に対して、一斉に支払い督促を送ったりします。携帯料金を払っていない人が異議申し立てをするケースはほとんどいないため、そのまま訴えが認められ強制執行が可能になるのです。

通常訴訟に移行をしても全く問題ないという方は、手軽な支払い督促を選択してください。

少額訴訟=60万円以下を請求する訴訟

それでは、まずは少額訴訟とはどういうものか、というご説明からします。

少額訴訟は、少額という名前の通り、60万円以下の請求に限って、裁判所が利用できる制度です。

通常の裁判より簡単ですぐに終わります。

私のように、

「貸したお金が約束の期限になっても返ってこない」
「家賃を払ってもらえない」
「業務委託契約をしたのに業務委託料を支払ってくれない」
「広告掲載契約をしたのに広告費を支払ってくれない」
「商品を販売したのに代金を支払ってくれない」
「敷金を返してくれない」
「給料を払ってくれない」
「物損の損害を賠償してくれない」

などといった60万円以下の請求をする場合にオススメの訴訟です。

少額訴訟という制度が設けられたのは、少額の債権を回収する場合、通常の裁判では時間も費用もかかり、割に合わないからです。

少額のお金を回収したい方向けに、費用を抑えながら簡単にお金を回収するために設けられたのです。

少額訴訟は簡単かつ安い

訴訟をするには、弁護士・司法書士・行政書士など、専門家の力が必要だと思っていませんか?私はそう思っていました。

しかし、少額訴訟は法律知識がなくても1人で十分にできます。なぜなら、上でも述べましたが、1人で戦えるように簡単な仕組みになっているからです。

また、簡易裁判所に行けば、裁判官や書記官が、進め方や訴状の書き方をアドバイスしてくれます。

訴状を裁判所に提出する申立てから、審理をして判決が出るまで2ヶ月と短く、原則として審理は1回でその日のうちに判決が下されるので、何度も裁判所に足を運ぶ必要もありません。

さらに、裁判をする=たくさん費用がかかるイメージがあるかもしれませんが、少額訴訟は費用が安いのが特徴です。

弁護士に依頼する必要がないため、弁護士費用もかかりませんし、仮に強制執行(差し押さえ)まで行ったとしても、1〜2万円程度しかかかりません。

費用についてはこの後詳しく解説します。

少額訴訟にかかる費用

少額訴訟にはどのような費用が、どの程度かかるのでしょうか。

非常にシンプルなので、一つずつ見ていきましょう。

(1)印紙代

裁判をするには、印紙が必要となります。

裁判所に支払う裁判の手数料とお考えください。

印紙は、郵便局や一部のコンビニエンスストアで購入することができます。

ただし、高額な収入印紙についてはコンビニでは販売していないことが多いので、郵便局に行くのが間違いないです。

金額としては請求金額に応じて以下の通り変わります。

  0~10万円:1,000円
10~20万円:2,000円
20~30万円:3,000円
30~40万円:4,000円
40~50万円:5,000円
50~60万円:6,000円

ちなみに、東京簡易裁判所にはコンビニが併設されており、裁判をする方のために高額な印紙も用意されていますので、申し立てる当日に印紙を買う形で問題ないでしょう。

(2)郵便切手代

郵便切手代は訴状や判決を送るために使用されますので、必要分を購入し裁判所へと提出しなければなりません。

ただし、少額訴訟が終了して使用されずに余った分は、返却してもらえます。納める際には切手代、としてではなく切手を買って納める必要があるため、こちらもコンビニや郵便局で買うようにしましょう。

管轄の裁判所や訴訟する相手の人数によってその金額は異なるので一概にいくら、とは言い切れませんが、5,000円前後です。

東京簡易裁判所であれば、原告及び被告がそれぞれ1人の場合、5,200円分の切手を納めます。

そして、原告、被告がそれぞれ1人増すごとに追加で2,500円の切手が必要になります。

5,200円分の切手の内訳は以下の通りになります。

500円切手:5枚
100円切手:10枚
84円切手:10枚
50円切手:10枚
20円切手:10枚
10円切手:10枚
  5円切手:10枚
  2円切手:5枚

内訳通りに購入する必要がありますが、こちらも申し立てる際に丁寧に紙に書いて指示してもらえるため、簡易裁判所併設のコンビニで購入すれば問題ないです。

(3)強制執行の費用
もし、少額訴訟で勝訴しても相手がお金を支払わない場合、お金を回収するために強制執行(差し押さえ)が必要となります。

強制執行に必要な金額は以下の通りです。

①印紙代
1人の債務者に対して強制執行するために必要な印紙代は以下の通りです。

4,000円

②郵便切手代
郵便切手代も追加でかかります。

金額は裁判所によって異なりますが、おおよそ以下の通りです。

3,000円~4,000円

基本的に少額訴訟でお金を回収するまでにかかる費用は以上です。

繰り返しになりますが、合計で1~2万程度とお考えください。

少額訴訟をするために必要な資料

少額訴訟をするために必要な資料とは、裁判所に提出する資料のことです。

以下4点が必要になります。

(1)訴状

訴状の作り方については後程詳しくご説明します。

(2)登記事項証明書(相手が法人の場合のみ)

相手が法人の場合、登記事項証明書が必要となります。

登記事項証明書は法務局で取得できますが、500円ほどかかります。

オンラインでも取得することが可能です。

(3)訴状副本

少額訴訟をする相手の数だけ訴状のコピーが必要となります。

相手が一人の場合は1部。二人の場合は2部コピーが必要です。

(4)証拠資料

少額訴訟とはいっても、証拠資料は必要となります。

どのような資料が証拠となるかは後程詳しくご説明します。

少額訴訟の訴状の作り方

最も大変と考えるのが、この訴状の作り方ではないでしょうか。

この記事を読めば全て分かるように意識して執筆しましたので、ぜひ最後までご確認ください。

(1)まずはフォーマットを用意する
訴状を一から作るのは大変なので、訴状のフォーマットを利用しましょう。

こちらからダウンロードできますので、ご利用ください。

訴訟する内容によってフォーマットが分かれていますので、ご自身の訴訟内容に合ったものをダウンロードください。

(2)記載例を参考にしながら書いていく

フォーマットは用意したけれど、実際に書く内容は分からないと思います。

そういった時は、記載例を見ながら真似して書きましょう。

記載例①賃金請求
記載例②売買代金請求
記載例③給料支払い請求

他の請求内容の場合も、フォーマットをダウンロードしたリンク先にありますので、ご確認ください。

記載例を参考にしながら記載し、それでも分からない部分は訴状提出先となる管轄の裁判所で丁寧に教えてもらうことができるので、持って行って見てもらいましょう。

管轄の裁判所が遠くて行くのが面倒な場合は、無料相談を実施している弁護士の方に見てもらうのも一つの方法ですが、申し立てを郵送でする場合を除き、直接出向いて申し立てをしようと検討している方は、訴状だけ持って行けばその場で教えてもらいながら訴状を作成し、再度訪問しなくてもそのまま申し立てることも可能です。

証拠となる資料を用意する

証拠が全くなくても少額訴訟は可能ですが、相手が反論してきてきた時のために、証拠となる資料を用意していく方が良いです。

証拠となる資料の例は以下の通りです。

1. 契約書
2. 請求書
3. 見積書
4. 領収書
5. メール文のコピー
6. 電話の録音
7. お金を支払ったことが分かるもの(通帳のコピーなど)

上記の中から手元にあるものは全て提出するようにしましょう。

他にも「これって証拠になるの?」というものがありましたら、管轄の裁判所で確認すると良いでしょう。

仮に、これらの証拠が全くないといった場合は、裁判で勝つことは難しくなることも考えられるので、無料相談を行っている弁護士事務所で相談してみるのも一つの方法です。

管轄の裁判所では、あくまで申し立ての方法を教えてもらえるだけです。弁護士ではないので、これで勝てるかどうかなどといったことは教えてもらえません。

少額訴訟の流れ

少額訴訟に必要な書類を揃えたら、ここからは具体的な訴訟の流れをご説明していきます。

(1)訴状の提出

原則として,訴訟相手が住んでいる地区の簡易裁判所に訴状を郵送又は直接提出します。例えば,相手方の住所が東京23区内にある場合には東京簡易裁判所に訴状を提出することになります。

ただし,事件の種類によっては自分が住んでいる地区の簡易裁判所に訴状を提出することができます。

例外となる事件の例は、貸金請求や売掛代金の請求など金銭請求の場合です。お金を貸した相手が住んでいる地区の簡易裁判所で裁判をしなくてはいけない=相手にとって都合が良いことになりますからね。。。

特に遠方にいる相手を訴訟する場合は、わざわざ交通費を出して相手のところまで行かなくてはいけなくなりますので、理不尽すぎます。例外があって良かったと私は心から思いました。

(2)期日の連絡
裁判所への訴状が正式に受理されると、次に裁判所から審理・判決をする期日の連絡が郵送されてきます。この郵送物が被告に届かないと非常に厄介です。

被告が引越している場合は、現地の市役所や区役所まで行って住民票を取得し、引越し先の住所に訴状を送り直さなくてはいけません。

さらに、その引越し先の住所にも届かなかった場合は、その住所まで実際に足を運び、既に住んでいない、ということを調べた上で報告書を提出しなくてはいけません。

今回、私はお金を貸す話を持ち出してきた知人Aと、お金を貸した知人Bの2人に訴状を送ったのですが、お金を貸した知人Bには訴状が無事届きましたが、知人Aの方は引っ越しを繰り返しており訴状が届きませんでした。

住民票を取得しに行っても良かったのですが、遠方で交通費もかかる上に住民票を取得して再送しても届く保証はありませんでした。

そのため、お金を貸した知人Bには無事に届いたので、悔しいですが知人Aの方は一旦訴えを取り下げることにしました。取り下げずに放置することはできないということで、泣く泣くでした。

もし、お金を貸した知人Bからお金が回収できなかった場合は、知人Aを再度訴える覚悟はできていましたが。

(3)答弁書を受け取る
訴状が無事相手に届き、記載した内容に対して反論がある場合は、相手は答弁書を提出してきます。答弁書に書かれている相手の反論内容を確認しましょう。

反論がない場合はこのステップは飛ばすことになります。

答弁書には詳細の反論が書かれている場合もありますし、「争うという意思だけ」が記載されている場合もあります。

いずれにせよ、反論がある場合は当日の裁判で証拠書類などを元に争うことになりますので、反論があっても裁判当日までにこちらで追加で行うことは特にありません。(追加で証拠書類が準備できそうな場合は当日までに用意しておきましょう)

また、支払督促の場合は反論があった場合は通常訴訟となり、訴訟相手が管轄する裁判所で裁判が行われる旨をお伝えしましたが、少額訴訟は反論があっても、まずは訴訟した側が管轄する裁判所でそのまま裁判が行われます。

少額訴訟の判決に相手が納得がいかなかった場合のみ、通常訴訟へと移行します。

(4)法廷で審理が行われる
裁判当日は、原告、被告、裁判官、書記官らにより審理が行われます。

少額訴訟なので、30分から長くても2時間程度で終わります。

私の場合、訴状を出した相手が法廷に来なかったため、こちらの要求が一方的に通る形で30分程度で終わりました。

裁判官と書記の方がいる部屋で、円卓に座って話して終了です。審理では提出した書類や証拠の確認が雑談のように行われました。

(5)判決
すべての審理が終わったら、特別な事情がない限り裁判当日中に裁判官が判決を下します。私の場合はその場で勝訴が言い渡されました。なんだかあっけなくて、こんなものかと思いました。裁判ということでかなり構えていましたが、思っていたよりあっさりしており、重く考える必要はなかったとその時初めて感じたことを今でも覚えています。

また、少額訴訟では、訴えた方が勝つ確率はかなり高いといわれています。

おわりに ~少額訴訟から通常訴訟になる可能性も~

少額訴訟は60万円以下のお金を請求するのに非常ですが、1点注意しなくてはいけないのが、通常訴訟への移行リスクです。

少額訴訟は、請求先が通常訴訟を希望した場合に限り、そのまま通常訴訟へ移行するリスクがあります。相手が全面的に争う姿勢を示してきた場合ですね。

通常訴訟に移行した場合は、今回ご説明した内容が当てはまらなくなってしまうので、また別途調べ直す必要があります。

また、通常訴訟に移行した場合は相手が住んでいる場所に近い裁判所で裁判が行われることになります。

訴訟する相手が遠方に住んでいる場合は、そこまで行かなくてはいけなくなるので非常に厄介です。。。(そうなった場合に訴えを取り消すことはできます)

そのため、これはあくまで私の考えですが、ある程度少額訴訟は勝てる自信がある場合に行うべきでしょう。

勝てる自信があまりなく、争う可能性があるものは最初から弁護士の方をつけて通常訴訟で争った方が良いです。

この記事のオチではないですが、私は勝訴した後その通知が知人Bに届き、そこから半年かけてようやく知人Bはお金を全額返金してくれました。

裁判をするまでは音沙汰もなかったのに、やはり効果はあるものだと感激しました。

いかがでしたでしょうか?

この記事では少額訴訟の具体的なやり方までを解説していますが、その後の強制執行のやり方までは記載しませんでした。その理由としましては、私は強制執行をせずにお金を取り返すことができたため、強制執行までは行っておらず、具体的な説明ができないからです。

今後強制執行をするようなことがあれば追記したいと思います(笑)

皆様が無事資金を回収できることを願っております。

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