"親友"を入院させた話~ぬいぐるみ病院

私はぬいぐるみが大好きだ。

33歳になった今でも、年甲斐もなく実家にも一人暮らしをする家にもぬいぐるみがたくさんある。
子どもの頃から私は、着せ替え人形におままごと、シルバニアファミリー等のお人形遊びが大好きな型にはめたような"女の子らしい"子どもだった。
(ちなみに私はリカちゃんよりジェニーちゃん派だ)
もちろん家にはぬいぐるみもたくさんあった。
大きなものから小さなものまで、割と高価なものからゲームの景品でもらった不細工なものまでたくさんあった。
流石にこの年齢になって、一人暮らしの家をぬいぐるみに占拠されるわけにはいかないから、今の家にいる子たちは厳選された子たちではあるのだけれど。


話を戻して、タイトルの"親友"を入院させた話をしようと思う。


私には"親友"がいる。

画像1


それが彼。
名前はプーちゃん。
名前の由来はよく覚えていない。
多分小学校1年生の子供のことだから、フィーリングでつけたのだろう。
しかもプーちゃんは本名ではなく、あだ名だという。
本名は「くまのプー太郎」
当時の私の感性には脱帽である。

彼との出会いは今から26年前。
私が小学校1年生の夏休み。
出会ったのは当時大阪の近鉄百貨店あべの本店(現あべのハルカス近鉄本店)の7階にあったサンリオショップだった。
その店でぬいぐるみキーホルダーとして売られていた彼を母が迎えてくれた。

彼との思い出はたくさんある。
彼とは色々なところに行った。
当時私は父の仕事でインドネシアに住んでおり、もちろん彼はそこにもいた。
旅行にも、学校にも一緒に行った。
(彼には当時キーホルダーが付いていたのでカバンにぶらさげて登校していた)
どこに行くにも一緒、汚れてきたら一緒にお風呂にも入った。
ずっと一緒にいるものだから、破れたりほつれたりしたけれど、その度に「お母さん病院」で手術してもらった。

彼は何度も迷子になった。
なにせ手のひらに乗るくらいの大きさなので、すぐにどこかに行って姿が見えなくなった。
インドネシアの病院に行ったとき、帰りの車内で彼がいないことに気が付いた。母に「もうええやん」と言われたが泣いて騒いで引き返してもらったら、病院の待合椅子にしれっと座って待っていてくれたこともあった。

そんな彼と出会ってもう26年も経つ。
もう「お母さん病院」では手に負えなくなった。
生地が痩せてふにゃふにゃになり、目は取れそうになって、鼻は白くハゲてしまったのを黒マジックで塗ったりした。
もう一緒に過ごせばすぐに破れてしまいそうなほど弱ってしまった。
私はこの子と死ぬまで一緒にいるつもりなのに、こんな状態は困る。
私が死んだら一緒に棺桶に入れてくれと、周囲に話しているくらいなのに。

そんな時に妹から教えてもらったのが「ぬいぐるみ病院」だった。


ぬいぐるみ健康法人もふもふ会 ぬいぐるみ病院

詳しい説明はHPやSNSを読んでいただくとして、つまりはぬいぐるみを修理してくれる専門の会社です。

サイトを見たり、SNS等での口コミを見るととても好評であったため、私はここに彼を預けることにした。

入院するには予約が必要で、なんと待ち時間は1年以上!
大変混みあっていました。
それでも入院予約をして予約を待つことに。
これが2018年7月のことです。

そして待つこと2年・・・
昨年2020年7月に入院の順番が来たと連絡があった。
そして手続きを経て2020年9月初め彼はぬいぐるみ病院に入院した。


彼を送ってまずは病院で採寸してもらう。
そして事前に記入して送ってある問診票を元に治療方針を決め、見積もりを出してもらいます。

彼の場合は生地が薄くなっていたため、皮膚移植と目・鼻の付け替え、綿の入れ替え、ビーズの入れ替えをした。
移植する皮膚(生地)は自身で用意するか、病院側で生地を用意してもらい、候補の中から選ぶ。

皮膚生地の候補[1]


もう20年以上前に出会って元の生地の質感を覚えていなかったので、私の好きな毛足の短いパイル地にしてもらった。画像の①の生地です。
画像で決められない場合サンプルを送ってもらうこともできる。
(送料と生地代で500円かかります)

目や鼻も最適なものを用意してもらえる。

おめめ再生[1]

お鼻再生[1]

その他、耳の再生(小さいため生地の移植が出来ない)、肉球の再生(元々フェルトで取れてしまったのを刺繍で再生)をしてもらっている。
手についている丸い金具、首輪、商品タグはそのままにしてもらった。

ちなみに金額ですが、預ける子のサイズで基本料金が決まり、そこに治療方針に応じた追加料金、生地代、採寸・型紙作成代、帰りの送料etcが加算されて料金が決まります。
入院中の写真をデータで送ってもらったり、退院時のパーティに参加できる等のサービスも用意されている。(任意なのでなしでもOK)
彼の場合では

●基本料金14,000円
●帰り送料1,500円
●写真データ2,400円
●皮膚移植手術(刺繍や目・鼻の付け替え等含む)26,400円
●綿袋(入っていた綿の返却)1,000円
●生地代1,500円
●カウンセリング代2,000円
●採寸・型紙作成代4,400円
ここに消費税が加わって、合計で58,520円のお見積りでした。

これを高いと思うか、安いと思うかはもう人によって変わるだろう。
きっとこの金額を見て「高っ!!!」と思った人もいると思う。
でも私はこの子が丈夫になって帰ってくるならいくらでも出そうと思っていたので正直安いと思った。
ただ、簡単に頼める金額ではないなとは感じた。
だからこそここに頼んでみようと思えたのかもしれない。

単純に考えてあと40年一緒にいるとして計算すると1日4円ですからね。
そう思うと全然高くない。
もちろん色々なコースがあるので、汚れてしまったのをきれいにして欲しい、綿を入れ替えて欲しい等の小さな要望もできるようです。


そして見積りに同意していよいよ治療開始。
入院期間は治療によって変わるが、口コミを見ていると大体数週間~1ヶ月程度の子が多いように思う。
彼の場合はサイズが小さいことや難しい治療のため4ヶ月かかった。


治療が終わると、治療後の写真が送られてくる。
さて、彼はどうなったかというと…


画像5

正直、最初この写真を見てとても戸惑った。
「プーちゃんじゃない」と思った。
どうしよう、もう元に戻せない。
修理なんて頼まなきゃ良かった、どうしよう。
前のプーちゃんに戻ってきて欲しい。
そんなことばかり考えていた。


でも、不思議なものでずーっと写真を眺めていたら、だんだんプーちゃんに思えてきて。
そのあと母に写真を送ってみたら。

画像6

妹もきれいになったと言ってくれた。
これから彼はずっと私と一緒にいるのだから、きれいに丈夫になって良かった。そう思えたとき、ボロボロと涙が出てきて電車の中なのに泣いてしまった。恥ずかしい。


1/11に彼は約4ヶ月の入院生活を終え、私の元に帰ってきた。
やっぱり最初は少しの違和感があった。
でも今日まで一緒に過ごしてきて、彼のことちゃんと可愛いと思えている。
(不安過ぎて会社にも連れて行っていた)
幸いポケットに収まるサイズなので、これから色んなところに連れて行こうと思う。



彼を治してくれたぬいぐるみ病院の皆様、本当にありがとうございました。
可愛い姿になって、きれいに丈夫になってすごく嬉しいです。

退院のときに撮られた写真。3・4枚目に映っています、小さい(笑)



これからも彼はずっと私と一緒。
一生の親友。
ずっと傍にいてね、プーちゃん。

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