夕焼けかと思った。カーテンを引いたら、光がなだれ込んできた。朝焼けだった。 始まりを象徴するには、あまりにもあざやかで、あまりに美しかった。そういうものは終わりの特権で、始まりは持たざるものだと、思っていた。でも、この窓から光が射すのは朝だけだった。 寝不足の頭は重い。よくこの時間に起きられたものだと思う。 夜中まで、部屋で意味もなく、彼と映画を見ていたせいだ。内容は一片も残っていない。その時間はどうでもいいことを、大事に、少しずつ話すためのもので、映画は背景と、適度
この街はカラフルだ。太陽を掻き消すほど汚いくせに、ギラギラ輝く。路面だって、ほら、カラフル、マダラ。吐瀉物、死体、キラキラ魅せるパッケージ。元の景色は教えてくれない。 他人の思い出、怒鳴り声。嗚咽、ため息、喘ぎ声。この場所には、すべてがある。今日もうるさく、ガチャガチャと。 お金でサービス、大声セールス。 「選り取り見取り、感情全色ございます」 いつものことだ、今もそうだ。僕は通りを歩いていた。大人どもは、僕には目もくれない。金がないって知っているから。大人と子供は住む
目が覚める。少し遅れて、素肌が寒さに気づく。まだ布団の中にいたい。今日は休日だし、どうしよう。窓の外を見て決めることにする。息を吸って覚悟をきめて、温かい沼からいったん抜け出す。同じ部屋なのに、窓辺は冷たい。靴下をはいてくれば良かったと今さら思い、でもまだ寝るかもしれないと思い、窓の外を見る。 ゆっくりと何かが、地面に降っている。 雪だ。雨じゃない、雪だ。眠い目を擦って、もう一度確認する。ちゃんと白いし、速度もゆっくり。雪はいくつになっても、やっぱりうれしい。私の住
太陽は、とても強い光を放っていた。 蝉がひっきりなしに大声で鳴いていた。あんなに小さな身で、大声で叫んでいるのだから、その中で感情が爆ぜているのだと思った。でも、それが悲しさなのか、苦しさなのか、寂しさなのか、私は知らない。蝉の声は好きになれない。 理想の夏は静かだ。蝉の声はなく、風鈴の音と、時折ラムネの音がする。現実は、蝉の大きな声と、今にも溶けだしそうなアスファルト、時折聞こえる全速力の室外機。歩くだけで嫌になる。 喫茶店の前を通りかかった。ちょうど人が出てくる