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【配信コラム】#EDDIEのかく語りき 第28回/#AppleTV最前線/ピックアップ映画『ライド・オン』/#あなたの好きなジャッキー・チェン映画 特集

みなさん、こんにちは、こんばんは。

今回はジャッキー・チェン70歳、映画主演から50周年記念で制作された『ライド・オン』の公開を記念して、「#あなたの好きなジャッキー・チェン映画」特集をいたします。
とはいえ、僕はジャッキーにわか。ジャッキーは好きだけど、詳しく語れるほどではない…ということで特別ゲストをお迎えして配信をお送りしました。

#EDDIEのかく語りき 第28回トークテーマ

2024年6月2日(日)22時〜𝕏のスペースで配信した「#EDDIEのかく語りき」第28回目のトークテーマについてまとめていきます。
細かい話は配信の方で語っていますので、アーカイブを聴いていただけると幸いです。


①AppleTV+最前線

今回のAppleTV+最前線では、現在配信中もしくは配信開始予定のAppleオリジナル作品をご紹介します。

■ドラマ『ディック・ターピンのデタラメ大冒険』

伝説の追いはぎ、ディック・ターピンは成り行きで無法者一団の親分となり、腐敗し切った捕物長官、ジョナサン・ワイルドを出し抜こうと、荒唐無稽な冒険を繰り広げる。

Filmarks作品紹介より

英国に実在した追い剥ぎディック・ターピンと三人の仲間エセックスギャング団の道程をドラマ化した作品です。

ディック・ターピンとは、Wikipediaではこのように紹介されています。

リチャード・"ディック"・ターピン(英: Richard "Dick" Turpin, 1705年9月21日洗礼 - 1739年4月7日)はイギリスのハイウェイマン(馬に乗った追い剥ぎ)。追い剥ぎの罪によりヨークで処刑されたのち、美化されて描かれるようになった。若き日は父親の跡を継ぎ肉屋として働いていたが、1730年代前半、鹿泥棒の一団に加わり、密猟、住居侵入、追い剥ぎ、殺人をはたらいた。愛馬ブラック・ベスに乗りロンドンからヨークまでの200マイル(320km)を一晩で走ったことでも知られているが、これは彼の死後およそ100年経ったヴィクトリア時代に、小説家ウィリアム・ハリソン・エインズワースによって書かれたために有名になった作り話である。
ターピンは主に追い剥ぎとして犯罪に関わり、1735年に仲間たちが逮捕されてからその年の末まで人々の前から姿を消していた。その後、1737年に新たに2人の仲間を引き連れて現れたが、うち一人を彼が誤って撃ち殺したといわれる。ターピンは現場から逃亡したうえ、その後すぐに自分を捕らえようとした男をも殺害した。そしてその年のうちにヨークシャーに移り、ジョン・パルマーと名を偽った。彼が宿屋に滞在していたとき、地元の治安判事が「パルマー」という名前を不審に思い、職業を尋ねた。そこで追い剥ぎとしての容疑をかけられた「パルマー」ことターピンは、ヨーク城(英語版)に収監されたのち巡回裁判(英語版)にかけられることとなった。ターピンの身元は、彼が独房で義理の兄に書いた手紙が裁判官のもとに渡ったことで明らかになった。1739年3月22日、ターピンには2件の追い剥ぎ容疑で死刑判決が下され、刑は1739年4月7日に執行された。
ターピンは処刑後に伝説となり、イギリスのバラッドや18世紀から19世紀にかけての大衆劇場、20世紀の映画やテレビにおいて、颯爽と現れる英雄としてロマンティックに語られた。

Wikipediaより

このように死後、伝説の追い剥ぎとしてイギリスで語り継がれるようになった有名人のようですが、それを脚色して面白おかしくコメディ冒険活劇として描いたのが本作です。
もうね、漫画『ONE PIECE』の麦わら海賊団なんですよ。でもみんな本当に間抜けで、出てくる悪役(ターピンらも悪役なんですが)も揃ってアホ。
多分、モンティパイソンとかテリー・ギリアムとか好きな人は好きだと思います。
1話30分弱の短いドラマなので、このしょうもないお笑いにハマればマジで一気見できます。僕自身も声を出して笑うシーンもたくさんありました。

観る前はディック・ターピンって誰やねん!状態で、そんなに期待してなかったんですが、これが思わぬ掘り出し物。
主役のターピンを演じるコメディアンのノエル・フィールディングが醸し出す程よい雑魚さ加減がたまりません。追い剥ぎ団のリーダーなのに、団員は馬に乗ってるのに団長は小さなポニーに乗ってるとかその画が結構ツボなんですよね。興味ある人はぜひAppleTV+にてご視聴ください!

【近日配信の新作】

■ドラマ『神の雫』/2024年6月21日配信開始

世界的ワインの権威アレクサンドル・レジェが亡くなった。フランス・パリで暮らす彼の娘カミーユと、彼に師事していた遠峰一青は弁護士に呼び出され、彼の遺言を聞く。それは、ワインに関する3つのテストの勝者どちらかに、総額1670億円にも及ぶ世界最大のワインコレクションを含む莫大な遺産を譲るという驚くべきものだった…。ワインに人生をかけた男と、ワインに運命を狂わされた女。若き二人の国境を越えた対決が今、幕を開けるー

Filmarks作品紹介より

■映画『ファンシー・ダンス』/2024年6月28日配信開始

「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」のリリー・グラッドストーンが主演を務め、同じ悲しみを抱える叔母と姪が“母娘”としての絆を築いていく姿を軸に、ネイティブアメリカンの女性たちが抱える生きづらさや苦悩を鮮烈に描いたドラマ。

ネイティブアメリカンの大規模なお祭り・パウワウの開催が近づく、オクラホマ州のセネカ・カユーガ族の居留地。ジャックスは行方不明になった妹タウイの娘ロキとともに裕福とは言えない生活を送っていたが、自身の父フランクにロキの親権を奪われてしまう。ジャックスはロキをフランクのもとから連れ出し、2人でタウイを捜す旅に出る。しかしその行動が誘拐事件として報道され、全米の注目を集めることになり……。

監督は、これが長編デビュー作となるエリカ・トレンブレイ。タイトルの「ファンシー・ダンス」はネイティブアメリカンの間で最もポピュラーなダンスのひとつで、彼らの文化的シンボル、アイデンティティとして欠かせない誇りでもある。Apple TV+で2024年6月28日から配信。

映画.comより

■アニメ『ワンダラ』/2024年6月28日配信開始

Apple TV+ Pressyより

Tony DiTerlizziによるSFファンタジー小説「The Search for WondLa」をアニメ化するものです。
地下サンクチュアリから脱出したエヴァが見た地上には、想像とあまりに違う世界が広がっていた。危険な環境や未知の文明を冒険しながら、エヴァは究極の問題に直面する。果たしてエヴァは地球最後の人間なのだろうか?
製作総指揮にはボブス・ガナウェイ、エレン・ゴールドスミス=ヴァイン、ジェレミー・ベル、Julie Kane-Ritschと、スカイダンス・アニメーションのジョン・ラセター、デヴィッド・エリソン、デイナ・ゴールドバーグらが名を連ねています。
ジェニーン・メイソン、テリー・ハッチャー、ゲイリー・アンソニー・ウィリアムス、ブラッド・ギャレット、チャイク・オコンクォ、アラン・テュディック、D・C・ダグラスらが英語版の声優を務めます。

アイアリより

②EDDIEのピックアップ映画/映画『ライド・オン』

初主演作「タイガー・プロジェクト ドラゴンへの道序章」から50年を経て、2024年で70歳を迎えるジャッキー・チェンの主演作。一線を退いたベテランスタントマンがあることをきっかけにふたたび危険なスタントに挑む姿を描いたアクション作品。

かつて香港映画界伝説のスタントマンと言われたルオ・ジーロン。現在は第一線から退き、愛馬のチートゥとともに、エキストラなどの地味な仕事をこなす日々を送っている。債務トラブルをきっかけに、チートゥが競売にかけられることとなったルオは、苦肉の策で遠縁になっていた法学部の学生である一人娘のシャオバオに助けを求める。そんなルオに、愛馬との共演というスタントマンのオファーが舞い込んでくる。年齢的にも危険をともなう撮影だったが、ルオはチートゥを守るため、危険なスタントシーンに挑戦していくこととなる。

数々のアクション作品に出演してきたジャッキー・チェンがスタントマン役を演じるのはこれが初めて。日本公開時には吹き替え版も上映され、ジャッキー・チェンの吹き替えを数多く担当し、2023年3月末をもって声優業引退を発表していた石丸博也が、本作のために限定復帰し、吹き替えを担当した。

映画.com

いやぁ素晴らしかった!
これぞジャッキーの集大成!

老齢スタントマンの主人公を、本職アクション俳優のジャッキー・チェンが演じるというこの半自伝的な設定がたまりません。
町外れに馬と一緒に暮らしており、借金生活からがら馬と一緒に大道芸的な仕事で日銭を稼いでいます。
彼自身が高齢化したことと、とある作中に語られる理由もあってスタントマンとしての仕事はほぼありません。

別れた妻との間には大学法学部の3年生になる娘がいて、疎遠でほぼコミュニケーションをとっていないがために絆も何もないんですね。
こんな親子関係が愛馬チートゥと共に成り上がっていく姿やとある問題を通して再生されていく模様も見所の一つ。

借金取りとの珍道中など、ジャッキー映画ならではのアクションを馬も名俳優とばかりに見せてくれるのが実に楽しいですが、そんな彼らの行動をきっかけに業界に注目されることになり、再びスタントマンとしてスターダムを上がっていくというストーリーラインになっています。

「スタントマンは断らない」という信条を掲げた主人公のルオは、馬のチートゥにも厳しい特訓を重ね、これからもスタントで危険と隣り合わせな仕事を続けていくのか、娘にも心配されながら自問自答していくのです。
疎遠だった娘とも少しずつ絆が深まっていき、それでもチートゥをめぐる問題で何度もぶつかったりと目まぐるしい展開を見せますが、何よりもルオとチートゥの絆の深さを感じられるのが感情移入のポイントなんですよね。

だから終盤には彼らのある意味父親と息子のような関係性があるからこそ、感動必至な場面が待っているのです。いやぁ泣いた泣いた。ボロクソ泣きました。

きっと少しでもジャッキーの映画に触れたことがある人にはたまらない作品なのではないでしょうか。もちろんジャッキー自身の衰えが顕著なシーンも随所に見られるので、彼をヒーローとして神格化している人にとっては辛い部分もあるかもしれませんが、ジャッキーを好きという気持ちがある人には是非とも観てほしい映画です。

③「#あなたの好きなジャッキー・チェン映画」特集

今回、ジャッキー・チェン初主演から50周年記念作品、2024年で70歳を迎えるジャッキー主演映画『ライド・オン』公開を記念して、「#あなたの好きなジャッキー・チェン映画」特集を組みました。
僕らは世代違えばジャッキーとの関わり方も違うとは思いますが、ジャッキーの映画が地上波でもたくさん放送されており、ジャッキーを観て育ってきたと言っても過言ではないでしょう。

好きな映画は枚挙にいとまがありませんが、ジャッキー・チェンやアクション映画を語らせたら一味違う助っ人に今回は助けてもらいました。

その名も”しーまん”さん。「しーまん映画研究所」というYouTubeチャンネルを運営している大のアクション大好きさんです。
そんな彼が当配信「EDDIEのかく語りき」にゲスト出演してくれるということで、有料コンテンツレベルのアクション解説ならびにジャッキー解説をしてくれています。
▼しーまんさんのYouTube「しーまん映画研究所」はこちら

そして、改めまして今回の主役ジャッキー・チェンの紹介です。

■ジャッキー・チェン/Jackie Chan/本名:陳港生
誕生日:1954年4月7日
出身地:香港
<プロフィール紹介>
ハリウッドでも活躍する香港出身のアクションスター。中央戯劇学院で京劇や武術を習得する。70年代初頭、香港のカンフー映画ブームにブルース・リー作品などにスタントやエキストラで出演する。リーの死後はコメディ路線の新しいカンフー映画を開拓し、日本での初公開作「ドランク・モンキー 酔拳」(78)は大ヒットを記録。「クレージー・モンキー 笑拳」(79)で監督にも初挑戦し、アジア圏での人気が確実なものになっていく。米国へは「バトルクリーク・ブロー」(80)で進出し、「レッド・ブロンクス」から人気が出始め、「ラッシュアワー」シリーズの大ヒットで不動の地位を築いた。その他の作品に「ポリス・ストーリー」「サンダーアーム」「プロジェクトA」「ベスト・キッド(2010)」などがある。

映画.comより

◆ジャッキーの魅力とは?

①人間としての不完全さ

ジャッキー・チェンは出演しているどの作品でも無双しているシーンが少なく、敵からやられるシーンもちゃんとやるところが一つの魅力。
”やられの美学”というのでしょうか。敵がやられるシーンばかりやられるよりも、主人公が印象的なやられ方する方が鮮明に脳裏に焼き付いたりします。

そして、その”やられの美学”を受け継いでいるのが、トニー・ジャーであり、ジョン・ウィックであるわけです。彼らは確かに強いのですが、無双するばかりではなく、自分たちもきちんと敵にやられるシーンを映します。

そこにジャッキーはコミカルさを忘れない分、人間的な魅力にも繋がっているのがすごいと思います。主人公が強すぎて無双してばかりだと、敵キャラクターが可哀想になってしまう部分もあります。ジャッキーはよくやられるし、てんやわんやしていることで、彼のキャラクターに感情移入しやすくなっているのが魅力と言えるでしょう。

②自分のルーツをアクションに組み込み唯一無二を作り上げた

自分のルーツとは何か。それは三大喜劇王と呼ばれるハロルド・ロイド、バスター・キートン、チャールズ・チャップリンの3人のこと。
特にスタント面はハロルド・ロイドやバスター・キートンの成分を取り入れていることがわかるのですが、それ以上にすごいのはチャップリンの成分を入れた格闘シーンにあります。
しーまんさんが子どもの頃に魅力に感じたのが、まさにジャッキーのチャップリンのようなコミカルさ。しーまんさんは、このジャッキーの格闘シーンにある意味、良質な違和感を抱いたとのことです。
それは強いけどなんだか面白い、強いけどなんだか必死なところ。他のアクション俳優にはなかなかない魅力。ジャッキーレベルで動ける俳優は他にも存在しますが、そのコミカルさが他の俳優との差別化要因になり、結果的に唯一無二の魅力となっているのです。

他にもジャッキーならではのアクションの仕草として、無駄にトリッキーなところがあります。ガムだったら手で叩いて口に入れたり、拳銃だったら足に引っ掛けて上に投げてから手に取るとか、アタッシュケースを一回転させてから持つとか、無駄なようでそれが観ていて楽しいのです。

◆しーまんさんの見る『ライド・オン』のジャッキー

前述した等身大な人間的な魅力を持ちながら、アクションを第一線級でこなし、それで50年やっているのは本当にすごい。
『ライド・オン』はもちろんアクションもやるけども、アクション映画というよりもヒューマンドラマの要素が強く、とにかく感動したとのこと。しーまんさんは医者にびっくりされるぐらいのドライアイらしいのですが、映画を観ている間ずっと目が潤っていたようです。

映画のフライヤーなど宣伝文句として「集大成」という言葉が使われており、本当にその通りの作品だったとのこと。

2013年頃から引退をほのめかす発言をしているようですが、それでもまだまだ映画に出演し続けているジャッキー。彼は本作公開時で70歳を迎えており、若い頃と比較してもサービス精神の旺盛さが変わっていないのがすごい。
ジャッキーの魅力の一つは芸術的な格闘シーンにあり、観客が彼の格闘シーンを求めていることを知っているからこそ作中では3つほどの格闘シークエンスを用意していました。スタントダブルを起用しているシーンも明確にわかるぐらいではありますが、それでも机に叩きつけられたり、格闘シーンをこなしたりと老体に鞭を撃ち続ける姿には圧倒されてしまいます。

また、ジャッキーの魅力とは異なる映画の面白かった点は馬のアクション。本作にはチートゥというジャッキー演じるルオの愛馬が登場しますが、そんな馬の表情の演技やアクション、ワイヤーを使って壁に突っ込むシーンなど、とにかく動物の演技も見応えあり。
チートゥ役をしていた馬自身がジャッキーと絆を深めているのがわかるぐらい、とにかく本当に仲良しだと思わせるやりとりが素晴らしい。

ほか、ジャッキー映画恒例のチンピラに絡まれるシーンがあるなど、ドタバタな格闘劇で魅せてくれます。

作品としてのテーマ性にも興味深いものがあります。
それはジャッキー演じるルオがスタントマンという役柄でもありましたが、そんな今のスタントマン界隈を写し鏡にしている作品だと感じました。
昔であれば、「平気でそんな崖に飛び降りるの!?」とか、スタントマンに人権がなかったように見えた時代がありました。今の良質なアクションを生み出す要素になっているので一概に悪いとは言えませんが、それをスタントマン自信が美学だと感じている部分もあります。
ただ、本作で描かれているのはスタントマンの身の安全。CGを活用して誤魔化したようなアクションも全否定することはできません。その辺が難しい問題ではありますが、映画の中ではその難しい絶妙な線引きがうまく描かれていました。

このCGとのバランスについては、映画『ジョン・ウィック』シリーズが抜群に上手い。あの映画が存在する以上はアクション映画界も安泰だと思わされます。
シーンとして本当に車に轢かれる場面がありますが、車にグリーンマットが引かれていて、役者が車に実際に轢かれてもダメージが出ないような工夫をしています。それをCGで消しているので、バランスが良いのです。

『ライド・オン』の作中でも「スタントマンは断らない」という話が出てきましたが、”愛する人のために命を賭ける”時代から”愛する人のために命を守る”時代に変遷してきています。まさに「スタントマンの美学」が変わってきている瞬間を感じました。

◆ジャッキー・チェンが与えた影響:スタント編

まずはジャッキーのスタント面がどんな映画に影響を与えているかという話からしていきましょう。
有名どころでは、映画『ポリス・ストーリー 香港国際警察』の冒頭のシーン。丘の斜面に沿って塗炭屋根の建物が連なっている場所があり、そこの上から下までを駆け抜けていくようなシーンがあります。
これは『バッドボーイズ2バッド』で、マイケル・ベイ監督がそのまま真似をしています。映画のクライマックスあたりで主人公が同様に突っ込んでいくシーンで、そこにマイケル・ベイらしい大爆発を組み合わせています。
6月21日公開でシリーズ最新作『バッドボーイズ RIDE OR DIE』があるので、それに向けて過去作を復習する人もいるかもしれません。その際にはぜひこのシーンに注目していただければと思います。

次に『WHO AM I?』。終盤でジャッキーが敵にビルの上部で追い詰められるシーン。ほぼ垂直に近いような急斜面のビルの側面を滑り降りていき、さらに滑り終えてビルの端まで来た時に驚異的な身体能力で耐える凄まじいシーンは印象的です。

このシーンに影響を受けて真似しているのがトム・クルーズです。
彼の主演大人気シリーズ『ミッション:インポッシブル3』で全く同じようなビルから滑り落ちていくシーンがあり、それはジャッキーオマージュで間違いないでしょう。
また、トム・クルーズはそれにとどまらず、ジャッキー主演『香港国際警察/NEW POLICE STORY』でビルを垂直に走り降りるシーンがあるのですが、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』の超有名なシーンであるドバイの超高層ビル、ブルジュ・ハリファのアクションはこの映画のオマージュ。さらにドウェイン・ジョンソン&ジェイソン・ステイサムW主演の『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』でも似たようなシーンがあるので、さまざまなアクション映画に影響を与えていると言えるでしょう。

ちなみにジェイソン・ステイサムもジャッキーの格闘アクションに影響を受けており、ジャッキーのコミカルさやへっぽこ要素を取ったのがステイサムのアクションです。周りに落ちている道具を武器として活用したり、パルクールアクションをしたりというのはジャッキーの影響を受けていると言っても良いでしょう。

スタント面に今一度話を戻すと、『ツイン・ドラゴン』では正面から猛スピードで向かってくる車に飛び乗って走り抜けるシーンがあります。そのアクションに大きな影響を受けているのが、エドガー・ライト監督の『ベイビー・ドライバー』。エドガー・ライトはジャッキー好きを公言しているほどです。

同じエドガー・ライト監督作品でいえば『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』でも、椅子を使った格闘シーンが出てきますがこれもジャッキーオマージュと言えます。

『レッド・ブロンクス』というジャッキーがハリウッドスターになる足がかりになったきっかけの映画では、立体駐車場でヤンキーから逃げ回るシーンがあります。ヤンキーに見つかって屋上から落とされそうになるところで、ジャッキーが回避するシーン。これにはジェームズ・ワン監督作品『狼の死刑宣告』がまさにこれに影響を受けているシーンがあります。
ワン監督の『ワイルド・スピード SKY MISSION』にトニー・ジャーが出演しているのもこういったカンフーアクションに影響を受けたというのがあるのだと考えられます。

◆ジャッキー・チェンが与えた影響:格闘編

格闘面では、まさに『ジョン・ウィック』がジャッキーの格闘アクションに多大なる影響を受けています。その場に落ちている道具を殺しの武器として使うのはジャッキーの影響であり、差別化ポイントとしてはジャッキーは殺しはしないけど、ジョン・ウィックは本ですら殺しの道具にしてしまうところでしょう。

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』では、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインがバットを使ったアクションを見せますが、これはジャッキーの『ゴージャス』のバット捌きそのままです。

これには理由があって、アクション・コーディネーターであるジョナサン・エウセビオがジャッキーファンであることにあります。
彼はキー・ホイ・クァン主演で監督デビューをする予定なので要注目です。彼は『デッドプール2』や『ワイルド・スピード ICE BREAK』でもアクションコーディネートをしています。

実はハリウッド映画がジャッキーの影響を受けてしまうのには明確な理由があります。それはジャッキーの弟子だった人がスタントコーディネーターやアクション監督として第一線で活躍しているからです。
2021年8月に48歳の若さで亡くなったブラッドリー・ジェームス・アランも、ジャッキーの弟子の1人。彼は香港の映画業界でジャッキー・チェンのスタントチームメンバーとして働いていた過去があります。
つい最近までアクションコーディネートをしており、MCU映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』や『キングスマン』、『ワンダーウーマン』、『パシフィック・リム』でもアクションを設計。
『パシフィック・リム』にもジャッキー要素があり、海中での戦闘シーンで正面から猛スピードで迫ってくる怪獣を一刀両断します。これは『レッド・ブロンクス』のクライマックスでも同様のシーンがあり、ジャッキー映画がさまざまなアクション映画に影響を与えているのがよく伝わったと思います。

また、『ブレット・トレイン』は格闘シーンのほとんどがジャッキーオマージュ。アタッシュケースでナイフを防いだり、ド派手な格闘アクションの中にコミカルさを覗かせたりするのはジャッキーオマージュでしょう。一つのアクションに連動して次のアクションに繋げるような一連のシークエンスはジャッキーらしいと言えます。

◆しーまんさんお気に入りのジャッキー映画

小学生の時に一番ハマっていたのが『酔拳2』。この映画のアクションは岸本斉史の大人気漫画『NARUTO -ナルト-』にも多大な影響を与えています。
彼の描き方がカンフー映画らしく、カンフー映画はジャッキー作品を中心に同じシーンを別角度から複数回見せたりします。これを漫画で再現しているのがこれまたすごいのです。

また、酔拳は勝ち負けのロジックがしっかりしているのも魅力的。敵キャラも多彩な足技を使うなど強力でジャッキーは圧倒されますが、酒を飲むことで体の痛覚が麻痺して相手の攻撃が効かなくなるのです。蹴りを受けてもすぐに立ち上がり、相手に立ち向かっていきます。

特訓シーンも面白くて、宙吊りにされた状態でお猪口に壺から水を汲んで上部にある器にその水を移すくだりがあり、これをしーまんさんは真似をして腹筋が割れたと言います。

ジャッキーのすごいところは、ブルース・リーや仮面ライダーにも一対多数の戦闘シーンはたくさんありますが、彼らは1人ずつ相手にします。一方、ジャッキーは一気に2人の攻撃を捌いたりするため、非常に見応えがあり芸術的。とにかく魅力がたっぷりな伝説級のアクションスターと言えるでしょう。

◆リスナーさんの好きなジャッキー映画

■『蛇鶴八拳』

武術界の師範8人が集まって考案した新たな拳法「蛇鶴八拳」。ある時、師範たちが姿を消し、その極意をまとめた秘伝書も行方知れずになってしまう。やがて、秘伝書を持つという若者・徐英風が現れ、それを狙う武術家たちが次々と襲いかかるが…。

Filmarksあらすじより

■『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』

子供のころより人間から隠れて暮らしてきたタートルズたち。'普通のティーンエイジャー'として彼らが住むニューヨークのみんなに愛され受け入れられたいーその願いを叶えるため、新たな友人エイプリルの助けを得つつ謎の犯罪組織との戦いに繰り出す。そんな彼らの前に現れたのはミュータント化した敵の大群だった・・・

Filmarksあらすじより

■『タキシード』

敏腕エージェントであるデヴリンの専属運転手となったジミーは、彼から愛用のタキシードに触らぬよう言い渡される。そんな折、デヴリンが事故で重傷を負ってしまう。彼がいないのをいいことに、興味津々でタキシードに袖を通すジミーだが…。

Filmarksあらすじより

■『プロジェクト・イーグル』

ナチスのカタリン男爵がサハラ砂漠に隠した、250トンもの金。それを探し求めるアジアの鷹ことジャッキーは、男爵の副官だった男の孫娘エルザや歴史研究家エイダらとの出会いなどを経て、金の隠し場所を見つけ出す。だが、そこへナチスの残党がなだれ込み…。

Filmarksあらすじより

■『カンフー・ヨガ』

約1000年前、天竺(インド)と唐(中国)の間に起きた混乱の中、ある財宝が消えた。 時は現代―、考古学者にしてカンフーの達人ジャック(ジャッキー・チェン)は、失われた財宝を探すため、同じく考古学者にしてヨガの達人のインド美女・アスミタと共に大冒険へ出る。手がかりはたった1枚の古い地図…、財宝の秘密を握る「シヴァの目」とは…、アスミタの驚くべき真の正体…予想だにしない真実が次々と明らかになっていく中、果たしてジャックたちは無事財宝にたどり着くことができるのか!? 中国、インド、アイスランド、ドバイで敢行された壮大なロケ、ランボルギーニなど超高級車70台を使用した映画史上最も豪華なカーチェイス、氷洞窟での大バトルにド派手アクション、そして何より歌って踊る!?何でもありの全ての要素でハイレベルの興奮を誘う、王道のエンターテインメント。2017年の締めくくりに、そして来るべき新年に向けて最高にハッピーな一作がここに誕生した!

Filmarksあらすじより

■『スパルタンX』

スペインでキッチン・カーを経営するトーマスとデイヴィッドは、ひょんなことからシルビアという美女と知り合う。3人で一緒に働く中、謎の男たちが彼女を襲撃。一団を倒したトーマスらは、シルビアが伯爵の娘で、遺産を狙う伯父に追われている身だと知る。

Filmarksあらすじより

■『ポリス・ストーリー 香港国際警察』

ジャッキー・チェンが監督、脚本、武術指導、主演、主題歌歌唱を兼ねた代表作の1本で、1985年に発表した人気ポリス・アクション・シリーズの第1弾。現代アクションの集大成を目指し、何台もの車がバラック集落を破壊しながら急勾配を駆け降りるカー・アクションや二階建てバスを使ったアクション、デパート最上階からの落下スタントなど、驚きに満ちた見せ場の連続で、その後の“ジャッキー映画”の方向性を決定づけた。第5回香港電影金像奨で最優秀作品賞と最優秀武術指導賞を受賞。3本の正式な続編と1本のスピンオフ作品が製作された。香港国際警察のチェン刑事は、大規模な麻薬密輸を行うシンジケート”チャナ・ルート”のボス、チュウ・トウの逮捕と組織の壊滅を目指し、日夜捜査を続けていた。捜査チームは麻薬取引の情報を入手し、チェンはチュウ・トウの美人秘書サリーナの監視を命じられる。逃走を図った一味をチェンは執拗に追跡、何とか逮捕にこぎつけた。警察はサリーナに証人として裁判への出廷を依頼するが、組織はサリーナの口封じを図る。チェンはサリーナを救うが、チュウ・トウは証拠不十分で釈放されてしまう。さらに、組織は警察の内通者を殺害し、チェン刑事にその容疑を着せるのだった…。

Filmarksあらすじより

■『新ポリス・ストーリー』

何者かに誘拐されると予告された不動産王ウォンを護衛する、香港警察特捜班のエディ。だが、ウォンを犯人に拉致されてしまい、彼の妻が身代金を払ってしまう。犯人の手掛かりを掴んで潜伏先の台湾へと飛ぶエディだが、警察内部に裏切り者がいることを知る。

Filmarksあらすじより

■『ベスト・キッド』

父を亡くした少年・ドレは、母親に連れられ中国・北京へと移り住むことに。カンフー少年のチョンたちにいじめられ続けていたが、ある日、彼はアパートの管理人・ハンに助けられる。ドレは、カンフーの達人であるハンに教えを請い、修行に励むようになる。

Filmarksあらすじより

■『プロジェクトBB』

サンダル、フリーパス、大家はお人好しの泥棒3人組。人を傷つけないのがポリシーだが、のっぴきならない理由から3千万ドルの身代金がかかった大富豪の赤ちゃんを誘拐する羽目に。警察が必死の捜査を続けるなか、暗黒街のボスも血まなこで3人を追っていた。

Filmarksあらすじより

■『シティーハンター』

アニメ版も人気を博した北条司の同名コミックを、ジャッキー・チェン主演、後藤久美子共演で実写映画化したアクションコメディ。私立探偵の冴羽は、失踪した大企業の社長令嬢・清子を探して連れ戻して欲しいという依頼を受ける。早速捜索を開始した冴羽とパートナーの香は、清子を追って豪華客船に乗り込むが、その途中で船がテロリストによって占拠されてしまう。乗客たちを救うため、テロリストに立ち向かう冴羽だったが……。

映画.comより

■『ファイナルドラゴン』

流れ者メイは、武術の達人ホウから仕事を頼まれた。それは、ホウの妻から解毒剤を奪うというものだった。ホウは夫人に毒薬を盛られ、殺されかけていたのだ。だが夫人は武術の達人たちを送り込んできて......。ジャッキー・チェンが76年に出演したカンフー・アクション映画。

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■『ドランク・モンキー/酔拳』

武術道場主の息子でありながら、カンフーの修行もせずに遊んでばかりのフェイ。父親はそんな彼を、カンフーの達人である叔父のもとで修行させることに。厳しい修行を経て酔拳を習得するフェイは、父親が殺し屋に狙われているのを知って助けに向かうが…。

Filmarksあらすじより

◆まとめ

配信コラムは以上です。

今回はゲスト回ということで、ゲストのしーまんさんにアクションやジャッキーの魅力を満載に語っていただきました。
ぜひ皆さんもしーまんさんのYouTubeチャンネル「しーまん映画研究所」をチャンネル登録しましょう。

さて、次回は6月16日(日)22時〜の配信を予定しております。
今回もありがとうございました。

▼配信アーカイブはこちらから。


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