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私とスレイヤーズ

 あれは確か、小学6年の頃ではなかったかと思う。学校から帰ってきた私は特に何をするでもなく、テレビをつけてリモコンのボタンを適当に押していた。
 すると、見慣れぬアニメが放送されているのが目に留まった。ファンタジーの世界を舞台にした、名前もよく分からないアニメ。他に見るものもないしとテレビの前でそれを眺めて、終わったときには次週が楽しみでたまらなくなっていた。
 そのアニメというのが『スレイヤーズNEXT』――の、ローカル局で再放送されていたやつだった。ものの20と数分のうちにぐいっと引き込まれた要因も色々ある。ファンタジーといえばせいぜいドラクエとFF、あとはゼルダ……くらいしか知らなかった小学生には魔法に詠唱がついてるというだけで非常に新鮮だったし、キャラクターが皆カッコよかった。当時はまだあんまり女の子に興味がなかったので、どちらかといえば男性キャラの方に理想を見ていたと思う。そのときいちばん好きだったのはゼロス。

 そしてやはり『歌』の存在も大きかった。毎週流れるOPとED、特にOPの方に強く惹かれていた。前向きに力強く突き進んでいく、まさに勇気のあふれる歌詞。流行りのJ-POPやアイドルソングにいまひとつ馴染めなかった私の胸に、これほど強く響く歌はなかった。
 さらに毎週見て聞いてを繰り返すうち、なんとなく気が付いてしまったのだ。歌っている人が主役の声と一緒だぞ、ということに。これがきっかけでボイスキャストに注目するようになり、林原めぐみ氏のファンになり、色々観たり買ったり……と、様々なきっかけになってくれたのは確かだ。

 今ではめずらしい8cmのCDを、当時何度くらい再生しただろう。ひょんなことから『自分はそこそこ歌が上手い方らしい』と気が付いてからは、練習にも熱が入った。そこに夢を見ていた。
 前向きすぎるほど前向きな、パワーに満ちた歌詞にどれほど励まされ、背中をぶっ叩かれながらここまで来ただろう。この作品、この歌との出会いがなければ、中学高校あたりはもう少し仄暗いものであったに違いない。

ただ何もしないままで、悔やんだりはしたくない

 キャラクターたちの生き様を端的に表したサビの一節は、今でも心の奥底に据わっているように思う。駆け出しノベリストとして同じ舞台の端の端にかろうじて指一本でもかけられたのも、元をたどれば彼らのおかげだ。できれば足元くらいまで近づいてみたいものではあるが、それは難しかろう。比べ物にならないほどの大きな存在として、力の限り背中を追い続けるばかりだ。

ゴールにもたれたりしない

 そんな風にも、この歌は歌っている。

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