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志望校選び次第で、受験は「結果」も「思い出」も大きく変わる

 一男一女、我が子の小学校受験、中学受験、大学受験を経て、泣き、怒り、悩み、笑い、叫び……うまくいかなかったこと、親として反省すること、今思い出しても自分で自分が嫌になるくらいの黒歴史はあるものの、子どもたちの受験を通じて、子どもも、私も、そして家族も大きく成長できたかなと思っています。

 受験は合格か不合格か、志望する学校に入れるかどうか、という結果が必ずでます。受かれば天国、負ければ地獄。例え、第一志望の学校でなかったとしても、不合格の文字を見た瞬間、心がずどんと重くなる……。小学校受験、中学校受験までの志望校選びは、子どもだけでなく、保護者の影響が大きく、わずか6歳や12歳の子どもが「受験」の結果、またその後、受験というものをどう捉えていくのかは、保護者の選択次第ということではないでしょうか。

受験で目指したいこと。 


子どもにとって、後悔のない受験、がんばった自分を認め、次へのエネルギーにできるような受験にできたら、そんな風に思っています。


中学受験の場合。


 塾の保護者会では志望校選びに「挑戦校、実力相応校、安全校」で考えるよう、言われることが多いです。学校情報集のようなものにも、志望校選びの例が、この3つの分類で書かれているものもあります。ある程度、偏差値という尺度がある中学以上の受験においては、3つの指標を使った志望校選びは行いやすいです。でも、志望校は偏差値だけでは決められないのが、中学受験。多感な時期、そこで出会う友達や先生は、その後の人生に大きく影響を与えるでしょう。それぞれ個性も出てくる頃ですから、子ども自身が「こんな人達と一緒に学びたい」「こんな先輩のようになりたい」と思えるかどうか、それがけっこう大事なのだと思います。
 
 我が家の場合は、私自身が中学校受験を経験しているのと、中学校受験を目指す子どもが多く通う小学校に通っていたので、情報もあり、私の中である程度のところまで候補を絞ることができていました。そう、ここで大切なのは、すべて子どもが選ぶのではなく、ある程度、保護者が学校の特徴を把握してから、将来までを踏まえ、我が子にあっているのではないかと思う学校を子どもに見せること。子どもも12歳になれば、この学校に行きたい」という意志もはっきりしてくるものの、その理由が「プールがない」「校舎がきれい」「制服がかわいい」「友達がいいと言っていたから」というようなものも多いからです。

 学校の教育方針、校風、付属か進学校か、進学校なら進学実績、付属校なら大学の状況、授業形態、クラス分け、部活、通学のしやすさなど、いろいろな観点から、我が子を通わせたいと思うところの候補をみつけていくとよいです。今はコロナ禍で定員を絞っていることもあり、リアルの学校説明会への参加はなかなか難しいですが、学校のホームページも充実していますし、塾の情報含め、情報はあふれています。その膨大な情報の中で候補を絞っていく、ここまでは保護者がやらないと、勉強に忙しい子どもにはなかなか難しいことでしょう。
 我が家の場合、候補は絞ったものの、その中には、付属校も進学校もありいろいろな学校に連れていきました。子どもは敏感ですから、学校の雰囲気を感じ取り、自分とあうかどうかを判断しているようでした。そして、驚くくらい、在校生の細かい行動も見ていて、最終的には「あんな風な人になりたい」といって第一志望校を決めていきました。
 
 しかし、第一志望校に合格できるのは、3割と言われる(ベネッセのデータでは6割だったりで、真偽は定かではありませんが、よく言われます)中、親としては、できるだけ合格の可能性の高い学校に出願したくなってしまうもの。私もそうでした。小6の夏、秋から始まる志望校別クラスの入塾テスト。息子は第一志望の学校のテストには、なかなか合格できない。でも偏差値が3くらい下の学校の志望校クラスの入塾テストでは1位を取るという状態。塾からは当然、第一志望を変えましょう!と何度も言われました。
 仕方がない。志望校を変えるように息子を説得しようとしていたある日、学校の担任の先生との個人面談がありました。
 「〇〇くんはお母さんが思っているより、ずっと男っぽい、強い子ですよ。〇〇を第一志望にしているのは、自分のことがよくわかっているのではないですか。きっと合っていますよ」と言われ、私の知らない息子の一面がわかったような気がしました。
 その後、「第一志望を親が変えさせてはダメ」という先輩ママからのアドバイス。そんな言葉で冷静になってみると、志望校を変えた方がいいと思っていたのは、私が安心したいからだったのではないか。息子のためと言いながら、息子の挑戦をあきらめさせることは、息子の後悔につながるのではないか。そんなことに気づき、塾の先生の猛アドバイスを受け入れず、第一志望は息子が決めたところを目指すことにしたのです。(この間、無茶苦茶心の葛藤がありましたが)

 となると親の役割は、併願校を決めることです。当然、受験が近づいてくると、「全落ちしたらどうしよう」という不安にかられてきます。ここは偏差値表とにらめっこをしながら、学校説明会の印象、受験日程、学費の納付期日、出願の締め日をみながら、いろいろなケースを考えていきます。どうしても迷った時は、子どもにその学校の過去問をやらせて、相性をみて決めていきました。そこまでくれば、全落ちの恐怖からは、だいぶ解放されます。母親の心の安定は、子どもに伝播しますから、子どもの心も安定し、さらに本気で第一志望に集中します。子どもの集中力は、時にとんでもない力を発揮する、私はそう思っています。

 学校へ通うのは子ども。だから、第一志望は子どもが決める。チャレンジして合格できればそれはもちろんよし。しかし、もしチャレンジに失敗したとしても、「チャレンジした。力を出し切った」ことは、賞賛されること。とはいえ、3年間、夜まで塾で勉強し、がんばってきたのですから、やはり合格は勝ち取りたいもの。例え併願校であったとしても「合格」というのは自分は認められたという、未来へ向かうエネルギーにつながっていくのではないでしょうか。

 「合格をいただいた学校が、一番自分にあっている学校」として、第一志望でも併願校でも、自信をもって中学生という新たなステップを踏み出してほしいと思っています。

小学校受験の場合。


 一方、幼稚園や小学校受験ではどうでしょうか。そもそも偏差値という尺度はありません。あるのは倍率と幼児教室の先生がいう「いい学校。上の学校」として名前があがるかどうか。家庭の教育方針にあった学校選びをということについては、別の記事に書きましたが、やはり人気がある倍率の高い学校=難しい学校という意識が働き、お子様の成績があがってくると、いつのまにか志望校が変わっていくというケースを幼児教室の講師として、よく遭遇してきました。また、最近、よく聞かれるのが、
「あまり無理はさせたくないんです」
「第一志望がダメなら、公立でいいので、他は受けません」
の2つ。

 確かにわずか5歳、6歳の大切なお子様。小学校受験では、ペーパー、巧緻性、生活習慣、絵画制作、体操、行動観察など、多岐にわたる準備が必要で、あまり無理をさせたくない、その気持ちはわかります。でもいつも思います。学ぶことは楽しいこと、勉強をする環境が与えられているのは幸せなこと。特に、小学校受験の学びは、生活そのもの。ペーパーで出題されている問題も、考え方は日常の生活や遊びの中で身に着けられるものが多くあります。具体物で自分で手を動かして考えたり、お友達と接することで、言葉を覚えたり、人の気持ちを考えるようになったり…親の関わり方次第で、受験の準備が親子の楽しい思い出となるのか、苦い思い出になるのかが決まるのではないでしょうか。

 そして、第一志望以外受けないという選択。小学校受験はかなりレアなもので、「この学校に通わせたい!」と強く思って目指す方が多いので、このようなケースはありうることです。ただ中学以降の受験と違い、小学校受験は本当に予測がつきにくく、合格するだろうと思っていたお子様が、行動観察で同じグループに元気なお友達がいて、ふざけてしまって残念な結果になってしまったりすることはめずらしいことではない中、せっかく何年もお勉強をしてきたのに、〇がもらえなかった、という経験はどうなのかなという気持ちになります。

 だから志望校選びで私がお伝えしていることは、「行く、行かないは別として、1校は〇をいただけるように考えての出願をお勧めします」ということ。小学校受験ともなると、お子様もある程度、自分の置かれている状況は理解しています。万が一の時、「どこも〇をもらえなかった」として終わるのか、「〇をもらった」として終わるのかは、大きく違うのではないでしょうか。

 「練習のため」「すべり止め」という言葉、私は大嫌いです。どんな学校にも魅力、特徴があり、それが我が家に、我が子にとってどうかが小学校受験です。ただ、確かに、合格をいただきやすい学校、合格が難しい学校はありますので、我が家にあっている学校で、第一志望の学校+合格をいただきやすい学校で併願校を考えること。こうすることで、保護者の心の安定が得られ、結果、そんなママやパパと接することで、お子様の心も安定し、第一志望へ向かうエネルギーにもなっていくのではないでしょうか。

 志望校選択、出願の仕方で受験の結果は大きく変わり、受験という経験をどう捉えるのかも大きく変わります。受験というチャレンジが、未来へのエネルギーへとつながっていくことを願って…今日も受験生と向き合います。

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