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鼻炎のゆくえ

日本人のおよそ三人に一人が花粉症であるらしい。
わたしも例に漏れずその一人である。
検査したことがないのではっきりしたことはわからないのだが、毎年二月ごろから発症する。

滝のように流れ落ちる鼻水。
止まらないくしゃみ。

毎年のこととはいえ辟易させられる。
たいへん汚い話で申し訳ないのだが、ティッシュを忘れて学校に行ってしまった時、一時間の授業でマスクの中がじゅくじゅくになってしまった経験が何度もあるほどである。

とはいえ、薬を飲めば症状はぴたりと収まる。
わたしの場合はここ数年アレグラを飲み続けているのだが、朝これを飲めばだいたい夕方ごろまでは鼻水やくしゃみがなりを潜めていてくれるのだ。

なんの花粉だか知らないが、周りと比べて始まるのが早いうえに終わるのも早い。
そろそろ本格的にみんながしんどくなりだす三月下旬頃には、毎年けろりと症状が収まっていたのである。


そう、去年までは。

自然界もしくはわたしの体にどんな変化が起こったのやら、例年通り二月に始まった花粉症が、四月になっても五月になってもまったく終わる気配を見せないのだ。

もう何箱アレグラを消費したやらわからない。
よくよく考えみれば、薬代の出費も馬鹿にならない額になっているはずである。

周りの花粉症族たちが続々と「お疲れ様でした〜!」という感じで卒業していくのに、わたしだけはいつまでたってもずるずるのくしゅくしゅなのだ。


さすがにおかしい、と考えてみたところ「どうやらわたしには気温差アレルギーの気もあるらしい」という結論に落ち着いた。
寒いとこから暑いとこに移動したり、季節の変わり目になると鼻炎の症状が出るのである。

にしても困ったもんだ、と薬を飲み続けているうちはまだ良かったが、そのうちくしゃみのしすぎで喉と鼻の奥のあいだらへんに違和感ができてきた。
かゆいような痛いような、なんともいえないへんな感じ。

調べまくったところ、どうやらそこは上咽頭というらしかった(初めて聞いたわ)。
そこがむずむずした感じのまま鼻炎に悩まされ続けていると、さらなるくしゃみを重ねたせいでそのうちじわーっとした痛みに変わり、えーちょっとやめてよと思うまもなくずきずき痛み出しやがったのである。

鼻炎薬に加えて、喉の薬も買う羽目になる。

こちとら金欠学生なのだ。
いや、ちょっとマジで勘弁して。という感じである。


そのせいで癖になってしまったのか(知らんけど)、冷房に当たった後も喉のふつうのとこじゃなくて上咽頭が痛むようになり、あーやばいやばいと思っているとついには発熱して丸二日間寝込んでしまった(以下の記事参照)。

https://note.mu/yukanon15/n/nfe9973a20974

恐るべし、にっくき鼻炎。

鼻水とくしゃみだけならまだ百歩譲って許してやっても良かったが、喉が痛くなって熱まで出られたらたまらんのである。


まあ、そうこうする間に熱は下がり喉の痛みもなくなったのでもうはっぴー!という感じだったのだが、

ここ二日間、鼻水がすごい。すんごい出る。

どれくらいかというと、たとえば今日はティッシュを持って大学へ行ったにも関わらず授業開始30分ほどでなくなってしまい、鼻が非常事態を極めたので教室を飛び出してトイレに駆け込み、その後も購入したポケットティッシュを外出先で3パック使い切ったほどである。

アレルギーの鼻水はサラサラで風邪のそれは粘りがあるらしい。でも、わたしのやつは出るまではサラサラだけど、かんでみるとそれなりの粘度を伴っている(どんだけ生々しい話すんねん)。
さあ、一体どっちなんでしょーか!

他の症状は治まっているので風邪薬ではなく鼻炎の薬を飲んだのだが、それが一向に効かないところをみると、どうやらこれは風邪による鼻水であるらしい。はい一瞬で答え出た。


淑女たるもの、人前、ましてや大人数で授業を受けている教室の真ん中で思い切り鼻をかむなど恥ずべき行為である。
(淑女たるもの鼻水の話をこんなに事細かく書いたりしません。)

しかし抑えるだけでは到底間に合わないので、トイレの個室でみんなの味方・音姫を流しながら盛大に致させていただくと、まあ自分の顔のどこにこんな量の液体が入っていたのかと驚いてしまうほどにすさまじいのである(やから汚いですって)。


一日中、何をしていてもその行為をこま切れに中断させねばならないので、これはちょっと深刻につらい。
どうしたものか。

午後四時前という、なんとも中途半端な時間の学生食堂でオクラスライスなぞを咀嚼しながら、わたしは一人考える。


と、ガラス張りのドア越しに意味不明なものが見えて、思わずオクラをむせそうになった。

地下一階にある学食から地上へと続く階段で、一人の男子学生が超拡大コピーした運転免許証を体に貼り付け、でーんと立っているのである。

もう一度言う。
運転免許証である。

直径160センチほどだろうか。
頭だけをちょこんとだして首から下に超拡大版免許証を貼り付けている様は、さながら「不思議の国のアリス」に出てくるトランプの兵隊のようであった。

大学というところにいるとしばしば変わったものに遭遇するものだが、久しぶりに目にするレベルの意味不明さである。

なにしとん…!?

思わず箸を置いて凝視していると、不意に男子学生はくるりと後ろを向いた。

そこには、超拡大版の学生証が立っていた。

もう脱帽である。なんなの。どういうつもりであなたは個人情報をさらけ出してんの。

おもしろいやら呆れるやらでまったく目が離せない。近くにいた男子学生が写真を撮っていたところをみると、サークルか何かで使うネタの一環なのであろうか。

そんなこんなで頭を巡らせているとうっかり目算を誤り、いつもならおかずとごはんをぴったり食べ終えることができるのにごはんが一口多く残ってしまってがっくしきた。何やってんだか。


すっかり話が逸れてしまったが、前面運転免許証背面学生証男(ぱっと見すごい難しいこと言ってそうな文字列)のことなぞどうでもいいのである。

話を鼻炎に戻そう。


人様と食事をしている最中に鼻をかむというのは、たいへん勇気がいるかつ申し訳ない行為である。

今日も今日とて、友人とカフェでかき氷を食しているその時にまで「ちょっとごめん…」と顔を背ける羽目になってしまった。

出来るだけ出来るだけ、音を立てぬようそうっと致す。
だって食事中に見たくないでしょうそんなもの。わたしだって我慢したい。

でもそれほどに限界なのだ。いちいちトイレに立っていては、せっかくのかき氷がただの甘い水になってしまうのだもの。ごめんなさい。


恐らく明日も、症状は治まっていないと思われる。

そこで目下の悩みは「明日の朝、風邪薬か鼻炎薬どっちを飲むか」ということである。

いや、今日鼻炎薬飲んで効かんかったんなら明日飲んでも意味ないやろ!!と思う気持ちはわたしにもよっくわかる。

でもね。貧乏性か、なんか勿体無い気がしてしまうのだ。

だってプレコールは総合風邪薬。発熱・喉の痛み・頭痛・鼻水すべてに効いちゃう優れモノである。
その「鼻水」を求めるがあまり、ほかはピンピンしてるのに飲んじゃうのってなんか勿体無い!?と思ってしまうのだ。
(え、そんなことないですか…?)

ああ、もったいながるあまりダメ元で鼻炎薬を飲んでしまう気がする。
そしてティッシュ4パックくらい使ってまう気がする。
さて、どっちが勿体無いんでしょーか!?

と、聞くまでもなく答えは見えている。


ともあれ、一番いいのは目覚めたときに鼻水がぴたっと止まっていることである。

どうか、どうか。と思いながら眠りに就こう。


#エッセイ

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