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【レポ】連隊の娘 2023/06/17 The Unaffected 第3回公演【オペラ】

1月1芸術 達成中です!
2月目はフランスものの喜劇(というかぶっちゃけコメディ笑)で
ピアノ伴奏での公演
いいバランスだと重います🙆‍♀️
本当によく笑いました楽しかった!!

The Unaffected

「気取らない ありのままで わたしたちらしく をモットーに 音楽をお届けする」団体さんです。
代表は和田 央(シュルピス)さんと佐藤 麗奈(マリー)さんのお二人。

実は佐藤 麗奈さん、私の大学時代の同期で、同門。
同じ師匠の下、歌のレッスンを受けていたんです。
私は舞台の外・裏から…と思っていましたが
まさか姉妹弟子が舞台の上から…の活動を
頑張っていることに本当に感動しました!!
以降親しみをこめて彼女のことは学生時代からの愛称で「れなち」と書かせていただきます。

横道に逸れてしまいましたが改めて団体の紹介です。
オペラ初めましての方達に興味・親しみを持ってほしいという理念のもと
歌・演技はもちろん、踊りも混ぜて舞台を作る若手団体です。
所属されているメンバーも音大を出て数年〜現役の学生さん達な
フレッシュでパワフルな団体です(本当に驚きました!詳細は後ほど…)。
今回が団体発足後3回目の公演で
過去
マイアベーア作曲の「ディノラー」(なんと日本初演!)
ロッシーニ作曲の「イタリアのトルコ人」(こちらも日本ではあまり上演される機会の少ない作品です)
そして今回
ドニゼッティ作曲の「連隊の娘」
どの演目も、作中のアリアを取り上げてコンサートで上演されることはそれなりに多いのですが
全幕通して、の上演はなかなかお目にかかれません。

オペラ初めましての方達はもちろん、結構主要作品御覧になったことがあって
珍しい作品はDVDかMETのライブビューイング なんて方達!!
生で見られる貴重な団体ですよ!!

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それでは早速参りましょう!

序曲…のその前に

客席の照明が落ちて
緞帳が左右に開いて…さあ音楽が始まる!!と思った瞬間にまさかの緞帳止まりました()

え、いきなり機材トラブル!?大丈夫!!??とハラハラしていたところ
ひょこっと「彼」が現れます

この後作中で登場するマリーの家族達の家族の1人
「ラタプラン」くんです。
彼が上演にあたってのアナウンスをしてくれました。

普通この前口上って(私もやったことありますが)
裏方スタッフがこれ以上ないってくらいお上品な声を出して舞台袖からマイクに吹き込むんですね。
なので、「あ、ここからもう舞台が始まっているんだ」って、ワクワクの助走距離が長くなりました。

序曲

ラタプランくんの長いおしゃべりことご挨拶が終わった後
改めて緞帳が閉じて開き直すと
舞台の上は下手側にグランドピアノ
中央にテーブルにできるサイズの木の台と
その両側に椅子にできるサイズの木の樽、台。
1番上手側に箱馬が二段。
小ぶりな劇場の舞台の上にみっちり大道具が詰まっていました。
字幕は舞台中央上部の壁面に投影。
私は舞台後方のちょうどセンターの席で観させて頂いたのですが
舞台の左右両側までが視界にぴったり収まって
そのまま目線だけ上に軽くあげれば字幕が見れたので
聞き慣れないフランス語上演でもスムーズに物語を楽しむことができました。

コレペティトゥーアの青島 里菜さん(彼女も大学時代の同期です!
プチ同窓会みたいで嬉しかったです)のピアノに合わせて
物語の発端である子捨て、マリーとトニオ(足立 悠道さん)の出会いのシーンが無声劇で披露されます。
舞台上部にはセリフが字幕で投影。
小鳥を追いかけて崖から落ちそうになったマリーを抱き止めるトニオ。

このシーンも演出の工夫だなぁと…
今回の公演、字幕が全体的に結構砕けた口調で
「軍人たちの荒っぽさの表現なのかなぁ」なんて思っていたら
まさかの日本語訳代表の和田さんが作られてたんです!
なんて多才…
実はこのボーイ・ミーツ・ガール
作中では連隊に捕えられたトニオをマリアが庇うシーンでしれっと歌われるだけで
普通に楽譜通りに上演すると
「2人が敵味方の立場を越えて恋に落ちる根拠」が弱いんですね。
綺麗に物語を補完してくれたなぁと。
よりスムーズに物語の世界に没頭できました。

あ、ちなみに前置いておきますが
実は今回舞台図あんまりちゃんと描けませんでした。
違うんです。メインキャラクターからコーラスまで
全員ものすごい勢いで舞台中動き回るから
フォーメーションの記録が追いつかないんですよ()
本当にパワフルで…(なのでちょっと違ってたらごめんなさい←)

第一幕

舞台が一度空になった後
オーストリア側のキャラクターが登場します。
前述しましたが小ぶりな小屋なので
コーラスメンバーが舞台に乗るとそれだけで舞台が埋まるんですが
戦時中の、怯える民間人の姿がその密集度にとてもよく現れていたと思います。

一旦ここで伍長さん&コーラスの皆さんお名前並べさせていただきますね。

大河原 拓也さん
上原 梨華子さん
藤田 巧さん
安藤 広河さん
野上 夕綺さん
殿岡 真衣さん
仙石 珠希さん
高坂 麗音さん
谷 美玲さん

コーラスの一体感がしっかりあって、演技やポジショニングもすごく綺麗でした。
オペラは全幕上演といいつつ合唱パートは割愛されることが多いですが
今作は群像劇(マリーの家族)が重要な意味を持つので、全部観させてもらえてとても嬉しかったです。

そして、ついに登場ベルケンフィールド侯爵夫人(土江 瑠音さん)と執事のオルテンシウス(楢原 敬之さん)。
この2人の小芝居がもう面白くて面白くて…
比較的大人しいタイプのお客様が多い公演だったのですがもう諦めて思いっきり笑いました。

侯爵夫人って結構難しいキャラクターだと思うんです。
物凄い自信家で、わりに臆病で、一歩間違えると卑屈でものすごくうざったい(失礼)キャラクターになりかねないのですが
土江さんの大仰な台詞回しと、楢原さんのちょっかいのかけ方が絶妙で
すごく魅力的な、人間味あふれるパワフルな女性になっていたと思います。
(特に台詞部分を日本語で演ってもらえたので、あまり馴染みのないフランス語の作品でも親しみやすく、最後まで集中して楽しめました)
個人的にぬか喜び後のシュルピス登場シーンの悲鳴がもう最高でした!(笑)

敵が去った!と民衆が喜んで歌い踊った後、「ならず者」がやって来て
逃げ損ねたコーラスの女性二人もいい逃げっぷりでした←
全体的にアメリカのホームコメディ?感ありましたね。

その後れなちマリーの登場!
意外と主役の登場って遅いんですねこの作品。
軍育ちということで、タンクトップにパンツ、ブーツとかなりラフな衣装。
学生時代はかわいらしいお洋服をよく着ていたれなちの新しい魅力発見できました。
と、思っていたら、マリーめっちゃ跳び回る。
とにかく運動量すごい。
序盤からこんなに動き回るの!?付き合わされるシュルピスパパもすごいなぁと思っていたのですが、まだまだ序の口でした。
動くのもですが、マリーの立ち姿の演技が、もう凄くて。
マリーって粗野で奔放な女の子(だから後々矯正される)だと思うんですが、
足の開き幅・膝の向き・重心の位置・肩の使い方etc,
こんなに演技で人の雰囲気って変わるんだなって、元々の彼女を知っているからこその驚きでした。

本公演、照明にも結構こだわっていて
パパと娘の二重唱のメインテーマ部分でバックスクリーンにフランス国旗がライティングされるのこだわり感じられてとてもよかったです。

台詞の親子演技もよかったですね。
いかにも年頃の女の子と男手一つで娘を育てた父親像。
ほんとにメンバーの皆さんみんな演技上手いなって思ってたんですが
和田さんの演技が私本当に大好きで。
私と同学年で、まだまだ全然、そんな年のお子さんがいるようなご年齢ではないはずなのですが
舞台を通して娘の成長に葛藤する姿から、娘が選んだ男性を認めてあたたかく見守る姿が本当に優しげで、いいパパだなぁって。

心のままに振舞うマリーと振りまわされるシュルピス。
歌じゃなく台詞のシーンっていうこともあり大いに笑っていたところで
連隊メンバーがぞろぞろ。
トニオを引っ立ててきました。
このシーン個人的に意外で、
メンバーに責め立てられるトニオをマリーが後ろから抱きしめてかばうんですが
なんというかマリーが無邪気(?)すぎて、
「彼を愛してる」っていうけど友愛の延長みたいな。
なんというかコメディであって、ラブコメではない、みたいな。
でも思うと、軍属の男所帯(「女の子らしさ」とは隔絶された環境)で育てられた女の子にとって「特別な男の子」に対する態度ってああいう感じなのかなぁとか
すごく背骨のしっかりした説得力のある演技だと思いました。

トニオの衣装もわかりやすくていいなぁと思いました。
連隊メンバーの特に男性、連隊といいつつ一見ゲリラ部隊みたいな迷彩服着てたんですよ。
対して捕らえられたトニオはベーシックなジャケットスタイル。
足立さんの上品なお顔立ちにもとても似合っているんですが
その姿が連隊メンバーの中でものすごい「異分子」に感じられて。
その後マリーを救った事実からメンバーに受け入れられた後も
「まだまだ打ち解けていない・心から受け入れたわけじゃない」表れに感じられました。

↑みたいな小難しいことは抜きにしても単純に
コーラスの動きについていけないトニオが可哀そ可愛くて。
最初のこのシーンは単純にトニオが連隊のお作法を知らないだけだと思うのですが
この先何度も続く頃には
「若造!」扱いされてるとか、「よくもうちの娘をたぶらかして!」とか
わざとの仲間外れなのかなぁなんて(笑)

閑話休題
めちゃめちゃ踊る団体さんですが、特に靴音を効果的に使うなって感じました。
れなち元々クラシックバレエを踊っていたんですね。
特にチャイコフスキーのバレエ音楽ってトゥシューズが鳴る音まで計算して作曲されているんですが
それに通じる演技に感じられました。
閑話休題終わり。

トニオとマリーのつかの間のランデヴーのデュエットもサラッとしていて
ハグもフランクな感じ。
いい意味でドキドキやキャーキャーとは遠くて
シュルピスや連隊のみんなと同じ「親目線」で二人の恋を見守れました。
そんな二人を引っぺがすシュルピスにまた笑うこと笑うこと。
その後現れる侯爵夫人と執事との掛け合いも面白くて。
この後も何度かありますが保護者組の掛け合い
キャラの強い同士でめっちゃよかったです。

そしてついに母子の再会!
と思いきや夢見た娘の姿とは程遠いマリー。
マリーとしてもいきなり現れた身内を名乗る女性に対して塩対応。
マリーの育成環境に危機感を覚えた侯爵夫人は猛烈に母性に目覚めます。
開幕当初は「女性」としての側面の強かった侯爵夫人が「母親」としての意識を持ち始めるのがこの辺りからだったと思います。
マリーが赤ん坊の頃に生き別れて、夫人を名乗りつつ精神的にはシングルなままで、
産みはしても実感自体は薄かったんじゃないかと思うんです。
それがやっと巡り会えて、抱きしめられる距離に立てたことで
「この子が自分の娘だ、私は母親だ」と思えたんじゃないかなって思うと、
土江さん役柄的にも大袈裟でコメディな演技が目立ちますが(もちろんそれも素晴らしいですが)
キャラクターをとても丁寧に扱う方だなぁって思いました。

個人的にこの夫人と執事のコンビがすごく好きで
夫人がぶっ飛んだキャラであればあるほど執事のキャラが引き立つし
執事がうまく夫人を御すると立場の逆転からまた面白くて
土江さんと楢原さん、親子に次ぐ第2の名コンビでした!

一旦舞台の上が空になって改めて登場するのは連隊男性メンバー3人組。
舞台の中央でカード遊びを始めます。
ここでも不憫なトニオ足立くん。思いっきり先輩たちに無視されます。
ちなみにこのシーンでトニオの衣装が連隊風に変わります。が、やっぱりお上品。
モスグリーンのポロシャツなんですよ。
前述しましたが、他の連隊男性メンバーはゲリラ風。
やっぱりなじみ切れない。
でも思ったんですが、フランスの連隊育ちのマリーが本当はオーストリア側のチロルの出身とすると
トニオが連隊になじみ切らないでいてくれることこそが
連隊とチロルの人々との和解の象徴になるのかしらなんて。

物語に話を戻して
このシーン、要は「お義父さん!娘さんを僕に下さい!」を×3するわけです。
マリーは連隊のみんなの娘なので、お父さんがたくさんいるのです。
最初はもちろん反対されるトニオくんですが、必死の訴えにパパズもほだされていきます。
(なのにその後ろで「伯母さん」のところへ行く準備をさせられるマリー)
「本当に娘の幸せを思うなら」これ、アリアではなくコーラスの一節ですが
この台詞こそがオペラ「連隊の娘」の真髄なのではないでしょうか。

足立さんのトニオのソロもお見事でした。ハイCの連発ですが安心して聞いていられました。
からのアンコール、なのですが
ここでまさかの歌でお義父さんと娘婿(仮)の殴り合いが勃発します。
アンコールのハイC、なんとパパ(藤田さん)が横取りして歌われたんです(!)
それでもやはり愛の力にはパパも勝てず、みんながトニオを認めよう、というところでシュルピスが突然の別れの知らせをもたらします。

マリーの別れのシーン。
照明がピアノに落ちて、舞台の上がセピアに。
昭和のメロドラマ風でした。
餞別を、とコーラスのみんながマリーに贈り物を渡していくんですが…
私ずっと突っ込みたいのを我慢してました!!
おにぎり食べてた女の子!!あの子一体どうしたの!!??笑笑笑
フランス人がアルミホイルに包んだげん骨より大きいおにぎり食べてるんですもんもう最高です…笑
しかも自分が食べてるより更に大きいおにぎりをお別れの品に渡しちゃうんですよ
え、衛生的に平気…?とか
おもちゃとか他にも渡されてるけど同じリュックに入れてつぶれちゃわない?とかみんな泣いてるのにおにぎりかじるんかい!とか
言いたいことはも〜たくさんありました!!
やけ酒煽るシュルピスパパの横でやけおにぎり食べるし
本当にユニーク笑

ネタに全振りしてしまったので少し真面目な話になりますと
このシーンのマリーのアリア
Convien Partir(邦題:さようなら)れなち確か学部の頃に歌ってたんですよね。
試験か何かで私絶対に聞いたことあります!
おにぎり賭けていいです🍙←
連隊の娘って作品とあのアリアが結びついていなくて
歌い出し聞いた瞬間もーびっくりしてびっくりして!
私達の勉強してきたことって、長い時間をかけて1つの物事を追求するわけですが、
それが未来に繋がっていた最高の例を観ました。
懐かしいのはもちろん、学部時代から更にパワーアップしたれなちの歌が聞けて本当に良かったです。

フルコーラスの一体感に包まれて、一幕終了。
15分の休憩。

第二幕

舞台の上にはツナギを着た男性コーラスメンバー。
掃除夫として侯爵家の音楽室を片付けています。
これまた小芝居が面白くて
譜面台の上を姑か!って勢いで磨いたり
いきなり腕立て伏せし始めたり
小休憩って室内でタバコふかしたり、もうやることなすことめちゃくちゃ笑
何やっちゃってんの〜!!って思う気持ちのままに夫人が突撃・叱りつけてくれて
もう見ててめっちゃスッキリしました!

幕が開いて1番気になったこと
コレペティトゥーアの里菜ちゃんがドレスに着替えてたんですよ。
というか生のクラシック音楽に触れるのが本当に久し振りで、気付くの遅れたんですが
一幕で彼女がデニムパンツで本番の舞台にいることにまず違和感覚えなきゃだったんですよね。
ピアニストさんにいわゆる「伴奏」として演奏してもらう時は
女性だと黒いストレートのドレスとかセットアップのパンツルックとか、シンプルで舞台の中央が引き立つような衣装を着てもらうことがほとんどで
私服…?と思わねばでした。
でもこの謎もすぐに解けます。

二幕は侯爵夫人の自宅、マリーが引き取られた後から物語が始まるのですが、
なんと舞台の上で歌のレッスンが始まります。
彼女はコレペティトゥーアの青島里菜さん ではなく
侯爵家付きのレッスンピアニストとして
伴奏ではなく物語の登場人物としてピアノの前に座っていたんです!
とすると、一幕の彼女のデニム姿にも納得がいって
一幕の彼女は連隊メンバーの一員・楽団担当だったわけです。
共演じゃない作品の場合、上述のように
演者とピアニストの間って、なんとなく少し距離があるのが私も寂しく思っていたのですが、
同級生、仲良しの2人同士ならではの演出だったのではないでしょうか。
あたたかくて微笑ましくて、いい演出だなって思いました。

怒りの夫人とシュルピスの対話。
生みの親と育ての親の邂逅です。
それぞれ、マリーの生育に思うところがあったからこそ
「自分たちにできる娘を幸せにする最良の手段」として、マリーを国内最高爵位、公爵家に嫁がせようとします。

そして連隊の娘から侯爵家の養女にジョブチェンジしたマリー。
動きやすさ最重視の服装から
水色のドレスに着替えて登場です。
れなちの黒髪にヘッドドレスが映えてすごく綺麗、可愛いなぁ…って思ってたんです、が、
絶妙にヤボったいんです。
可愛い、けど、なんか違う。
この違和感が、マリー本来のあり方を押し込めて淑女教育をしようとしたことの表れなんだと思いました。
お人形の着せ替え遊びみたいな。
綺麗なおべべは着せてもらっても、立ち方は連隊時代のまま。
マリーはどうやったって、連隊の娘のままだったんです。

そんなマリーに歌のレッスンをつける侯爵夫人。
でもマリーだって淑女が習うようなお上品な歌は歌えません。
調子っぱずれなメロディをなぞるマリーの後ろで
シュルピスはマリーのリュックの中のおにぎりを頬張るわけです🍙

ついに我慢の限界を迎えたマリー
ヒステリーを起こして床に寝っ転がります。
時々スーパーでお小さい方がやられてるじゃないですか、まさにあの感じ。
結婚する年の女性がやること、って思うと結構衝撃的ですが
それ以前にマリーは「連隊の娘」です。
たくさんのお父さんたちに愛されて守られて育った子どもです。
心底大人を信用しているからこそ、シュルピスがいる場でああいう甘え方ができるんだなって
マリーと連隊の深い繋がりを感じました。

それでも歌うマリー。
ちょっかいをかけるシュルピス。
クラシカルな歌唱練習のはずが、いつの間にか連隊の歌に…
楽譜を丸めて鉄砲を構えるふりをするマリーと
便乗して騒ぎに興じるシュルピス。
そしてついにつられてショールを振り回す夫人。
大騒ぎの舞台の上で迎えるカタルシス。
典型的、だからこそ面白い。
お決まりってやつに人は弱いのです。

結婚の調印の立会人たちが来るから
マリーに「きちんとしているように」と言い残して部屋を去る侯爵夫人と後を追うシュルピス。
娘の身なりを整える夫人は、一幕冒頭の自己中心的な姿から全く変わって
娘に手をかけたくて仕方のない、過干渉気味なおせっかいなお母さんでした。

舞台に一人残されるマリーの独白。
思い出の品々を眺めながら
戦いの最中にあった連隊暮らしから、平和で幸せに暮らせる環境に変わったはずなのに、自分は全く幸せなんかじゃない。
いっそもう、とやけを起こす寸前で、客席後方、一般の出入口から連隊のメンバーがマリーをたずねて三千里してきます。
この際客席に向かって
「美しい女性は知りませんか?」と声をかけてくるのが
観客も、侯爵家の一員として物語の世界に巻き込まれてしまいました。

マリーと家族の邂逅。
このシーン、ちゃっかりトニオが後回しにされてたんですよね笑
トニオくんの恋は前途多難です。
騒ぎを聞きつけて飛んできたオルテンシウスもマリーズファミリーの圧に負けてタジタジです。

そしてある意味本公演最大の見せ場であった
マリーとトニオとシュルピスの三重唱。
もうね、この跳ねっ返り娘は何回飛び跳ねたら気が済むのかと(!)
オペラ観てるはずなのに、歌を聞きに来たはずなのに
もはやアクロバットの域の振付に衝撃しかありませんでした。
しかもこんな、二幕も終わりの消耗も来ているタイミングでです。
観客としても集中が切れやすいタイミングで
最後のもう一押しを持ってきてくれたわけです。
お見事。ブラーヴィ。

そんな(本当にすごいけど)おちゃらけムードに侯爵夫人が現れますが、
トニオのソロで空気がガラッと真剣ムードに変わります。
トニオの熱い愛の告白にうっとりと聞きほれるマリーの後ろで
茶化しもせず真剣にトニオの本心を聞くシュルピスパパの姿が
心底娘を想う父親の横顔で
本当に和田さんパパ私大好きです。

侯爵夫人に追い立てられて部屋を去るマリーとトニオと連隊メンバー。
残ったシュルピスと夫人の、再度の保護者組の対話です。
明かされるのはマリーの出自の秘密。
夫人の罪の告白でした。
道ならぬ恋の顛末と保身のために生まれたばかりのマリーを手放した夫人。
マリーの正体が公になることは
夫人の立場の失墜、それ以上にこれから人生の盛りを迎えるマリーの未来に影を落とすことになる、と
自分が実の母親であることも明かさず
「姪」を国内随一の有力者に嫁がせることで
マリーを国内で2番目に立場ある女性にすることで守ろうとしたのです。

マリーの心のままにいさせたいと思っていたシュルピスも
この母親の嘆願に心変わりします。
マリーを絶対に守り隊を結成した2人を冷やかすオルテンシウス(この役本当に美味しいところみんな持っていきますよね楢原さんいいなーパンツ役でもいいなら私も演りたい←)。

公証人と、多分公証人夫人と
そんでもってついにクラーケントルプ公爵夫人(上原さん)のおな~り~。
セリフだけなんですが、まぁ強烈なキャラクター…
マリーはトニオがいたから、連隊にいたかったから最終的にこの結婚を拒否しますが
そうでなくてもこんなお姑さんと縁続きになるのは全力で避けるべきだとそう思うくらいの見事な「お義母様」の演技でした…
とにかく尊大。プライドの塊。
部屋に引き篭もったマリーを侯爵夫人が必死に庇いますが
どんどんヒートアップするお義母様。
なんとか宥め宥めしている間にマリーが了承の返事と共に現れますが
トニオが娘過激派保護者軍団を引き連れて乗り込んできます。
そうです。マリーの家族が、マリーの幸せを心から願うお父さんたちが
娘の心を無視した不幸を見過ごせるはずがないんです。

そして1番手っ取り早く全てをめちゃくちゃにするためにマリーの出自を暴露するトニオ。
でもマリーが傷つくことはありません。
だって彼女は自分が「連隊の娘」であることに誇りを持っていたから。
自分の過去を自分の言葉で語るマリーの姿に泣きそうになっているシュルピスパパがまた印象的でした。
そして侯爵夫人も娘の心を解放すると表明し
(お義母さん以外は)みんな幸せ大団円で幕が閉じます。
個人的に最後トニオとマリーがちゅーしてたのが本当にびっくりで!
いつの間に君たちそんな仲に変わったの!?と思いつつ
うちのれなちによくも…!!と思ったのは
私がすっかり物語の中に取り込まれていたからでした。

舞台の外のこと

カーテンコールはあっさりで
代わりに終演後すぐキャストの皆さんがロビーにお見送りに出て来てくださってお客様ファーストさを感じました。
若手団体ならではの気遣い方というのかな
出演者の皆さんと、お客さんとの間が近い
団体の理念の通りに、オペラ作品・クラシック音楽に親しみを持ってもらおうと尽力している皆さんでした。

たくさん笑ったとっても楽しい夜をありがとうございました!!
今後ますますのご活躍を心から応援しております。
Bravi!!

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