ばす
バスは小さいころ、一番苦手な乗り物だった。
当時のわたしは、ふだん乗り物にのる習慣がない。あっても自転車かキックボードぐらい。
そういうわけかはわからないけれど、
わたしは乗り物酔いがひどいこどもだった。
車でもすぐに気分が悪くなってしまうけれど、
バスはもっとだ。
たぶん、あの公共の乗り物特有の灰色のにおいと、前がみえずひたすらに
ぐわんわぐわんと揺らされる感じ。
けれども、今となっては、バスはわたしにとって
わくわくする乗り物になった。
今でも電車に乗る習慣はないし、
どこにいくにも自転車を漕いでいるのだけれど。
バスに乗るときは、電車から乗り継いで、
山のほうにいくとき。
そういうバスはだいたいお客さんが少なくて、
わたしだけの貸切なんてこともよくある。
広々としたバスのなかで、
右側の2人席の一番前に座る。
お気に入りの音楽を聴きながら、
バスのほどよい揺れにみをまかせて、
本を読むのが
なんとも心地よい。
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