7 weeks #8
2020.07.28 tue
12:30
父から、抗がん剤投与開始の連絡メール。父には3種類の抗がん剤が投与されることになっていて、今日はまずアテゾリズマブという新薬の投与を受けているとあった。アテゾリズマブは免疫チェックポイント阻害薬の1種で、免疫細胞が本来の役割を発揮してがん細胞を攻撃できるようにするというもの。
※この手記の執筆にあたり、改めて免疫チェックポイント阻害薬の仕組みについて調べたところ、下記の記事が分かりやすかったので引用しておく。
参考:ステージ4の非小細胞肺がんに対するアテゾリズマブの治験
そもそもがん細胞には、免疫細胞の働きを停止させてがん細胞を攻撃しないようにする機能があり、それによってがん細胞の増殖が可能になっている。いわばがん細胞が免疫の持つチェックポイントをうまく通過してしまうということだ。それを阻害し、免疫細胞にちゃんとがん細胞を攻撃させるための薬が「免疫チェックポイント阻害薬」だ。がん化した細胞が免疫細胞の働きを止めさせるなんて、人体は随分と奇妙なバグを自らに仕込んでいるものだ。
18:30
父からの第2報。アテゾリズマブに続いてエトポシド、カルボプラチンという従来薬の投与も完了したとのこと。
※こちらも今回改めて調べたところ、この2種類はいずれもがん細胞のDNAに働きかけて分裂・増殖を抑える薬ということだ。
現時点では気分や体調に変化はなく、病院の夕食もほぼ完食したとあった。明日以降の効果に期待していると言う父。
メールでの文面を見る限り、父は一貫して前向きかつ客観的だった。治療の方針や内容についてはつとめて正しく理解して臨んでいて、元からのエンジニア気質が窺えた。ただいざ抗がん剤治療に臨む話になると、2言目には「頑張る」と返ってくるのがちょっと意外だった。その言葉は記憶の限りで父から聞いたことがなかった。何事も他人任せにせず、また精神論ではなく具体的な方法論で対処してきた人だ。けれど抗がん剤が効くかどうかは自分の工夫ではどうにもならない。せめて、維持してきた体力と精神力で副作用に耐え切るくらいしか、自分にできることはないのだった。そういう意味での「頑張る」だったのだろうし、父だって不安だったのだろう、それを振り切って自分を鼓舞していたのだろうと振り返って思う。