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乳がん告知の瞬間に頭をよぎったことは、まさかの。【乳がん体験談 その3】


人は、予想外のことが起きたときに、
自分でも想像がつかないようなことを考えるものなんだなと思う。

そんな経験をしたのは
乳がんの宣告をされたとき。


自分で右胸にしこりを見つけたのが、

2016年12月20日。


やけに気になったので年内に結果を知りたいと、
当日エコーの結果がわかるクリニックを探して
予約なしの駆け込みで訪れたのが
12月24日。クリスマスイブだ。


その場で、細胞診は一応取って検査に出すけれども
現時点、エコーとマンモグラフィで見た先生の見解は

「9割がた、乳ガンです」

というものだった。

実質、いきなりのガン宣告だ。

フラリといって「良性ですね」と言われて帰ってくるつもりだったので
当然家族もおらず、たった一人で告知された。

今思えば心の準備がないのは、
残酷だけど、モヤモヤ期間が少なくて、
ある意味わたしには合っていたかと思うが、
その瞬間は頭が真っ白になって、
手がしびれるような、なんとも不思議な感覚だった。

だがその

「9割がたガンです」

と言われた瞬間に頭をよぎったのは
意外なことだった。

それは、
「半年後にある、フラメンコの発表会に出られるか?」

ということ。

わたしはフラメンコ、スペインの踊りにハマっている。
下手の横好きだけど、思い入れは人一倍。

そのことについてはこちらの記事参照。

教室に80歳で元気に踊っている方がいて、
死ぬまで踊りたい!!と本気で思っている。

けれども、

病気のショックより
発表会に出られないかも、
という気持ちのほうが大きい。
というのが自分でもびっくりだった。

当時は自分でも
手術や治療がどうなるか想像もつかないし、

だからこそ半年先に、
わたしにとっての大舞台があることが
気にかかったのかもしれない。

フラメンコの発表会は2年に一度。
その発表会のために2年間振り付けを覚えて、舞台に立つ。
がんになった当時、どうしても、もっと上のクラスに入りたくて
先生が難色を示す中、身の丈以上のクラスに身を置いていて
周りができることが自分にできない、と
悔しい思いをずっとしながら、歯を食いしばって頑張った踊りだ。

そこまで頑張っている踊りを披露する
発表会に出られないなんて、
もう死んだほうがマシだ。

という感じだった。

わたしに突然の「ほぼガン告知」をした先生に聞いた。

「半年後にフラメンコの発表会がありますが、
治療をしたとして、出られますかね?」

かなり食い気味だったので、先生も気圧された感じで
「手術や抗がん剤などのスケジュールにもよるが、そこは治療を受ける病院で相談してください」とのことだった。

クリニックでの受診だったので、
治療を受けるにはほかの病院にお世話になることになる。
 

医師はときにクールな人が多い。
わたしがどれだけフラメンコの発表会に思い入れがあろうと、治療のためといって無下にされたらどうしよう。

そう考えると不安で仕方がなかった。

こちらのクリニックの先生も、わたしがフラメンコにこだわっている様子だったので、もしや治療を受けないつもりではないかと思ったのか、慌ててわたしを諭すように

「今やガンは治る病気です。
乳がんは治療法も確立されています。
手術して抗がん剤して、
きちんと治療を受ければちゃんと治ります。
だいたい1年で大まかな治療は終わると思います。
だから必ず、しっかり治療をしてください。」

と念を押した。

あまりに熱心な説得なので、
なぜそんなことを言うのか先生に聞いてみた。

すると、
ガンになった自分の現実から目を背けてしまい、
病院で治療を受けないまま進行して
手が付けられなくなってから来院したり、

手術をしたくないために、自然療法に頼って
やはりおおごとになってしまったケースなどが
後を絶たないのだそう。

だから私みたいな、突然の乳がん宣告にもかかわらず
「フラメンコやりたい」とかいう人はヤバイと思ったのだろう。

わたしは子どもも小さいし、まだまだ生きたいと思っていたし
悪性腫瘍ならば、患部を取ってしまえばとりあえず何とかなるだろうと思っていたので、もちろん治療は受けるつもりだったのだが、
実際には怖くてしり込みしてしまい、
治療を受けずに進行するケースがあると知って驚いた。

この乳がん体験のブログは、
必要な人に届けばよいなと思って書いているが、

自分が体験したありのままの感想を書くことで、
ここで聞いたような治療にしり込みしてしまっている人だったり、
ガンの治療が怖いと思っている人にも、

「わたしの場合は、とりあえず治療も大丈夫だったし、
治療後の今は普通の生活を遅れてますよ」

ということを知ってもらえれば良いかなと思っている。

そして、とにかくフラメンコである。

手術もすることになると思うので、
フラメンコの先生にも伝えなければならない。


病気を隠そうとする人もいるが、
わたしは1つ隠し事をすると、
いろんなことを隠さなくてはならなくなり、
疲れるのが嫌なので、

そのまま現状と自分の気持ちを正直に伝えることにした。

わたしが出るのは群舞の舞台だ。
半年後のフラメンコ発表会に向けて
そろそろフォーメーションも決まりそうなので
病気のことをフラメンコの先生に伝えないと、と
1月末のレッスン後に先生に話をした。

もしかして
「無理しないで不参加にしてください」
なんて言われたらショックだよなぁと思いながら話したけど
結果は逆で

「いざとなったらフォーメーションなんてどうにでもなるし
なにか目標があると、治り方が全然違うから、発表会に出る前提でいてくださいね」

と言ってもらえて本当に元気が出た。

ついでに涙も出そうだったのでこらえた。
先生は涙ぐんでいた。


先生のお友達のフラメンコ講師の方でも
乳がんの治療を克服して
今も踊り手として元気に踊ってる方がいるとのこと。

乳がんの手術後って腕が上がらなくなるので
リハビリも必要だというし
そのあたりもリアルな体験談を聞けるので、
よかったらその方を紹介しますよ、と言ってもらえて
ありがたかった。

自分が乳がんになったというのに
乳がんの手術や抗がん剤の不安よりも
発表会に出られない不安の方が大きく
頭の中は「フラメンコ」で埋め尽くされていたので
乳がんがスルーされていたのが幸いして、

結局、抗がん剤を打ちながら
発表会に出ることができたのだが、
その話は長くなるので、
また別の機会にさせていただく。


「乳がんです」と言われて
「フラメンコの発表会」が出てくる人もあまり多くはないと思うが

人がビックリした瞬間に頭をよぎる事は、
自分がすごく大切にしていることなんだな、と思う。


今日も最後までお読みくださりありがとうございます!

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