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空と海と、6日目

2019年5月1日
十八番札所
十九番札所
薫風に命が躍る五月。
朝食はカレー。
朝からもたれないだろうかと案じたが、イチローも食べていそうだし問題はなかった。

サラダやヨーグルト、小鉢まで付いてお洒落⭐️これがワンコインだと言うから、おもてなしを感じる。
レンコンを模したコースターはステキだったし、朝食も奥さんのセンスがきらりと光っている。

前の席には、昨夜はお会いできなかったフランスから来た女性が座っていた。
🇫🇷フランス人は四国に多く来ていると聞くが、本当だろうか。
会話も出来なかった。
いろんな国の人が来るから大変だと、昨日奥さんが話していた。
感心するのは、外国の人たちがこの宿を知っていることである。

☕️

食べ終える時を見計らって淹れ立てのcoffeeがふるまわれた。後に利尿作用のあるものは今後NGだと誓うのだった。 

小雨が降るなか25㎞~26㎞の歩きで、途中18番と19番を打つ。

痛み出した🦶小指のマメに一抹の不安を抱くも、オーナー夫妻に見送られて気持ちよく出発した。

この宿を発つ人は、皆こうやって気持ちよく出発するんだろうな。

この宿に泊まれて良かったー

    大当たりだ🎯

歩き遍路には間違いなく、おススメの宿である。

地図を凝視しながら道路沿いを歩いていると、右側に阿波踊り会館が見えてきた。その後ろが眉山なんだぁ、と素通り。

こんな道路沿いにもちゃんと遍路の墓標があるのが心強い。

間もなく車に乗ったオーナーが、私の歩く道を追って忘れ物を届けに来てくれた。

ありがたい。

   はい!またです😫

連続して色々なものを忘れる『忘れな草』ならぬ『忘れ女』だと開き直る。

それから後が大変だった ‼️

コンビニやマックを見ると、トイレを借りる始末。

トイレを見ると反射的に行きたいと思う脅迫観念みたいなのがあり、これはランニングの時と同じでホノルルのときはトイレに7回も行っていた。どう考えても多すぎる回数。

早いランナーはフルマラソンでもトイレには一度も行かないのに・・・

突然ランニングの話題になったが、私は10年前からクラブに入って走っている一応ランナーなのだ。亀だが。

トイレ拝借のお店に入ってから、濡れた雨具を着た上からセカンドバッグを外して・ザックを降ろし・菅笠をとってトイレに入るのだが、この作業がけっこう面倒なのだ。

どのトイレでも、これを繰り返している。

朝の☕️coffeeは失礼になってもお断りすべきだったと、後悔すでに遅し。

尿意に懲り懲りしながら、十八番・恩山寺に向かっていた。

ここは弘法大師母公ゆかりの寺で、山門がとてもチープで分かりにくいらしいのだ。

10回打った人でも、山門から入ってない人が居たとの情報。

それを聞いていたので、ふと見ると本当に粗末な山門らしきものがあった ❗️

丁度その周囲を掃除していたおじさんが居たので、これが山門かと尋ねると合っていた。
よし!

見るからに人の好さそうなおじさんで、前歯がなかった。

4本か5本・・・

おじさんが、遍路道はこっちだよ!と、車道でなく明らかにきつそうな山道を👉指していたが、歯が気になって仕方なかった。
それで、まんまとキツイ山道を上る羽目になっていた。
        😫

話は変わり…

今朝6時前に、ビキニ娘からmessengerが来ていた。 『私達は寺院10と17を逃した。今、私たちはシドマにいます。雨が降っているので計画を変更しなければならない』

     シドマ?

分からない地名だった。

思い出したようにmessengerが届くけど、私のことは一応覚えてはくれているのね、ビキニ。

十九番・立江寺を打って、道の駅『ひなの里かつうら』に向かった。本日の宿泊施設『ふれあいの里さかもと』が遍路道から離れているため、付近の道の駅まで送迎サービスをする。
廃校になった小学校の跡地を利用したそこは、人気の宿だ。

辺り一面に田んぼが広がっているが、歩く道は殆どが舗装路であるためトレッキングシューズだと硬いので、足の裏が痛む。

値の張るインソールを敷いているが、やはり痛い。輪をかけて小指が劇的に痛み出すのだ。😰😰😰😰

いたい、いたい、痛い、痛い、イタイ、イタイ。

どんどん痛みが増してくる。

肩でなく、小指が・・・

程なくして、宿泊も兼ねた遍路小屋があった。
戸を開けると、板垣退助のようなヒゲのお爺さんと若い子が二人いた。入らずに外のベンチで靴を脱いで休息をとっていると、湯飲みにお茶を入れて持ってきてくれたのが板垣退助だった。

私のマメ痛を知り、靴下の上から買い物袋を履くと痛みが和らぐと言う。

      は?

5万㎞歩いている自分が言うので間違いない!と豪語する。

後から来た男性もマメ痛だったので、狐につままれた思いで一緒にビニールを履いたのだった。靴下の上に。

あの、スーパーでもらう、シャカシャカ音のする買い物袋のビニールである。何をしてもいいので、このマメ痛を減らして欲しかった。

それにしても、シューズと靴下の間にはビニールで覆われ、これが摩擦を減らしマメも防ぐというのだから、超原始的だ。

   ほんまかいな!

天気も関係してなのか、そろそろガタがくる頃なのか、肩とマメと全身が痛いし怠い。  
酷く怠い。

降りしきる☔️雨の中、痛みと格闘しながら歩いているとシャレた文字の看板に遭遇する。


  『こはくの天使30m』


徳島バーガー発祥のお店であることはリサーチ済。パンは元々好きではなく、ましてやバーガー普段でも食べることは滅多になかった。

でも、2度と来ないかも知れないこの遍路道で、噂のお店に寄らないのもB級グルメを愛する者としてどうなのか?そこには☕️エスプレッソがあるかも・・と数秒の葛藤の末に、30ⅿならと足を運んだのだ。

するとお店の前は、祭日でもあり多くの車が停まっている。

びしょ濡れのカッパを着たお遍路さんが、もし店内に入ってきたらお客さんはどうなるのか、5秒くらい想像した。そして立ち寄るのをやめたのだった。

誰が考えても、正しい判断。 

ムダな60mだったと思いながら歩を進めるが、行かなかったら行かなかったで後悔しているかも知れないのだ。

やるかやらないか迷ったらやって後悔しろというのを思い出した。

それにしても、なかなか目的の道の駅に辿りつかない。思いのほか長く感じる。
歩けど歩けど、道の駅の標識が出てこないのだ。

雨の日だからそうなのだろか、どんよりと長く長く感じる。

十年以上前に、TVでお遍路さんの特集があり朝一に雨の中をカッパを着て歩く出す姿を見たときに衝撃だった。こんなこと絶対に出来ないと思ったのだ。

はい、今まさにそのTVの中の人になっている自分。

お遍路さんがあの雨の道のりを歩くとき、何を考えているのか気になるところだろう。この時の私は、まさに無の境地。

ただ一つだけ、クラゲになりたいと思った。彼らには脳みそがないので、そもそも苦しいなどの感覚がない筈だから。惰性で足を前に出して、前方の危険だけを避けている。

カッパの中は蒸し蒸しして気持ちが良いものではなく、不快指数MAXだ。

それに、ひどく疲れている。

やっと道の駅が見えたときは、霧が晴れたような気分だった。

あった!!

道の駅『ひなの里かつうら』

宿に電話した時に、そこのベンチで待つように言われたが、少し先の方に東屋があったので覗いてみた。

雨を防ぐことが可能な東屋に行くと、そこで泊まるらしいノジュカーの男性2人から突然「お接待です!」と🍌バナナと🍊ミカンをもらう。

なんか猿のオヤツのみたい。

やけに明るい男性たちは「記念に写真を撮らせて!」とこれ又はしゃぎモードで、携帯を私に向けるので「ダメ!」💢💢と言うと「初めて断られたー」と。

勝手に写真なんて、事務所を通してもらわないと困るのだ。
疲れすぎて、こうしてテンションが高くなる人がいるのか、それとも私がげんきんなのか。

😡😡

間もなく宿のお迎えの車が来て、廃校になった小学校の跡地に向かった。全国で廃校になった学校は少なくないが、こうして宿泊施設として人気を博すまで頑張っている自治体もあるのだ。
改めて感心する。

前もって相部屋と聞いていた。その相部屋に行くと、布団20組は敷ける広い部屋で先客の林さんがいた。

彼女は遍路を区切り打ちで一巡したとのことで、今回は別格二十霊場をピンポイントで回っていた。 

※別格二十霊場とは、88ヶ所以外にも番外札所として弘法大師に縁のある寺がある。  その内の20ヶ寺が、四国別格二十霊場と呼ばれ、88ヶ所と合わせて参ることで、108の煩悩が消滅すると言われる

お互い脚の具合が悪いことを話していて、私は10年前の臓器の手術が原因かもしれないと打ち明けた。手術によって目的は果たせたが、他にしわ寄せが来たのかも知れないと説明する。

職場が医療関係だという彼女は、患者さんが治してくださいと言うのは間違っていると力説する。

良くなることはあっても、元のように治るなんて考えがそもそも間違っていて・・・と話す彼女に向かって「もしかしてドクター❓」と尋ねると、首を振った。

💋口角の上がった彼女は、話し口調からして生きることを楽しんでいるような明るい女性。

相部屋と言うことで宿泊費が500円引きだったけど、あんな広い部屋に一人で泊まる方が怖かった。

林さんと相部屋でよかった。

赤の他人と相部屋で良かったなんて思うことが、不思議だが本当にあるのだ。

食堂に行くと、私たちと男性3人がいたが話が少し通じない。皆さん遍路経験者みたく、あのルートはどうだとか詳しいのだ。
明日は鶴林寺と太龍寺、『鶴』『龍』は共に難関だと聞いているが、それより何よりルートそのものが分からない私はチンプンカンプンで、それでも🍚🍚🍚 3杯のご飯を食べながら経験者の話に耳を傾けていた。
ルートなんで一本道だったら迷わないのに、色んなルートがあるから迷うんだと素朴に思ったが、そもそも『道』なんて人が通って初めて道になるのだから、何通りかあって当然なのだ。
疲れで頭が回転しないし、眠くてたまらない。
この頃から、前半の睡眠不足のしわ寄せか「眠い」を連発していた。


部屋に戻り、これからの計画を同室の林さんに訊かれて話した。

そこは絶対ムリ‼️とか、この歩きはアスリートじゃない限りNG‼️とか、又この宿はキャリーサービスしているらしい‼️とか、ここは船で通ると何㎞か歩かずに済む等々のお宝情報が満載だった♡

すごい!さすが経験者。

この人の話を逃したら、この先に私は絶対に後悔する。

それなのに私はこの世で一番重たい『アレ』のせいで、このお宝情報を一部しか聞けなかったのだ。

残念無念とはこのことである。

そのアレとは = 瞼 👁

一巡している林さんの話を、もっともっと聞きたかった ‼︎

そして確実に言えるのは、情報は現地で調達するものが一番!

林さんの情報が欲しくライン交換を申し出るも、文明の機器は持ってないんだという。

そうなんだと別に驚かなったが、翌日彼女はタブレットを持っていたのだ。

チャンチャン。 

そう言うば、北海道のちゃんちゃん焼きの名前の由来を知りたい。

広い部屋の隅で、📺 新天皇の映像が繰り返し流されていた。

今日から新元号が始まり日本全国浮かれムードのとき、私は徳島を9時間歩いていたのだ。

それも雨の中を地味に。

明日は2度目となる『遍路ころがし』で2つの山越えとなる。今日降った雨のせいで、滑りやすくなっているんだろうな。

不安と、痛みと、眠気と、そして怖さで震えそうだ。🥶

ルートも地図もない。
なぜ地図がないのか、分からない…

それでも遍路ころがしの焼山寺を乗り越えた自信が余韻となり、明日に繋がるのだった。 

本日、49.502歩  

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