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InsurTech(保険テック)の可能性を探る。海外スタートアップ事例より

こんにちは。株式会社アカツキの投資プロジェクト「Heart Driven Fund」でシード投資・ハンズオン支援をしている、熊谷(クマガイ)です。@yujikumagai_

アカツキといえばエンタメ企業ですが、投資は業種問わず実行してます。Heart Driven Village(ポートフォリオ)にも、金融、HR(人材)、SaaS、教育、コマース、D2Cなど多数います。

そして最近は、エンタメから一見関係なさそう(遠そうな)業種に興味が湧いてきました。僕らが対象として捉えていなかった巨大市場に、僕らのビジョン「A Heart Driven World」を持ち込んだらどうなるのか?現在の延長線上ではないハートドリブンなアップデートができるんじゃないか?そんな妄想を繰り返してます。

ということで、今回はInsurTech(保険)をリサーチ&まとめてみます。
ちなみに、20代のうちは社会保険など加入が義務付けられているものを除いて保険には全く興味を持ちませんでした。

保険のグローバル・国内市場規模

国内の生命保険、損害保険はそれぞれ

国内の生命保険市場は 33.7兆円(2017)
参照:生命保険協会「生命保険事業概況」
https://www.td-holdings.co.jp/ir/document/annual/pdf/ar2018j_s4.pdf
国内の損害保険市場は 8.2兆円(2016)
内訳は、
自動車 49.3%
自賠責 12.4%
火災 13.8%
傷害 8.2%
新種 13.4%
参照:日本損害保険協会「ファクトブック2017」
https://www.ms-ad-hd.com/ja/basic_knowledge/casualty.html

世界に目を移すと、

グローバル生命保険市場 2.6兆ドル  内、日本3,540億ドル(13.5%)
グローバル損害保険市場 229兆円  内、日本12兆円(5.5%)
https://www.ms-ad-hd.com/ja/basic_knowledge/market.html

になってます。
医療42.1兆円(2016)、外食25.6兆円(2017)の間に入ってくる巨大市場です。*1

InsurTechを分類してみる

様々なインターネットソースを活用して、InsurTech企業を数十社リサーチ、その中で見つけられた分類をまとめます。

1. シンプルなネット保険(オンライン保険)

生保、損保ともに従来は保険営業員(ブローカー)が介在したり、店舗窓口などオフラインでの営業・成約が中心だったものをオンラインに移行したもの。営業人員、店舗(箱)、紙書類、それらに付随するリアルアセットやオペレーションを削減することで、保険料がリーズナブルになったり、煩雑な手続きが簡易化される(スピードが早くなる)といったメリットを唄います。

San FranciscoベースのLadderは、2015年創業でシンプルなオンライン保険サービスを提供。最短5分で提案のスピード感かつ格安に保険契約できることが魅力。

日本国内ではライフネット生命が、2006年創業で着実に業績を伸ばし、2012年に東証マザーズに上場してます。
2019年3月期で、保有契約件数 308,854件、経常収益16,200(百万円)、経常利益△2,000(百万円)。*2

ちなみに、規模感を比較するために、国内最大手日本生命グループの数字を調べました。2018年度決算で、経常収益 82,271(億円)、経常利益 4,284(億円)。*3
保険ビジネスは経常収益・利益だけでは、直近の営業活動成果を測れないとはいえ、規模感にはまだ大きな開きがあります。

2. P2P保険(Peer-to-Peer)

大きな話題になってきているのがP2P保険。
同じニーズを持った人たちがひとつのグループになり、その中で保険金(給付金)を負担するスキームです。
会社や商品によって異なりますが、初期コストが0円だったり、格安だったり、そして必要なときだけ負担すればいいので、従来のように重大疾病など被保険者のコスト負担が大きかった領域のハードルが下がることにイノベーションがあります。

Lemonadeは、北米中心に展開しているP2P保険事業者です。累計調達額は$480M、直近の2019/4 シリーズDラウンドはSoftBankリードで$300M調達してます。
チャットボット等を活用することで、保険提案から支払い請求までオートメーション化されており、低価格の保険商品が設計可能、複雑な契約手続きなく、カジュアルに加入できます。
また、未請求の保険金は同社の利益にはならず、チャリティ団体に寄付されます。これにより、保険会社が保険金の支払いを不当に拒むことがない、というのが同社のセールスポイントのひとつです。

中国では、Alibabaの子会社Ant FinancialがP2P保険「相互宝」を提供してます。加入時の負担金がゼロ、一定期間内の給付金+運営手数料を加入者で負担するスキームになってます。最初の1年で約1億人が加入したことが話題になりました。*4

日本国内では、InsurTechスタートアップのjustInCaseが2020年1月に、P2P保険(わりかん保険)をリリースしてます。

3. データ活用&パーソナライズ保険

専用デバイスやスマートフォンを活用してデータ収集したり、デモグラフィックに応じたパーソナライズ保険もあります。
現在はひとつのカテゴリのように取り扱っていますが、いずれは全ての保険に付加される機能(オプション)ではないかと考えます。

Hippo Insuranceは、オンライン住宅・家財保険。シンプルな問いに答えてすぐ契約できる、といったオンラインの一般的な特長はもちろん、同社のスマートホームセンサーを装着することで、住宅データを収集、保険金の支払いを円滑に、かつ保険料の割引に活用されるようです。

Root Insuranceは、モバイルファーストなオンライン自動車保険。スマートフォンで取得した走行データを元に保険金を決定します。

Metromileは、同じく走行データを活用した保険。データは専用デバイスを自動車に装備することで収集します。

Pie Insuranceは、中小企業の従業員向けオンライン保険。建設、飲食、製造、小売、医療など業種ごとの保険プランが用意されます。

Tractableは、保険事業者向けのAIソフトウェアサービス。自動車や住宅の損傷度合いをAI鑑定。従来なら人力で行なっていた作業を自動化することで、保険金支払いを正確かつ短い時間で行うことができます。

日本国内では、スマートドライブが専用デバイス+スマートフォンで「運転の見える化」にチャレンジしてます。すでにアクサダイレクトともテスト実施済みのようで、今後同社の技術が活用された保険商品の提供が待たれます。
https://www.axa-direct.co.jp/smartdrivecars/

4. 保険事業者向け業務管理SaaS

直接的に保険事業ではありませんが、周辺事業として紹介します。
あらゆる業種で特化型SaaS(Vertical SaaS)が浸透してる中で、保険事業者向けの業務管理SaaSです。

細かい機能や料金体系など多少の違いはありますが、事業者のみが使用するバックエンドから消費者に触れるフロントエンドまでカバーしたサービスが多いです。

Instandaは、2012年創業、ロンドンベースでSaaSを提供、累計調達額は$28.1M。

Unqorkは、2017年創業、ニューヨークベース、累計調達額は$158.2M。Liberty Mutual、Goldman Sachs等への導入実績あり。

5. その他特徴的なInsurTechスタートアップ

最後に、カテゴライズしづらいものの、特徴的な保険商品やサービスを提供しているスタートアップを列挙します。

Bought by Manyは、従来の保険会社ではビジネスになりづらい、ニッチすぎる保険商品を提供します。事前に同じニーズを持った個人を集めてから大手保険会社に商品設計を提案すること(自社では保険商品を持たない)で、マーケティングコストを抑えることができます。同社webを見る限りペット保険が多いようですが、チワワに特化した保険、などが実現できます。

Coalitionは、サイバーセキュリティ専門の保険です。無償のサイバーセキュリティツールを提供することで、クライアントは365日・24時間自社システムをモニタリングしたり、セキュリティ担当従業員への教育が行えます。無償ツールには$15Mまでの保険が付帯されているようです。(2020年3月現在)

最後にスタートアップではありませんが、中国の平安保険(Ping An Insurance)。遠隔医療プラットフォーム、クリニック向け管理システム、不正請求防止、過剰請求管理などのサービス、個人向けの健康管理アプリなどを提供する、中国の巨大保険会社です。

終わりに

以上、保険市場規模からInsurTechスタートアップの紹介でした。
オンライン保険に始まり、P2P、データ活用、パーソナライズなどテクノロジーを活用することで従来は実現できなかった保険商品・サービスが続々と登場してます。

日本国内やアジア市場に向けて、保険をアップデートしたい!と意気込む起業家(予備軍含む)の皆さんはお気軽にお問い合わせください。カジュアルにディスカッションしましょう。

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こんな面白いInsurTechもあるよ!やこれ間違ってます!などご意見・ご感想もお気軽に。

合わせて読みたい!

参照
*1 https://stat.visualizing.info/msm
*2 https://ir.lifenet-seimei.co.jp/ja/library/presentations.html
*3 https://www.nissay.co.jp/kaisha/annai/gyoseki/setsumei.html
*4 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=63591?site=nli
https://www.crunchbase.com/

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