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IBSA柔道世界選手権・バクー2022

11月3日〜11月11日の期間でアゼルバイジャン・バクーへ世界選手権出場のために遠征に行ってきました。
今回は世界選手権の試合について振り返ろうと思います。

今回の大会はパリの予選の序盤のヤマ場でありかなり大きなポイントを得られることから、非常に重い位置付けでした。パリ出場枠獲得に向けたランキングレースで優位を取るためには今回の大会での入賞が絶対条件であり、ここを優勝できたなら今後2年間で余程のヘマをしない限りはパリパラリンピック出場は確実と言えるほどのビッグタイトルです。

もちろん私も優勝を目標に臨みましたし、この目標設定を決して非現実的だとか高望み、驕りだとは思っていませんでした。しかし情けないことに入賞さえできませんでした。

結果から言うと、J2.男子73kg級に出場し、初戦敗退でした。


試合前の状況から振り返ると、バクーに到着して試合までの間に3日間の調整期間がありましたが、その期間で完全に疲労を回復することができていなかったようです。体調は上下の波こそあったものの、試合当日には良好な状態に持っていくことができたと思います。しかし、試合当日になっても疲労、特に足の重さは治りませんでした。
調子良くなさそうに見えるとコーチの先生からも指摘されるほど、客観的に見てもあまり上がっていなかったようです。

ストレッチなどはかなり重点的に行いましたし、どうにか力を抜こうとリラックスできるような処置も行いました。それでも今にして思えばもっとやれることはあったのではないかと感じます。ここらへんは現時点ではメンタルの影響が大きかったとの考察ですが、私自身でも未だに整理できておらず、また原因も根深すぎて今回はここに書き切れないので省きます。


試合前日の計量とそのための減量は特に問題ありませんでした。むしろまだ足りないくらいで、この点も今後の課題です。ここ半年でかなり体を作れているとは思いますが、これまでより上の階級で戦うのだから、まだまだ足りません。

組合せは次の通りです。

J2.73kg級組合せ

今回は第4シードを得られたので、2回戦からでした。

対戦相手はアゼルバイジャンのラヒムリ・フセイン選手。去年の東京2020パラリンピックの81kg級金メダリストで、階級改編に伴って73kg級に移動してきたようです。

元81kg級だけあって身長は私より数センチ高いようでしたが、パワーで圧倒的に負けていたというようには感じませんでした。

しかし、開始早々捨て身技で技ありを取られると、待てを挟んでもう一度同じ技で技あり。こちらは取り消しになりましたが、この2つの仕掛けは完全にこちらの動きを見越しての技だったように思います。こちらの動きに対応する準備を整え、私が技に入ろうと右足を前に構えたところをうまく狙われました。反省としては相手が体制を整える前にこちらから仕掛けられなかったこと、捨て身技に対してその場で腰を落として受けずに体が浮いてしまってから対応しようとしてしまうことなどが挙げられます。
前者については私の傾向としてスロースタートである点が原因で、これは意識的に改善していく必要があります。後者はおそらく腰の位置が浮いているタイミングで技を受けるために反応が遅れていることが原因と思われます。低い姿勢を徹底しなければと思います。

技あり取り消しの後、開始際の背負い、しかしこれは不発。技あり取り消しの後で相手が動揺しているのであろうタイミングでの仕掛けは良かったと思いますが、だからこそこれは決めたかったとも思います。
しかし、この仕掛けが良かったのか、ここでは流れを握れていたように思います。相手の不十分な状態からの小内刈りにうまく足を合わせて体を浴びせての技あり。この攻防から、やはり先に攻めた方が流れを握れること、上の階級のメダリスト相手でも私の技(今回は技というほどのものではなかったが、体の回転によって投げたのでその回転力)は十分通用するということは確かだと思います。

ここから相手は焦ったのか強引な払巻込主体の戦い方に変わります。一度不用意な大内刈で体が伸びきったところに掛けられたものは危なかったですが、基本的に重心を落としていれば対応可能な技だと思います。

そして相手の払巻込を相手の引手側にかわして、前傾姿勢の相手を釣り手を持ち上げながら引手で押し込んで投げました。判定は技あり、合わせて一本。初戦の緊張とアップの不十分さから手足にかなり張りがきていたり、息が上がっていたりしたため、ここで一気に力が抜けました。

ところが映像確認によって取り消し。これは正直言って今でも納得していません。私は確実に投げました。隅落としと言うには十分な利合いがあったと思っています。しかし、審判はそうは見てくれなかったようで、これは技ではない、押し倒しただけだという判定なのだと思います。

今回の大会中の審判については、これの他にも耳目を疑うような事象がいくつかありましたが、少なくとも選手は審判に意見することは許されないので、従うほかありません。

この時の私も完全に投げたつもりでいましたが技ありを取り消され、なぜ取り消されたのか考える余裕もなく、また気持ちを切り替えることもできず、体の力も抜けたまま再び相手と組み合ってしまい簡単に払巻込についていってしまいました。

ここでの気持ちの切り替えというのは非常に難しいものではありますが、勝負の場では通用しません。メンタルの不安定さ、体の不調、アップの不足、どれかでも正常だったならと思いますがこれも言い訳です。

判定に納得はできませんがその後投げられたのも事実。悔しいけど純粋に悔しいと思えない状況。優勝を狙っていたのに初戦で負けたこと、また国際大会で初戦敗退というのは初めてだったこともあり、ショックもかなり大きかったです。

そして、ラヒムリ選手は次の準々決勝で敗れたため、私の敗者復活の可能性も消えました。また、その相手が私が5月のグランプリ決勝で対戦して勝っていたカザフスタンのオラザリューリー選手であったこと、オラザリューリー選手は3位に入賞したこと、ラヒムリ選手が敗者復活を勝ち上がって3位決定戦まで進んだこと、そこでラヒムリ選手に勝って3位に入賞したのが私と同じ東京の66kg級銅メダリストのアバスリ選手だったこと、全てが悔しくて、自分が情けなくてすごくショックでした。


今回の大会を経て反省点は山のようにあります。しかし、どこからどう手をつけて良いのか今でもわからないし、メンタルの面ではまだまだ立ち直れていないのが現状です。

今回の世界選手権でパリに向けたポイントレースは大きく出遅れました。

パリの予選はヨーロッパ選手権(EC)からです。

来月に東京国際が開催されますが、こちらのポイントは世界選手権の25%なので、今回の失態を取り返すことはできません。

非常に厳しい状況になりましたが、2年間の予選はまだ始まったばかり、気持ちを切り替えてまずは東京国際で勝つしかない、そう思って取り組んでいかなければなりません。

がんばります。
引き続き応援よろしくお願いします。

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