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100年続く経営を支える 「やんごとなきコミュニティマーケティング」


「コミュニティ」というものに関わりまくった私の10年間。突如として「言葉にしてみよう!」と思い立ち、私がこれまで実際に関わってきた「コミュニティ」について書いています。

第一弾は、初めて入ったオンラインサロンについて。


第二弾は、宝塚のファンクラブというコミュニティに入るまでのお話。
今日の記事は、こちらの続きです。


沿線に人を呼ぶための「娯楽」のひとつだった宝塚歌劇団


宝塚歌劇団は、大正3年(1914年)に初の公演を行いました。つまり、今年で創立106年を迎える団体です。106年ってすごくないですか?
ラブソルは、まだ6年目に入ったところです。ぴよぴよです。それでもここまで続けるのに必死です。
それが100年以上も継続するとは…、一体どれだけ市場から、人から必要とされてきたのか。気が遠くなりそうだし、尊敬の気持ちでいっぱいになります。

宝塚歌劇団は、営利目的の演劇集団です。100年も続くと文化と言えますが、間違いなく利益を出しているのです。
その発祥は、鉄道会社が沿線に人を呼ぶために作った温泉地の娯楽のひとつでした。

そのような位置付けにある間は、単体として利益を出す必要はなかったそうです。しかし外部環境の変化によって、鉄道事業の収益の悪化等の影響を否が応でも受けることとなり、阪急グループの歌劇事業部として利益を出すことを求められるようになりました。

そこで、宝塚歌劇は様々な施策を打ち出して行きます。その辺りは、ぜひこちらの本を呼んでください。普通に読み物として面白いです!


収益体制の一端を担う、クローズドなファンコミュニティ

世に多くの演劇集団はあれど、宝塚歌劇団の存在感はなかなかのものです。本拠地、兵庫県宝塚市にある宝塚大劇場はキャパ2500人、東京の日比谷にある東京宝塚劇場のキャパは2000人。平日二回公演でもこれだけのキャパシティーを一ヶ月公演の間、基本的に満杯にしてしまうのです。

本に書かれている戦略も面白いし、ただただ感心してしまいます。しかし、私が実際に見て、触れた宝塚歌劇の人気の秘密は、劇団側のお話ではありません。


それは、今でいう「コミュニティマーケティング」そのもの。100年もの間、ファンの側が半クローズドな世界で「やんごとなく」脈々と受け継いできた巨大なファン集団を形成し、劇団の揺るがない収益体制の一端を担っているのです。

担っているのは、歌劇団非公認の私設ファンクラブ。宝塚の世界では「会」と呼ばれているものです。

あまりにも膨大な情報量になるので、ぎゅっと絞って書きたいな、と思っています…。できるかな。

この、私設ファンクラブの特徴をまとめてみます。

・運営はすべてボランティア、あまりにも自然に形成されるコミュニティ
・贔屓(推し)をスターにする、という共通の目的を持つ
・運営に関しても、ファンクラブ内の序列に関しても下克上があり得る、有機的集団
・完成されていなくていい、スターの成長をリアルタイムで見守り支える
・劇団のスターシステムと連動した絶妙な「ピラミッド」構造
・「タカラジェンヌの卒業」という期限を持つ
・公な情報発信は一切行わない、あくまで活動はクローズドで行う
・タカラジェンヌ本人の稼働は最低限

特徴をざっと眺めただけでも、コミュニティとして強くなる要素も大きくなる要素もしっかりと持っていることがわかります。


運営側に入って見えた、「コミュニティ」を持つ強さ


はじめはいちファンクラブ会員としてスタートした私は、元来「やるならとことん」な性格を持っているため、いわゆる「貢献」をしまくりました。

宝塚のファンクラブおける「貢献」とは、具体的に言うと以下のようなものを指します。

・ファンクラブから公演チケットを買うこと
この場合、会員本人のチケット申し込みだけだと金銭的にも時間的にも限りがあるので、「友人分」と言う名目で会から何枚チケットを買えるかが大切になってきます。
これは、タカラジェンヌ本人の営業成績になります。人気が劇団に如実に見えるものでもあるので、会としてはなるべく多くのチケットを捌きたいと考えます。
・「お茶会」と呼ばれる公演ごとに開催されるパーティーに参加すること
ファンクラブが主催する、タカラジェンヌ本人も参加するパーティーが「お茶会」です。(細かく分類すると色々あるのですが、ここではざっくりで。)
こちらも会員本人の参加だけでは「1」に過ぎないので、ネットワークを駆使して何人呼べるか、が焦点になります。
トップスターの会では放っておいても1000人規模で人が集まるので、この傾向は薄まり、むしろスターなのかそうでないのかくらいのギリギリ立場のファンクラブの方が重要視するポイントです。
このパーティーでは物販も行われ、会にとって大事な収益源でもあります。
・「入り出」と呼ばれる、生徒の楽屋の出入りの際の集まりに参加すること
公演やお稽古のために楽屋に出入りするタカラジェンヌを、会ごとにまとまって迎えることを「入り出」と呼びます。ファンクラブ会員しか参加することができません。
目的は色々ありますが、タカラジェンヌをガードする、と言う名目で行われます。
ほんの数分ではありますがタカラジェンヌ本人と会い、お手紙を渡したりちょっとしたお話を聞くことができる貴重な機会でもあります。
他の会や入り出を見学する一般の方に、何人のファンが動員できるのかが目に見えてしまう瞬間でもあるので、会としてはなるべく多くの会員に入り出に来て欲しいと考えるのが通常です。


上記の3つをバランス良く頑張れたら、それは優良会員と言えるでしょう。しかし、そのような人はほとんどいません。

・お金があっても人脈がない
なるべく観劇する、物販のグッズを買いまくる

・お金はないけど人脈はある
自分は観劇しなくても人にしてもらう、パーティーに人を呼びまくる

・お金も人脈もないけど時間だけはある
入り出に参加しまくる

このように、それぞれの人がどこかでは「貢献」できるようになっている、絶妙な設計になっています。

運営側に入ってみてわかったのですが、絶対にお金がないといけない、絶対に人脈がないといけないというような状況だと、リソースを持たない人にとっては頑張りようがなくて諦めてしまうため、決して会は大きくならないのです。

そのため、私のいた会では多様性を受け入れ、「貢献」に様々なかたちを用意し、どの「貢献」に対しても報われたと感じられるものを用意しました。
上記の3つの内のどれかがないと得られないインセンティブや、3つとも頑張った場合のインセンティブなどを設定し、モチベーションを設計したのです。

インセンティブが会員の目に見えるようにすることで、会には自然とヒエラルキーが形成されます。
会の目的がタカラジェンヌを応援しスターにすることである以上、より多く「貢献」した人がヒエラルキーの上に行くのは、ある意味当然のことなのです。

この時大切なのは、このヒエラルキーを固定化されず流動的なものであるように設計することです。古参や貢献度が高い人が偉くて、そのポジションがが入れ替わらないとなると、新しい人が入って来ても活躍できず居づらくなってしまいます。

いやー、この仕組みを持てたら、強いですよね。
目に見える形での「貢献」をしてくれるモチベーションの高い人たちを囲う集団を持てるのですから。

劇団側としたら、私設ファンクラブが勝手にこのような集団を形成して販促を行い、タカラジェンヌ本人のモチベーションすら上げてくれる。

タカラジェンヌとしたら舞台に集中するためには稼働が割けない中、ファンクラブが本人に代わってファンを取りまとめチケットを売ってくれる。

ファンにしたら、ファンクラブ会員になることでより直接的な応援ができたり、実際に会う機会を持つことができたりする。

かなりの三方よしな設計なのです。ただこれ、どの会でも実現できていたとは限りません。

あーこれ、続きます!

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Yuka Shibayama
会社を経営したり、オンラインサロンを運営したり、秘書をしたりしているワーママです。

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