見出し画像

あいによばれて

ソーセージマフィンは就活の味。
早朝、夜行バスで東京駅に着くと、いつも近くのマクドナルドで時間をつぶした。朝食を済ませて歯を磨き、化粧をほどこして身支度をととのえる。万年金欠の就活生にとって、たった数百円で長々と居座らせてくれるあの場所は大変貴重であった。

当時はマフィンとコーヒーのコンビで200円だったと記憶しているが、さっき訪れた空港の店舗ではそんなメニューは見当たらなかった。この2年の間に変わってしまったのだろうか。

搭乗手続きを済ませても出発にはまだずいぶん時間があったので、ひさしぶりに朝マックを買った。
懐かしの組み合わせ、ソーセージマフィンとホットコーヒー。店前の座席は埋まっていたのでテイクアウトにして、チェックインカウンターの前の椅子に座って食べることにする。

手と舌をやけどしそうになりながら、あつあつのコーヒーに口をつける。
ああ、なじみ深いこの薄さとコクのなさ!とてもマックという感じがする。
お次はマフィン。もっちりとしたバンズとジューシーなパテ、とろけたチーズの黄色がくっきりと目にまぶしい。なくなってゆくのを惜しみながら、思う存分ジャンクな味わいに酔いしれた。

記憶というのは案外根深く残っていて、思いもよらないものと結びついていたり、予期せぬタイミングでよみがえってきたりするからおもしろい。
もうすぐわたしは、東京を発つ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?