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【お願い神様】チキチキ!ブックケース装丁作成備忘録

前置き

同人誌、ブックケース入りってなんだか特別な感じがしていいな……♡ とずっと憧れていたのですが、先人の知恵を拝借せずにカンでやると大変なことがわかったので、備忘録を置いておきます。本を作る装丁のオタク向けの記事です。

ちなみに今回の装丁は
カバー付きA5小説本3冊(184P、234P、268P)をブックケースに収めるぞ!
という話です。シリーズ3冊同時発行は今後二度とやらないと思ったので、特別な装丁にしたかった。

ちなみに、本体の本3冊はBRO'Sさん、ブックケースはプリントオンさんで印刷しています。

本の印刷所さんの好みは色々ですが、少部数の場合、ケースはプリントオンさんに頼む方が多くなるかな〜、と思います。サンプル数が多い装丁ではないので、少しでも制作の参考になれば。

ちなみに使ったブックケースはこちら↓の「スリップ縦」タイプです。
テンプレートは各ページの下部に用意があるので、必ずそちらを使用する必要があります。

出来上がったものがこちら!




ちょっとねぇ、ムチッ……♡ ムチッ……♡ って感じ! 出し入れは出来ます!
でも取り出すときは逆さまにするのが楽かも!!
マットPPにエンボスニス加工をしているので、ニス印刷部分だけツヤツヤしていて手触りが違います。裏面はフルカラー版は青一色にして、ニスで細かいあれこれを載せています。

ある程度スムーズに出し入れできますが、前提として中身の本は全部マットPP加工ありです。特殊紙に加工なしの表紙だと、ケースとの摩擦で使っているうちに毛羽立つ可能性があるので、相性を考えた方がいいかもしれない。

一応印刷所さんの計算上は
10.26+13.34+15.05=38.65ミリです。
ブックケースは40ミリの背幅で作りました。

計算上は完璧

※この計算機で得られる背幅はBRO'Sにて製本を行う場合の数値です。
 他の印刷会社様とは異なる場合があります。
※目安程度にしてください。印刷時期などでも若干変わることがあります。
※表紙に使う用紙や加工などの厚さは含んでいません。

SK(そういう・こと)!

今回はオンラインイベント合わせの発行でした。
全量BOOTHでの頒布かつ、ケースと本で印刷所さんが異なるため、私の方で全てセット組みしてからBOOTHの倉庫に発送しています。
アッセンブリしている最中、少々本、ケースともに個体差というものは感じました(特にページ数が増えるとブレるのかもしれません)。
カッチリ製本に定評のあるBRO'Sさんでもそうなので、これはもう仕方ない気がする。
ただ、背幅選択にそれ以前の問題があったので、注意点を置いておきます。+αで保管の時の話も!

①何はなくとも背幅を決めろ
②背幅は本文+表紙+加工
③ブックケースは本よりちょっと大きい

当たり前体操という感じなのですが、解説していきます。


①何はなくとも背幅を決めろ

極小部数からブックケースを刷ってくれる印刷所さんは大変貴重な存在で、私の部数だとプリントオンさん一択だったのですが、プリントオンさんは締め切りがかなり早いです。
更に、少しでも印刷代を抑えるために早割効かせる方が多いと思います。
しかもプリントオンさんは豊富な加工が強みなので色々盛りたくなると思います。加工盛る度に営業日カウントが大変なことになります。

つまり何が起こるかと言いますと、新刊と同時に作業していると、入稿のデッドラインは本よりもブックケースの方が遥かに早くなります

例として、6/25搬入にした場合
プリントオンさんのスリップ縦タイプの通常締め切りが6/12の昼12時。
BRO'Sさんのオンデマンドフルカラー表紙セットの通常締め切りが6/19の昼13時。

上記搬入で早割の場合
プリントオンさんのスリップ縦タイプ(30%引き)の締め切りは5/30の昼12時。
BRO'Sさんのオンデマンドフルカラー表紙セット(20%引き)の締め切りは6/14の昼13時。


ブックケースは当然、出来上がった本にぴったりのサイズでないと見栄えがしません。プリントオンさんのテンプレートはミリ単位で別々のものになります。ケースのデータ作成の時点で、背幅を確定させなければなりません。

安全策は、「本を入稿してからブックケースを作る」だと思います。製本された実寸が測れたらそれはもう最高ですね!

そんなのね、無理だったよ。
(ケース入稿してから2週間も作業できるんだもん! ギリギリまで作業するよ!!)

そのため私の場合、「予定ページ数+αくらいの背幅でブックケースを入稿し、必死にページ数をやりくりする」という状態になりました。チキンレースです。
文字数が増えがちな文字書きは無限にお話が終わらなくなることがままあると思うのですが、背幅がデッドを超えると、ブックケース発注の何もかもが水の泡です。馬鹿!
特に私の場合、スマホのメモ帳で執筆して、組版テンプレートに流し込むまでページ数のことなーんもわからん! の状態でやっているので、「頼む……超えないでくれ……頼む……!」ってお祈りしながら流し込みました。馬鹿!

ブックケース装丁は「執筆し続けても絶対に想定ページ数ピッタリに出来る」という自分への信頼がない限り、作業のスケジュールは本のページ数確定>ブックケース入稿にしたほうがいいです。
アンソロのような、原稿自体の締め切りと、実際に入稿する締め切りに差がある本であれば、現実的なプランかも。

私は本文180Pの本だけページ数確定させていて、残り2冊は「うーん、本文240Pくらいと260Pくらいかな!!(完全なカン)」で作業しました。
最終的に本文は234Pと264Pなので、まさかのガバ計算が帳尻合いました。奇跡。
奇跡はたまに起こるから奇跡。毎回ページ単位でチキンレースするのはつらいと思う。
(チキンレースする人も……私は応援しています……!)

【ちなみに】締め切り(納品日)の設定について

上記はケースと本をバラバラに頼んだ場合の話なのですが、個人的にはリアルイベントにおいて「両方イベント当日にスペースへの納品にして、現地でセット組みする」はオススメできません
理由は単純で「ブックケースの納品、めちゃくちゃ嵩張る」からです。サイズをミスっていなければ、本を入れてセットを組むこと自体はそれなりのスピードでできると思いますが、ブックケースは基本組み立てられた状態で届くため、納品の箱がうお……デッカ……ってなります。私は玄関が塞がれました。
今回私の本は馬鹿の物量(A5、厚み4センチ)でしたが、文庫サイズとかだとしても、背幅によっては島中のスペースでできる作業ではない気がする。

自力のセット組みを回避する方法は「本も含めてプリントオンさんにお願いする」になるかな。ケースと本と同時入稿にすれば、セットを組んだ状態での納品がお願いできるので、会場への直送が現実的。リボン掛けるとかのオプションも選べますね。
ただ、この場合本の締め切りがだいぶ早まるのと、値段と仕様の幅がプリントオンさんに限定されるのがネックかな……と思います。
元々ケースは「単体発注の場合、追加料金がかかる」仕様ですし、家からの送料とかも考えると、むしろその方が安く済むパターンはある……かも……?
ただ私の場合、今回めちゃくちゃページ数が多い想定で作業を進めていたので、厚い本をお願いした実績のあるBRO'Sさんで本を出しました。
リアルイベントの場合、自宅からの宅配による会場への送付は、受付期間がイベントの数日前に設定されているので、「組んだ上でその期間を着日にした発送ができる」日を本の納品日にする必要があるかも。
いずれにせよ……締め切りは……早い……!
私は全データを自分でいじっていますが、画像周りを外注される方はより早くなると思います……! 特殊装丁、茨の道……!

②背幅は本文+表紙+加工

プリントオンさんのテンプレートは、背幅に対して既に余裕をとったデータになっています。
そのため、背幅10ミリの本であれば、10ミリ用のテンプレートを使えばOKです(自力計算で余裕のある背幅を選ばなくてOKの意)
私は「今回計算上は合計39ミリ以下だから、40ミリのテンプレートを使えば余裕のはず!」と考えていました。
(あと、オーダーメイド発注ではないテンプレートが用意されている最大背幅が40ミリだったため、予算的にも技術的にも、それ以上増えると困るな……でもありました)

ただ、冒頭のとおり「本文だけが背幅計算の結果ではない」んですね!!
私の場合、「本文用紙だけで」38.65ミリでした。

実際には、3冊の本を収めるため、
表紙(裏表計2枚)×3=厚紙6枚

カバー(裏表計4枚+PP加工)×3=厚紙12枚
が追加されていました!
なぜカバーが裏表4枚分になるかというと、折返しがあるからです。
この計18枚の紙が挟まったことで、ブックケースがミチミチになりました。

反省としては
①複数冊収める場合は表紙の紙厚が案外馬鹿にならない
②カバーかけると拍車がかかる
③ページ数が増えると製本の都合上個体差が出やすくなる

です。

基本的には本文用紙の計算分で作れば問題ないと思いますが、上の条件が複合になると、ギリギリの戦いを強いられます。
スカスカでも見栄えがしないので困りますが、入らなかった場合時間とお金が無駄になり、非常にしんどい。大は小を兼ねると考えて、1ミリ分更に自分側でマージンを取るのがいいかもしれません。

今回の場合、入らないものは1冊もなかったので、ケース発注は無駄にはならずに済みましたが、スッ……と入ってくれるものと、ズズ……と入っていく個体があったのでヒヤヒヤしました。発注から納品までそこそこ時間がかかるアイテムですし、やり直しが効かないので、ご参考までに……。

【ちなみに】データ作成注意点

ブックケースのデータ作成の際、方向にはお気をつけください!
通常、縦書きの小説本(右綴じ)の表紙(表1)は左側、裏表紙(表4)が右に来ますが、スリップ縦タイプの場合、左右が逆です。
いつものノリで作業すると左右取り違えます。
私はこれで「データ完成〜!」したあと泣きながらコピペ修正しました!!
(テンプレートにちゃんと説明があるのに! 慢心ダメ、ゼッタイ)
私の今回のデータは各面で独立したデザインだったので、コピペで左右入れ替えればなんとかなりましたが、一枚絵など使う場合大変なことになると思うので……! お気をつけください……!

③ブックケースは本よりちょっと大きい

本を保管するにしても、イベントや委託先に送るにしても、在庫を剥き身のままで置いておくのはあまりよろしくないので、段ボール箱に入れておくケースが多いと思います。
段ボールが家の中に潤沢にあることは珍しく、大抵は印刷所さんが送ってくれた段ボール箱で管理することになると思うのですが、これが意外と危ないです。

ブックケースは判型にちょっと余裕を持たせたサイズをしているので、印刷所さんのピッタリサイズの段ボール箱だと、余白がほとんどなくなります。それはもう、ミッチミチになりました。入れづらく、取り出しにくいピッタリ具合!
読者さんの元に届ける本ですし、なるべく綺麗に扱いたいものの、剥き身のままで収めると擦れによる傷が出来るかも……ってレベルのミチミチだったので、対策としてPP袋に詰めました。

元々BOOTHの倉庫から発送の機能を使っての頒布を予定しており、PP袋に入れてから倉庫に発送すると入荷が早まるよ! とのことでPP袋を用意していたのですが、非常にかしこかった(自画自賛)と思います。
BOOTH倉庫での梱包もお願いできるシステムでしたが、他の方に任せると配送可能な在庫が足りなくなるかも……くらいの危機感を抱きました。自宅から読者さんへの個別配送だとしても、保管の段階で袋に詰めておくのがいいかもしれません。

ブックケースは特別感のある1冊にできるので、ここぞという時はぜひぜひ使ってみてほしいです!
私もずっと憧れていた装丁で、全部収まった時は一人でフヘヘ……! ってしました。
だからこそ、装丁のオタクたちの本が、失敗なく素敵な物に仕上がるよう、応援しています!

みんな! チキンレース頑張ろうな!!

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