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【イギリス臨床留学(移住)について】

アメリカに比較して、イギリスの臨床留学についてはあまり知られていないと思うので、こちらでまとめてみたいと思います。短期臨床留学ではなく、資格をとって専門医取得を考えている方向けです。

まず、アメリカ同様、イギリス(UK)は、就労する医師の多くを国外の医学部卒業者に頼っています。OECDが2019年にまとめた発表 'Recent Trends in International Migration of Doctors, Nurses and Medical Students'

https://www.oecd.org/health/recent-trends-in-international-migration-of-doctors-nurses-and-medical-students-5571ef48-en.htm

によると、イギリス国外出身医師の、全体医師数に占める割合は、約33%です。アメリカは約30%なので、ほぼ同等ですね(Figure1.3)。さらにBrexitによって、医療職者も例外にもれずアメリカやオーストラリアなどに流出しているという話もよく耳にしますので、新たなマンパワー不足が発生していると想像します。画像1


その内訳は、アメリカほどバラエティーはないかもしれませんが、主にインド、パキスタンなどのアジア、中東やアフリカからの出身者が大半です(Figure 1.8.1)。

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イギリスの臨床研修のステップは大まかに以下の図のようになります。
1. 医学部卒業
2. 初期研修(Foundation programme 2年間)
3. 後期研修(Speciality training 専攻により3-9年間)
4. 専門医(GPまたはConsultant)

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https://thesavvyimg.co.uk/specialty-training-residency-in-the-uk/

イギリスで医師として働くには、General Medical Council(GMC)という日本の医師会のようなところに医師として登録される必要があります。イギリス国外で医学部を卒業した場合、資格を得るためにはいくつかのルートが有るのですが、日本の医学部出身者であれば、以下5つが選択肢になります。

語学試験(IELTS7.5またはOETスコアB)に合格後、
1. IMG(International Medical Graduates)のための試験(PLAB1&2、MCQといわゆるOSCE)に合格する
2. MRCP part1&2(MCQといわゆるOSCE)に合格する
3. 英語圏の医師免許(USMLE, AMC, MCCQE)を2020年以前に取得している
4. 英国内の病院からsponsorshipを受ける(就労ビザの手配付きで仕事の契約を結ぶ。ただし、勤務は最長2年まで)
5. 日本での専門医または指導医の資格を認めてもらう


詳細はこちら

https://www.gmc-uk.org/registration-and-licensing/the-medical-register/a-guide-to-the-medical-register/full-registration


しかし、現実的には多くの人は日本の医学部を卒業後、語学試験に合格した後、1のPLAB1&2を受けることになると思います。というのも、
1. 2はイギリス式の医療システムを理解している必要がある。
2. 3は日本でそれなりの地位を獲得し、海外ですぐにでも使えると認められるだけの実力が必要で、長期的にイギリスで勤務したいという方には向いていない。
3. 4に関しては日本でのこれまでのキャリアをすべて言語化してGMCに提出する必要があり、書類は平均で約800-1000ページにも及び、審査にも相当な時間がかかる(当然ですね)

ということで、ルート1が最も確実で最短とされています。また、受験のタイミングは、みなさんがネイティブの英語話者でない限り、2年間の研修を終えてから受験し、Foundation programmeの1年目または2年目から開始するの方法をオススメします。個人的に考える理由としては、

1. GMC登録のためのPLAB1&2は日本の研修2年終了程度の医療知識を要する。MRCP Part1&2試験はイギリスの研修2年修了程度(日本でいう後期研修終了程度)の知識と経験を要する
2. (日本式であっても)ある程度臨床の流れを理解した上で仕事をすることで語学力不足を補える
3. 日本に帰国することになったときに、研修を終了していないと臨床の仕事ができない

ただ、ここでこれから準備される場合には注意が必要で、2025年から、現行のPLAB試験に代わり、UKMLAというイギリスの医学部出身者と同じ試験を受けることになります。アメリカのUSMLEと同様のスタイルですね。新しい試験で過去問がまだないため、準備がしづらいのではないかと予想します。

同時に、コロナの影響で、2020-2021年は試験が各地で延期となり、多くの受験者が列をなして待っている状況です。現時点で、2022年のPLAB1試験はもう予約がいっぱいのようなので、これから計画される場合は最短でも2023年の受験になります。ただ、語学試験結果の有効期限は原則2年間ですので、計画的に準備をしていく必要があります。

アメリカと比較して、日本人にはあまり人気のない印象のイギリス研修ですが、イギリス留学を検討されている方のご参考になれば幸いです。ちなみに、私個人的には、日本の医学部を卒業してイギリスで勤務されている方をなんと1名しか存じ上げません!イギリス全体での10名ほどだと聞きました。。私もまだ準備中ですので、もしお知り合いの方がいらっしゃればぜひご紹介いただけますと幸いです。


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