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小学生ラグビーの上達メソッド【タックル編】 ~状況に応じたタックルの種類と入り方、練習方法、参考動画~
はじめに
「うちの子はタックルが上手くできません。どうしたら上手くなるんでしょうか?」
「あの子足は速いんだけど、、、タックルはダメなんだよねぇ」
「タックルができないからAメンバーから外されてしまいました」
ラグビースクールのコーチをしていると、このような声が頻繁に聞こえてきます。
小学生ラグビーのルールでは、2年生(U-8)まではタグラグビーの競技規則が適用されます。腰の両サイドにタグを付けて、それを取ったり取られないように走ったりしてトライを取る鬼ごっこのようなルールです。
ですので、小学2年生までは基本的に足の速い子が活躍します。
身体が小さくて俊敏でちょこまかと動くのが得意な子がトライを量産し、ディフェンスでもタグをたくさん取ってくれます。
しかし3年生からはルールが変わり、タックルありのミニラグビーになります。3~4年生(中学年)は7人制、5~6年生(高学年)は9人制で、高学年になるほどコンタクトプレーが激しさを増してきます。
全国大会の決勝などを見ていますと、小学生とは思えないタックルが炸裂したりもします。
ラグビーという競技においては、タックルができない子が出場メンバーに一人でもいると、チームは劇的に弱体化してしまいます。
ラグビーのディフェンスは面(横一列)でカバーするのですが、そこに穴が空いている状態になるからです。
その穴に走り込まれた際、他のディフェンダーがカバーすることもできなくはないですが、次フェーズ以降に数的不利が生まれ、相手チームにゲインを与えることになります。
穴が2か所、3か所となってくると、強いチームと戦った際に10トライ以上の差を付けられてしまうこともあるくらいです。
大袈裟ではなく実際何度も見てきました。
ですので、スクールのコーチ陣も勝ちにこだわる試合においては、タックルが上手い子を優先してメンバーを組むことが多いでしょう。
タックルに入れない子は外されます。
(きちんとしたフォームで入れない場合は、勝ち負け以前に危険性を鑑みて外されます)
もちろんスクールの指導方針や生徒数の問題もあるので一概には言えませんが、勝ちに行くメンバー選びという点ではタックルの上手い子が優先されることは間違いないです。
相手チームのトライをゼロに抑えれば、最悪でも同点ですからね。
そしてタックルが出来る子は、コーチだけでなく選手たちからも信頼を集めます。
つまり、2年生以前と3年生以降でラグビーの上手さを測る基準が大きく変わるという訳です。
もちろん足の速さは大きな武器であることに変わりはないのですが、同時にタックルもしっかり練習する必要が出てきます。
記事の目的
![](https://assets.st-note.com/img/1716166039842-14XUZpwkle.png?width=800)
この記事では小学生のラガーマン、ラガーウーマンに向けて、タックルが上手くなるためのコツと練習方法を紹介します。
基本的には小学3年生~6年生を対象としています。
また、中学や高校からラグビーを始めた方にもおすすめします。
現代的なタックル理論の基礎をインプットしておくと、練習時の理解度が高まり、吸収スピードが早くなることが期待されます。
「タックルが怖い」
という子も、安心してください。
タックルは誰でも怖いんです。
大人でも怖いです。
プロの選手でさえ怖いという人もいます。
ただその怖さが大きいか小さいかです。
タックルは、
理論をベースに、
技術を身につけ、
自信が持てれば、
怖さが少なくなります。
小学生でタックルが上手い子は、吹き飛ばされない入り方、痛くない入り方が分かっています。
相手の止め方、倒し方がイメージできるので、怖さが小さくなる訳です。
「タックル怖い」という子は、そのイメージができていないことが大きな原因である事が多いです。
時々、その恐怖心を押し殺しながらただがむしゃらに足元に飛び込むようなタックルをするプレイヤーを見ます。
たまにはそれが成功して良いプレーとみなされることもあるでしょう。
しかし、基本姿勢や技術が伴っていなければ逆ヘッドなどが生じて非常に危険ですし、推奨されません。
何度も言いますが、ベースは理論と技術です。
この記事では、タックルが苦手な子供たちにどうしたら上手く教えられるのかを理論と技術をベースにまとめています。
これまでの知識や経験、現代に共有されているノウハウを網羅的かつ詳細にこの記事に収めようとしたので、約18,000文字になりました。笑
ボリュームたっぷりではありますが、タックルを全て解説すると本1冊が書けてしまいます。そのエッセンスを小学生向けに1記事に凝縮しました。
(この記事は保存版として参考動画や練習方法を随時追記しようと思っていますので、値上げしていく可能性もあります。)
まず記事の前半ではタックルの種類ごとにプロセスを分解して解説しています。
タックルには複数の入り方があり、状況に応じて使い分ける必要があるということを理解頂ければと思います。
後半では体格やスピードのギャップを埋めるための対策、ステップやハンドオフへの対策についても解説しています。
試合でよくあるシチュエーションについて、小学生向けに詳しくまとめていますので参考にしてください。
スマザータックルや足首タックルに対する考え方も述べています。
目次
自己紹介
遅れましたが、私の簡単なプロフィールを紹介させてください。
私は大阪府内のラグビースクールで小学生高学年のコーチをしています。
私自身もラグビー経験者で、息子2人もラグビースクールに通っています。
最近はJSPORTSで毎日ラグビー観戦と分析をしています。
仕事としては、大学卒業後は外資系コンサルファームに入社し、その数年後にデジタルマーケティングの会社を起業し、現在に至っています。
(ラグビースクールのコーチは本業ではなくボランティアです)
私は現役時代、タックルが苦手でした。
足は速かったのでウィング・フルバックとしてトライを取るという仕事は問題なかったものの、常に周りからタックルが課題だと言われてきました。
しかし20年以上前の当時は、タックルは「気合」でいくものだという風潮があり、技術的な指導方法は現在ほど確立されていませんでした。
言い訳といってしまえばそれまでですが、もし現代の理論的なタックル方法論が当時知ることが出来ていたら、、、という思いが無いと言えば嘘になります。
息子やスクールの子供達には同じ轍を踏んでほしくないという気持ちもあって、スクールでは理論をベースにタックルをコーチングしています。
試合の動画を見ながらスタッツを取り、何度も動画を見返して一人ひとりのクセや課題を抽出し、個別に教えるスタイルを取っています。
もちろん最終的には体が覚えるように何度も繰り返しタックルをするという練習メニューも大事ではあるのですが、私はどちらかというと理論や座学、スローモーションでの練習を頻繁に取り込みます。
このアプローチで実際に子供たちに教えていると、みるみる内にタックルが出来る子が増えてきました。
3年生ではなかなか出来なかった子が、4年生では一番のタックラーになりました。
しかも女の子です。
個人的な感覚ですが、脳みその理解さえ追い付けば、子どものタックルは進化します。低学年では発育の個人差が大きいですが、高学年になればなるほど理解力が増してきます。
理論を理解し、技術として習得すれば、タックルは苦手から得意に変わります。
タックルが上達することの利点
ラグビーにおいてタックルが上手くなれば、良い事しかありません。
トライを取った時はもちろんですが、良いタックルが炸裂した時も同じくらい試合会場が湧きます。
中でも味方に有利な状況を生み出すビッグタックルが炸裂した際には、
・ディフェンスでゲインを取れる
・相手のミスが生まれる
・ターンオーバーでマイボールを獲得できる
・相手チームにメンタル面で優位に立てる
・味方チームを鼓舞できる
・観客が盛り上がる
・自分に自信がつく
などなど、そのワンプレーをきっかけに試合がひっくり返ることもあるくらいです。
メンバー全員が果敢なタックルが出来るようになると、相手チームからトライを取られる気配が感じられなくなります。
むしろディフェンスしているのにどんどん前進して、敵陣ゴール前まで食い込んでいけます。
小学生ラグビーのアタックはそれほど複雑なサインプレーはありませんので、「目の前の相手をゲインライン前で止める」ことさえできればほとんどトライは取られないのです。
また、上記に述べた最後の「自分に自信がつく」という点は、小学生ラガーマンにとっては大きな一歩となるでしょう。
怖くてできなかったことが、自信をもってできるようになる。
そんな経験は長い人生でそれほど多くありません。
その試合だけでなく、その子の人生においても大きな転換点になり得ます。
タックルが怖いと言っている子供のコーチ、親御さんにこそ、この記事を読んでいただきたいと思います。
基礎編:基本タックル
では早速本題に入っていきましょう。
まず一般的なタックルの種類ですが、小学生の場合は主に以下の4種類に分けて考えると分かりやすくなります。
フロントタックル(正面から)
サイドタックル(横から)
リアタックル(後ろから)
セカンドタックル(ダブルタックル)
プロであればもう少し厳密に分けられますが、小学生ラグビーという点ではこれくらいに分けて考えておけば十分です。
あまりたくさん教えても、一つ一つのディテールが疎かになり身に付きません。
スマザータックルやタップタックルなども一応上記の解説の中で触れていますが、グループとしては分かりやすく4種類に分けています。
タックル練習でフロントタックルばかりを練習していませんか?
フロントタックルとサイドタックル&リアタックルの入り方は全然違います。小学生ラグビーの試合でタックルミスがよく起こるのはサイドタックルやリアタックルです。
サイドタックルやリアタックルの入り方もしっかり押さえておきましょう。
フロントタックル
![](https://assets.st-note.com/img/1716165510743-M1ydKu3JaU.png?width=800)
正面から敵が向かってきて、それを止めるために入るタックルです。
ラグビーにおいて最も基本的なプレーとなるタックルです。
基本と言いつつも、実はフロントタックルに入れる角度は結構狭いです。
![](https://assets.st-note.com/img/1716167393357-g4RKH1V2z3.png)
ご覧の通り、フロントタックルに入れるのは前方60度前後です。
(厳密には相手の走る角度によって変わります。)
それより外はサイドタックルになってきます。なので後述するサイドタックルやリアタックルも合わせて練習する必要があります。
まずこのフロントタックルについてプロセスを分解してみると、大きく5段階に分けられます。
①セット~ノミネート
②トラッキング(アップ)
③パドリング
④コンタクト
⑤レッグドライブ
子供たちが列に並んでタックルダミーに走り込んで繰り返しタックルに入る練習方法を良く見ます。
もちろんそれも有効ではあるのですが、一連のタックル動作をまとめて行うので一つ一つのディテールに対して意識が疎かになりがちです。
タックルのプロセスを分解して、それぞれの所作を丁寧に意識しながら行う練習方法も取り入れることをおすすめします。
では、1プロセスずつ見て行きましょう。
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