ゆか

みた夢を小説化しています

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【小説】龍のぬいぐるみ

「おはよー」 「アキ、おはー」 「どうよ」 「結構いい感じよ」 「後輩、作ったぬいぐるみみんなでチェンジするもんだと思って楽しみにしてたっぽいぜ」 「はは、かわいそうに」 作っているパンダのぬいぐるみは、ソフトボアの生地を使った1メートル強の大きさの、自信作だ。 実は、市販のぬいぐるみをモデルに、いや、思いっきり複製だ。 実物に合わせて型取りした。 まあ個人的に楽しむ範疇だから問題はないだろう。 放課後、同期のアキがふらりと遊びに来た。 パンダをチクチク縫ってる手元から、

    • 【小説】鶯宿梅の余韻

      未明ふと目が覚めた。 換気扇のゴーっという低い、他は遠くから小さく聞こえる車の音。 今見た夢を思い返していた。 縁側に胡座をかき、只々、肴を侍らすでもなく花見をする。今年は大分花付きが良い。 世話役の目にでも留まれば姿勢を正すよう小言が飛んでくるだろう。 薄らと粉を刷いたような黒いうろの淵、若木の頃の面影はない。 温まってきた空気の粒が光るような昼前、筆がどうにも進まなくなってしまい、古い家人以外には存在自体があまり知られていない離れの裏庭に逃げてきたのだ。 それでもまだ

    【小説】龍のぬいぐるみ