紫がたり 令和源氏物語 第八十五話 賢木(十四)
賢木(十四)
東宮殿に着くと、まずは中宮にご挨拶をとしばらくの無沙汰を詫びました。
「御前に伺候しておりましたので、遅くなりました。大変長らく伺いもせず失礼致しました。中宮さまにはお変わりなくお過ごしでいらっしゃいましたか?」
「おかげさまで恙なく。艶やかな紅葉の一枝も結構なものでございました」
宮は王命婦を取り次ぎとして返事を返されました。
「深山の冷気があれほどの色を染め上げるというのも、不思議なものです。あの一枝に御仏の慈悲が恵まれているのであれば、御身にもご加護が