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茂木健一郎が語る「生きがいの本質」

9月29日、某・信託銀行と文藝春秋社が開催した無料のオンラインセミナーを受講しました。主役は脳科学者の茂木健一郎氏(写真)で、「生きがいの本質」というタイトルで講演されました。

某・信託銀行が主催というのは、つまり「本人が認知症になる前に、その資産を家族が引き出せるように工夫をした」新たな金融サービスが途中で紹介されたりして、だから無料だったのですが(笑)、茂木さんの講演はそれとは関係なく、面白いものでした。

講演のテーマは「脳を若々しく保つにはどうすれば良いか」。逆からいうと「認知症予防」ですね。60を過ぎるとこの2つは重なってきます。茂木さんの提案は大きく2つ。1つは「新しいことに挑戦すること」、もう1つは「利他の回路を開くこと」です。

新しいことへの挑戦、というのは別に珍しいことではなくて、旅行に行ったり、絵を描いたり、囲碁を始めたり…ということです。例えば、往年の著名棋士、加藤一二三氏(ひふみん)は現在80歳ですが、ここ数年CMやドラマに出たり、歌を歌ったりし始めています(「ひふみんアイ」など)。このようにいくつになっても人は新しいことを始められるし、そのことで脳内にドーパミンが放出され、学習能力が強化される、と茂木さんは語ります。

もう1つの「利他の回路」というのは「ほかの人のために何かをしてあげることで脳が活性化する」ということです。一番身近な例は「お弁当」。「弁当」はすでに世界語になっていて、アメリカやカナダでは、多種類の食品を組み合わせたものが「BENTO」の名で店で売られたり、家庭で作られたりするようになっているそうです。お母さんが子供のことを思っておかずやおにぎりを作る時、脳はフル稼動するわけですね。

あるいは「7分間の奇跡」というのがあります。新幹線が東京駅に着いた時、清掃チームが一致団結して車内に飛び込み、一両を一人で担当し、たった7分間で完璧な車内清掃をやり遂げてしまう。

海外では一般に、こういう清掃業は「将来スターになるための一時的な小遣い稼ぎ」(“starting job”というらしい)と捉えられていて、そこに思い入れを感じる人はあまりいないようですが、日本の場合は[清掃=修行の一環]という感覚があり(禅寺なんかそうですね)、それ自体が“生きがい”につながるという考えがあります。

欧米では[幸福度=資産の大きさ]という具合に見方が一元化しているが、日本では各人各様で、お弁当作りやトイレの清掃に生きがいを感じ、それが幸福につながるケースも多々ある、という指摘です。

さて、では歳を取ってから新たなことに挑戦できるようになるにはどうすれば良いのか?ということですが、これは子供の成長過程にヒントがある、と茂木さんは言います。子供はどんどん新しいことにチャレンジしていきますが、それができるのは「心の安全基地」(Secure Base)があるからだと。子供は、母親などの養育者を安全基地のように感じられると、好奇心は外の世界に向けられ、自由に探検できるようになる、というものです。これは大人でも基本的に同じで、「自分を見守ってくれる仲間」が周囲にいると、安心して新たなことにチャレンジできる、ということになります。これは認知症になった場合も同様で、周囲に家族や治療の専門家がいれば怖くない、ということですね。

この辺りから徐々に「金融資産を家族が引き出せるサービス」の話に移って言ったのですが…(笑)、それは某・信託銀行の方へお問い合わせください。



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