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『かわいい我には旅をさせよ ソロ旅のすすめ( 坂田ミギー/産業編集センター)』を読んで、自由に旅ができる世界の再来を渇望する。

旅が好きだ。とりわけ、一人旅が好きだ。
独身時代はもちろん、結婚してからはさすがに行きづらくはなったけれど、タイミングを見てはちょくちょく一人旅をしていた。

それが、このコロナ禍によって、大きく状況が変わってしまった。
特に海外には、もう3年近くも行っていない。

そうなると、もう一つの趣味である読書も、自然と「旅」関連のものに食指が動くようになる。
そんな時に出会ったのが、この本だ。

著者の坂田ミギーさんは、広告のクリエイティブディレクターをされる傍ら、「旅マニア」というサイトを運営されている。
31歳で世界一周の旅に出られ、これまでに40カ国ほどを訪問されているそう。

読み終えての素直な第一感としては、「やっぱり旅はいいなあ」、というものだ。
もちろん、本書にも様々なエピソードが紹介されているように、旅には不便なことや、危険なこともたくさんある。
それでも、それを補って余りあるだけの効用が、旅にはやはりあるのだ。
たとえば、こんなふうに書かれている。

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素晴らしい景色に出会ったとき、他人と「きれいだね」「すごいね」と共感したい人は、「ソロ旅だと誰とも感動を共有できない」と思っているかもしれないが、それは違う。わたしは、わたしと話しているのだ。

ただひたすらに自分と話せる時間は、普段はあまり持ち得ない。強制的にでも、自分と向き合って会話するイベントがしこたま発生する。それもまた、ソロ旅のいいところなのだと思う。
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「わたしは、わたしと話している」。
この一文を目にした時、ハッとした。
「自分」と対話をする機会は、日常生活の中では、ついつい疎かになってしまっていないだろうか、と。

この情報化社会。毎日溢れる膨大な情報の中で、「内省」を深めることは日々難しくなっている。
たとえば、以下のような「内側から湧いてくる感覚や言葉」も、普段の生活ではその「ノイズ」に邪魔をされ、なかなか気づきにくくなってしまっていると思う。

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内側からふつふつと湧いてくる感覚や言葉を観察してみても、おもしろい。こういう時自分はこう思うのか。こんなことに気づけるのか。これは苦手なんだな。じゃあこっちに行くのはどうだろう。
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人間は「環境の生き物」と言われる。そんな環境を強制的に変え、自分と対話するためにも、一人旅は有効なのだ。

危険、という点では、モロッコのマラケシュにある「カフェ・アルガナ」で爆破テロに遭遇した際のエピソードが強烈で、印象的だ。
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確かに、海外旅行は危ない。家でぼーっとしているより危険な目に遭う確率は高い。しかし、それは世界の今を目の当たりにすることでもある。なぜテロが起きているのか、スリが多いのか、ピストルを突きつけられるのか。そこには理由があって、圧倒的な現実がある。
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私も、初めて行ったインドでの一人旅で、初日に2人組にiphoneを強奪されたことがある。
その時は絶望と不安しかなかったが、今振り返ってみると、非常に貴重な経験と学びができたと、心から思っている。
それ以前よりも、日常生活でもサバイバル能力というか、不測の事態への対応能力が上がったという実感が確実にあるのだ。
そんな観点からも、やはり旅の効用は計り知れない。

自由に旅ができる世界が早く戻ってきてほしい。
そんなことを改めて思った1冊でした。


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