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"OpenSea vs. Blur"に見るNFTの未来:「NFTマーケットプレイスの歴史」考察

僕はWeb3特化のベンチャーキャピタル「Emoote(エムート)」のジェネラル・パートナーを務めている。現在のEmoote投資活動において、最も大事なキーワードの1つが「NFT」だ。

ゲーム・動画・音楽・コミックなどのエンターテイメント、不動産などリアル資産(RWA:Real World Assets)など、バーチャル/リアルを問わずあらゆるモノがNFT化されていく未来において、ユーザーのニーズや「新たなパラダイムシフトは何か」を常に考えている。

そのように広がっていくNFT経済圏の中で、過去も未来も、つねに中心にあるのはNFTマーケットプレイスだと思う。

NFTマーケットプレイスを中心に広がるNFT市場

実は、NFTマーケットプレイスは2023年に最も激変する市場となっている。

新興NFTマーケットプレイス「Blur(ブラー)」が2022年後半に登場。世界No.1の取引量を誇ってきた「OpenSea(オープンシー)」を追い抜いて、ついに2023年3月「Blur」がNFTマーケットプレイスのトップの座についた。

これまでも一時的にトップが交代することはあったが、その後も「Blur」が数ヶ月に渡りトップを維持しているのは驚くに値する。Web3業界でも「NFTマーケットプレイスは半永久的にOpenSeaでしょ?」と思ってた人が多いと思う。Web2でいえば、GoogleやAmazonがそうであるように、半永久的に勝ち続けていたかもしれない。だからこそWeb3は面白い。

NFTマーケットプレイスの覇権争いに、Web3ビルダーが学ぶことは多い。そこで本noteでは、NFTマーケットプレイスの歴史を振り返るとともに、Blurが起こしたWeb3的な戦い方を考察し、さらにはNFTの未来を予想してみようと思う。


NFTマーケットプレイスの歴史

まずNFTマーケットプレイスの歴史を3つの時代区分、(1) 黎明期(2017-2020)、(2) NFT勃興期(2020-2021)、(3) 革命期(2021-2023現在)に分けて振り返る。その流れをふまえることで、きっと「NFTの未来」が見えてくるはずだ。

(1) 黎明期(2017-2020)──NFTマーケットプレイスの確立

この時期には現在もブルーチップの1つであるCryptopunksやNFTを合成して遊ぶゲーム型のCrypto Kittiesなど(主に)クリプト界隈でNFTが話題になり、クリプト民がNFTを手にし始めた頃である。

OpenSea(オープンシー):オーソドックス型

冒頭でも触れたOpenSea。2017年に設立され、NFT市場の成長とともにトランザクションを増やしていく。2022年1月には、Paradigm、Coatueをリードに$13.3Bのバリュエーションで$300Mの調達も発表crunchbaseによると、現在までの資金調達総額は$427.2M。

OpenSea

圧倒的なユーザー数を背景に、NFTマーケットプレイスといえばOpenSeaの認知も獲得でき、多くのNFTプロジェクトがローンチ時にOpenSeaを積極活用するようになった。それによってさらにユーザーが増える、という正のスパイラルである。

Rarible(ラリブル):オーソドックス(OpenSea競合)型

現在も取引量でトップ20に入る、当時人気マーケットプレイスのひとつ。当時は直感的でわかりやすいUIが人気だったそう。僕は2017-18当時の違いや変遷を細かくは把握してないので詳細について言及できないが、大きくはOpenSeaと同じようなUI/UXに見える。現在では、EコマースでのShopifyのようにクリエイターが自分のNFTマーケットプレイスを作る機能を提供しているのは大きな特徴。

SuperRare(スーパーレア):キュレーション型

当時人気のマーケットプレイスのひとつ。現在はトップ20圏外。キュレーションされたNFTを取り扱うのが大きな特徴。トップページでもOpenSeaなどで目に付きづらい作品が目立つ。キュレーションはバーティカル(垂直的な)領域で差別化する上でよくある手法だが、OpenSeaなどに比べると作品数もユーザー数も限定的であり、トランザクションがスケールしづらいのが欠点。

その他にもNFTをレイヤー分離できるasync(エーシンク)やSuperRareのようにキュレーションに強いがあるKnownOrigin(ノーンオリジン)などがある。なお、KnownOriginは2022年1月にebayに買収されている

(2) NFT勃興期(2020-2021)──自社NFTマーケットプレイスの普及

この時期はNFTがクリプト民からマスに普及するきっかけを作ったサービスが生まれた。

NBA Top Shot:自社NFTマーケットプレイス(垂直統合)型①

その1つが「NBA Top Shot」である。2020年後半にローンチされ、本格的なプロモーションとともに2021年はじめに世界中で大きな話題になった。ローンチから1年も経たずに、総売上が$700M以上を記録した

NBA Top Shot

流行った理由としては、まず言わずもがな世界的に人気のバスケットボールリーグ「NBA」のライセンスが使われていること。そして、スポーツのトレーディングカードはリアルで親しまれている遊び・コレクションであり、デジタルで再現されたことを人々が理解しやすいかったことも大きい。

Axie Infinity:自社マーケットプレイス型②

もう1つが「Axie Infinity」である。ローンチは2018年だが、数年の運用期間を経て、2021年7月に大ヒットを迎えた。フィリピンをはじめ東南アジアで、コロナで苦しむ農家など人々にPlay-to-Earnがうまくマッチしたことが大きい。

またYGGなどのスカラーシップ制度も流れを後押ししている。2021年7月に話題になって以降、投資家などもガバナンストークンやNFTを購入するようになり、2021年のみで$1.3Bの売上が記録されている

そんな2021年に大ヒットしたNBA Top ShotとAxie Infinity、OpenSeaなどで話題になることがあまりない。なぜなら、いずれも自社NFTマーケットプレイスに注力しているからである。これが2021年の転換点である(ただし、この時期に始まったわけでなく、前述のCryptoPunksも自社マーケットプレイスを用意しており、今でもマーケットプレイス全体のトップ5に入るくらいボリュームが大きい)。

強いコンテンツを持つプロジェクトはユーザー体験を最大化させるために自社マーケットプレイスを用意するのは必然である。

(3) 革命期(2021-2023現在)──トークンインセンティブ型からBlur登場へ

勃興期(2020-2021)に人気アプリケーションが自社マーケットプレイスを広げたのに対して、革命期(2021-2023)は汎用的な新興マーケットプレイスがWeb3らしい戦い方で既存プレイヤーに戦いを挑む時期となる。

LooksRare(ルックスレア):トークンインセンティブ型

OpenSeaに対して、初めてヴァンパイアアタックを試みたマーケットプレイス。プラットフォーム手数料をOpenSeaよりも低く設定し、ユーザーに独自トークン$LOOKSをインセンティブ付与することで、OpenSeaからユーザーを奪うことを試みた。

ユーザーからすればOpenSeaでもLooksRareでも手に入れるNFTは同じなので、金銭インセンティブの強いLooksRareを選ぶのは合理的。これによってLooksRareのトランザクションが増えたが、実際には「ウォッシュトレーディング(インセンティブ目的で自分のウォレット間で売買を行うこと)」が多く、報酬として受け取った$LOOKSはすぐ売られるのでトークン価格が下落し、インセンティブ目的のユーザーも離れ、LooksRareが王座に輝き続けることはなかった。

ヴァンパイアアタックとは、トークンインセンティブなど金銭メリットを武器に、競合からユーザーや流動性を奪う手法のこと。DEXのSushiswapがUniswapをフォークして、ユーザー(流動性提供者)に独自トークンを付与することで流動性を奪ったことがスタートとされる。

X2Y2(エックスツーワイツー):機能拡張+トークンインセンティブ型

次に現れたのがX2Y2。同じくヴァンパイアアタックでOpenSeaに対抗。独自トークンの$X2Y2のインセンティブ付与はもちろん、プラットフォーム手数料売上をStaking報酬としてホルダーに還元した。

X2Y2

ここまでは金銭インセンティブを押し出すLooksRareとほぼ同様だが、X2Y2は圧倒的な開発力で、NFTトレーダーの内的動機を醸成することに成功したのが大きな違いだと思う。具体的には、今までNFTを1つずつしか出品・購入できなかったところをバルクで対応できるようにしたり、NFTを担保にお金を借りるレンディングサービスを始めたり、仮に金銭インセンティブがなくなってもX2Y2を使う理由が作られていた。

これはGameFiでも同じ。インセンティブがもらえるなら多くの人はゲームを遊ぶが、インセンティブが魅力的でなくなった瞬間に離脱するゲームは内的動機が醸成できていない。

ただし、X2Y2も現時点でOpenSeaを定常的に追い越すまでには至っていない。2023年7月時点の過去30日データでは、取引量で約10倍の差がついている。またウォッシュトレード率がOpenSeaやBlurに比べて高いとのデータもあり、今後の成長は不透明である。(詳細は割愛)

DappRadar「NFT Marketplace

sudoswap(スドースワップ):AMM型

2022年後半に登場したNFTのAMM(Automated Market Maker)のsudoswap。Fungible TokenではUniswapがAMMで大きな流動性を作り、現在も大きなDEXのひとつとして君臨している。sudoswapはそのNFTバージョン。

DefiLlama「sudoswap TVL

これまで説明してきたオーダーブック型と比べるとわかりづらいが、対象NFTとイーサを流動性プールに提供すれば、アルゴリズムに則って自動でトレードされる仕組み。NFT版Uniswapということで注目を集めたが、現在のところ大きな流動性は確保できていない模様。

Blur(ブラー):オールマイティ型

ついに現在のNFTマーケットプレイスの王者である「Blur」の登場である。

Blur

2022年10月にローンチされたBlur、直後からトランザクションを増やし、2023年2月から2023年6月現在まで常にOpenSeaを上回り、トランザクションボリュームでNo.1に輝き続けている。

DappRadar「NFT Marketplace

「なぜBlurは悲願の打倒OpenSeaを達成できたのか?」少し長くなるが、次の3つのポイント「①手数料率ゼロ」「②独自トークン$BLURのエアドロップ」「③Bidによる流動性革命」を解説する。

①手数料率ゼロ

Blurはなんとプラットフォーム手数料がゼロに設定されている。OpenSeaは従来二次流通のプラットフォーム手数料が2.5%、それに対抗したLooksRareも2.0%で設定していた。それに対してBlurは0%である。NFTトレーダーからすると非常に魅力的。

2000年代にGoogleがあらゆるサービス(Google AnalyticsやGoogle Maps等)を無償で提供して、競合たちを霊感させた過去に似たものがある。Googleはすべてを検索に繋げて、広告モデルで回収することができた。一方のBlurは、自社保有のトークンを売却していくことで運営費用を賄うと思う。価値あるサービスを提供し、トークン発行して、その時価を高くすることでプロジェクトが継続できるようにする。その先に描くのは完全なるDAOかもしれない。(その他付加ビジネスで収益を上げることも考えられるが最後の最後の手だと思う。)

トークン発行の非常に有効な一手に感じる。トークン発行は資金調達手段でもあるがそれだけではない。またトークンは投機的だから排除すべし、というのも的外れである。トークンを活用することで、僕らはこれまでと全く異なる経営、事業運営ができる世界を作ってるのだ。BlurはまさにWeb3的である。

②独自トークン$BLURのエアドロップ

次に魅力的なのが独自トークン$BLURのエアドロップである。ローンチ直後からシーズン1と称して、エアドロキャンペーンを行ってきた。具体的には、Blur上でNFTを購入したり、リスティングしたり、入札(Bid)するなど、Blurのあらゆる機能を使っていくことでエアドロ対象となる。2023年2月、ついにそのエアドロが実施され、数億円単位で稼ぐユーザーも現れた。それが火を付け、Blur人気がさらに高まり、上述のとおり、OpenSeaを定常的に超える規模になったわけだ。

AirdropAlert.com「Blur airdrop

LooksRareやX2Y2もエアドロキャンペーンをやってきたが、Blurを見ると非常に効果的にキャンペーンを行ったことが感じられる。トランザクション毎に毎回付与するのではなく、ポイントを貯めていき、キャンペーン終了時にポイントに基づいてアプリ内のボックス(Lootbox)が手に入り、それを開封することでランダム性を持ちながら$BLURをもらえる。ランキングで競争を促したり、ランダム要素を入れることでエンタメ性が増したり、ゲーミフィケーションが内包されている。それ故に一般的なエアドロキャンペーンよりも大きな話題になったと思う。

③Bidによる流動性革命

これまで見てきたマーケットプレイスとの大きな機能性の違いは、Bid機能にある。Bored Ape Yacht Clubなどコレクション毎に買いの入札(Bid)を行い、売り手はそのコレクションであれば、"Sell"ボタンを押すだけで瞬時に売却することができる。このBid機能と、直感的なユーザー体験の組み合わせこそがBlurの差別化である。そうするとどうなるか? 買い手は安く買える可能性が高いので、安めにBidを入れておく。売り手はどうしても早く現金化したいというニーズを満たすために、BlurのBidにぶつける。ゆえにBlur上でのNFT流動性が増えるという流動性革命を引き起こしているのである。

最初は外的動機で(手数料やエアドロのために)Blurを使ってきたトレーダーもBid機能の便利さ、そして流動性の高さなど内的動機を理由に使うようになっていく。これも僕が考えるWeb3の魅力的な使い方のひとつ。外的動機を内的動機に変えること。詳細は以前noteに書いたので、気になる方は参照をオススメする。

このように「楽しい/大好き > お金を稼ぎたい」などの感情(情緒的)価値を”かけ算”するようなトークノミクスを、私は「感情的な経済(Emotional Economy)と呼んでいます。
なぜ、このアプローチが重要なのでしょうか?
当初は「稼ぎたい」という外的動機(Extrinsic Motivation)で入ってきたユーザーが、いつのまにかファンへと変わり、”楽しい””好き”や”推したい”といった感情を抱くようになる。そこには内的動機(Intrinsic Motivation)が存在します。これをグラフのイメージにすると次のようになります。

日本がWeb3で勝つ理由

上記にユーザーにとっての代表的な魅力を挙げたが、他にもアグリゲーションなど機能的なメリットもある。また直近でもBlurの勢いは止まることを知らず、お金の貸し借り「BLEND」もローンチされ話題になっている。

Blurに見る2つの課題

もちろんBlurにも課題がある。ここでは「①クリエイター報酬」と「②ウォッシュトレーディング」の2つを挙げる。Blurは、Web3の思想や機能を非常に効果的に活用しており、その課題を細かく観察するだけでも、とても勉強になる。

①クリエイター報酬:クリエイター・コミュニティが意思決定すべき

まずはクリエイター報酬について。二次流通で発生するクリエイター報酬について、Blurは当初、選択式(オプショナル)にした。残念ながら多くのトレーダーは0%でトレードした。その影響を受けて、競合たちも選択式を採用するようになる。それによってクリエイターが半永久的に報酬を受け取り続ける、という理想が崩れ、業界で大きな議論を巻き起こした。

その後OpenSeaの対抗策、クリエイターからの反発などもあり、Blurは0.5%のクリエイター報酬を強制するようになるが、問題は収束していない。クリエイター報酬を強制するオンチェーン・コントラクトの開発などあらゆるアプローチが試されている。

ちなみに、個人的に大注目の「DigiDaigaku」運営のLimit Break社も「クリエイター報酬」問題に取り組んでおり、概要は下記にまとめた。参考まで。

僕たちEmooteも「Web3がクリエイターをエンパワーメント(支援)する」と信じて、日々投資や支援を行っており、本件は非常に重大な問題だと捉えている。全てのエンターテイメントやメディアにおいてクリエイターはその根源であり、彼ら・彼女らが意気揚々と、そして十分な報酬を受け取りながら活動できる環境を作ることが大事なのは言うまでもない。

いちばん大事なのは、クリエイター・コミュニティが意思決定できること。僕らも自発的に、そして投資先プロジェクトを通じて、エコシステムの改善に取り組んでいく。

②ウォッシュトレーディング:チートを防いでこそ健全な市場になる

Blurのもうひとつの大きな問題は、ウォッシュトレーディング。上述のようにエアドロップを目的に、自分のウォレット間でトレードしたり、売買手数料の負担は覚悟の上で機械的にトレードを繰り返すような、トレード自体に意味がない行為を指す。Blurはウォッシュトレーディングと見なされたアカウントをエアドロップ対象外にする対策をしたことで、LooksRareやX2Y2よりは低いが、一定のウォッシュトレーディングが存在する。過去にもエアドロキャンペーンの終了によって、トレード量が一気に減少したことがあり、今後もウォッシュトレーディング勢が抜けることでOpenSea以下のボリュームになる可能性がある

ウォッシュトレーディングの定義が正確には難しいが、参考までにDuneで公開されていたウォッシュトレーディングボリュームの参考値を用意した。(リサーチによってバラツキがあるので参考程度に)

Dune「All Time Wash Trading Stats

ただし、僕がよく見ているNFTコレクションのDiscordを観察する限りはオーガニックでBlurを使っているユーザーも多く、上述のようなユーザーの魅力もあるため、今後も一定の規模は保ち続けることが予想される。

NFTマーケットプレイスの未来予想:5つのキーワード

NFTマーケットプレイスの戦いはまだ始まったばかり。次なるBull MarketではNFTがさらに広がり、新たなNFTマーケットプレイスが台頭している可能性は十分にある。最後に「既存プレイヤーとどう差別化するか?」という観点でいくつかアイデアを考えてみる。NFT周辺プロジェクトを検討する際の参考にしていただくのと同時に、そこから「これからのNFTはどうなるか?」を感じ取っていただければ嬉しい。

1. 「独自マーケットプレイス」:圧倒的なコンテンツを武器にする

上述したように「NBA Top Shot」「Axie Infinity」は強力なコンテンツを武器に自社NFTマーケットプレイスを成立させている。今後さまざまなコレクションやゲームを取り込むことも想定される。この流れはNFT勃興期(2020-2021)からすでに始まっていたことだ。人気ゲームポータル「Steam」はValve社のCounter-Strikeを含む強いゲームタイトルからスタートしている。Epic Gamesは言わずもがなFORTNITEを武器に自社ポータル「Epic Store」を展開する。「Content is King.」はいつの時代も不変だと思う。今後Axie Infinity、STEPNを超えるNFTゲームが誕生したら、そこを起点にマーケットプレイスやゲームポータルが展開されるかもしれない。

2. 「カテゴリ特化型」:PFPははじまりにすぎない

OpenSeaもBlurもPFP(プロフィール・ピクチャー)がトランザクションのほとんどを占めている。では今後もNFTの中心がPFPなのかというと、そうではないと思う。ゲームをはじめとするエンタメはもちろん、RWAs(リアル・ワールド・アセット)にも広がる。その変遷を捉えたカテゴリ特化型、またはそれをきっかけに汎用的マーケットプレイスに広がる可能性が高い。

3. 「クリエイターファースト」:中心にすえるべきは創る人たち

上述のように2022年からNFTに関連するクリエイター報酬に問題が生じた。いずれのマーケットプレイスもクリエイターやコミュニティが拒否すれば中長期での発展は見込めない。ゆえに、クリエイターファーストで設計されたマーケットプレイスはあり得るかもしれない。汎用的なモノよりは、特化型またはキュレーション型はチャンスがありそうだ。

4. 「モバイルオンリー(ファースト)」:UXの最適化

Blurは2023年7月末現在、モバイルに最適化されていない(徐々に改善されているが、この進捗を見る限りモバイルファーストにはならない)。彼らの欠点のひとつでもある。Web3以前において、移行期にPCからモバイルに最適化することで勝機を見出したサービスはたくさんある。日本ならば「メルカリ」がいちばん有名な事例だろう。今後NFTがマス化するにつれて、ユーザー属性やNFTの種類を考慮した「モバイルオンリー(ファースト)なNFTマーケットプレイス」は十分に考えられる。

5. 「ホワイトラベル」:独自開発からホワイトラベルへ

NFTコレクションやゲームなど、あらゆるNFTプロジェクトがアプリ内にマーケットプレイスを実装するようになる。理由はシンプルで、ユーザー体験(UX)の価値を最大化するため。「NBA Top Shot」や「Axie Infinity」のように独自開発するプロジェクトもいるが、全てがそうなるとは考えづらく、ホワイトラベルでマーケットプレイスを提供するプレイヤーが複数出てくる。また、プロジェクト提供者=マーケットプレイス提供者になるので、クリエイター報酬問題の解決策としても有効である。

6. 「Web3の思想」:立ち戻るべき価値はあるか

Web3は「オープン」「透明性」「コンポーザビリティ」などの分散的で自由な環境が魅力のひとつだと思う。しかし、あらゆるWeb3プロジェクトが成長するにつれて排他的になり、Web2以前に戻るかのように短期的な自社利益の最大化に努めているように見える。Decentralized(分散型)は短期的にはデメリットが大きく見えることもあるが、中長期ではWeb3的な価値を持つことでクリエイターやコミュニティを巻き込んだ大きな革新につながるケースが増えていくと思う。NFTマーケットプレイスにもその可能性がある。

最後に

ここまでNFTマーケットプレイスの歴史を振り返るとともに、Blurが起こした変革、そしてNFTマーケットプレイスの未来予想をしてみました。

僕はVCとして未来を創る仕事に携わっています。またアドバイザーやインキュベーターとして、プロジェクト企画、グローバルBizdev、トークノミクス設計、資金調達などを支援しています。本稿を読んで、NFTマーケットプレイスはもちろん、周辺プロジェクトにチャレンジしたいと思った方はぜひDMください。世界を目指すアントレプレナーのみなさん、いっしょにデジタルコンテンツの未来をつくっていきましょう!

今後も、今回のnoteのような最新Web3プロジェクト・トレンド分析や、投資先のアップデート、トークノミクス考察、海外Web3イベント情報、シンガポール事情などをツイートしていきますので、よろしければTwitterもフォローください! m(_ _)m

Emoote公式Webサイト


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