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2022年IISS活動記録(海外出張・登壇編)

パンデミック後の規制が緩み始め、溜まりに溜まっていた出張を重なり、全部で15回の海外出張を行いました。以下、今年本業内外で行った出張を時系列に簡単にまとめてみました。


第一四半期(1−3月) 

(1) シンガポール🇸🇬

IISSシャングリラ対話シェルパ会合
国際問題戦略研究所(IISS)が毎年6月に開催しているシャングリラ対話(閣僚級アジア安全保障対話)の準備の一環として、毎年1月にシャングリラ対話のシェルパ会議を開催し、政府高官や有識者をお招きして地域の安全保障情勢や防衛・安全保障課題のドレンド等について議論しています(トラック1.5)。今年は第10回目でしたが、フラートン・ホテルで開催し、20ヶ国から150人が参加しました。

IISSの正式な情報はこちらからどうぞ。

2023年1月には次のシャングリラ対話に向けて、15−17日にシャングリラホテルでシェルパ会合を開催予定です。

(2) チェコ(プラハ)🇨🇿

3月頭には弾丸でチェコの安全保障系シンクタンク、Prague Security Studies Institute (PSSI)が主催をした、欧州とインド太平洋地域の宇宙安全保障分野における協力の会議(トラック1.5)と、付随して開催されたパブリック・フォーラム(ハイブリッド形式)に参加をしました。

パブリック・フォーラムのウェビナーの様子をシェアさせていただきます。

チェコは今年7月1日から12月の間、EU理事会の議長国に就任することから、ちょうど2022年3月は、同国の強みであるサイバーや宇宙分野に注力をしたインド太平洋政策の立案に向けて政府や議会が動いている時期でしたまた、開催日時が「国際女性デー」の3月8日に近いということで、パネリストも皆女性でした。

初めてのプラハ、会議前に少しだけ観光をすることもできましたが、残念ながら続けての中東出張で滞在時間は一日のみとなってしまいました。

(3) サウジアラビア(リヤド)🇸🇦

IISSリヤド防衛フォーラム

3月続けて、3月5日にはIISSの中東オフィス(バーレーン)と防衛・軍事分析部門が中心となって開催した、初めての「リヤド防衛フォーラム」のお手伝いのため、初めてのリヤド出張。

背景には、サウジアラビアが「リヤド2030」の中で経済産業の多様化を目指し、その柱として防衛産業を掲げ、2022年に「ワールド・ディフェンス・ショー」(3月6−9日)に開催しました。

その際、国内外の防衛装備品の展示のみならず、装備政策や安全保障の議論を行う政策対話を開催することを目指していました。そこで、これまで中東のマナーマでシャングリラ対話の中東版であるマナーマ対話を開催し湾岸の安全保障対話を実施してきた実績のあるIISSがパートナーとして選ばれたのです。(詳細は以下のリンクからリンクから
ご覧いただけます)

会場は、リッツカールトン。サウジアラビアでの会議はなかなかオープンな議論にはなりませんでしたが、同国が国外の独立系シンクタンクと契約を結んで会議を始めて実施したこと自体が異例中の異例だったのではないでしょうか。同フォーラムのために同僚が準備した128ページの報告書はこちらからご覧いただけます。

中東及び北アフリカの防衛政策と防衛系経済の報告書(IISS)
リッツカールトンの入り口、残念ながら砂嵐で何も見えませんでした。
コーヒータイムのネットワーキングの様子
サウジアラビア初めてのワールド・ディフェンス・ショーの中東セクション

会議後は、昨年参加をしたIISSのマナーマ対話のヤングリーダープログラムで知り合ったサウジアラビア人の研究者が、いわゆるリトルマンハッタンという娯楽エリアに連れてってくれましたが、特にヒジャブを身につける必要もなく楽しめ、ライブスペースではアラビアン・ヒップホップが楽しめました(ダンサーにはたまりません)。



第二四半期(4月-6月)

この時期で特に印象に残っているのは、生まれ育ち、かつ、大学院以降3年半過ごしたワシントンDCに二度出張し、アジア政策関係者と再びつながることが出来たこと。

(4) 米国(DC・ニューヨーク)🇺🇸

まず、4月には、ウォードとパンデミック後初めての米国出張を行いました。今年3月末に出版された拙著 Japan’s Effectiveness as a Geo-Economic Actor: Navigating Great Power Competition の米国ローンチイベント(小規模)を二つ実施しつつ、DC時代の先輩研究者たちとリコネクトをしたり、少しだけフィールドリサーチもしたりできました。ちょうど、タイダル・ベイスンの桜をぎりぎりで見ることができました。当時のツイートをシェアします。


(5) 日本(東京)🇯🇵

GW明けには、パンデミック後、そして、IISSジャパン・チェア・プログラム初めての東京出張を行い、関係者へのご挨拶や最近の日本の外交安全保障政策の動向の取材活動等を行いました。この出張では、IISS理事会会長のビル・エモット氏とIISSジャパンチェア兼地経学ディレクターのロバート・ウォードのお供をさせていただきました。

パブリック向けのイベントとしては、一つ目として、日本外国特派員協会(FCCJ)で外国特派員向けにプレゼンテーションを行いました。テーマは、「ロシアのウクライナ侵攻がもたらした日本の安全保障への影響」。

二つ目として、小林鷹之初代経済安全保障担当大臣をお招きして、IISSジャパン・チェア・プログラム主催、第一回目「経済安全保障ウェビナー」を開催しました。

ちょうど開催時期は日本の通常国会で経済安全保障推進法が通過したタイミングで、小林先生には海外シンクタンクで初めてご講演いただき、高い注目が集まりました。

私はあくまでも当日のお手伝いをしたまでで、この企画を手がけていたのは同僚で今年からIISSジャパン・チェアにAPI松本・佐俣フェローとして加わった富樫さん等でした。大きな仕事お疲れ様でした!

 

(6) シンガポール🇸🇬

6月は、待ちに待ったパンデミック後3年ぶりのIISSシャングリラ対話(閣僚級アジア安全保障対話)。デリゲートとして、初めて参加させていただきました。

シャングリラ対話は、2002年に設立されて依頼毎年開催されている防衛大臣会合で、地域の安全保障課題等についてインフォーマルに議論をするオープンな場として広く知られています。毎年各国の閣僚らの出席に合わせて、政府高官も多く参加し、本会議の横で2国間会合や日米豪及び日米韓の3カ国防衛大臣会合なども開催され、防衛外交の現場となっています。

朝日新聞が、丁寧に解説をしています。

初日夜には毎年アジアの首脳が基調スピーチを行なっていますが、今年は日本の岸田文雄総理大臣が基調スピーチをしてくださいました。

スピーチ基調講演本文はこちらからご覧いただけます。

光栄にも、Q&Aセッションでご本人に、対中政策について直接質問をさせていただくことができました(上の動画の43分30秒ぐらいに登場します)。

日本の首相が基調スピーチを行うのは2014年の安倍総理以来でしたが「今日のウクライナは明日の東アジア」になるかもしれないと、中露のルールに基づく国際秩序への挑戦について触れられ、欧州とアジアにおける安全保障上の課題をリンクさせたインパクトの大きい演説となりました(国内よりも海外で広く引用されている文言のような気がしています)。

さて、このような大規模なフォーラムでは、研究員の仕事は積極的な質問をしたり、その場で閣僚陣のスピーチを客観的に分析をして解説をすること。IISSのメディア部門が作成した動画として以下のようなものに出ました。

シンガポールのCNAでも簡単な解説を行いました(初テレビ出演)。

2日目には、当時の岸信夫防衛大臣もご登壇されました。


今年のシャングリラ対話はメディアでは米中の大国間競争が繰り広げられた場として日本のメディアにも広く取り上げられました。

本会議前は、ヤング・リーダーズ・プログラム(40歳以下)のパネル(安全保障と新興技術分野について)のモデレーターを務めました。

(7) 日本(東京)🇯🇵

シャングリラ対話の後は東京に寄り、政府関係者の方々にシャングリラ対話の成果の報告等を行いました。

(8) 米国(ワシントンDC)🇺🇸

そのまま続けて今度は二度目のワシントンDC出張。

National Bureau of Asian Research (NBR)が主催している、米国防省の委託事業に参加をし、最終報告書の発表をしてきました。(詳細はパブリケーション編をご覧ください)

米国上院軍事委員会で働く安全保障担当の政策秘書たち向けにも、研究発表してきました。

インド、フィリピン、台湾、ベトナムの研究者たちと知り合い、共同研究ができてとても勉強になりました。

(9) 米国(ハワイ)🇺🇸

6月最後の出張は、ハワイ島で開催された、マンスフィールド財団主催の日米韓の会議(トラック2)。3カ国がどのような分野で協力をすることができるか、日韓が前向きに共通課題に取り組むためにどのようなことができるのか、ハワイのホテルに籠って数日間濃密な議論を行いました(成果物が出ましたら掲載させていただきます)。 



第三四半期(7−9月)

(10) 日本(東京)🇯🇵

7月には2回目の東京出張を行い、二つの公開イベントに参加をさせていただきました。

7月26日には、新設された地経学研究所(IOG)主催のシンポジウム「日英から見た経済安全保障」に参加をさせていただき、「デュアルユース技術の管理と推進」パネルで英国の技術戦略についてお話をさせていただきました。

このイベントは、船橋洋一理事長が設立した「アジア・パシフィック・イニシアチブ(API)」と近藤ジェームズ氏が会長を務める国際文化会館が合併して初めての公開イベントでした。

このような場に参加をさせていただきましたこと、光栄に思っておりますし、IOG所長の鈴木一人先生や国際文化会館の常任理事の神保謙先生には、API卒業生として大変暖かく迎えていただきましたこと、心より感謝をしております。

7月28日には、東京大学の佐橋亮先生のご厚意で、アデルフィー・ブックのローンチを行いました。当日の公演の様子を以下にシェアさせていただきます。
 

8月や9月は秋の大きなお仕事に向けて体力を蓄えるため、大好きなダンスをしたり、休みをとりながらロンドン近郊で過ごしていました。


最後の四半期(10−12月)

秋のハイライトはチェコとインド出張。

(11) チェコ🇨🇿

チェコ上院外交・安全保障委員会での登壇

10月には、今年EU理事会の下半期議長国を務めるチェコの上院外交・安全保障委員会で開催されたインド太平洋会議のパネルに参加をさせていただきました。

主に、NATOがある欧州と米国の同盟網を中心とするアジアにおける、安全保障面のアーキテクチャーの違いについてお話しました。

当日は、ウクライナから台湾議連の代表を務めている議員もいらっしゃいましたが、「世界中の民主主義国は今ウクライナと台湾に手を差し伸べるべきだ」と発言していたことが印象的でした。

チェコの議員の方々も「ウクライナは我々のロシアとの代理戦争をしている」という認識が強く、冷戦中にソ連に抑圧された歴史を持つ中東欧において、特に政治レベルにおいては、中露を自由民主主義に基づく価値観やルールに基づく国際秩序を挑戦する国家として同列に扱う場面もあるという点で、西欧とのトーンの違いに驚かされました。

会議翌日、少しだけ街中を散策することもできましたが、プラハの市庁舎前には、ウクライナでロシアの爆撃を受けた民間人の自動車等がオウナーのストーリーとともに展示され、通行人や観光客が皆立ち止まって読み込んでいる姿が印象的でした。ウクライナとの地理的な近さを実感したエピソードです。

(12) インド(デリー)🇮🇳

10月末には、初めてのインド出張。インドの有力な外交・安全保障系シンクタンクObserver Research Foundation(ORF)が主催している、「CyFyテック・カンファレンス」で登壇をしました。

伝統的な外交安全保障に焦点を当てた会議というより、新興技術に焦点を当てたテックカンファレンスということもあり、また、会議参加者の大半がインド及びアフリカからの参加者であったことから、少しアウェー感がありました。

特に、日米豪印のクァッドの枠組みの下で重要・新興技術のワーキング・グループが設立された中、日本についての言及があまりにも少なくて衝撃も受けました。インド一国はヨーロッパのように各都市・地域ごとに文化が異なるとはよく言いますが、一回の訪問ではインドの入り口しか見えないと痛感した訪問でした。

一週間の出張、「グローバル・サウス」のエネルギーになかなか圧倒されてしまいましたが、安倍元総理の下で強化されてきた日・印関係をより具体的なものするために何が必要か、今後一層研究してみたいと強く感じた出張でした。

(13) フランス(パリ)🇫🇷

11月には、経済安全保障分野に焦点を当てた日EU、及び、米欧アジアの三極対話(トラック1.5)に参加をし、エコノミック・コアージョンや体内投資規制、サプライチェーンの強靭化に対応するため、同志国でどのような取り組みが行われているのか、またどのような分野で協力ができるのか、ディスカッションに参加をさせていただきながら勉強してきました。

11月のセーヌ川

(14) シンガポール🇸🇬

月末には、IISSの戦略・技術・軍備管理部門がシンガポールで宇宙安全保障のクローズドなワークショップを開催し、私もお手伝いをしてきました。

国連で現在進められている宇宙空間のルール形成に向けた動きに、インプットをすることを目的としたワークショップで、今回は特定数カ国の政府高官をお招きして議論を進めましたが(トラック1.5)、議論のレベルも高く、とにかく知的に刺激された密な二日間になりました。

具体的は国連で進められている「宇宙空間における責任ある行動」の議論です。ご関心がある方はこちらの記事が参考になります。

(15) 日本(東京)🇯🇵

12月に入ってからは、クリスマス・年末年始休暇を含めて東京でフィールドワークをするため、最後に東京でお仕事をしておりました。


今年は、ロンドンのIISSに移ってから初めて国家間の移動を自由にしながら研究活動をすることができた一年。初めての国も多く、とにかく視野を広げながら日本が直面する外交・安全保障上の課題について、立体的に分析をする力や視点を得ることをものとなりました。

来年はもう少し落ち着いた環境で研究に励み、アウトプットを重視した一年間にできるように心がけたいと思いますが、引き続きグローバルに拠点を持つシンクタンクのリソースを活用して、頭を柔らかく視野を広げていきたいです。

以上。

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