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【遠距離介護】土砂降りの日に泣きながら食べた、セブンイレブンの冷たいホットドック

両親、80代。静岡在住。夫婦二人暮らし。
私、50代後半。東京在住。夫婦二人暮らし。
妹、私の2歳下。静岡在住。夫婦二人暮らし。

4年前、コロナが流行る前までは、時々私が静岡に遊びに行き、両親と私と妹の4人、時には妹の旦那が加わり、皆で食事したりしていた。

コロナの4年間、感染対策で、私は両親に会わなかった。特にコロナが始まった頃、東京から来た人は目立ってしまうこともあり、遠慮もあった。
その間、子ども食堂の手伝いまでして、社交的だった父が、感染対策で自宅から出なくなり、その結果、歩かなくなり、その結果、認知が怪しくなった。
今年の6月、今から2ケ月前、4年ぶりに会った父がおかしいと、私が気が付いたことをきっかけに、そう言えば、そう言えば……となり、並行して父の認知症の症状も急に悪化し、ついに先月末、介護が必要だと認定された。

「そばに住む妹が介護をすればいい」とは思わなかったけれど

そばに住む妹が介護をすればいい、そんなことは考えなかった。それじゃまるで昭和の話じゃないか。私は私でできることがあればするって思ってた。

でもこの「できることがあればする」というのは、とても無責任だよね。例えば、仕事やイベントなどで、「私にできることがあったら言ってね」と言われることがある。一応「ありがとう」と感謝はするが、正直、心の中では「あなたに配る仕事なんてない」と答えている。正直、そんな人はいらないのだ。「できることがあればする」というのは、指示待ちタイプの人のセリフ。主体性がないから、むしろ足手まといなだけ。だいたい、ただでさえ忙しいのに、その人にできることを考える時間なんてない。

が!今回の私がまさにそれだった。
妹も、最初のうちは「私は大丈夫だよ」と言っていたけど、あまりにすべきことと、それにまつわるストレスが多くなり、結果「お姉ちゃん、ずるい」になった。そりゃそうだ。私が悪い。

そういう時は行政の助けを借りたらいい

皆、そういう。でもその手続きを誰がするのか?
そう。まずは母だ。でもやはり80過ぎた母一人では無理で、結局妹になる。
おそらく、今後、母がそうなった時も、結局手続きは妹になる。

私には「で?実務を誰がするの?」という考えが欠落していたのだ。

介護の本を読むと、認知症の進行をゆるやかにするために、段差をなくす、片付けをする、家具を買い替えるなど、環境を整えましょうとある。
それ、誰がするの?
散歩しましょう、運動しましょう、栄養を取りましょう。
それ、誰がするの?
声をかけましょう、外に友人を作りましょう。
それ、誰がするの?

何でもかんでも書籍で調べる私の、欠落した思考が引き起こす依存先が、全て妹になっていた。

遠方に住んでいる人は、金銭的な負担を。これも、よくある話だ。でもこういうことこそ、自分ごとにしないと、逆に、お金が絡む分、ものすごく失礼なことになる。妹は、仕事として親の介護をしているんじゃないのだ。

ここ2ケ月、色々な気づきがあった。
介護をしていた先輩ママの話も非常に役に立った。全て有難い話だった。
それを、私自身の話に転化しなくちゃいけない。そうでないと「これがいいって聞いたよ」みたいな、無責任な話になってしまい、その結果、現場で毎日格闘している妹と温度差が生まれてしまう。

土砂降りの日に食べたセブンイレブンの冷たいホットドック

父が、やっとの思いで、セブンイレブンのホットドックを一人で買った話を聞いた。妹が母を連れ出す留守中に食べる昼食を買いに行ったらしい。今までは何の問題もなく買えていたコンビニ。それが急に買えなくなったという。
「お父さんの気持ち、それを見守った私の気持ち、お姉ちゃんに分かる?」と妹に言われた。

正直、分からなかった……。
買えるものが買えなくなって大変だね……そんなレベル。

ものすごく雨が降っていたけど、セブンイレブンに行き、同じ物を買った。

「レジ袋は要りますか」
「温めますか」
「お支払い方法はどうされますか」

2秒おきくらいに来る質問。私はサクサクと答えられるし、なんなら店員との会話を避けるセルフレジだって使える。
でも、父には、これらの質問はどう聞こえただろう。きっと、何を聞かれているのか分からない、外国で買い物をするような心細い気持ちだったかもしれない。

そうして買ったホットドックには「温めると美味しい」って書いてある。でも、父は、電子レンジも使えないという。だから、私もそのまま食べた。
冷たいけど、美味しかった。冷たくても美味しくて良かった。もしかしたら、コンビニ業界の開発者って、こういう事態も考えて、冷たくても美味しい物を開発しているのかもしれないと思ったら、見たこともない開発者に感謝の気持ちさえわいてきた。

母が出かける日、父は、これを一人で家で食べていた。そこに誰もいないのは、誰のせいなのか。遠いという理由だけで、本当に私は何もできないのか? 本当に本当に、そこに私は居られないのか?

冷たいホットドックを、涙と一緒にかみしめた。

妹は、私がホットドックを買って食べてみてくれたことが、心底嬉しかったらしい。「一人じゃないって分かった」と。
やっとスタートラインに立てた気がした。妹に、あやうく丸投げするところだった、情けない姉の遠距離介護スタートだ。

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