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<ラグビー>2024年シーズン(6月第三週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

〇 先日NHKの「クラシック音楽館」で聴いた、ラヴェルの『マ・メール・ロワ』が頭の中に残って離れない。もともとラヴェルやドビュッシーが好きなので、この曲も何回も聞いているのだが、なぜか今回はずっと響いている。もしかすると、ワルプルギスと魔女とバラ園の物語(題名は「ワルプルギスとバラ園」。アマゾンで発売予定の短編集に入れるつもり)を書いているからかもしれない。この物語の背景に流れる音楽としては、この『マ・メール・ロワ』が最適だと思う。
 
 ところで、このフランス語の日本語訳は、不思議と流通していない。それは、単純に翻訳すれば、「私の母なる国王」となるため、曲のイメージにそぐわないからだろう。それで、そのままカタカナ表記にしているのではないだろうか。しかし、この『マ・メール・ロワ』はラヴェルが同名の童話集から想を得たものなので、本来の意味はデーメーテールやキュベレーのような大地母神による、根源的な物語ということだと思う。そういう観点から無理矢理翻訳すれば、『大いなる母が伝える物語』になるのではないか。
 
〇 私の実家は新宿線瑞江駅からバスで行くのだが、最近瑞江駅にスーツケースを抱えた欧米人観光客の姿をよくみかける。「瑞江駅周辺には、観光客が来るようなものは何もないのに?」と思いつつインターネットを調べたら、手頃なホテルがある他に民泊をやっている家もあることがわかった。たぶんこうした宿泊施設を利用する観光客が来ているようだ。たしかに、案外都心に行きやすい地下鉄路線でもあるので、こんな「東京の片田舎」と馬鹿にされている地域まで、観光客が来るようになっていることを実感した次第。そりゃあ、港区のホテルに泊まったら相当お高くつきますし、外国人観光客にとってはどこに泊まろうと関係ないですからね。



1.スーパーラグビー準決勝結果

ブルーズ34-20ブランビーズ


 ブルーズにとって相性が悪いブランビーズだが、FW戦で勝利することがポイントになる。特に、FLダルトン・パパリイとNO.8ホスキンス・ソツツのプレーが注目される。イーデンパーク開催と言うホームの強みを生かして快勝したい。なお、キャプテンであるLOパトリック・ツイプロツが膝の怪我をしてしまい、7週間欠場することとなった。

 試合は、ブルーズが前半を27-13と先行し、後半もリードを保持して、完勝した。ブルーズSOハリー・プランマーとFBスティーヴン・ペロフェタの好リードしたBKが、終始ブランビーズのディフェンスを混乱させていた他、NO.8ホスキンス・ソツツを筆頭にしたFWが圧倒していた。ブルーズの5トライに対して、ブランビーズは2トライに抑えられ、NZチームとオーストラリアチームとの実力差がそのまま表れた結果となった。また、今年も決勝はNZチーム同士の対戦となった。

ハリケーンズ19-30チーフス


 どちらもスーパーラグビーに相応しい楽しいプレーを見せてくれるので、良いゲームを期待したい。チーフスSOダミアン・マッケンジーは、オールブラックスの先発SOがほぼ確定していると思われるが、ハリケーンズで今シーズン貢献しているSOブレット・キャメロンのプレー振りにも注目したい。また、ハリケーンズSHのTJ・ペレナラ対チーフスのコルティス・ラティマー、ハリケーンズFBルーベン・ラヴ対チーフスのショーン・スティーヴンソンなど、オールブラックス入りを賭けた対決が沢山あるのが楽しみだ。ハリケーンズは好調の左PRザヴィエール・ヌミアが怪我で欠場したが、右PRタイレル・ローマックスが怪我から復帰した。

 試合は、いきなりチーフスが連続トライを挙げて、前半を7-17とリードする。後半にハリケーンズは追い上げるが逆転するまでには至らず、チーフスがリードを保って勝利した。レギュラーシーズンではハリケーンズが勝利したが、久しぶりのノックアウトステージとなったこともあり、チーフスが経験値で優ったという印象が残った。両チームのオールブラックス候補たちは皆良いプレーをしていたが、特にチーフスの両WTBエテネ・ナナイセツロとエモニ・ナラワが目立っていた。また、ハリケーンズでは、FLピーター・ラカイとFBルーベン・ラヴが奮闘していた。

2.その他のニュースなど


(1)アキラ・イオアネが日本行きを表明

 オールブラックスのFLとして21キャップを持つ、オークランド州及びブルーズでプレーするアキラ・イオアネ、28歳は、今シーズンのスーパーラグビー終了後に日本へ移籍することを発表した。移籍先のチーム名はこれから発表すると見られる。

 イオアネは、日本生まれのため、日本代表の資格を持つ他、両親の出身であるサモア代表の資格も持っている。しかし、既にオールブラックスとして2022年11月のスコットランド戦でプレーしているため、2025年11月から、日本あるいはサモアの代表としてプレーする資格を得ることになる。

 イオアネは、2014年にマオリオールブラックスに選ばれた他、セヴンズではワールドシリーズ及びコモンウェルス大会で優勝し、19歳からはスーパーラグビーのブルーズで長くプレーしてきた。イオアネは、今回の日本行きは家族のことを考えた結果であり、選手としての最後も日本で迎えたいと述べている。

(2)カーター・ゴードンが13人制リーグへ移籍

 レベルズのスーパーラグビー除外により、所属チームを失ったワラビーズSOのカーター・ゴードンは、2025年からの二年契約で、NRLのゴールドコースト・タイタンズへの移籍を発表した。この結果、2026年に予定しているブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズとのゲームには出場できないことになった。

 ユニオンからは既にWTBマーク・ナワカニタワゼがシドニー・ルースターへ移籍しており、ワラビーズ監督のジョー・シュミットとしては、続けて有力なワラビーズのBKを失うことになった。一方、前任のエディー・ジョーンズによって代表から除外された、NZ人SOノア・ノレシオは、昨年のRWC後に三か月だけ限定でフランスのトップ14チーム(ツーロン)でプレーしたが、その効果が今シーズンのブランビーズのプレー振りに現れており、ワラビーズの先発SO候補NO.1となっている。

(3)エラスムスは、コリシをアイルランド戦のキャプテン候補NO.1と想定

 南アフリカ・スプリングボクスは、アイルランドとのテストマッチを控えているが、その雨に対戦するウェールズとのゲームには、フランスのラシン92でプレーしている、RWC時のキャプテンであるFLシヤ・コリシは、クラブとの契約条件から代表でプレーできないことになっている。

 そのため、ラッシー・エラスムス監督は、キャプテン代行として、LOエベン・エツベス、FLピーター・スティフデュトイ、HOボンギ・ムボナンビの3人のいずれかを指名する予定だと明かした。一方、アイルランド戦前には契約外となるため、代表にコリシが戻ってくるので、彼がキャプテンに復帰する可能性を強調している。

(4)NZ最古のウェリントンクラブが、43試合、1085日ぶりの勝利

 1870年創設のウェリントンクラブは、「エクスメン(斧を持つ人)」と称し、これまで30人のオールブラックス、5人のブラックファーンズ、12人のマオリオールブラックス、2人のジュニアオールブラックスを輩出した名門である。

 しかし、近年は主要メンバーを失ったこともあり、ウェリントン州クラブ選手権最高のプレミアーレベルでは、43試合、1085日も連敗し、合計2364失点をするという不名誉な記録を更新していた。しかし、先週154年にわたるクラブの歴史の重みを発揮して、アヴァロンに19-13で勝利した。

 なお私事になるが、私は1987から1990年までこのウェリントンクラブの一番下のグレード(ジュニア8th)に参加してプレーしていた。NZを去った後も10年ほど、年間会費を海外から送金してクラブメンバーを維持していた。それは長年ウェリントンクラブ及びウェリントン州協会へ貢献してきた、地元の名士であった故ビル(ウィリアム)・ブライアン氏のお陰だった。ブライアン氏によって私はウェリントンクラブへ入ることになり、プレーしている間は何かと世話をしてもらった。また、NZトヨタがサポートしていることもあり、1990年には、トヨタ自動車の若手選手がクラブの若手主体のグレードのチームにラグビー留学したので、私も少しばかりお手伝いしたこともあった。

 今ではもう会費は払っていないが、クラブレターをEメールでもらっており、今回の試合があったウェリントンクラブのホームである、ハタイタイパーク・グランドとクラブハウスの写真が、34年前の昔と少しも変わらないのを喜んでいる。(参考:拙著『スワーブをきりながら』の表紙上右にあるジャージは、1990年当時のウェリントンクラブのもの。)

 そして、今回「NZ最古のクラブ」と題されたニュースになったことが嬉しかった。なぜなら、NZ最古の試合は、ウェリントン対ネルソン(南島北端の港町)とで1870年に行われたが、1990年にNZのラグビー年鑑編集者に対して、どちらが最古のクラブかと問うたところ、どちらも同じくらい古いという回答が来た思い出がある。しかし、このニュースを報道したNZヘラルド(首都オークランドを中心とする全国紙)が、ウェリントンクラブを最古と称してくれたので、それが嬉しかったのだ。

「Give them Axe !(エクスメンに乾杯!)」(注:毎週土曜の試合のあと、クラブメンバーがクラブハウスに集まってビールを飲み、最後に締めるときの掛け声)

(参考)
ウェリントンクラブから来たニュースレターの冒頭部分には、このように書かれていたので、画像とともに紹介したい。特に最後のOnwardsという言葉は、明治大学の故北島忠治監督の「前へ!」を彷彿させるが、ラグビー精神(スピリット)は、世界のどこでも共通なのだと思う。
WOW - and then it happened! After 43 losses stretching back till 2021, the Prems thoroughly deserved their win on Saturday by beating Avalon 19-13. There were some nerves being stretched, fingernails bitten and possibly even some looking away. But, the good guys did it and deserved every bit of celebration that followed.
Congratulations to everyone and particularly those who have held firm throughout a lot of those 43 games! Onwards and upwards.
仮訳:
ワォウ、そしてとうとうやった!2021年から続いた43連敗のあと、プレミアーグレード(州対抗戦の最上位のクラス)のチームは、土曜の対アヴァロン戦に19-13で勝利を得るのに完全に値していた。中には不安にかられたり、爪を噛んだり、もしかすると目をそらしていた人がいたかも知れない。けれど、我らが良き仲間たちはやってのけたのだ。そして、祝杯を挙げるあらゆる栄誉を彼らは獲得した。

 全ての(クラブ)関係者を祝福します。とりわけ43連敗の間に、多くのこと(苦難)を経てきた人たちに対して。前へ、もっと上へ。

黄色と黒の段柄がウェリントンのジャージ
祝杯!!

(5)元イングランド代表ラスボローの1971年の日本遠征の思い出

 現在イングランドのコベントリークラブの会長を務めているピーター・ラスボローは、1971年に香港。シンガポール、スリランカそして日本へ長期遠征をしたイングランドXV(ほぼ代表だが、当時は日本などのティア2チームとの対戦はテストマッチと認定されなかったため、準代表としての名称を使用した)のFBとしてプレーしていた。

 特に日本との第二戦は、6対3でイングランドが辛勝したが、その時ラスボローは試合中に後頭部を蹴られたことで脳震盪を起こし、その後日本で入院して半年間ラグビーをプレーできなくなったのが一番の思い出だと回想している。そして、今年イングランドは、日本と二回のテストマッチを対戦するが、ラスボローは大変に楽しみにしている。

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