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ゼロから始める伊賀の米づくり〜新米兼業農家の記録〜

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2020年1月、三重県伊賀市の父の実家の田を継ぐことになった男の米作り1年目からの記録です。京都⇄伊賀の二拠点生活を送っている筆者が、家族の思い、地域の信頼に応えるべく、自然のま…
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#お米作り

ゼロから始める伊賀の米づくり48:豊作の予感!?出穂を確認!

私は現在、大阪府と三重県で二拠点生活を営みつつ、実家の田んぼで米づくりをしている兼業農家として暮らしています。 3年前、父の他界をきっかけに家業として継続していた実家の米作りを継ぐこととなり、文字通りゼロから米づくりについて学び、実践することとなりました。 幼い頃から家の手伝いをしていた……ということはあったものの、なんとなく流れがわかる程度で、詳細は作業工程は把握しておらず、父が亡き後は父の友人や仕事仲間の皆さんに教えてもらう形で、さながらスパルタOJTで身につけること

ゼロから始める伊賀の米づくり47:中干しと、予期せず発生した伊賀の農家見学ツアー

中干ししている田んぼをパトロールする父から継いで4年目の田植えを5月に無事に終え、先日は中干し前の溝切りを行うことができました。 水を張ったままの田んぼの地中は酸素不足になり、化学反応によってメタンなどのガスが発生します。 これらのガスは稲の生育に影響するため、一度田んぼの水を抜いて土がひび割れるまで渇かし、根の生育を助ける『中干し』を田植え後1か月を過ぎたあたりから行いますが、その準備に、水を抜けやすくするのが『溝切り』です。 伊賀の我が家の畑では、昨年植えていて自然

ゼロから始める伊賀の米づくり43:田植え直前!田んぼに水を引くまでのプロセス

父の跡を継いで4年目の春。 前回は、春の田起こしを行って土を徐々に柔らかくしてきていましたが、今回はいよいよ田植え直前ということで、田んぼに水を引くまでのプロセスをまとめていきたいと思います。 まず、この地域では田んぼに水を引くまでに草刈りを行なっています。 春になり、気温が上がってくると雑草も繁り始め、田んぼの中も以下のように緑っぽくなってきます。 手入れの行き届いていない田んぼは不精の証…… おおよそそのような反応が地域の人々から返ってくるため、まずは畦道に繁茂し

ゼロから始める伊賀の米づくり37:祝!豊作出荷準備へ

今年の米の収穫量は、 30kg×93袋=2790kgでした〜! 合計6反弱(約6000㎡)の田んぼで2790kg、1反あたり465kgといったところでしょうか。 2020年、81袋(2430kg) 2021年、91袋(2730kg) 2022年、93袋(2790kg) と、初めて取り組んだ2020年から少しずつ増収しています。 今年に関しては台風も心配でしたが、無事に終えることができました。 毎年の増収…工夫していることは?何がこの増収を実現しているのかは、要

ゼロから始める伊賀の米づくり35:台風が迫る中、3年目の収穫🌾

2022年9月。今年の稲刈りは、家族3人で取り組むこととなりました。 父から継いだ田んぼでの稲刈りも、これで3回目。 少しは慣れてきたような気がしますが、毎年新たな課題やチャレンジに取り組むことになり、結果として毎年新人のような気持ちで臨んでいます。 今年の稲刈りの、当初の懸念点今年の収穫は、一筋縄ではいかない難しい条件がいくつも重なりました。 まずは、お隣の田んぼから(おそらく)除草剤が飛んできて、我が家の田んぼの一角を枯らしてしまったこと。(詳細と経緯は以下に) こ

ゼロから始める伊賀の米づくり33:溝切りの季節

前回の記録では、6月半ばに差し掛かった田んぼの様子をお伝えしました。 今回の記録では、梅雨時期に行うことになる「中干し」前の「溝切り」についてまとめたいと思います。 「中干し」は、一度、田んぼの水を抜くことで土と稲の手入れを行うことです。 水に浸された圃場は、酸素不足になり、メタン等の温室効果ガスを発生させてしまいます。 また、そのような温室効果ガスを生み出すだけではなく、様々なガスが稲の根にダメージを与えることもあります。 その際、水を一度抜き、田んぼの土にひび割

ゼロから始める伊賀の米づくり27:冬。農閑期のお手入れ

風が冷たく、強く吹き荒ぶ冬。 9月の初めに収穫を終え、気温も下がり、草木の色合いも黄色や茶色く染まる頃。 農閑期である冬にも、兼業米農家としてはやることがあります。主に、手入れです。 田んぼの手入れ、機械の手入れ、作業場の手入れです。 動作確認のために田植え機のバッテリーを充電している間、屋久島の旅で発想を得たあるものを準備します。 こちら、背負子に籠を設置したものです。 屋久島ではこれに薪用の流木拾いに行きましたが、今回はこれで田んぼに石拾いに行くことにしました。

ゼロから始める伊賀の米づくり14:春が来る前に石拾い

2021年、2月某日。今回は、田んぼの石拾いをすることにしました。 昨年の収穫が終わったあと、トラクターに乗って「秋起こし」をしたわけですが、 トラクターに乗って田んぼの中を走っていると、土の中にある石が顔をのぞかせている様子がよく見えます。 田んぼの中に石があるとどうなるか? トラクターに乗れば、耕している際にその爪が傷つきやすくなり、 田植えをするために田植え機に乗れば、苗が石に引っ掛かり、根を張りにくくなります。 基本的に良いことがありません。 そのため、

ゼロから始める伊賀の米づくり13:冬、祖父を思う

冬は、基本的にいわゆる農閑期ですが、農業は日々の環境整備が重要な営みです。また、その日々の環境整備は、利益追求的・株式会社的な観点からは不払い労働とも呼べる側面もあります。(詳しくは以下もご覧ください) ただ、自分にとっては生まれ育った土地であり、この先の集落の未来を思うと、大事にメンテナンスしていきたい場所でもあります。 おそらくその視点には、自分でも気づかないうちに、単なる金銭的利益追求とは別の価値が置かれているのでしょう。 ともあれ、冬はこの環境整備に取り組むこと

ゼロから始める伊賀の米づくり12:秋起こし

初めての収穫が終わった『ゼロから始める実家の米づくり』。 いわゆる農閑期となった秋冬も作業は続きます。 直近の稲刈りで活躍したコンバイン(稲刈り用の重機)の点検を行った後は、『秋起こし』です。 『秋起こし』は、稲刈りの時に残った稲藁をトラクターで鋤き込み、土に還していくと言うものです。 実は稲刈りの際に、コンバインを運転した時、稲を割と地上から離して収穫を行いました。地面が先頃の雨でぬかるんでおり、土ごと収穫して機械が故障してしまうリスクがあったからです。 そうする

ゼロから始める伊賀の米づくり11:稲刈り編:計2.5t収穫、精米〜出荷

米の収穫を終えた翌日。籾摺りが始まる。 家のすべての田から取れる稲穂は、一旦乾燥機に入れ、乾燥させる。そして、籾を精米し、袋詰めし、そして農協(JA)へと出荷する。例年、苗の注文時にどれだけの出荷をするかを提出する。年によって、天候の都合で不作になる時、豊作になる時、様々だ。 収穫したその日の内に、籾を乾燥機に入れ、翌日の朝から始める。そういった算段で進んでいく。 収穫の日の早朝6時半、父の友人Sさんの家に母は6時半から出かけて行った。今年は、私の家とSさんの家の、2つ

ゼロから始める伊賀の米づくり10:稲刈り編:初コンバインで収穫

とうとう稲刈り当日である。前日のひどい豪雨から、無事に晴れ間が見えて来た。 当日は、朝6時半くらいに目覚めた。心身ともに前日までで極限まで疲れすぎたこと、昨晩もまた母の準備する大量の食事で胃もたれ(若者はたくさん食べるものだ、と言う考えは未だ健在である)。とても、寝れたものではない。勝手に目が覚めてしまい、その後眠れないというだけだ。 天気はよく、少しずつ体と心を初のコンバイン運転とその後のプロセスに向けてチューニングを行っていく。臨戦態勢に心身ともに切り替えていくのだ。

ゼロから始める実家の米づくり9:稲刈り編:台風の影響で翌日に延期

前日の夕焼けに期待しながら目覚めた朝7時、「今日こそ稲刈りができる!これでようやく終われる!」と言う期待は脆くも崩れ去りました。 台風9号の影響により、局地的な大雨に見舞われたため、その日の稲刈りそのものはなくなってしまったのでした。 それでも、準備のできる限り、やるべきことは進めておかなければなりません。 長靴、手袋、洗面タオル、長袖の丈夫めの服を着込み、いざ出陣。 とりあえず、雨が弱く治ったタイミングで、精米時に出るもみクズが飛ばないように、作業場の外にシートを張

ゼロから始める伊賀の米づくり8:稲刈り編:準備を終える

大きな勢力を誇る台風が2つ、立て続けに訪れた今年。例年、8月末から9月初めにかけて行われる実家での稲刈りだが、その直撃の合間を縫って行うという肝を冷やすような実施となってしまった。 「昔、伊勢湾台風に襲われた時、台風に収穫前の稲穂が倒されたことがあった。そんなことが今後ないようにと、収穫の時期を台風がよくやってくる秋ではなく、夏の終わり頃になるよう調整してきたんや」 父の友人であり、仕事上の同僚であったHさんは言う。 それにも関わらず、こうして今年は台風に見舞われるとは