おとめマリアとアテナ、イシス~中村圭志著『宗教図像学入門』を読みながら
聖母マリアは、「おとめマリア」すなわち「処女マリア」ということになっているが、宗教学者の中村圭志氏の『宗教図像学入門』(中公新書、2021年)によれば、英雄的・神的人物が処女から生まれるというのは、ユダヤ系の神話ではなく、ギリシア・ヘレニズム系の神話なのだという。旧約聖書のイザヤ書にみえる「見よ、おとめが身ごもって男の子を産み…」の「おとめ」は、ヘブライ語で「アルマー」といい、この言葉は結婚適齢期の少女の意であり、「処女」という意味ではないらしい。しかし、当時使われていたギ