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「『ありがとう』を伝える方法は、ありがとうの言葉だけじゃない」と宝くじ売り場で思った話


きっかけは「ハローキティ」の貯金箱


先日、京王多摩センターの駅近くにある宝くじ売り場で、ずっと気になっていたハローキティの金の貯金箱を買った。

キティちゃんが招き猫になり、「開運」と書かれた小判を持っている。単純だけど金色なので、金運が上がりそうだ。

宝くじを自分で買ったことはないけれど、年末年始に両親が年末ジャンボ宝くじを買ってちょっとだけ盛り上がったのを覚えている。
前に並んでいた男性が宝くじを買うのを見届け、私は店員さんに言った。

「キティちゃんの貯金箱をひとつ、ください」

貯金箱を買ったら「ありがとう」じゃない言葉が返ってきた

「はい、キティちゃんの貯金箱ね。1,000円ちょうどです」

宝くじには電子マネーも使えるみたいだけれど、グッズを買うには現金しか使えないようだったので、私は長財布から千円札を出した。

店員さんがそれを受け取り、金のキティちゃんを一体、私の前に置いてくれた。そして彼女はこう言った。

「いっぱい貯めてくださいね」

私は驚いた。
きっと反射的に「ありがとうございます」と言われると思っていたから。

もしかしたら、彼女は貯金箱を買う人みんなにこう言っているのかもしれない。それでも私は、とてもあたたかい気持ちになった。

形骸化しない言葉は「魔法の言葉」になり得る

「ありがとう」と言われるのはもちろん嬉しい。
でも「ありがとう」には幅があって、マニュアル化したバイト敬語のような「ありがとう」もある。「ありがとうの言い換え」を行うことがこんなにも人間味あふれ、なにか個人と個人の一つの関係性ができたような、そんな気持ちになるということを初めて知った。

「いっぱい貯めてくださいね」という言葉は、未来にベクトルが向いているような気がする。でも、「あなたに幸運が訪れますように」ともちょっと違う。貯金箱にお金を貯めるには、自分の意志が必要だからだ。

貯金箱を買うときは、少なからずお金を貯めようと思っているはず(私はフィギュアとして見てしまっていたが)。

「今、この瞬間の気持ちをずっと大切にしてね」
と言われた気がした。

情報と物があふれ、忙しい時代に「今、この瞬間」に集中すること、そのときの鮮烈な気持ちをずっと覚えていることはとても難しい。マインドフルネスという概念を知っていてもだ。

でも私は、このキティちゃんの貯金箱を見る度に「いっぱい貯めてくださいね」と言ってくれた店員さんのことを思い出すだろう。
いつでもあの瞬間に戻れる、魔法の言葉だ。

キャッシュレス時代、貯金箱に何を貯めるか

そうは言ったものの、私は実はほとんど現金を使わない。だいたい電子マネーかQRコード決済、それかクレジットカードだ。

キティちゃんの貯金箱は、実はまだ空っぽのまま。500円玉貯金もはかどりそうにないので、いい使い方を考えている。ただ貯めるだけではつまらないような気もする。そこで使い方を考えてみた。

①誰かに「ありがとう」と思うたびに100円入れる

→相手に直接伝えたほうがいい気がする。1日を振り返る方法としては有効かもしれない。

②誰かに「ありがとう」と言われるたびに100円入れる

→形骸化した「ありがとう」もあるので(マニュアル的な)、どうカウントしようか。

③決めたことを破ってしまったときに100円入れる

→たとえば「砂糖抜きをする」「お酒を飲まない」と言ったように、自分が課したルールを破ってしまったときにお金を入れるなど。ただ、私は酒も煙草も嗜まず、長期間自分に課しているものがないので何にしようか悩む。あと、罰ゲームより、楽しいとき嬉しいときに入れられたほうが良さそう。

④「ありがとう」と思ったことを小さなメモに書いて入れる

→一番イレギュラーな使い方だけど、案外いいかもしれない。
毎日「ありがとう」と思うことはあっても、人間とは薄情なもので、日々過ごしているとだいたい忘れてしまう。心が荒んでいるときに貯金箱を開けて、眺めてみると「世界は素晴らしいんだ」と思えるかもしれない。

ちょっとドラミちゃんのようにも見える

今のところ、まだ使い方は模索中だ。でもこの貯金箱は、いっぱいになったときに「よかったな、嬉しいな、あの店員さんにも伝えたいな」と思えるような、そんな使い方がふさわしいように思う。

ありがとうの心を伝えるためにできること

「言霊(ことだま)」という言葉を聞いたことがある。

宝くじ売り場の店員さんは私のことをきっと覚えていないし、「いっぱい貯めてくださいね」と言ったことも忘れてしまっているかもしれない。
それでもいいのだ。私はこうして、その言葉からたくさんのことを受け取っている。

私の大好きなサンリオは、「ありがとう」の気持ちを贈り合うことをとても大切にしている。もしかしたらあの店員さんには、キティちゃんの化身だったのかもしれない。

これはハローキティ40th アニバーサリーパレード「ARIGATO EVERYONE!」に出てくる「ARIGATO HUG YOU」という歌である。

ほんの小さなつぼみも やがて大きな花になる
ほんの小さな声でも やがて大きな歌になる
ほんの小さな歩みも やがて大きな道になる
ありがとうの心を伝えよう あなたに
ぎゅっ ぎゅっ ぎゅっ ぎゅっ
ありがとう HUG YOU

「ARIGATO HUG YOU」より

一つひとつの「ありがとう」の気持ちは、ほんの小さなこと。でもその小さな積み重ねに支えられる人もいる。

心のこもった「ありがとう」もあるし、そうでもない「ありがとう」もある。「ありがとう」じゃない言葉で言い換えをするのでもいいし、お手紙を書くのもいい。

私たちは「いいサービス」や「いい商品」を当たり前に受け止めがちだ。そして黙って受け取ってしまうことも多い。でも、それをあえて言葉にすることで、幸せの総数は増えていく気がする。そして、言う側は何も減らない。

今度「ありがとう」と思ったら、あの宝くじ売り場の店員さんみたいに、相手の未来を願う言葉で言い換えてみよう。

ありがとうの応用、私はいつ使いこなせるだろうか。あの店員さんはそのときそこにいるかは分からないけれど、貯金箱がいっぱいになったら「あなたのおかげでいっぱいになりました」とお礼を言いに行ってみたい。そのときは、宝くじを買ってみよう。

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