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内申点☆アップ♪

文化祭なんて意味があるのだろうか・・・。

グループに分けられて、それぞれ何をするか決定するように、と先生は授業の終わりに告げた。
「次の時間からは文化祭準備の作業になります。三週間ありますので、進捗状況を考慮した催しがよいでしょう」
何の感情も含まない無機質な言葉。
彼女にとってはそれは仕事の一環に過ぎないからだ。
私達のグループはみな困惑して顔を見合わせた。
「どうする?」
「まぁ、ダルいけど、内申点上がるらしいし」
「やっぱり飲食かな?」
「私ら裁縫科じゃん。飲食は調理科優先だから、ムズいかも」
「じゃあ、やっぱり制作品でバザーが無難よね」
「うん、去年はトートバッグがすごく売れたって」
「それじゃ、逆に来てくれたお客さんはもうトート持ってる、ってことじゃん」
「なら、トートもある程度用意して、違う形のバッグを作るのは?」
「売れそうなバッグ、ってどんなのかな?お財布が入るサイズの小さいボストン、ってかわいくない?」
「それいいかも」
「機能性重視でポケットたくさんのバッグは?」
「そういうの好き!」
「じゃあ、思いついたものを各々制作して、展示販売ね」

話がまとまるとあとは行動あるのみ。
あっという間に三週間は過ぎた。
私達の班のバリエーション豊富なお手製バッグは実に評判が良く即日完売した。
大成功といっていいだろう。
私はほどよい疲労感と達成感、満足感に酔いしれて部屋へ戻った。
最近親しくなった同室の幸子がすでに戻っていて、足を伸ばして寛いでいた。
「幸ちゃんのとこは売上どうだった?」
「うん。うちは焼きそばだからね、なんとか完売したよ〜」
「よかったね。うちも完売したわ」
「でもさ、焼きそば単価200円だもん。シャバだったら500円は取れるのに。くたびれ儲けよ」
「でも内申点あがるじゃん」
「まーね。それだけが望みかな」
「私も内申点上がるかな?」
幸子は一瞬沈黙した。

幸子の番号は『B―1036』番。
私の番号は『SS―4201』番。
『B』は暴力沙汰のコード。
『SS』は特殊詐欺のコード。
内申点などはなから私には関係なかったのだ。


さあ、さあ。
今週もやってまいりましたシロクマ文芸部のお題。
「文化祭」から始まる創作です。
みなさまも挑戦してみては???

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