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a16zゲーム投資に見るゲームスタートアップ潮流の過去と未来

背景

北米Top Tier VCの1つである、Andreessen Horowitz(以下a16z)が積極的にゲーム投資していることに目を付け、彼らの過去の投資を振り返ることで、今後のゲーム産業が見えてくるのでは?と思い、まとめてみました。
本記事は熊谷個人のまとめ・意見であることをご理解ください。

まとめ

PCソーシャルゲーム、モバイルソーシャルゲーム、ハイエンドゲーム、ブロックチェーンゲーム、MMO・メタバースのような大きな流れが汲み取れました。
ソーシャルゲームが一巡し、今後はMMOのようなコアゲーマー向け、またブロックチェーンゲーム、VR/ARゲームのような新しいゲーム体験に注目です。
MMO、メタバースの先にあるものは従来のいわゆるビデオゲームの枠に収まらない仮想世界プラットフォームかもしれません。

自己紹介

熊谷 祐二(くまがい ゆうじ) @yujikumagai_
Heart Driven Fund ヴァイス・プレジデント
2014年にiemo株式会社共同代表取締役COO就任を経て、同社を株式会社ディー・エヌ・エーへ売却。 2015年にスポーツテック事業を手掛けるSkyBall株式会社を創業し、2018年にアカツキへ売却。アカツキのesports事業責任者並びにProfessional Esports League取締役(バルセロナ)に就任。2019年8月からHeart Driven Fund ヴァイスプレジデントに就任。自身の起業・経営経験を元に主にシードステージの投資実行、ハンズオン支援を強化する。


ゲームポートフォリオ

会社名(事業内容/a16z投資ステージ/該当ラウンドの調達額)でまとめます。
情報ソースはCrunchbaseより。 *1

2009
- Zynga (PCソーシャルゲーム/シリーズB/15M)

2011
- TinyCo (モバイルソーシャルゲーム/シリーズA/18M)
- Mino Games (モバイルソーシャルゲーム/シード/1M)

2012
- Kamcord (ゲーム動画配信/シード/1.5M)2013
- TinyCo(モバイルソーシャルゲーム/シリーズB/20M)
- Oculus(VRデバイス・プラットフォーム/シリーズB/75M)

2014
- Magic Leap(MRデバイス・プラットフォーム/シリーズB/542M)

2015
- Improbable(ゲームテクノロジー/シリーズA/22M)
- Radiant Entertainment(PCゲーム/シード/4.5M)
- Mino Games(モバイルソーシャルゲーム/シード/2.2M)

2016
- Bonfire Studios(ゲームデベロッパー/ステージ不明/25M)

2017
- Improbable(ゲームテクノロジー/シリーズB/502M)

2018
- Dapper Labs(ブロックチェーンゲーム/シリーズA/28M)

2019
- Sandbox VR(VRゲーム/シリーズA/8M)
- Forte(ブロックチェーンゲーム/ステージ不明/調達額不明)
- Singularity 6(ゲームデベロッパー/シリーズA/16.5M)

2020
- Roblox(MMOゲーム/シリーズG/150M)
- Mainframe Industries(MMOゲーム/シリーズA/7.6M€)
- Sleeper(ファンタジースポーツ/シリーズB/20M)

2009年〜ソーシャルゲーム時代

2009年にソーシャルゲームの雄 Zyngaに投資。初期はFacebookを中心としたPCソーシャルゲームで成長。その後ネイティブストアの成長とともにスマートフォンネイティブアプリ。2011年にIPO済み。

Zyngaの大人気農園ゲーム「Farmville」がApp Storeにローンチされたのが2010年。徐々にネイティブゲームが遊ばれるようになる中で、2011年に TinyCo, Mino Gamesの2社に投資。
a16zポートフォリオではありませんが、2011年にKabamが115M、Supercellが12M調達してます。
なお、日本企業でいうと、DeNAのngmoco買収が2010年です。

2013年〜VR/ARデバイス

ゲーム特化ではありませんが、2013年にVRデバイスのOculus、2014年にMRデバイスのMagic Leapに投資。いずれも誰もが知ることになる有力スタートアップ。
その後数年を見てもXRコンテンツ系の投資はなく、あくまでデバイス、プラットフォームに投資する思想だったことが窺えます。(後述しますが、2019年にはVRコンテンツに投資)
Oculusはその後2014年にFacebookが買収。

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2015年〜ハイエンドゲーム

2015年はImprobable、Radiant Entertainment、2016年はBonfire StudiosとMMOなどハイエンドゲームのデベロッパーやテクノロジー(周辺技術)に投資してます。
一見明確なテーマが見えませんが、ソーシャルゲームがひと段落して、MMO、メタバースの大きな波に向けた仕込みにも見えます。(今考えれば)

驚くのは、Improbable。2017年にSoftbank Vision Fundをリードに502M調達済みです。

2018年〜ゲームx新テクノロジー

まず特徴的なのがブロックチェーンゲーム。a16zはゲームに限らずブロックチェーン、クリプト全般に積極的です。
2018年にCrypto Kittiesで有名なDapper Labs、2019年にForteに投資。 注目度が窺えます。
ブロックチェーンゲームは年々ゲームのクオリティが上がっており、Dappsならではの遊び方も発明されてきており、2020-21に大きな発展があるのでは?と期待してます。
a16zはフォローオン投資も多いので、上記2社へのフォローオン投資の有無、関連企業への新規投資も要注目。

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また2019年にはVRゲームのSandbox VRに投資。
ARゲームはポケモンGOで一気に市民権を得て、VRゲームもデバイスの普及とともに発展中。Oculusによると、20本以上のゲームが100万ドル以上の収益を得ており(*2)、しっかりマネタイズできる土壌が整ってきました。
今後XRコンテンツ・アプリケーションへの投資がどの程度行われるのか気になります。

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2020年〜MMO / メタバース

ここ数年のヒットタイトルのひとつがFortniteであることは疑いようがありません。
NetflixもFortniteがライバルであると決算発表会で言及し、エンタメにおける可処分所得を多く稼いでます。

Fortnite、Apex Legendsなどが人気を博している中で、Z世代、ミレニアル世代に人気のRobloxに2020年に投資。
Robloxは2019年8月時点で1億MAU。ちなみに同時期には、Fortnite(2.5億MAU)、Minecraft(9,100万MAU) *3

また同じく2020年に、Mainframe Industriesに投資。2019年創業で、クラウドゲームでMMOを提供するデベロッパーのようです。同じラウンドでLeague of Legendsで有名なRiot Gamesも投資してるのも興味深い。

有名ミュージシャンによるFortniteライブ配信などMMO、そしてメタバース(仮想世界)が次なる巨大プラットフォームになる可能性はかなり高く、a16zも大きな勝負に出たことが理解できます。

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番外編〜ファンタジースポーツ

いわゆるビデオゲームではありませんが、周辺領域では2020年にファンタジースポーツを展開する、Sleeperに投資してます。
DraftKings、FunDuelなど先行サービスがある中でどう切り込むのか楽しみな会社です。
Fantasy LoLなるLeague of Legendsのファンタジースポーツはeスポーツとのコラボで新たな展開が期待できそうです。

いかがでしたか。
a16zだけで振り返っても、ゲーム業界の大きなトレンドがキャッチアップできたと思います。
a16zはシードからレイターまで幅広く投資してるため、投資実行時期とトレンドに乖離があります。またEpic GamesのFortniteに代表されるように、ゲーム業界は大手の影響力が大きく、VC投資では判断できない部分も存在します。その点はご了承ください。

Heart Driven Fundでは、新たなテクノロジーを融合したゲームはもちろん、Twitch、Discordのようなゲーマーコミュニティにおける新たなエンターテイメント・コミュニケーションサービスを一緒に創りたいと思ってます。
事業の壁打ち、資金調達相談はお気軽にご連絡ください。

*1 https://www.crunchbase.com/
*2 https://jp.gamesindustry.biz/article/2005/20051905/
*3 https://www.businessinsider.com/roblox-user-growth-surpasses-minecraft-2019-8


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