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ゼロから始める伊賀の米づくり〜新米兼業農家の記録〜

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2020年1月、三重県伊賀市の父の実家の田を継ぐことになった男の米作り1年目からの記録です。京都⇄伊賀の二拠点生活を送っている筆者が、家族の思い、地域の信頼に応えるべく、自然のま…
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#家業を継ぐ話

ゼロから始める伊賀の米づくり番外編:3年目。米づくりから、森づくりへ

最近、森づくりに心惹かれています。 どうして、兼業米農家が森づくりなのでしょうか。 私が稲を育てる田んぼの近くの神社は、鎮守の森に守られています。鎮守の森には、その地の本来の植生を尊重した森、太古の森の姿が保存されていると言います。それら高く伸びる木、中くらいの木、根元に繁茂する草木という自然の階層、多様性が、長い長い時間と共に循環する森づくりです。 そのような森づくりを行っていきたいと、最近、考えるようになりました。 先日、父の三回忌を終えましたが、その前後で家の仏

ゼロから始める伊賀の米づくり27:冬。農閑期のお手入れ

風が冷たく、強く吹き荒ぶ冬。 9月の初めに収穫を終え、気温も下がり、草木の色合いも黄色や茶色く染まる頃。 農閑期である冬にも、兼業米農家としてはやることがあります。主に、手入れです。 田んぼの手入れ、機械の手入れ、作業場の手入れです。 動作確認のために田植え機のバッテリーを充電している間、屋久島の旅で発想を得たあるものを準備します。 こちら、背負子に籠を設置したものです。 屋久島ではこれに薪用の流木拾いに行きましたが、今回はこれで田んぼに石拾いに行くことにしました。

ゼロから始める伊賀の米づくり26:秋起こしBefore & After

前回の家の片付けの際、作業を手伝ってくれていた祖父と父の共通の仕事仲間・ピンさんがまた不意の一言。 『もう、一度(田んぼ)耕してやってもええん違うか?畦の草刈りだけして、粗〜く鋤いてやったらええ』 それを聞きつけた母も、 『いつ、耕す?』 と食い気味に詰め寄ってきたので、翌日に急に秋起こしを行うことになりました。 秋起こしは、その名の通り収穫後の秋の時期に一度田んぼを耕すことを言います。 稲刈り後の刈った後の株から伸びてきている蘖や、稲藁を鋤き込み、土に還していく

ゼロから始める伊賀の米づくり25:屋根裏から出てきた骨董品『(仮)米選機・万石通し』

前回のコンバインのメンテナンスからしばらくし、落ち着いた頃。 実家の片付けを再開することにしました。 元々、この実家の米づくりを継ぐことになったのも、昨年父が亡くなったことがきっかけです。 9年前に祖父、昨年に父を亡くすことになり、とにかく日々、やるべきことを進めてきましたが、ようやく落ち着けそうなタイミングがやってきました。 いざ、この祖父の工房も片付けていくことにします。 祖父は大工であり、木材の仕入れ等も行っていたようですが、その名残で多くの木材も残っています

ゼロから始める伊賀の米づくり24:真心込めて、手入れをする

農家の朝は早いとはよく言ったもので、自分も収穫期に合わせて早起きして作業することを続けていると、自然と早寝早起きの習慣が身につきました。 せっかく早起きが続くようになったので、最近は朝起きるとまずは散歩することにしています。 家の田んぼを見守るように佇む神社まで歩いて行き、 その後、田んぼの変化を一通り見て回ってみます。 稲の収穫後、田んぼに残っていた切り株からは新たに新しい芽が育とうとして、黄緑色に染まりつつあります。 空を見上げてみると、うろこ雲。すっかり、秋ら

ゼロから始める伊賀の米づくり23:稲刈りから籾摺り、袋詰めへ

さて、先日、田んぼで稲刈りを行った続きです。 稲は刈っただけでは私たちが普段食べているお米にはなりません。この作業場にある機械たちに手伝ってもらいます。 まず、コンバインで収穫された籾🌾は、上の画像右手の乾燥機の中に入れられます。 収穫したばかりの籾(米)は、水分量を多く含んでいます(約20〜30%程度)。 この水分量を14〜15%になるまで乾燥させていきます。乾燥させることで劣化したり味が落ちたり、また、発芽することなく保存もききやすくなります。 乾燥を終えると、

ゼロから始める伊賀の米づくり22:父から継いで2年目の収穫

見渡す限りの田園風景の景色。三重県伊賀市の実家の田んぼは、いよいよ収穫の時期となりました。 先述していたように、今年は8月に入って「災害級の豪雨」と報道された長く強い雨が続いていたため、例年に比べると収穫のタイミングが1週間弱遅れることとなりました。 それでも、こうして稲穂🌾をつけてくれているのを見ると、安心します。 (あぁ、よかった) 稲穂を確認してみると、すっかり色が黄緑色から変わってきているのがよくわかります。 あとは、圃場(ほじょう:田んぼのこと)の土の渇き

ゼロから始める伊賀の米づくり21:自然や、いのちの不確実性とどう折り合うか?

前回の記録からしばらく経ち、いよいよ収穫の時期が近づいてきました。 8月半ばのお盆休み。 毎年この時期になると、稲刈りのための準備も大詰めになってきます。 例年、5月連休に田植えを行い、8月末〜9月上旬に稲刈りを行うため、残すところ後2週間あまり。 このお盆休みのうちに、稲を刈る機械・コンバインの点検と整備、稲を乾燥させる乾燥機と精米機の点検と整備を行います。 昨年、初めて行ったときのおぼろげな記憶を辿りながら、また、分厚くわかりづらい説明書とにらめっこしながら、整備

ゼロから始める伊賀の米づくり19:田植えと、これからの協同体、発信する意味

天気予報によれば、今日をおいて他に無いという晴天の元、無事に田植えを始めることができました。 とはいえ、始まりもやや波乱含み。 田んぼの水を堰き止めている畦道がモグラによって穴を開けられており、隣の田んぼに染み出しているのです。 朝からせっせと土を穴に突っ込んで埋め、一仕事を終えてからようやくスタートしました。 今年で田植え機に乗るのは2年目ですが、身体は操作を覚えてくれていたようです。 始めはゆっくり最低速度で田んぼに入り、調子が出てきたら一気に加速します。 ただ

ゼロから始める実家の米づくり18:田植え前、最後の準備へ

例年5月連休に行う田植え。その田植えが迫ってくる4月末は準備が大詰めとなってきます。 まず、田んぼに水を引き込みます。地域の決めた日程に従い、順次近隣の人々は水取りを始めていきます。 この水取り。上流と下流の関係がある為、好きなタイミングで水を田んぼに入れて良いわけではありません。 昨年は、その件で近隣でちょっとしたトラブルもありました。 水路の保全、水の管理は一戸だけではままならないものです。だからこそ、地域ぐるみの役を設け、1ヶ月に一度程度の頻度で草刈り等の役が発

ゼロから始める伊賀の米づくり17:春起こし終了〜代掻きへ

前回、トラクターのボンネットから白い煙を吹き出すという思わぬ形で中断してしまった春起こし。 どうにか、トラクターの部品交換により再開できることとなりました。 春起こしがどうして重要になるかと言えば、この時期は冬が終わり、温かくなってくることで雑草が多くなることが挙げられます。 極力、田んぼに生えてくる雑草は除去し、稲のための栄養が雑草にとられてしまわないように気をつけることが、慣行農法では求められます。 これら雑草もトラクターによって土中に鋤き込むことにより、栄養分と

ゼロから始める伊賀の米づくり16:田植え機のメンテナンスとトラクターの故障!?

3月。この時期になると、いよいよ田植えも近づいてきます。 田植えは例年、5月連休中に行います。それまでしばらく時間はありますが、いざ当日になって「田植え機が動かない!」では話になりません。 今回も、一度バッテリーを充電して燃料を入れ、エンジンを動かしてみることにしました。 バッテリー充電にはしばらく時間がかかるので、その間にこの時期のやること。春起こしを行います。 今回もトラクターに乗り込み、いざ耕します! 秋起こしの時から何度も何度も田んぼ(圃場)を耕していますが

ゼロから始める伊賀の米づくり15:機械化以前の米作り

前回、春が来る前の圃場の石拾いについての書いたのですが、その途中で祖父の作業場の整理も行っていました。 元々、大工であり木材の卸しも営んでいたらしい祖父の作業場は、祖父が亡くなって8年ほどですが手付かずのまま放置されていました。 祖父の他界から8年後。今度は父が他界し、それを機に実家の米づくりを継いで行ってきたわけですが、米づくりの作業と並行して、祖父の作業場の整理も行ってきていたのでした。 大工であり、木材の卸しも営んでいたらしい祖父の作業場は木材や工具で溢れていまし

ゼロから始める伊賀の米づくり14:春が来る前に石拾い

2021年、2月某日。今回は、田んぼの石拾いをすることにしました。 昨年の収穫が終わったあと、トラクターに乗って「秋起こし」をしたわけですが、 トラクターに乗って田んぼの中を走っていると、土の中にある石が顔をのぞかせている様子がよく見えます。 田んぼの中に石があるとどうなるか? トラクターに乗れば、耕している際にその爪が傷つきやすくなり、 田植えをするために田植え機に乗れば、苗が石に引っ掛かり、根を張りにくくなります。 基本的に良いことがありません。 そのため、