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翻訳者のつぶやき なんで私が『消える人々』を...その27

ガットマンが来た!追い風に乗って…地面を這っている私の視野を、また広げてくれた。

衛星写真

【道案内】

ガットマン来日の1週間前に、英国の田舎から3年ぶりに日本入りした。サイン会の会場やら移動の方法の下見に、時差ボケの身体を押しながら、あちこち回った。スマホに頼らないと全く動けない東京の地下鉄の複雑さに疲れ切りながら…。

東京によく慣れないうちにガットマンが来た!飛行機が遅れて飲食店は閉まっていた。セブンイレブンでお弁当を選んだ後、「何か一杯キュッとやりたい」と店内のボトルを物色していたので、「こういうのあるよ」とカップ酒の棚にある一番安い148円の焼酎を指したら、痛く喜んでくれた。訪問する先々で、その土地の一番安い酒を飲むのが楽しいそうだ。

さて、ホテルから会場へ。地下鉄駅に行くのは右かな?左かな?私のスマホはなかなか反応しない…そこでご愛用のiPadでガットマン自身がナビを始めた。地図は一切、衛星写真。こうして東京を見ると、人間が引いた都道府県の境は大した意味を持たなくなる。逆に東京湾のような地形が浮かび上がってくる。

【カザフスタンでの潜伏調査】

中国共産党政権下にあるウイグルでは、臓器収奪の調査は難しい。2020年、ガットマンは、隣国のカザフスタンに潜伏し、ウイグルの収容所から逃れたカザフ人と面談。一人ひとりの証言者から、何人が拘束されていて、夜中に何人消えたかを尋ねた。20の異なる収容所で平均して年間2.5%から5%が「消えていた」。2017年に新疆ウイグル自治区で、100万人以上の囚人を拘留できる収容所が建築されているので、年間2万5千人から5万人が臓器収奪されていると示唆される。その間をとって、臓器収奪の犠牲者は年間 約3万5千人と打ち出す。

ガットマンが来日する数日ほど前に、米下院の外交委員会で「2023年臓器収奪停止法案」が全会一致で可決した。その際のスミス下院議員によるスピーチで、ウイグルの犠牲者数としてガットマンの数字が引用された。今回の来日では、彼は完全に「勢いに乗っていた」。

【アクス地区のトライアングル】

サイン会の講演では、ウイグルの収容所二つと火葬場が近接する衛星写真を見せていた。これらの三つの施設(トライアングル)から空港までは30分かからない。その空港には「臓器輸送優先通路」と書かれたグリーンの矢印が床に貼られている。証言を合わせ、現地の臓器収奪の状況を浮き彫らせていた。

帰りに空港まで送ったのだが、このおバカなアテンドは、浅草線の各停に乗ってしまった。時間は十分あったので、ガットマンは全く気にしない様子。衛星写真で今どこにいるのか見せてもらいながら、カザフスタンに潜伏したり、衛星写真から収容所を割り出している人には、東京人がAからBに効率よく移動するためのジョーシキは不要だなあ、とつくづく感じた。要するに成田空港に到着すればいいわけで、電車は着実にそちらに向かっている。一応路線図を車内で見つけて、次の駅名とあとどのくらいかを確認して、少しホッとした自分が哀れに思えた。

最終日、アポを全てこなして、焼きそばでご機嫌のガットマン。(浅草のおこげで)

ガットマンのサイン会での講演内容はこちら。
http://jp.endtransplantabuse.org/archives/42732



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