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映画『阿吽』ホームページ転載(公式)

イントロダクション

あたかも信仰のように社会のデジタル化が進む中で、時代に抗う1本の映画が制作された。「阿吽(あうん)」をタイトルに冠したこの映画は、懐古趣味ではなく、最先端の手段として8mmモノクロフィルムを選択している。
ザラつきながらも深度のある闇。
一瞬差し込む光線の煌めき。
いずれもが破壊と再生を繰り返す現在の東京と人間を描き出す。
監督は『胸騒ぎを鎮めろ』(06)、『SayGoodbye』(09)などの作品が高い評価を得た楫野裕。
初の長編となる本作は、カナザワ映画祭2018「期待の新人監督」部門のオープニングを飾り、ドイツ・フランクフルトで開催の第19回ニッポンコネクション「ニッポンヴィジョンズ」部門に正式出品された。

ストーリー

20XX年。
都内大手電力会社に勤める男はある晩会社にかかってきた電話をとる。
電話口からは「ひとごろし」という声がした。
幻聴か、現実か。
神経衰弱に陥った男の日常が徐々に揺らぎ始める。
救いを求めて彷徨い歩く男は、やがて得体の知れない巨大な影を見る。
その正体は何なのか。
男の不安が頂点に達した時、ついに“魔”が都市を覆い始める――

予告編

出演

渡邊邦彦 堀井綾香 佐伯美波 篠原寛作 宮内杏子 松竹史桜 上埜すみれ 板倉武志 安竜うらら 井神沙恵 鈴木睦海 瑞貴 岡奈穂子 佐藤晃 國岡伊織  長谷陽一郎 山下輝彦 中信麻衣子 いとうたかし ターHELL穴トミヤ 新谷寛行 野崎芳史

スタッフ

撮影:宮下浩平 照明:伊東知剛 監督補:植田拓史 記録:仙元浩平 俗音:近藤崇生 音楽:河野英 特殊メイク:土肥良成 鈴木雪香 宣伝美術・劇中画:Ullah 脚本・編集・監督・プロデューサー:楫野裕
宣伝:contrail 
製作・配給:第七詩社

2018年/日本/74分/8mm→DCP/モノクロ/1:1.33/ステレオ
©2018yukajino

上映歴

【大阪】大阪活動屋会 西成拠点(大阪市西成区山王2丁目7−7)
​2022年2月19日(土)12:30 2月21日(月)14:00

【東京】アップリンク吉祥寺
2021年12月12日&12月13日 ※2日間限定リバイバル上映
https://joji.uplink.co.jp/movie/2021/11249

【大阪】太子会館 老人憩の家
​2020年11月21日(土)西成ドラゴン映画祭

【京都】アップリンク京都
「見逃した映画特集」2020年8月22日(土)

【東京】アップリンク渋谷
「見逃した映画特集2019」2020年1月17日(金)
http://www.webdice.jp/dice/detail/5906/

【名古屋】シネマスコーレ
2019年11月30日(土)〜12月6日(金)​

【大阪】シアターセブン
2019年9月28日(土)〜10月4日(金)

【フランクフルト】Naxoshalle Kino
Nippon Connection「NIPPON VISIONS」2019年5月29日(水)https://2019.nipponconnection.com/films.html

【東京】アップリンク吉祥寺
2019年4月13日(土)〜4月26日(金)

【金沢】21世紀美術館
カナザワ映画祭「期待の新人監督」2018年7月14日(土)https://www.eiganokai.com/event/filmfes2018/enfd/index.html


コメント

あうんというのは梵語で意味するところの万物の始めから終わりとのことであるが、楫野監督の本作では世界に個人が飲み込まれる時の音のように思える。自分が自分としての生を無理矢理、放棄させられたとき。またそれを自覚することすら才能になってしまった末世ではもはや他人の命も自分の命も木っ端屑なのだろう。覚醒とは呼べぬドン底への道行き。これを白黒で活写しようとした意気込みは素晴らしい。
平山 夢明 (作家)

二本の樹の幹の表面と川面をありえない人影がよぎり、主人公が木漏れ日を浴びつつ、森のなかをまるで足を使っていないかのように進む。
ここには、まぎれもなく映画が息づいている。物語に恐怖するのではない。映画に恐怖するのだ。
伊藤 洋司 (中央大学教授)

4K時代になぜ8ミリフィルムなのか?その疑問はこの作品を見れば氷解するだろう。リフレインされる水辺のイメージ、光と影の不気味なリズム、壁面に浮遊する異形の像――原発と地震によって播種された<死>に浸蝕され憑依された男の悪夢と狂気を奇才楫野裕監督は8ミリでしか絶対に表現できない異様な質感で迫り見る者を震撼させるのである。
武田 崇元(八幡書店社主)

『阿吽』の衝撃。一人の男が鬼になる。我々はその過程をじっと観察する。ムルナウ『ノスフェラトゥ』やドライヤー『吸血鬼』を激しく喚起する古典的なショットの連なりの中心を、現代を生きる人間のエモーションが貫いている。闇に震える画面を見守る我々もきっと鬼になる。驚くべきラスト。この映画の大胆不敵さに茫然とする。
田村 千穂 (映画批評・研究)

これは、本当に21世紀の現代日本で作られた映画なのだろうか?何ともアナクロな、古式ゆかしい自主映画テイストでつづられる戦慄のポエジー。全編8㎜白黒フィルムで撮られたからそうなのだ、というだけでは決してあるまい。前世紀から続く、まさに怨念というべき何かが映っている。ヤバい!
七里 圭(映画監督)

いつの間にか、2011・3・11以後の東京に引き戻されていた。放射能への恐怖が街の空気に漏れ出したような日々。その話題を避けようとする人、突然姿を消す人が増え、不安はつのった。この映画が独特の質感で描く東京という都市と、時に滑稽でもある登場人物たちは、思い出したくないあの日々が8年後に起こした思想的〈余震〉なのかもしれない。
尾原 宏之(政治思想史研究者)

闇に覆われていると感じたことがありました。感じるだけで目にすることはなかったのですが、この映画の闇を見て、その時の感覚が蘇りました。陽の光の中、何かを捕まえようとする男の様子を見て、「あの日」を境に漂うことになった目には見えない物質を感じていました。モノクロ8ミリフィルムで撮影された、ザラつく闇と光の質感に、見ることと感じることが噛み合わなくなっていました。
女池 充 (映画監督)

この映画は、観る、というより、覗く、に近い。楫野裕は瞬間を切り取る能力を持っている。その瞬間ごとには、意味などないのかもしれない。しかしその「瞬間」が連続性を帯びたとき、果てしなく強大で禍々しいものの輪郭がいよいよ現れてくる。そのときに我々ははじめて「それ」が、実は見えなかったのではなく、大きすぎて視界に入りきらなかっただけのことであったのだと気が付くのである。寝ている他人の脳天をかち割って、悪夢の断片を覗き見ているような、それでいて、ホルマリン漬けが入った綺麗な瓶に映り込んだ自分自身をも見ているような、不可思議な感覚だ。
大木 萠 (映画監督)

3.11以降続く不穏と地震。風に乗る放射能。光と影のザラついたモノクロームが、まるで呪文のように今の日本を覆っていた。だけど何処かでその呪いを待っている自分もいるのかもしれない。
内田 信輝(映画監督)

映画監督・楫野裕は、カットのイメージひとつひとつを、決して野放図に紡ぐことがない。ひとつの時間に連なる、これまで・いま・これからのカットは、ある高低差から互いを見つめ合い結び合い、ときに豪放磊落な高さを駆ける。それは氏の奔放な感性によるものかと一時期思っていたが、むしろカットを裁断し続けては端正に切り建てていく、彫刻師のような構築への意思なのだ。それでは“東日本大震災直後の心象”という材と、氏の豪放磊落さと構築への意思とが、なぜ白黒フィルムでの端正な撮影、によって結ばれるのか。あのときの、街じたいではない。言葉でもない。数百年に一度の災厄に際し、不変である自身への焦燥でもない。...映画は、街も言葉も人間も、闇の奥からすすけて輪郭を結んでいく煙や影のように、すべてを等価値に、石の奥ににじむ遥かな記憶へと結ぶ。映画『阿吽』は、石の奥に眠る記憶を思い起こすように、あのときを、そしてあるいは、かつて石や木を無心に彫り、その中になにかを探した人々を思い出すのではないかと思った。
木村 文洋 (映画監督『息衝く』)

体内に入れるには濃くて危うい感じがする。黒と白、真実はふたつ。自分の価値にこだわる性は呼吸する影。陰は海に告げる、木と空は沈黙するだけ。木は特に墨液で描いたように見事な存在感。名は体を表す、主人公の犯行は阿吽。
alled of BLYY(ラッパー)

なぜ今、黒白の8ミリ映画なのか。80年代末、大学映研で8ミリカメラを手にした僕にとっても、既にモノクロ8ミリは酔狂の域だった。だが、前時代の機器で写し取る、見慣れた現代に漂うこの寒々しい違和感は何事だろう。ひとコマずつ蠢く粗い粒子が、暗がりを通り過ぎる不定形の影が、映画は決して現実の写実ではないと告げる。
これは闇のなかで観るのが相応しい。
阿と吽の間には恐らく、知ってはならぬ恐怖があるのだ。
山崎圭司(映画ライター「イタリアン・ホラーの密かな愉しみ」「厭な映画」「謎の映画」「鬱な映画」「怖い、映画」編・著者)


レビュー

■neoneo web
映画『阿吽』ただならぬライティングの形態へ
text 菊井崇史

■ASIAN MOVIE PULSE.COM
text ROUVEN LINNARZ

■子午線通信6号
ずるずると切り離せなくなる前に 映画『阿吽』をめぐって 
text 住本麻子

ニュース


■三宅隆太さんが以下2つのメディアにて2019年ベスト映画10本に『阿吽』を挙げてくださってます
▶TBSラジオのアフター6ジャンクション
(12/18放送)
https://www.tbsradio.jp/439969
▶創刊25周年記念号にして休刊号『映画秘宝』
http://www.eigahiho.jp/

■2019年映画ベスト発表号2紙に掲載
千浦僚さん(映画系文筆)が「映画芸術」ベスト5「キネマ旬報」ベスト10に挙げてくださってます

■boidマガジンに掲載
原智広さんが映画『阿吽』について書かれた「映画川」の記事が公開されました。
『阿吽』 死者たちと再生と海と静寂と終焉と。
https://magazine.boid-s.com/articles/2020/20200419001/

■ドイツ・フランクフルトで開催された第19回「ニッポンコネクション」(2019年5月28日〜6月2日)の「ニッポンヴィジョンズ」部門で『阿吽 AHUM』が上映されました
渡邊邦彦、上埜すみれ、楫野裕の3名が現地へ。会場はほぼ満席となりました。​

■見逃した映画特集2019『阿吽』上映は満員御礼!
【トークショー】司会:ターHELL穴トミヤ(出演・映画ライター)、楫野裕(監督)、上埜すみれ(出演)、宮下浩平(撮影)
2020.1.17 アップリンク渋谷

■アップリンク吉祥寺(2019年4月13日〜4月26日)盛況のうちに終了しました
▶4月13日(土)19:55回上映後舞台挨拶
登壇者:渡邊邦彦、堀井綾香、佐伯美波、上埜すみれ、宮下浩平(撮影)、楫野裕(本作監督)
▶4月16日(火)19:50回上映後ライブ&トーク
出演:太陽肛門スパパーンによる特殊ユニット featuring 中尾勘二、しじみ(特別ゲスト)
▶4月18日(木)上映後トークショー
ゲスト:七里圭(映画監督)
​▶4月19日(金)上映後トークショー
ゲスト:高橋洋(映画監督・脚本家)
​▶4月20日(土)上映後ライブ
出演:BLYY
▶4月21日(日)上映後トークショー
ゲスト:武田崇元(八幡書店社主)
​▶4月23日(火)上映後トークショー
ゲスト:伊藤洋司(中央大学教授)
​▶4月24日(水)上映後トークショー
ゲスト:中原昌也(作家・ミュージシャン)、田村千穂(映画批評・研究)​▶4月25日(木)上映後トークショー
ゲスト:三宅隆太(脚本家・映画監督・スクリプトドクター)
【ダイジェスト】https://www.youtube.com/watch?v=5rdyp4EUNRQ&t=27s

▶4月26日(金)上映後舞台挨拶
登壇者:渡邊邦彦、堀井綾香、上埜すみれ、宮下浩平(撮影)、楫野裕(本作監督)

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