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KUNDE柔道プロジェクト

日本視覚障害者柔道連盟では、視覚障害の有無に関わらず組んで始める新たな柔道スタイル『KUNDE柔道』の普及を振興していくこととなりました。
また、私個人としても『KUNDE柔道』の普及に貢献すべく積極的な活動を行いたいと考えています。
今回はこの『KUNDE柔道』について詳しく書いていきます。

『KUNDE柔道』とは?

『KUNDE柔道』は視覚障害の有無に関わらず、組んで始める新たな柔道スタイルです。
つまり、視覚障害者同士のみでなく、視覚障害者と晴眼者、晴眼者同士が視覚障害者柔道のルールで組み合ってから始める柔道を『KUNDE柔道』と呼んでいます。

プロジェクトの目的

『KUNDE柔道プロジェクト』の最大の目的は視覚障害者柔道の普及・発展です。
視覚障害者柔道は一般の柔道とルールの差が小さいことや競技人口が少ないことなどから、視覚障害者は多くの場合、晴眼者と一緒に稽古を行います。その際には、安全面への配慮や、障害やルールへの理解を得る必要があります。
これが大きなハードルとなって、視覚障害者が柔道を競技する環境は限定されます。『KUNDE柔道』を広く普及することで、ルールについて理解を得るとともに、これを通して視覚障害について知るきっかけを作り、視覚障害のある人を受け入れ可能な道場や一緒に稽古をしてくれる仲間を増やす目的があります。

『KUNDE柔道』を知り、実践する人や道場が増えれば、視覚障害のある柔道家は自分の居住地や競技レベルに合わせて練習環境を選択できるようになります。また視覚障害者柔道に理解のある指導者が増えれば、新たに柔道を始めようとする視覚障害者が指導者が見つからないために諦めてしまうことも減ります。
さらに、視覚障害者柔道を知る人が増えれば、身近な視覚障害者に柔道を勧めてくれる人も増えるかもしれません。

プロジェクトの経緯

視覚障害者柔道やパラスポーツを発展させるためには何が必要かを考えた時、以前母校の同窓会誌で述べたような構想を東京大会前から抱くようになりました。
同窓会誌にはこちらから↓

大学院進学を決めた私はこれを実践するべく、研究計画を練りました。
その際に、現在の『KUNDE柔道』に相当する語として『パラ柔道』という言葉を用いましたが、パラスポーツの発展のなかで「パラ柔道=視覚障害者柔道」のようなイメージが出来上がっていることを指摘されました。そこで、視覚障害者柔道関係者に適当な名称はないかと相談したところ、連盟副会長の礎眞一先生から『KUNDE柔道』という名前が生まれました。
また、礎先生を通して視覚障害者柔道連盟にこの構想が伝わり、連盟が積極的に『KUNDE柔道』の普及を振興していくことになりました。
そもそも、講道館柔道創始以来、視覚障害者は晴眼者の中で組み合ってから始める方法を用いて稽古をしてきたという歴史的背景もあり、連盟の普及・啓発の指針に合致するようでした。
こうした経緯で『KUNDE柔道プロジェクト』は発進しました。

『KUNDE柔道』の魅力

『KUNDE柔道』は視覚障害者柔道の普及・発展や障害理解、共生社会の実現という目的を別にしても、非常に魅力的な競技です。

まず、目の離せない接近戦。常に組み合っているため、終始技をかけるチャンス、投げるチャンスであり、かつ投げられる可能性もあるという、超スリリングな柔道が楽しめます。これは競技している側も見ている側も楽しめると思います。

しっかり組んで、積極的に技を掛け合い、一本で投げる、という柔道の一番おもしろい部分を凝縮していると言えるかもしれません。

また『KUNDE柔道』によって得られる接近戦の技術は一般の柔道にも活かせる技術だと思いますし、接近戦に自信を持つことができれば、組手争いのある柔道でもより積極的に組み合い、技を出していく意識を持つことができるのではないでしょうか。

特に初心者指導においては、正しい組み方から相手を崩し、美しい技をかけるという柔道の基本となる動きを指導する必要があるため、その習慣づけのためにも組み合ってから始めるのは良い方法と言えるかもしれません。

まとめ

ここまでで述べてきたように、『KUNDE柔道』は視覚障害の有無に関わらず、多くの人が柔道を楽しめる素晴らしい方法であり、これ自体が競技として非常に魅力的であると私は考えています。
これも柔道の魅力のひとつであると思いますが、全ての柔道家は、特に道具や特別な準備を必要とせずに『KUNDE柔道』を実践することができます。少しでも関心を持っていただけたなら、普段の稽古の一部に取り入れてみてはいかがでしょうか。

今後、さまざまな場面でこの『KUNDE柔道』の普及に取り組んでいこうと考えています。
どうか、この取組みにご協力のほどよろしくお願いいたします。


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