第三回コラボ祭り アストロノーツ・アナザーアース 二次創作


 この作品は、富園ハルクさん主催のコラボ祭り第3弾「アストロノーツ・アナザーアース」の二次創作作品です。

 使用させていただいた元作品は、加藤ヒロコ@鋭画計画さんクラゲ男爵さんによる、『episode:countdown』および『episode:countdown trailer』です。

※注意とお願い※
・二次創作です。上記作品を知っていることが前提となりますので、知らない方は、まず上記の作品をお読みください。
・元作品への敬意をこめて書いていますが、元作品と、その登場キャラクターであるリヴァイヴァル、メトシェラ、ジッキンゲンに強い思い入れのある方、イメージを損ないたくない方には、全力で回避をお勧めします。

 ご理解いただいたうえで、どうぞ。

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アストロノーツ・”アナザー”・アナザーアース 『episode: slip-down』



 ノーツタワー跡地にある、誰もその存在を知らない地下室。アストロ世界の終末へのカウントダウンを刻み続ける巨大なモニターと、半壊したコンソールだけが存在するその薄暗い空間で、金髪の少年、メトシェラと、赤いジャケットの青年、リヴァイヴァルが対峙していた。


「この世界の終わりに再び君と戦うことになるとはね。これはもう運命としか言いようがないね」
「悪いが、お前が俺につきまとっているようにしか思えないな」
 芝居がかったリヴァイヴァルの言葉に対し、答えるメトシェラの声は冷たい。彼はリヴァイヴァルをまっすぐ見つめたまま、呼吸を整え、力を解放する。その右手が、まばゆい光を放ち始めた。
「ははは、僕は君を愛しているからね」
「気色悪いことを言ってるんじゃねぇ」
 その言葉と同時にメトシェラが動いた。一瞬で間合いを詰め、リヴァイヴァルに迫る。
「結構本気なんだけどな」
「悪いが男に興味は……ない」
 うっすらと笑みを浮かべて告げるリヴァイヴァルに、メトシェラは嫌悪感を露わにして挑む。
 何度も蹴りを放つメトシェラだったが、リヴァイヴァルには届かない。結局、その戦いは、メトシェラが床に叩きつけられて終わった。リヴァイヴァルに背中を踏みつけられて、身動きが取れなくなる。
 振り仰いだ視線の先には、ショットガンの銃口があった。しかし、避けようにも身体は動かず、右手も使えない。
「まずはこの義足を破壊しよう。そうしよう」
 リヴァイヴァルが楽しげに言う。以前、メトシェラは、このショットガンによって生身の右足を奪われた。あの時の衝撃も、痛みも、まだ鮮明に覚えている。
 リヴァイヴァルがショットガンをリロードし、構える。引き鉄にかかった指に力がこもる。そして----------



 ♪ちゃらららら ちゃらら ちゃららちゃっちゃ 
  ちゃ ちゃらら ちゃらららら♪



 どこからか、この場にはまったく似合わない、軽快な電子音が流れ出した。
 リヴァイヴァルが片手で胸ポケットを探り、携帯電話を取り出す。音はそこから聞こえていた。
「マナーモードにするのを忘れていたよ」
 つぶやきながら画面を確認し、またポケットに戻す。そして、構えたショットガンを降ろすと、無造作にメトシェラの背中から足をどけた。
「時間だ」
「……はぁ?」
 あまりにも意外な展開に、メトシェラは思わず間抜けな声を出してしまう。しかし、リヴァイヴァルはそれには構わず、コンソールに向かって歩き出した。しばらく呆然とその背中を見送ったメトシェラだったが、はっと気付いて起きあがろうとする。だが、いつの間にか身体に巻き付いていた鎖によって、その動きは封じられていた。鎖の先は、リヴァイヴァルがいつも手にしている懐中時計につながっている。
「……その時計は見なくていいのかよ、いつもみたいに」
 その問いに、振り返ることなくリヴァイヴァルが答える。
「この時計は終末専用なんでね。普通の時間はわからない」
 おいおい。
「じゃあ、あの『時間だ』ってのはなんなんだよ!」
「人の決めポーズにケチを付けるなんて、君は相変わらず無粋だね」
 そんなことを言いながら、リヴァイヴァルはコンソールに手を伸ばす。すると、モニターに映し出されていたカウントダウンが停止した。
「なっ……!?」
「これでよし。とはいえ、年明けの瞬間こそ、最高のタイミングだったんだけどな、参加人数的に」
 そう言うと、リヴァイヴァルはなにやら考え込んだ。
「よし、今回は見送りにして、次の大晦日に改めて決行することにしよう。そうしよう」
 世界の終末、1年延期のお知らせ。同時に、カウントダウンが365日分巻き戻る。それを見届けて、リヴァイヴァルが出口に向かう。
「いったいなんだよ、この世界の終末より大事な用事ってのは……」
「今日は神回の再放送があるんでね。見逃すわけにはいかないんだ」
 理解不能なその答えに、メトシェラの思考は真っ白になった。
「神回?再放送?なんだそれ……テレビ番組なら録画しておけよ」
 リヴァイヴァルが足を止めた。
「……これだからニワカは」
 ゆっくりと振り向いたその目は真剣そのものだった。怖いくらいに。
「真のファンなら、再放送であろうとなかろうと、放映時にはテレビの前に全裸で正座して視聴しろ。やはり君は甘い、甘すぎる」
 いつもの芝居がかった口調はどこへやら、熱っぽく早口でまくし立てる。メトシェラが口をはさむ隙もない。そうしてひとしきり熱弁をふるうと、リヴァイヴァルはやれやれ、と首を振った。
「余計な時間を使ってしまったな。これ以上邪魔しないでおくれ。それではね、メトシェラ」
『お前がひとりでくっちゃべってたんだろうが』
 すかさずメトシェラがつっこむ。ただし、心の中で。口に出して言ったらどうなるか、さすがに察しが付く。
 リヴァイヴァルは、今度こそ振り向かずに出て行った。その姿が暗がりに消えると同時に、メトシェラを戒めていた鎖が解け、主を追って消えていった。


 ひとりその場に残されたメトシェラは身を起こしたが、後を追う気力は残っていなかった。
「なんなんだあいつ……意味不明すぎる。ファンってそういうものなのか?」
 ぽつりとこぼれたつぶやきに、答える声があった。
「いや、ああいうのは信者と呼ぶ。無理に理解する必要はない」
 物陰から、むき出しの機械の身体をした長身の男が現れる。
「大丈夫か、メトシェラ」
「……お前、バロンか。消滅したんじゃ……」
 その男、ジッキンゲンが、メトシェラの傍に腰を下ろす。
「もちろん死んだと思ったよ……でも、君の能力のおかげで、アバターだけですんだ。こうしてまた戻ってきたんだよ」
 死んだと思っていた相棒との再会に、メトシェラの涙腺が緩みかける。
「いや、本当に死ぬような思いをしたけど、廃人にならなくてラッキーだったよ……メトシェラの泣き顔も見れたしね。美少年の涙萌え~」
 メトシェラの目ににじみかけた涙が引っ込む。ジッキンゲンは脳天気に言葉を続けた。
「実は、再ログインしたら、ちょうど君たち二人が見つめ合っている場面にでくわしてね。お邪魔かと思って、ずっと隠れていたんだ」
「隠れて……た?」
「君たち二人、前から怪しいと思っていたんだよね~。特にリヴァイヴァル、君の『相棒』を毎回徹底的に排除するなんて、怪しいにもほどがある!まったく、僕に嫉妬する必要なんてないのにさ。僕は君たち二人を応援するよ、うん」
 何が楽しいのか、実に嬉しそうに笑うジッキンゲン。一方のメトシェラは、名状しがたい悪寒に襲われて、全身の毛が逆立っていた。死闘の最中におかしな妄想の対象にされていたらしいと知って、メトシェラの中で何かが切れる。
『……っ!死にかけて戻ってきたら、どいつもこいつも性格ぶっ壊れるのかよ!』
 声にならない叫びとともに、メトシェラは震える拳を握りしめた。


 打撃音が響く。



 ……今日もアストロ世界は平和だった。



おわり






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<あとがき>
というわけで、アストロノーツ・アナザーアースの作品群の中でも、屈指の名作のひとつをパロってしまったわけですが……自分で書いておきながら、正直、やっちまった感でガクブルしている状態です(笑)

そもそもの始まりは、『episode:countdown』と『episode:countdown trailer』の2作品を読んだ時でした。
面白い!色々な意味でスゴい作品だ!と圧倒されると同時に、まだ全く形になっていない何かを閃いてしまい、「書きたい!」と思ってしまいました……
その「何か」は、紆余曲折を経て、最終的にこの作品になっています。

このお話は、元作品を読んでいて感じた、「リヴァイヴァルの口癖、『時間だ』って、何の時間?」という疑問、「そもそも、その懐中時計、正常に動いていないでしょ?」というツッコミ、「『時間だ』って言いながらどこかへ行くけど、何をしてるの?」という疑問に対する、私がこじつけた答え(ただし、ギャグ方面に)です。
方向性を「おちょくり」に振り切ることは最初から決めていたので、かっこいいはずのキャラが色々と残念なことになってしまっていますが、これはもうなんというか、本当にゴメンナサイw
(でも、ある意味では、リヴァイヴァルにアストロ人生をエンジョイさせてあげられたかなあ…(・∀・;))

少しでも、ニヤリ、またはクスリ、としていただけたら嬉しいです。

このように魅力的な設定、世界観、キャラクター、そして場面そのものを使わせていただいた、加藤ヒロコさん、クラゲ男爵さん、富園ハルクさんには、深く深く感謝いたします。
『episode:countdown』と『episode:countdown trailer』の2作品がなかったら、このお話が生まれることもありませんでした。
ありがとうございました!
そして、最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。

佐伯悠河

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