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夜が佇んでいた。静けさをも連れて、傍らでただじっとしていた。 もともとほとんど音のしない部屋だ。明かりも乏しい。けれども窓の外のほど近い場所に確かにあったはずの誰かの気配は、おもむろに冷えてゆく宵闇の空気に熱を奪われたかのようにひっそりと失せていた。静寂ばかりが際立ち、人ひとり分の息遣いと、時折聞こえる冷蔵庫の低い唸りが妙に耳についた。 一台のバイクが、ほんのわずかな瞬間だけ静けさをかき乱して、此処ではない何処かへ消えていった。そのバイクのそばにはたぶん、賑やかな性質の