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「プーチンは“ウクライナ戦争”で何を目論んでいるのか」歴史学者ニーアル・ファーガソンが読み解く

https://courrier.jp/columns/279044/ 

ウクライナ侵攻の背景

プーチンは2021年7月「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」においてウクライナが独立している現状は、歴史的に見ても持続不可能な異常事態と主張している。1938年のナチス・ドイツによるオーストリア併合のような形でウクライナ併合を考えていることは一目瞭然。

ロシアの要求


6つの要求

1. NATOはウクライナなどを新規に加盟させることを止める。

>NATOは2008年、ウクライナとジョージアに対し、将来的に加盟できることを約束した。その約束の撤回は非常に考えにくい。

2. アメリカとNATOはロシアの領土が射程圏内に入る位置に中短距離ミサイルを配備しない。

>短中距離ミサイルの配備禁止は、アメリカが2019年にロシア側の違反を指摘して失効させた中距離核戦力全廃条約の復活とほぼ同じと言える。

3. アメリカは自国の外に核兵器を配備しない。

>NATOの根本原理は、加盟国内での核兵器の共有だ。アメリカに対し核兵器を国外に配備するなというロシアの要求は、その根本原理をひっくり返すことを求めるような無茶な話だ。

4. NATOは、1997年5月にロシアと結んだいわゆる「基本文書」以降の加盟国に部隊や兵器を展開してはならない。これにはポーランドを始めとした旧ワルシャワ条約機構のすべての国のほかに旧ソ連のバルト三国も含む。

5. NATOは旅団規模(3000~5000人)を超えた軍事演習も、合意された緩衝地帯での軍事演習もしてはならない。

6. アメリカは旧ソ連諸国とは軍事的に協力しないことに同意しなければならない。

ロシアは「新しいヤルタ協定」を世界に求めている。これは、東欧の旧ソ連諸国全体をロシアの勢力圏に組み込み、旧ワルシャワ条約機構の国々の安全保障も弱めるものとなる。

ウクライナ侵攻の方法

全面的な地上侵攻、黒海沿岸部に水陸両用作戦、主要な標的に精緻な空爆やミサイル攻撃、民兵に兵器を渡し民兵組織が持つ領土を拡大、大規模なサイバー攻撃を仕掛けて、ウクライナの通信やインフラを麻痺。

EUがウクライナ加入を渋ってきた理由

EUは、ウクライナを加盟させると、EU圏内に反自由主義の専制国家同然の国がもうひとつ増えてしまい、ハンガリーやポーランドといった、ポピュリズム勢力が強い国々が結集して、(社会問題に対して意識が高い)ウォーキズムに入れ込む欧州委員会に歯向かってくるのではないかという心配。

アメリカが経済制裁、軍事介入できない理由


アメリカはロシアの石油企業「ロスネフチ」をアメリカ財務省の特定指定国籍業者のブラックリストに入れられるが、そんなことをすれば、バイデン政権の悩みの種となっているインフレ問題を悪化させるだけだ。


 ロシアが経済制裁に耐えられる理由

ロシアは経済制裁に対して、メディアではノルドストリーム2への制裁の可能性が盛んに報じられているが、これは比較的ささいな問題であり、ロシアの天然ガス収入にさほど大きな影響を及ぼすことはない。また、ロシア政府の外貨準備高は6200億ドル(72兆円弱)あり、公的債務残高も対GDP比でたったの18%、今後2年は財政黒字になる計画なので、セカンダリー市場でソブリン債が制裁の対象になっても持ちこたえられそうな状況だ


西側諸国の戦略の弱点


EUがロシアの天然ガスに依存していることだ。2020年にEUが輸入した天然ガスのうち、ロシア産が全体の43%を占めている。


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