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「愛の不時着」プロット分析②:リ大尉も視聴者の心をも掴むセリのモテ技

*この記事はNetflixオリジナルシリーズ「愛の不時着」の脚本の素晴らしさをプロット分析した記事です。
プロット分析①はこちら>>>

「愛の不時着」プロット分析②は、主に3話・4話を見ていきます。リジョンヒョクとセリが少しずつお互いの好意に気付いていく様が甘酸っぱいターン。(私、このあたりすっごく好きなんですよねぇ)

そしてリ大尉はもちろんのこと、F4の面々もそして視聴者も。ユン・セリの強気で高飛車なのにコミカルでキュート!な魅力に惹かれずにはいられないエピソードがたくさん盛り込まれていました。

I-「ケガはない?」...このセリフが意味すること

宿泊検閲でキムチ倉に隠れているところを見つかり(キムチ倉の存在は、ジョンヒョクに肉を焼いてもらった時にジュモクから教えてもらっていましたね)、チョチョルガンに銃を突きつけられたセリ。

そこに黒塗りの729ナンバーで颯爽と現れたリジョンヒョクから「僕の婚約者に何の真似ですか?」という胸キュンセリフで救出される......というドラマチックな展開に、セリもすっかりその気になっていましたね(笑)

二人で家に入った後、リジョンヒョクはセリにお湯?お茶?の入ったマグカップを渡し「ケガはない?」と聞きました。

この「ケガはない?」というセリフ。

ジョンヒョクがこれから度々セリに尋ねる言葉なのですが、初めて口に出したのはこの場面です。

パラグライダーで不時着し木の枝に引っかかっていた時も、偶然家の前で再開した時にも。セリの服も髪もボロボロだし顔も汚れていたけれど「ケガはない?」とは聞かなかった

セリが気がかりで、彼女の身を案じるようになった。その心の変化がこの「ケガはない?」というセリフに込められているのではないでしょうか。

やはり、船渡しまでの3日間でリジョンヒョクは恋に落ちたんです。

賢く勘の鋭いセリは、すぐにリジョンヒョクの変化に気付いたはず。そして、その気遣いに心打たれる自分自身にも。

一瞬見せた、彼女の戸惑った表情がその証拠です。

I-リジョンヒョクの心を掴んだセリのモテ技

3話・4話を見ながら、私は毎回「うまいなぁ」と思わずにいられません。何がって......?セリの「モテ技」の数々に、です。

しかもそれがまったく嫌味のないキュートさで、視聴者までもがセリのことを大好きになる。

例えば......「僕の婚約者に何の真似ですか?」から一夜が明けた翌朝。村の人たちに見せつけるためだけに見送りをするシーン(笑)。「頭を撫でて」「手を振って」ってもう、さすがですよね。こんな風に男性をうまく操れる女性はリアルでも絶対に幸せを掴みます(断言)。

「おこげにハマる」シーンもキュートでした。小食姫とあだ名をつけられていたはずがおこげにハマりポリポリ5口も食べちゃった、という(笑)

キムチ倉を見て「オーガニックね!」と興奮してみたり、ビニールカーテンで作った即席サウナに感動してみたり......セリってどんな状況でも物事を前向きに楽しめる能力が高いですよね。こういう女性が隣にいたら、誰だって好きになるのでは?

それから、路上生活をしている男の子がリ大尉の家に泥棒に入るシーンもセリの優しさがあらわれていました。セリだって、この男の子に食べ物をあげたところで何が解決するわけじゃないことは知ってる。それでも今、目の前にいる彼を救わずにはいられないんですよね。

一言も断りもせずリジョンヒョクの食糧を包んであげるセリ(笑)。この「当然でしょ」という我がモノ顔な感じもまたいい。リジョンヒョクがわかってくれると信じているから(好意に薄々気付いている)できることだし、実際わかってくれましたしね。

そして私の大好きな表彰式のシーン!

ここでリジョンヒョクの名前だけ呼ばなかったのは、絶対にワザとですよね。リジョンヒョクの前であえてグァンボムに「人類の宝賞」をあげたのも(笑)

わざわざ落ち込ませて、後から「スペシャルサンクス賞」を贈ったわけです。あなたは他の3人とは別格の、特別な存在ですよと伝えてる。やり手だわぁ......まあ、贈ったのはリジョンヒョクのジャガイモと交換したトマト苗ですけど(ほんと面白すぎ)

I-「タマネギは罵られると枯れてしまう」

「スペシャルサンクス賞」として贈ったトマト苗に、「毎日綺麗な言葉を10個かけてね」とお願いするセリ。

「タマネギだって美しい言葉をかけられるとよく育ち、罵られると枯れると新聞に書いてあった」と。

3話のエピローグでは、呆れ顔を浮かべながらも、ちゃんと言われた通りにトマト苗に「綺麗な言葉」をかけるリジョンヒョクが描かれていましたね。

このとき、最後にかけた言葉が「初雪」「ピアノ」だったことに気づかれましたか?

「初雪を一緒に見た二人は恋に落ちる」というのが、韓国ドラマの定番。もちろんリジョンヒョクはそんなこと知らないので、純粋に美しいものの例えで口にしただけですが、ちょっとした伏線だなと感じられます。実際、セリとリジョンヒョクもこのあと平壌で一緒に初雪を見ることになりますしね。

またこの「タマネギは罵られると枯れてしまう」という言葉をリジョンヒョクの他にもう一人聞いていた人がいます。そう。「耳野郎」ことマンボクです。

私は、このセリフをセリに言わせた意図は、むしろマンボクに聞かせるためではないかと思いました。だってこれ、マンボクにこそ伝えたいメッセージですもんね。

どんなに美しい花も、劣悪な環境では花開くことができない。人も同じ。否定され続けるような環境からは、一刻も早く去らないとダメなんです。

I-「コーヒーを淹れてくれるリジョンヒョク」が印象に残るわけ

愛の不時着ファンと「どのシーンが好き!?」なんて話をすると「コーヒーを淹れてくれるシーン、いいよねぇ」という方が多数います。

またNetflixのPR動画では、ヒョンビン自身も「大切な人にコーヒーを淹れてあげたくなりますよ」と宣伝していました。(私はあなたに淹れて欲しい🥺)

闇市で買ったコーヒー豆を焙煎して、ミルして、ドリップしてくれる......朝から本当に凄すぎるし、あんな感じでコーヒー豆って焙煎できるんだ?と新発見でしたが、このシーンに胸キュンする&印象に残るのは「前段」があるからです。

......覚えていますでしょうか。「船渡し」が失敗に終わったとき、セリがこう言っていたのを。

「約束して。来週には江南のカフェでくつろげると!」

嘘のつけない男・リジョンヒョクはその場では「約束できない」と言っていましたが......しかしながらせめてセリに自宅でコーヒーを飲ませてあげたかったんですよね。なんて優しいの......。

セリを笑顔にしてあげたい。望みを叶えてあげたい。リジョンヒョクの愛情がにじみ出ているようで、だからこそこの一杯のコーヒーが多くの視聴者の記憶に残っているのだと思います。

ところで、このコーヒーの朝の前日には「リジョンヒョクの昇進をネゴするため」に大佐の奥様(ヨンエさん)の誕パに行っていたセリ(笑)。夜遅くなったセリを心配し、自転車で大佐の家の前まで迎えに行っちゃうリジョンヒョクも可愛かったですね。

それから忘れちゃいけない貝プルコギ!これ、北朝鮮では「ガソリン貝焼き」というらしくて、本当に自動車のガソリンを使うんだって......(マジ!?)

藁でできた「かます」と呼ばれる農具?を敷いて、その上に貝を置いて(ガソリンが入らないように口を下向きにして)ガソリンかけて焼くという方法らしいです。

ちょっとやってみたくなりませんか?で、貝に焼酎入れて「困ったわ。ソーヴィニヨンブランしか飲まないのに......」と言いながらグイッと飲みたいです(笑)

I-「今度は香りのするキャンドルだ。合ってる?」

4話ラストのアロマキャンドルのシーンは、名場面ばかりの愛の不時着の中でもトップ3に入るロマンチックさではないでしょうか。市場ではぐれてしまったセリを探しに来てくれたリジョンヒョクが持っていたのは......セリが欲しがっていた「アロマキャンドル」でした。

こういう時、よくあるラブコメは「心配したぞ......!」とか言って力任せに抱きしめたり出歩いたことを叱ったり、そういう展開になりがちじゃないですか?(笑)

......でも、違うんですよ。大人の女が求めてるのはそんなんじゃない。さすがはパク・ジウン作家です。

リジョンヒョクが「新しいヒーロー像」だと称賛される所以は、思うにこういうところなんだと思うんです。

彼の優しさにはエゴがない。常にセリを気遣っていて、相手の気持ちが最優先。そしていつだってセリの望みを叶えようとしてくれる。

こういうことができる男性って非常に少ないと思うんですよね......。力を持っている男性ほど主語が自分になりがちだし「女性のため」と言いながら「それ、結局は自分のエゴだよね?」ということがよくありません?

だからこそ世の女性たちは「こういう人、待ってました!!!!!」と、拍手とともにリジョンヒョク沼にハマってしまうのだと思います。

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