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DigiDaigakuこそGameFiの次なる革命である

僕はベンチャーキャピタリストとして、これまでSTEPNをはじめ30件以上のグローバルWeb3プロジェクトへの投資を実行してきた。

その経験もあり、よく「次に注目している分野/プロジェクトはなんですか?」と聞かれる。

今なら、「DigiDaigaku(デジダイガク)に注目している」と即答するだろう。まったく知らない人は、アニメ作品を連想するような女の子をモチーフにしたNFTプロジェクト、ぐらいの認識にちがいない。あるいは、グローバルで有名なフリーミント(タダでもらえる)NFTプロジェクトだ、などと勘違いされているかもしれない。

たぶん"DigiDaigakuのすごさ"がまったく伝わっていない

これは単なるフリーミントのNFTプロジェクトではなく、Axie Infinity、STEPNに続く、次なるGameFiとトークノミクス革命の布石だ。シンガポールに身を置き、世界のWeb3起業家たちと議論するほど「これだ!」と、その意味するところがわかった。今回は"DigiDaigakuのすごさ"をnoteに書こうと思う。

なお、僕個人としてDigiDaigakuのGenesisをはじめ、いくつかのNFTを所有している。その点はあらかじめご理解いただきたい。また特定のNFTやトークンの売買を推奨する投資アドバイスではなく、個人的な意見であることも最初に明らかにしておく。

DigiDaigakuとは?

DigiDaigakuは、ゲーム化を前提とするNFTプロジェクトだ。2022年夏にスタートし、Genesis NFT(最初のNFT)が無料で配布された。このプロジェクトについて、事前に知っておくべきことがあるとしたら、下記のとおり。

  • DigiDaigakuの運営会社Limit Breakの共同創業者CEOはGabriel Leydon(通称Gabe)

  • Gabeは『Game of War』『 Mobile Strike』などモバイルソーシャルゲーム黎明期に特に活躍したゲーム会社Machine Zone社の創業者

  • 同社は2020年にAppLovin社に$500Mで買収された(ただし同社は2016年に$5Bの評価額を受けて累計$725M調達していたとのこと)

  • Limit Breakの多くのメンバーがMachine Zone社の出身

  • Limit Breakは2022年8月に$200Mの大型資金調達を実施した

  • 2023年2月のSuper Bowlでゲームローンチ前にも関わらず、$6.5M(約8.5億円)を使ってCMを流して話題になった

  • DigiDaigakuの最重要コンセプトは「Free-to-Own(タダで所有する)」

以下、「なぜDigiDaigakuがすごいのか?」について、3つの重要なポイントを解説する。

1. Free-to-Ownの衝撃

すべては、Genesis(ジェネシス)と呼ばれるアニメ風美少女キャラが2,022体フリーミントされたことから始まった。そのGenesisから始まる「Free-to-Own(フリー・トゥー・オウン)」がポイントだ。

プロジェクト全体では、これまでにHeroes(ヒーローズ)、Super Villain(スーパーヴィラン)、Giant Dragon(ジャイアントドラゴン)などのコレクションが追加されてきた。そのすべてのコレクションのエアドロップ(無料配布)先となっているのがGenesis NFTだ。つまり、Genesisホルダーは(基本的に)追加費用なく、ほぼすべてのコレクションを所有する権利があるということだ。(必ずしもGenesisホルダーだけが対象ではないこと、運営がエアドロップ等を保証しているわけではないこと、Dragon EggsのエアドロップはGenesisホルダーが対象ではなかった点は補足しておく。)

これこそが「Free-to-Own」の所以だ。DigiDaigakuのコレクション(ゲーム)全体のデジタルアセットをGenesisホルダーが所有できること。これが真の狙いである。

もちろん、フリーミントや既存ホルダーへのエアドロップ自体は、他プロジェクトでもよく見られる手法だ。しかし、多くはデジタルアセットのプレゼントかイベント参加権の代わりであるのに対して、(一部推測も含まれるが)DigiDaigakuはゲームそのものを所有させている。

「Free-to-Own」は、これまでNFTの販売(一次流通)で資金調達をしてきたNFTプロジェクト・GameFiではありえない手法である。まさに衝撃だ。

2. コミュニティ・ドリブンの価値形成

「Free-to-Own」がもたらしたものが、コミュニティの熱気だ。Discordには異常な熱量があふれている。ホルダー間で様々な議論やミームが繰り広げられるのはもちろんだが、新規ホルダーのオンボーディングも素晴らしい。

タダで配布されたNFTは愛着がなく売られるのも早いと思われがちだが、Genesis NFTに次々とエアドロップされてくるので、そう簡単にホルダーは手放さない。しかも、その新たに無料配布されたNFTにも、きちんと価格が付く。

DigiDaigaku - Heroes

DigiDaigakuのNFTコレクションのフロア価格が高い理由は、「クエスト」と呼ばれるタスクの存在である。

従来のNFTコレクションであれば、全員にほぼ同じアイテムがエアドロップされ、一定期間後にリビール(個別NFTが生成されること)される。これがDigiDaigakuでは、エアドロップされた個々に異なる(スピリットやポーションと呼ばれる)アイテムを使って、新たなNFTをミントする仕組みだ。

しかも、Genesis NFTにはメタデータとしてあらかじめ属性が付与されており、その掛け合わせによって生まれてくる個体のレアリティや見た目が大きく異なってくる。

その新たなNFTをミントするプロセス自体が一つのエンターテイメントになっており、コミュニティにいるホルダーたちを熱中させるのだ。

このクエストそのものの過程において、ホルダーは相性の良いアイテムは(たとえ高額だったとしても)どうしても手に入れたい。あるいは、いらないアイテムは売ればいい(そして新たなユーザーが流れ込む)。

わからないことは、Discordのコミュニティがオンボーディング・解決してくれる。"売り抜けよう"というホルダーは相対的に少ない。こうしたクエストの"面白さ"が生み出すコミュニティ内のトランザクションがNFTフロア価格を支える根拠となるのだ。

まさに、コミュニティ・ドリブンがもたらすNFT価値の形成である。

ちなみに、僕が初めてDigiDaigakuを知ったのは運営のLimit Break社の$200Mの資金調達ニュースだったが、実はちょうどその翌日にYGG共同創業者のGabby Dizon、Delphi DigitalのRyan(当時)とお茶をした時にその魅力を聞いていた("お茶"と書いたのは、シンガポールで本当に日本茶を一緒に飲んだから笑)。GameFiに関わる人ならわかると思うが、彼らはグローバルにとても影響力のある人物たちだ。

彼らをはじめ、多くのGameFi関係者がDigiDaigakuに注目している。創業者のGabeに120万人を超えるフォロワーがいるのもすごいことだが、絶対数よりも業界に影響が強いインフルエンサーが推していることの価値が高い

僕がDigiDaigakuにいちばん期待していることは、「BAYC for GameFi」に君臨することだ。BAYC(The Bored Ape Yacht Club)はご存知のとおり、フロア価格51.45ETH(2023年5月現在/OpenSea参照)を誇る最大のNFTコレクションである。NFTに精通していたり、お金持ちのホルダーが多いために、多くのNFTプロジェクトがローンチ時に公式・非公式を問わずBAYCホルダーにエアドロやホワイトリストを提供するなど積極的にコラボしてきた。

では、GameFiはどうか?これまでBAYCとコラボしてきた事例はあるが、BAYCホルダーの多くはゲーマーではないと思う。GameFiにはGameFiのためのブルーチップがいずれ生まれると思う。そして、BAYCがそうであるように、その座に一度君臨すると、それがやがてブランドになり、誰も追いつけなくなる。ブランド価値の高いLVMHやAppleと同じことだ。

そのタイミングは今である。

Axie InfinityやSTEPNが盛り上がった後の市況が冷え込んだタイミングで、次なるGameFiのムーブメントをつくるプロジェクトが必ず存在する。そして、その座はまだ空いている。

これまでのGameFiの中心地は、DEXなどDeFiと組み合わせたDual-TokenのTokenomics(トークン経済)だったが、もはや正しいTokenomicsデザインはGameFiプロジェクトの差別化要因にはならない。今後は、NFTを中心とした価値形成をベースにしたTokenomicsに様変わりするだろう。

NFTマーケットプレイスの覇権がOpenSeaからBlurに変わりつつあることも大きい。詳しい考察は割愛するが、Blurの登場によりNFTの中心がアートからゲームに変わり、DigiDaigakuのようにコミュニティ・ドリブンでGenesis NFTに価値を集中させるケースが増えるだろう。STEPNがGenesisホルダーにエアドロップしたのも、その流れだと思う。

Genesis NFTに価値を集中させる戦略の"正しさ"は、いずれわかるはずだ。

3. ロイヤリティ・コントラクト革命

DigiDaigakuのすごさは、ここまで紹介してきたポイントを支えるNFTエコシステムのデザイン(設計)とテクノロジー開発の基盤がきちんとあることに尽きる。

僕はよく「NFTコレクション作りは家系図作り」と表現しているが、家系図のように各コレクションがどう紐付いていくのか、親子関係、兄弟姉妹、希少性をどう描くのか、が大事だ。DigiDaigakuでは、Genesis - Heroes - SuperVillains(Villains) - Giant Dragons(Baby Dragons)の系譜がバランス良く設計されている。

そして上述のとおり、NFTのミント時にクエストがあるため、運営サイドではなく、ホルダーサイドの需給が最終的にNFTのレアリティのバランスを決定していく(運営はもちろんある程度予測している)。あまり詳しくない方は、Genesisが最上位であり、レア度は「Genesis > Heroes >= SuperVillains」だと考えると話がわかりやすい(実際はレアリティによるため、購入の参考にしないようご注意を)。

DigiDaigakuにおいて、最も優れたNFTエコシステムのデザイン(設計)は、「Bloodline(血統)」の仕組みだ。たとえば、SuperVillainsの属性データをOpenSeaで見てほしい。

上記の赤枠は、このSuperVillainが「どのGenesisから」「どのHeroから」生まれたのか、を意味する。そこにはOrigin Genesis、Origin Heroの属性が存在しており、先ほど述べたような家系図の情報がオンチェーンに刻まれているのだ。僕が知る限り、これを実装できているブルーチップはない。

ここにおいて、DigiDaigakuのクエストはオンチェーンゲームである。既存のGameFiでは、Dual-TokenのTokenomicsで苦戦しているプロジェクトが多いことから「オフチェーンでいいのでは?」という風潮があるなか、これをイーサリアムで取り入れて運営するのは相当なことである(ホルダー視点ではガス代が高すぎる)。

このようにNFTのメタデータに応じて、特定の条件が満たされたときに動的に変わるものを「ダイナミックNFT(Dynamic NFTs)」と呼ぶ。これはNFTプロジェクトのパラダイムシフトであり、ダイナミックNFTを通じてあらゆるNFTプロジェクトがゲーム化する

DigiDaigakuは、これらの仕組みを実現するためのテクノロジーに投資している。たとえば、「Adventure ERC-721」と呼ばれる、既存のNFT標準規格を拡張したプロトコルを独自に設計し、公開している。

また、「ERC721-C」と呼ばれる新しいクリエイターロイヤリティコントラクト(クリエイター報酬のための規格)も非常に重要である。

2022年後半からNFTマーケットプレイスによる手数料値下げ合戦が勃発し、二次取引時のクリエイター報酬がゼロまたは低い割合に抑えられるケースが目立つようになった。ブロックチェーンによって、クリエイターが永久に報酬(手数料)を受け取れるのが革命だったはずだが、現在の仕組みには欠陥があり、実際にはそうならないことが証明された。

そこで登場したのが「ERC721-C」。オンチェーンで決められたルールに則って取引が行われ、クリエイター、ミンター(NFTをミントした人)やホルダーが予め決められた割合の報酬を受け取ることを強制するためのコントラクトである。

例)
クリエイター: 5%
ミンター: 2.5%
ホルダー: 1.5%
アフィリエイター: 1%

新しいNFTコレクションは発行・ミント時に、既存コレクションはWrapped NFTのミント時にコントラクトを設定できる想定。

僕はこれが直感的に「GameFiのゲームチェンジャーになり得る」と確信している。

これ以上は推論の域を出ないためここで終わりにするが、これまで述べてきたDigiDaigakuの特徴とこのロイヤリティ・コントラクトを掛け合わせると、とんでもないイノベーションが起きるだろう。

最後に

ここまでFree-to-Own、コミュニティ・ドリブンの価値形成、ダイナミックNFTといったキーワードを用いてDigiDaigakuを解説しました。ほんの少しでもその熱量と"DigiDaigakuのすごさ"が伝わったでしょうか。

正直なところ、ここに書いたことはDigiDaigakuについて僕が考えていることの一部に過ぎません。今後のGameFiやWeb3エンタメがどう進化していくのか、いくつかの異なるアプローチや仮説を持っています。

この先は、ぜひWeb3ビルダーの起業家のみなさんと議論したい、と考えています。僕は投資家なので投資相談はもちろん、トークノミクスやNFTエコシステムのデザインや設計、海外プレイヤー(取引所/L1-2/VC)の紹介など、役に立てることがあればいつでもTwitterでDMください。

世界を目指すWeb3アントレプレナーのみなさん、いっしょにWeb3の新たなエンタメ・メディアをつくっていきましょう!

参考文献

DigiDaigakuの理解を深めるために過去参照した記事を共有します。

【Free to Own】なぜDigiDaigakuのNFTは200万円で取引されているのか?https://research.lca-game-guild.com/digidaigaku/

『DigiDaigaku NFT』Web3ゲームの頂点を目指す! ※有料
https://note.com/lou_301/n/n2fab19cf8340

「DigiDaigakuについての私見」DJRIO.eth @ REALITY
https://twitter.com/djrio_vr/status/1578250877009207296

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