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君にはかなわない

さっきまで座ることを拒んでいた君が、ソファの脇に立ちニッコリ微笑んでいる。

定期的に通っている病院、入院手続きの待合室。


その視線の先を見ると、何台も並んだソファの向こう、車いすに乗った白い髪の女性が微笑んでいた。

勝手ですが、ここでは女性のことを感謝を込めてスマイルさんと呼ばせていただきます。

君は頬を赤らめ、飛び跳ねながら手を振っている。

スマイルさんも、両手を振っている。

私は、ちょっとしたドキドキを覚えながら、スマイルさんに軽く会釈をした。


君は、その場で、持っていた乗り物の本の表紙を、スマイルさんに見えるように持ち直し、描かれているものを指さした。

「しんかんしぇん!!」

「でんしゃ!!」

大好きな乗り物の写真と名前。

伝えたいという想いが溢れていた。

マスクをつけたスマイルさんは、目を丸くして、胸の前で両手をパーにして、答えてくれた。

君を見つめる視線が、温かかった。



ほんの数分の出来事。

離れた距離で、初めて出会った人と通じ合う力。

とてつもないパワーだ。

君にはかなわない。そう思った。


君が生まれてから今まで、たくさんの笑顔をもらってきた。

これからも、たくさんその笑顔を見たい。

もっともっと、君のことを知りたい。


もうすぐ3歳になる君。

我が家の大切な宝物。

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