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新技術を「おもちゃ」だと甘く見ないこと、分かっていても難しい・・・

先日下記のテックブログを聞いていて、企業のCTOクラス・VPoEクラスの方々が

「RPAやノーコードをおもちゃだと思って舐めないほうが良い」
「そのうちコーディングの仕事の8割はこれで出来るようになる」

という趣旨のことを話しておられました。

私も激しく「こ〜れ〜」と思う一方で、ふと思い出したのが

「そうは言っても、新技術を甘く見ないで居続けるのは、組織の中にいると難しい

という経験でした。

技術屋あるある「新技術をおもちゃだと甘く見てたら盛大にやられた」

幼少期からテクノロジー業界を20年くらい眺めていて、直感的に気付いた法則があります。

それは

「新技術はたいてい最初は【おもちゃみたい】だと、従来の技術屋から見下される
「でも、気がついたら新技術の性能が圧倒的に向上して、それを見下していた技術屋が完膚なきまでにやられる

こと。


ちょうど私が大学生の頃、海外でiPhone旋風が巻き起こっていました。

しかし日本の家電メーカーは「我々の発売している携帯に比べれば低スペックだ」と散々に酷評しており、なかなか同種の端末を日本では発売せず。

iPhoneやその競合であるAndroid端末が日本にやってくるまで、一介の情報系学生であった私は海外で発売される革新的な端末を実際に触ることが出来ず、もどかしい日々を過ごしたのを覚えています。


その結果はどうなったか?
・・・のちに【ガラケー】と揶揄されるようになった日本の携帯端末市場の現状を鑑みれば、今更詳細を書くまでもないでしょう。


携帯端末に限らず、似たようなことは何度も目撃しました。
例えば「最新鋭の独自開発チップを搭載した最強のゲーム機」が文字通り「おもちゃ屋」を名乗る企業の低スペックなゲーム機に大敗したり、など。


後になって

・この現象は【破壊的イノベーション】という名前が付けられている
・近年の技術業界に限らず、何十年も前から業種を問わず起こっている

ことを知りました。

産業勃興期に「コンピューター」といえば、それはメインフレームのことでした。
1台数億円で、利用するにも数年の実務経験がある専門家が必要でした。
それが「ミニコン→オフコン→PC→ラップトップ→スマホ」と民主化し、そのたびにユーザー数が10倍になってきたのがコンピューター産業の歴史です。
このとき、単価も収益性も低い新興勢力のプロダクトや市場は、既存大手企業にはオモチャのように見えたのです。

たいへんザックリに言い換えると

老舗の技術屋が、新技術に対して
「なにあれ、おもちゃでしょ。大したことない」
とか言ってたらリアル死亡フラグ


ってことです。


この事象を知ってののち、学生の頃は

「【新技術はおもちゃみたいだと舐めてはいけない】ってイノベーションの教科書にもあるのに、なんでこの罠にハマる技術者は多いのかなぁー」

と思ったものです。


しかし、一個人としてテクノロジー業界を眺めていた学生時代と違い、社会に出て技術者として働くようになってから、技術者がこの罠にハマる別の理由を実感するようになりました。

同僚が新技術を「甘く見ている」場合に、自分の見方を貫き通せるか?

大人になってから分かった理由、それは

「同僚や先輩が新技術を【おもちゃ】だと甘く見ている場合に、それを指摘するのが難しい」

こと。

それを自分が実感したのはChromebookがキッカケでした。

Chromebookが発売されたのが2010年代初頭。
当時「おもちゃだ」と専門家から酷評されたコレが、2010年代半ばにはアメリカの教育市場で高いシェアを確保していると聞いて、私が苦労して秋葉原で実機を手に入れたのが2018年頃でした。

実際に使ってみて、昔と違い今やChromeブラウザだけでパソコン用途の多くができるようになったと気付き
「Chromebookやばい!!!」と職場でも周囲に布教して回ったのです、が・・・。


そこで直面したのが、同僚や上司からの「いや、あれって大したことないでしょ?」って反応です。

「いくら安くて便利だと言っても、あれもできないし、これもできないし・・・」

「いやいやソレこそが破壊的イノベーションでヤバいフラグなんですよ」とは、なかなか言い出しにくい
なまじ普段の関係は良好なだけに、真っ向から異を唱える意見を押し通すのは軋轢を生みます

相手の中には、私よりよほど業界の経験年数も長く、熟練の技術者と呼べるような方もいるので、なおさら若手が異を唱え続けるのは難しいものです。


結局、「Chromebookやばい、真剣に検討すべき」と主張してまともに相手にされるようになったのは、
コロナ禍で日本のChromebook普及が一気に加速した2020年以降でしょうか。

破壊的イノベーションは、技術者/エンジニアとしてキャリアを積むにあたって、いつでも頭に入れておくべき大事な事象です。

なにせ、自分が今いる技術領域が数年であっという間に新技術に乗っ取られ、陳腐化し、路頭に迷う可能性があるのですから。
その兆候をいち早く察知し、新領域に乗り移れるよう構えておくことは、技術者として長くやっていくためには欠かせません。


ただ「言うは易し、行うは難し」とも言われるように、
実際に組織の中で破壊的イノベーションを意識し続けることは、周囲との関係性を踏まえると難しいことも実感しました。


周囲が新技術を「おもちゃでしょ、あんなの」と甘く見てる中でも、
安易に周りの意見に流されず技術の潮流を冷静に見極める目を持ち、キャッチアップし続けられるか。


大人になると、地味にこれが死ぬほど大変なのだなぁ、と実感したのでした・・・。

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