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閉幕式の感想 ~逆風のなか、感動を作り出す演出の巧みさ~

2月20日、北京冬季オリンピックの閉幕式が行われました。

わたしの中で一番印象的だったのは柳の枝のシーン。
会場に浮かび上がるほのかな光のラインに沿って
緑の衣装のすそをゆらめかせながら、
時に立ち止まりつつ、一歩ずつ歩む女性たち。
それが柳の枝が春に向かって少しずつ伸びゆく様子を
表していると分かった時、
へーっ!という意外感と驚きに包まれました。
折しも、この日は公園の柳の木の枝が
わずかに緑を帯びているのを発見したばかり。
季節感的にもマッチしています。

「柳(liu)」の発音は、とどまるという意味の
「留(liu)」と同じであることから、
中国の伝統では、遠くに旅立つ友に柳の枝を送って
別れを惜しむ習慣があるそう。
やさしくゆれる女性たちが、中国の老若男女が、
柳の枝を手に、世界から集った人々のもとへと歩み寄るシーン、
そしてその情景がだんだん夕闇に染まって
影絵のようになり、やがて消えゆくさまが、
まもなく終わりを告げる大会の名残惜しさと相まって
グッと胸にくるものがありました。

続いて画面はオリンピックのハグ映像へ。
これはもう、感動し、涙せずにはいられません。

後半のGood Byeセレモニーの映像では、
中国の市民が別れを惜しむシーンに心動かされ、
大会マスコットの冰墩墩Bing Dwen Dwen(ビン・ドゥンドゥン)
がアニメーションで登場したのにも目を奪われました。
完全バブル方式で行われたオリンピックでしたが、
中国人民は世界からのお客様を心から歓迎していたんだな、
と暖かい気持ちにさせられます。

終盤では、2008年の北京夏季オリンピックで
劉歓とサラ・ブライトマンが歌った
「我和你 you and me」を
今回は子供たちの合唱で世界に発信。

《我和你》 作詞:常石磊・馬文・陈其钢/作曲:陳其鋼
我和你 心连心 共住地球村
为梦想 千里行 相会在北京
来吧 朋友 伸出你的手
我和你 心连心 永远一家人

≪あなたとわたし≫
あなたとわたし 心つながる 同じ地球村の住人
夢のために 千里を行き 北京で出会った
さあ 友よ 手を伸ばして
あなたとわたし 心つながる 永遠のファミリー
                (以上、私の仮訳)

「この歌詞を結びに持って来たか~」
と思いつつ、
子供たちのピュアな歌声に、
これまた心動かされずにはいられません。
実際、いい歌なんですよね、ほんと。

そして最後のクライマックスは花火。

「ONE WORLD
   天下一家
 ONE FAMILY」

という文字が浮かび上がった後、
華やかな花火が夜空を彩りました。
開幕式同様、思わず拍手してしまいそうになる単純なわたし。
けれど、文字がSPRINGではなく、
ONE WORLDという
思想理念を含むものだったことが
少しわたしを冷静にしました。

『我和你』もここへつながる伏線だったんですね。
改めて考えてみると、全てのシーンが
ここに集約されるよう緻密に構成されていたのかと
気づきました。

↓開幕式の記事

中国、感動の演出が本当にうまい。
大会のハイライト映像や、
ボランティアへの感謝の儀式なども含め、
見る人が感動し、涙し、拍手を送らずにはいられないような
仕掛けが満載だったな、
というのが全体を通したわたしの感想です。

開幕式のシンプルさと比べ、
閉幕式は作り込まれた主張があった、
という印象を持ちました。

この逆風の中、
これだけの成功を演出できる中国、
世界の人々が思わず感動し、うなずき、拍手し、
見入ってしまうような閉幕式を作り上げる
中国という国の強さ、したたかさ、
そして実際にひとつひとつのシーンが
まるで絵のように美しかった閉幕式の映像に
あらためて思いを馳せた日曜日の夜でした。

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