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引っ込み思案な中3息子が人前でソロを歌った。背中を押してくれたのは「ハートグローバル」

感受性が豊かで、歌が大好き。

だけど引っ込み思案で人前では猫をかぶっている中3息子が、
勇気を出して人前でソロで歌った。

母はもう涙腺崩壊である。

1.「This is Me」な世界観


それは、「ハートグローバル」というアメリカの非営利団体が来日して開催されたミュージック・アウトリーチ・プログラムでの出来事。


実はこのプログラム、かなり前から興味があった。


HEART Globalが届けるプログラム

若くて一流のキャストがリードするダイナミックで楽しい
ワークショップは、音楽、ダンス、パフォーマンスを通じて、
心を開かせ、物怖じしない姿勢やチームワーク、そして
文化的多様性を育みます。

HEART Globalのワークショップは、若者が自分だけの
世界、恐れ、限界から一歩踏み出し、彼らの本当の可能性を
伸ばせるように働きかけます。

わずか3日間で作りあげる歌とダンスのショーのプロセスの中で、子どもたちに心を開かせ、「自分を表現しても大丈夫」というメッセージを伝えてくれると聞いていたからだ。

もともと人前に出る方ではない息子だが、表現への意欲は高くて、家では高らかに歌ったり、絵を描いたり、およそ「おとなしい子」とはかけ離れているのだが、学校とか人前だと存在を消せるほど印象が薄い子に変身する。

本人は「なんかいろいろ思われたらいやだし」「人間関係メンドイし」ということで、外での自分を抑えているので、学校もあんまり好きじゃない。

親バカ目線かもしれないが、歌ったり絵を描いたりしている息子がすごく活き活きと輝いていて、こんなにキラキラしたものを持っているのに、それを隠しているなんてもったいないなぁと思っていて、もっと個性をグイグイ出してもいいのになぁと感じていた。

このハートグローバル(旧ヤングアメリカンズ)は、「ザ・アメリカ!」なテンションでキャストが迫ってくるので、空気を読みすぎて日本の同調圧力に負けまくっている息子にとって、心を開くきっかけになるのではないかなぁと期待していたのだ。

2.コロナで流れて2年が経った


本来なら中学1年生でカリキュラムとして全員参加するはずだったこのプログラムに大きく期待していたのだが、まさかのコロナ禍到来。

海外からの渡航も規制され、旧ヤングアメリカンズの活動も休止。再開の見通しが立たず、大きな機会損失をしたと思ってとても残念に感じていた。

もし再開するなら、ぜひ息子たちの学年にも参加させてほしいなと思っていた。

そして、大騒動だったコロナもなんとなく騒ぎの波が落ち着いて、徐々に規制緩和され、今年開催のめどが立った。学校にも以前から問い合わせをしていたこともあってか、開催できなかった学年の希望者は参加可能とのこと。

本当なら必修プログラムとして全員参加だったのでこちらが気をもむ必要もなかったのだが、基本息子は新しいものと知らないものが苦手。教育のオプションは付けない方針。なのでプログラムについての説明と、ぜひ参加してほしい理由を粘り強く説明した。

息子はほとんどのものは、しぶしぶ行くけれど「楽しかった」と帰ってくる。今回は旅行のような未知の場所ではなく学校で開催されるし、事前に過去のワークショップの動画を見せたりして気持ちを乗せるよう営業トーク。そのかいあってか、とりあえず参加すると承諾してくれた。

3.ワークショップ初日から「ザ・アメリカ」なハイテンション


そんなこんなでワークショップの日がやってきた。

ワークショップは仕上げるのが目的ではなく、作っていく中で自分が変わっていくプロセスを体験するのが目的なので、保護者はその経過を見学することができる。

わたしはキャストが子どもたちにどんな声がけをするのか、子どもたちはどんな風に変わっていくのかが見たくて、保護者ボランティアに参加しつつ、彼らをじっくりと見学した。

参加者は全員中学生。歌って踊ってを喜んでやる年頃ではなく、みんな恥ずかしそう。

そんなシャイな子どもたちの前に登場したキャストたちはめちゃくちゃハイテンション。わたしが大好きな「ザ・アメリカン」なノリノリテンション。

みんな、思いっきり楽しもうぜ!!!

というワクワクする雰囲気の中で、最初はぎこちなかった子どもたちが少しずつ楽しんでいく様子が伝わってくる。

ちなみにこういうアメリカンな空気感が大好きな私は、自分が参加したくてウズウズ。ヒットメドレーが流れる中、BTSの曲が流れたときには、ちょっと変な人レベルにノリノリになってしまった。子どもとキャストを見守るのが今回の使命だったので、ああ参加したいという気持ちを抑えてノリノリになりながら見守った。

4.2日目、気づいたら息子がソロに選ばれていた


初日が終わって帰りがけ、息子にどうだった?と聞くと、
体力がまったくない息子は「ひたすら疲れた・・・」と疲労困憊。

ふだんとにかく家にいてゲーム三昧なもので家族の誰よりも体力がない息子。そりゃ、あのテンションで歌って踊ってを数時間やったら疲れるよねぇ。っていうか体力作りしろよ・・と思うが、中学生を無理やり運動させることはわたしには無理だ。

そんな疲労困憊な息子を見て、楽しくなかったのかなぁと少し気になったが、家でご飯を食べたら少しずつ復活。疲れているはずがゲームでイキイキし始めたので、まぁ大丈夫でしょう。

ってことで2日目ちゃんと行ってくれるかなぁと心配だったが、文句言わずに行ったので、それなりに楽しかったのかなと思いつつ送り出す。

2日目はわたしがフラメンコレッスンで、その後遅めに見学へ参加。さらに最終日のショーの受付のボランティアをするので打合せに呼ばれたりして、見学する暇があまりなかった。

打合せが終わって見学席で座って少しすると、聞いたことのあるソプラノボイスが聞こえてきた。ふと顔をあげると、なんとうちの息子が台の上に乗ってソロパートを歌っているではないか。

息子は中3だけどまだ声変わりをしておらず、相変わらずのソプラノボイスだ。だけど先日の合唱コンクールでは、女子しかいないソプラノパートに恥ずかしくて行けず、仕方なくアルトに入ったが「声が高すぎる」と言われて大変だったようだ。歌が好きで合唱コンクールも熱が入っていただけに、こういうのも残念だなぁと思っていたんだよね。

初日の夜に息子が、「歌のパートで少し引っ張り出されて歌わされちゃったけど、楽しかった」と話していたので、せっかくなら手を挙げてやってみたら?と伝えていた。

実際のところ、自分から立候補したのか、声をかけられたのかは分からないのだけれど、とにかくビックリした。そしてウルっときた。

5.最終日。圧巻のショーに涙腺崩壊


まさかのソロパートをもらっていた息子。

帰宅してから聞いたら、2日目のワークショップ中に声をかけられ、ソロの練習をしようと言われたとのこと。

ワークショップに何度も参加経験がある友人曰く、

このワークショップは、キャストの目の届き方が素晴らしくで、目立つ子だけではなく、おとなしいけれど前に出したら輝きそうな子もきちんと見出して背中を押してくれるのが醍醐味だと聞いていたので、もしかして息子にもそういうチャンスがあればいいなぁ、と密かに思っていた。

けれど参加者は250人。ソロパートを持つのはせいぜい20人くらいだっただろうか。

そんななかで、歌が好きな息子を見つけてくれて、そんな機会を与えてくれてありがとう、と思った。

わたしの前で歌うのが恥ずかしかったのか、夜中にひとりで練習をしていたようで、パジャマのポケットに歌詞が入っていた。

そして迎えた最終日。リハーサルがあるのでこの日の見学は禁止。最後に仕上がったショーをノリノリで応援するのが今日の仕事。

慌ただしい受付のボランティアを終えて席につく。第一部はキャストによる迫力満点のショー。往年のヒットナンバーに乗せて、めちゃくちゃ元気なダンスや歌を披露してくれる。

このときには子どもたちも観客として参加。今まで歌とダンスを教えてくれたキャストたちだから、応援にも熱が入る。

会場がめちゃくちゃ温まったところで、2部は子どもたちのステージ。みんなお揃いのTシャツを着て、ジーンズを履いて参加。

ふだん洋服なんて一切興味がない息子はなぜか、この日に履いていくジーンズを買いに行きたいと言って、生まれて初めて自分でジーンズを選んだ。

そんな気持ちがこもったショーは、初日、2日目に習っていたダンスや歌が明らかにグレードアップし、しっかりとしたショーに仕上がっていた。

ストンプにサルサと多様な音楽に乗せたダンス、レディーガガとかスティーヴィー・ワンダーなど誰もが耳にしたことがある曲に乗せた歌たち。

そしていよいよ息子のソロ。
もちろん緊張しているように見えたが、ディズニー・メドレーのワンフレーズをしっかりソロで歌い切った。

すごく練習したんだろうなぁという仕上がりだった。

歌い終わった後は、観衆の前で「やったね」と大手を振っていた。サイコーだよ息子。

駆け寄って抱き着きたかったけど、大きな拍手でエールを送った。ショーが終わった後のすがすがしい顔は忘れられない。

最終日だったので慰労会がてら息子と外食して帰ったのだが、あの素晴らしい息子はすっかりいつもの息子に戻り、「母ちゃんが行けって言って頑張ったんだからご褒美ちょうだい」としっかり課金カードを買わされたというオチつき。

6.「自分に拍手!」日本の子どもたちに、もっと伝わればいいな


最初はぎこちなかった子どもたちが、すっかりノリノリでショーを楽しんでいる姿を見て、こういう形のワークショップって本当にいまの日本の子どもたちにもっと必要だなと思った。

ワークショップ中、キャストの声掛けはすべて「全肯定」だ。いいねいいね!最高だよみんな!もっとカッコよくするにはこうしよう!と、すべてが前向きな声掛け。

踊りを習ったら「こんなに短期間でたくさん覚えちゃったよ!すごい!自分に拍手!!!」そんなこと言われたらやる気が出ちゃうってものだろう。

人間て割と単純で、褒められたらうれしくてもっとやる気が出るし、ダメ出しされたらやる気がなくなるんだよね。ダメ出しでやる気が出るストイックな人もいるけど、やっぱ褒められたら悪い気がしないよね。

ダメ出しから始まることが多い日本のお国柄なのか、日本の子は自信ない子が多いと思うし、こんな全肯定な文化の中で育ったら、そりゃ自信たっぷりに育つだろうなと思う。

まぁ、自信があればよいってものではなく、自分の意見に自信がありすぎて、疑いなくゴリ押ししてくる面倒くさい場合もあるのだけど、日本人はこの図々しさ、もっと必要だと思うなぁ。

キャストも休憩中わたしたちに「みんなシャイでカワイイね~」と言っていたけど、決して悪く言わない、そういう表現も嬉しいよね。

多様性だのなんだの、言葉ばかり先走っているけれど、昔から続く文化というものはなかなか変わらなくて、

誰かが右を向かないと右を向けない。左は向いちゃいけない空気感、つまり同調圧力は、学校という集団行動の世界にはかなり強く出てしまうし、まだ学校以外の世の中を見たことがないこの世代にとって、息子など個性が強めでも隠しているような人種には息がしにくいのだろうなと思う。

だけどそれは日本国内の話だけで、欧米諸国では個性を主張してナンボ、自分の意見を言ってナンボ、な文化だ。

いまひとつ学校に馴染んでなくて、世の中そんなに面白くないと思っていそうな息子には、自分の意見を伝えることが良しとされる世界、個性を出して良しとされる世界が、世の中にはあるんだよということをぜひ伝えたかった。

今回の全肯定でアゲアゲのワークショップは、きっとそのメッセージを伝えてくれたのではないかと思う。

新しことが嫌いな息子は、自分から珍しいことに挑戦しない。だからこそ、学校の中に組み込まれたこういう非日常の体験てすごく大事な機会で、実際息子はそのたびに成長している気がする。

今回はソロも経験し、息子の中で何かの成長のきっかけになってくれたらよいなと思うし、それを見守ることができたわたし自身も成長した気がする。

将来はもっともっといろんな世界を見て、自分に合った場所を見つけてくれたらいいなと思っているし、息子が自分の居場所を見つけられるよう、応援していきたいなと思う今日この頃だ。

最後に、このプログラムを主宰しているハートグローバルのみなさん、そしてこのプログラムを学校に取り入れてくれた先生方、カリキュラムとして流れてしまったわたしたちに参加のチャンスを与えてくれたことにも感謝。

いろんな人の尽力があって良い経験をさせてもらえたことにも感謝だ。

これからも「そのままの自分を出して大丈夫」ってメッセージを届けて行ってほしい、と切に願っている。

今回息子が参加したハートグローバルは、全国各地でワークショップを開催しているので興味がある方はこちらを見てみていただければ。


ミュージック・アウトリーチは、30名ほどのキャストたちが学校やコミュニティを訪れ、小・中・高校生たちと一緒に、わずか3日間(地域によっては2日間)で歌やダンスのショーを作り上げます。

キャストたちは、さまざまな芸術分野で専門教育を受けてきています。パフォーマンスだけではなく、教育にも情熱を持っており、多様な年齢、文化的背景をもつ子どもたちを教えてきた経験も持っています。

世界共通言語である音楽を通して数百人の子どもたちが共に学び、お互いの強みを尊重し、自分の可能性を発掘します。



東北の中学生を対象に行ったワークショップの様子。これ泣けます。(現在は団体名が変更になり、これは旧称ヤングアメリカンズとなっている)


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