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翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その7

今回は、国際学会というのに初めて参加した時の話です。   
 ...実に物騒な書籍の翻訳者になってしまいました。その経緯と本書の内容に関わる逸話や情報をお伝えできればと、ブログを書いています。

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(7)ディナー

【アカデミック・フォーラム】

ブライトンでの上映会の翌日、マタス弁護士はThe International Academic Forum(IAFOR)主催の学会に参加することになっていた。世界中から学者が集まりそれぞれが自分の研究について発表する。研究者はこういう場で発表する回数が重要なようだ。このIAFORの主催者は、なんと名古屋を拠点とする英国の学者さんだった。年に何回もさまざまな国でいろいろなテーマの学会を開催していたが、拠点は日本にあった。

ブライトンでの学会は、The European Conference on Ethics, Religion & Philosophy(倫理・宗教・哲学に関するヨーロッパでの学会)という名称だった。この「倫理」の部分で臓器収奪を訴えるべく、マタス弁護士が論文を提出し、受け入れられたというわけだ。そして当時、無所属だった私は「翻訳者」という形で聴講させてもらった。

マタス弁護士の発表内容は「臓器移植濫用、医療倫理、正義」と題する内容だった。他二人の研究者と一緒に倫理のカテゴリーで、1人30分の時間が与えられ、発表と質疑応答があった。まだまだ英語圏での臓器収奪の認知度は低く、こじんまりとした感じの発表だった。

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[「倫理・宗教・哲学に関するヨーロッパでの学会」(ECERP)のプログラムの表紙。ECPはThe European Conference on Psychology & Behavioral Science「心理学と行動科学のヨーロッパでの会議」を意味し、二つの学会が並行して行われた]

国際学会というのは世界各地で一番良い時期に開催され、通常、現地ツアーとディナーへの参加も希望できる。マタス弁護士はそういうの好きだよ、というアドバイスを受けて、ディナーも予約しておいた。

幸か不幸か、ディナーの席もこじんまりとしていた。6〜8人掛けの丸テーブルが二つだけだった。しかしおかげで、食事のあと隣のテーブルを訪ねあったりして、ごく自然な形で学会の主催者の方に、中国での臓器収奪の話を個人的に伝えることができた。マタス弁護士が話している横で、2016年に発表されたばかりの調査報告書〈更新版〉やドキュメンタリー映画『人狩り』『知られざる事実』のリンクを印刷した紙を、「ご参考までに」と手渡すことができた。

主催者の方が「これは大変な問題だ」と認識された。学会が終わった後も、担当者とメールでつながった。映像制作をテーマとする秋の学会にレオン・リー監督が招かれ、翌春のIAFOR「倫理・宗教・哲学に関するアジアでの学会」ではマタス弁護士にスポットライト・プレゼンテーションと称する特別な枠組みをいただいた。こうして、英国ブライトンを発端として、臓器収奪のスピーカーが来日する機会が生まれた。

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[ブライトンの国際学会で、参加者と共に手を振るマタス弁護士(右下)]

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第2回 「地獄に落ちるだろう...」中国の処刑場で行われた囚人への注射

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