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今日の絵本03:『ラチとらいおん』マレーク・ベロニカ

ある日あらわれた、ちっぽけな赤いライオン

03_ラチとらいおん

少年ラチは、世界中で一番の弱虫。友だちに仲間はずれにされて、いつも泣いてばかりいました。
「ぼくにライオンがいたら、なんにもこわくないんだけどなあ」
ある朝目を覚ましてみると、ベッドのそばに小さな赤いライオンがいるではありませんか! かわいらしくてちっとも迫力のない、そのライオンは言いました。
「ぼくがきみを強くしてやるよ」

* * *

泣いてばかりいたラチ少年が、弱虫を克服して夢をかなえるお話。

なんといっても、この絵です。60年以上前に描かれたこの絵の、なんと愛らしく魅力的なこと! 味と勢いのあるペン画(黒)に、オレンジ、黄色、若草色の4色印刷。手のひらになじみやすい判型といい、真っ黒なバックにラチと少年が描かれた表紙といい、眺めているだけでも幸せ。たっぷりの余白に絵を置く構成が、作者のデザイン力の高さをうかがわせます。

もちろん、お話だって負けてはいません。――ラチを強くするためにやってきたライオンは、「百獣の王」のイメージとはほど遠い、ちっぽけでまぬけな風貌でした。あまりに愛嬌たっぷりなその姿にラチは笑い転げますが、どっこいライオンはラチなんかよりずっと強かったのです。

その愛らしい外見と「よく見ていたまえ!」という口調のギャップが魅力的なライオンに、夢をかなえるために強くなりたかったラチは特訓を受けます。出かけるときにも二人は一緒。ライオンはラチの服のおしりについたポケットにすっぽりおさまってついて行くのです。

「ぼくにはライオンがついている」
そう思うだけで、ラチはそれまでは怖くてできなかったことを、次々と克服していきます。ついにラチは勇気を完全に自分のものにしました。同時に、別れが2人にやって来るのです――あまりにも、突然に。

ライオンのキュートさ、ラチが次第に強くたくましくなっていくさまが、4歳男児の心をがっちりとつかんだようです。ライオンが体操をする場面では同じポーズを取って真似をし大笑い。ほろりとさせる場面にはしみじみと聞き入って、読み終えると「もう1回!」コールが飛び出すのでした。

夢をかなえたい、強くなりたいと願う子どもたちを勇気づけ、励ましてくれる一冊。ぜひとも手元に置いておきたい絵本です。読み聞かせは3歳ぐらいから。

※「今日の絵本」は、家で過ごす時間のために、ずいぶん昔に書いていた絵本ブログから、おすすめ絵本のレビューをランダムに紹介する記事です。リアルタイムに執筆した文章ではありません。ほんのちょっとでも、なにかのお役に立てれば幸いです。

オススメ度(読み聞かせ当時の記録です)
母------------------> ★★★
4歳0カ月男児--> ★★★

『ラチとらいおん』

▽マレーク・ベロニカ(文・絵)とくなが やすもと(訳) /福音館書店 (1965/07/14 原著は1961、ハンガリー)/印刷:日本写真印刷/製本:多田製本

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