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2021年映画ベスト10と総括/人間の弱さや前に進もうとする作品は胸を打つ!

2022年がやってきました。2021年は2020年同様に、緊急事態宣言などもあり、映画館は苦境に立たされる場面も多々あったかと思います。
大ヒットが予想された『るろうに剣心 最終章 the Final』公開直後、緊急事態宣言により集客に直接ダメージ。100億円さえ視野に入ったと思われた作品ですが、40億円にとどまりました(それでもすごいですが…)。
6月に公開した『るろうに剣心 最終章 The Beginning』と合わせて65億円突破したのは快挙でしたが、やはりもう少し上を目指せたのではないかとも思ってしまうのです。

しかし、3月に公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』は、相次ぐ延期があってやっとの公開でしたが、なんと興行収入102億円を突破。
2020年の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に続き、アニメが映画業界を大きく引っ張った結果になりました。

今回は2021年、私が選ぶ年間ベストを発表していきます。
ちなみに、2021年6月末時点で執筆した上半期ベストはこちらです。年間ベストは少し選別の仕方を変えているため、結果が大きく変わっています。

<惜しくもベスト10入りを逃した2021年の傑作>

・Swallow/スワロウ
・MISSミス・フランスになりたい!
・モキシー〜私たちのムーブメント〜
・まともじゃないのは君も一緒
・街の上で
・ファーザー
・名も無い日
・Arcアーク
・かば
・ドライブ・マイ・カー
・パーフェクト・ケア
・GUNDAグンダ
・ドント・ルック・アップ
年間ベスト10から惜しくも盛れた作品(日本公開順)

上半期からは8作品、下半期からは5作品が年間ベストに絡むぐらい好きな作品ばかりでした。この後に発表する年間ベスト10は下半期の作品が多いので、やはり年末のベスト発表までにインパクトを残している下半期の作品がどうしても優勢にはなりますね。
ただ、上半期でもベスト10に残っている作品はそれだけすごいとも言えます。

<すばらしき2021年ベスト10たち>いずれもテーマ性やエンタメ性に優れた作品でした!

⑩キャンディマン/1992年版の系譜を受け継いだ映像センス抜群の傑作スリラー

映画ポスターのキャッチコピーにもあるとおり、”キャンディマン”という名前を鏡の前で5回唱えると、鉤爪の殺人鬼がどこからともなく現れ殺害されるというホラー映画。
1992年にも同タイトルで公開され、シリーズ合計3作品製作されるなど根強いファンがいる作品でもあります。

今回は『ゲットアウト』や『アス』といった傑作ホラー&スリラーの監督と脚本を手掛けたジョーダン・ピールが脚本で参加し、新進気鋭のニア・ダコスタ監督がメガホンを取っています。ダコスタ監督はMCU作品『キャプテンマーベル』の続編『ザ・マーベルズ(原題)』を撮ることも決定している才能豊かな監督。
とにかくスリラーとしてのハラハラな展開はもちろんのこと、芸術的とも言える撮影の美しさや構図など、画面から目が離せないほどの作り込みが評価のポイントです。
一応『キャンディマン(1992)』の続編的な扱いでもあるため、前作を観ているとさらなる興奮と感動が味わえます。そんなファンムービー的な喜ばせ方も忘れていない部分を大きく評価しました。

⑨スワン・ソング/冒頭シーンから一気に引き込まれ気づけば2回連続で鑑賞するぐらいハマったスルメ映画

こちらは劇場未公開で、AppleTV+での配信オンリー作品です。
ただ、マハーシャラ・アリやナオミ・ハリス、グレン・クローズ、オークワフィナといったアカデミー賞&ゴールデングローブ賞俳優たちが出演する超豪華な布陣。
Appleのオリジナル作品ということもあってか、近未来を舞台にしており、身の回りを彩る機器がAppleのようなスタイリッシュな製品が出てきます。
もはやスマホではなく、ARのように画面が目の前に飛び出してくるような画期的な世界観。しかも撮影の一つひとつが美しく、固唾を飲んで見入ってしまいます。

自宅のテレビでさえその映像美に目を奪われたこともあり、これは劇場公開してほしかった…というのが正直な気持ちです。

人間の命や尊厳、そして選択についてのテーマ。ラストシーンは2021年の映画でベストと言っても過言ではないほどの美しい終わり方でした。自宅で鑑賞しながら、涙が止まりませんでした。
これが『僕はうまく話せない』で第88回アカデミー賞短編実写賞を受賞したベンジャミン・クリアリー監督の長編デビュー作というのだから驚きです。

⑧偶然と想像/1年で一番笑った映画体験ーー劇場が一体感をもった瞬間がたまらない3編からなるオムニバス

2021年は濱口竜介イヤーとなっています。
まだまだ映画ファン以外からは認知度も低い監督かもしれませんが、同年8月に公開された西島秀俊主演『ドライブ・マイ・カー』が第87回ニューヨーク映画批評家協会賞で日本初の作品賞を受賞。さらにはカンヌ国際映画祭で脚本賞に輝いています。
そして、本作『偶然と想像』も第71回ベルリン国際映画祭に出品され、銀熊賞 を受賞。とんでもない偉業です。

『ドライブ・マイ・カー』は179分という長尺ながら退屈することなく、年間ベストにも入れたいぐらいの傑作でしたが、個人的な好みでいえばこの『偶然と想像』です。

3編から構成されるオムニバス映画なのですが、いずれもセリフの応酬の会話劇。会話のリズムも科学的に組み込まれているのではないかと思うほど、聴き入ってしまいます。
いわゆる「演技が上手い!」と思わせるセリフ読みではなく、淡々と喋ることを徹底されていますが、この会話が実に心地良いのです。
個人的には第2章の渋川清彦が出演している「扉は開けたままで」がお気に入りで、実はオンライン試写会でいち早く自宅のPCで鑑賞したのですが、これは爆笑が起こるだろうと公開されてもう一度観に行きました。
自分が想像した以上に劇場が笑いに包まれていて、最高の映画体験ができました。

⑦ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結/こんな大作映画を待っていたんや! やりたい放題の悪役集団が最高に面白い

7月末にIMAX試写会に招待いただき、観賞後「観たかったのはこんな大作映画なんや!」と大興奮で会場を後にしたのを覚えています。
2021年上半期は洋画の大作が延期などでほとんど日の目を見ることなく、7月に公開された『ブラック・ウィドウ』は一定の面白さはありましたが絶賛とまでは行きませんでした。
大きなスクリーンで堪能してこそ! というワクワクするヒーロー映画を欲していたんです。

序盤から”スーサイド・スクワッド(正式名称はタスクフォースX)”と呼ばれる刑務所入りしたヒーロー映画のヴィラン(悪役)たちで部隊が結成され、とある作戦で大迫力なアクションが繰り広げられます。
最初から最後まで飽きることない構成、悪役なのに愛着が湧くキャラクター設定、でも容赦なさを発揮するという映画的にも随所に楽しませる要素が満載でした。

マーゴット・ロビー演じる大人気キャラのハーレイ・クインはもちろんのこと、個人的に大好きなイドリス・エルバ演じるブラッドスポート、WWEのレスラーで近年俳優としてもブレイクし始めているジョン・シナ演じるピースメーカー、シルベスター・スタローンが声を演じるキング・シャークことナナウエも愛くるしいキャラでした。
笑いあり、アクションによるスッキリ感あり、感動ありのハリウッド超大作では近年稀にみる超絶大傑作!すでにDVDも発売されているので、未鑑賞の方は是非ともご覧ください。

⑥ベイビーわるきゅーれ/映画ファンを熱狂させた愛すべきゆるいアクション! 3回劇場鑑賞しました

愛着という点では2021年の1位かもしれません。なんてったって劇場に3回観に行きましたから。
3回目については朝イチで池袋シネマロサに並んでチケットを購入して、仕事終わりに阪元裕吾監督と髙石あかり&伊澤彩織の主演コンビの舞台挨拶ありの上映を観に行きました!

もともとスタントマンで海外作品でも活躍する伊澤彩織の抜群の格闘術はもちろんのこと、もう1人の主演・髙石あかりについては完全にファンになってしまいました。
アクションシーンはキリッと締まった見応えがありながら、日常シーンではオフビートな殺し屋コンビとは思えないゆるさが絶妙に愛らしい。
この2人のコンビとして、友人としての絆の深め合いに心を奪われ、一度喧嘩しちゃうんですけど、仲直りするシーンでは3回の劇場鑑賞で全部泣きました。

映画ファンに熱狂的に愛され、ミニシアターでは相次ぐチケット完売&満席が続き、なんと続編製作が決定! 続編絶対に観に行きます!

⑤プロミシング・ヤング・ウーマン/アカデミー賞脚本賞の下馬評の高さはホンモノ! 2021年最強のリベンジムービー

キャリー・マリガンがアカデミー賞主演女優賞ノミネートし、監督のエメラルド・フェネルは脚本賞を受賞。
英国アカデミー賞でも作品賞と脚本賞のW受賞と下馬評はかなり高かった作品です。

冒頭からキャリー・マリガン演じるキャシーが男たちを翻弄するシークエンスで一気に映像に引き込まれます。
過去に男どものやらかしに将来を奪われてしまったキャシー。その復讐心を胸に秘めながら、とあるきっかけからその復讐劇に拍車がかかっていきます。

男尊女卑の社会的弱者をテーマにした作品性を持ちながら、エンタメとして最高級の仕上がり。映画の面白さの大半は脚本が担っていると言っても過言でないほどの楽しみ具合。
ラストの怒涛のような展開には舌を巻きました。圧巻!
ちなみに劇場に2回観に行きました。

④エターナルズ/10人の多彩なヒーローが楽しませてくれる今後のMCUに期待を持たせる傑作

7位の『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』はDCコミックスを原作としたヒーロー映画。そして本作はマーベルコミックです。
もともとは『バットマン』などのDC派ではありましたが、『アベンジャーズ』に夢中になってからMCU作品を一気見したぐらいハマりました。
2020年に『アベンジャーズ エンドゲーム』で一度キリが良く完結し、『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』で先に期待を持たせる終わり方をしておきながら、その後の作品が相次ぐ公開延期。

やっと2021年7月に公開された『ブラック・ウィドウ』が個人的に肩透かしで、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』はMCU初のアジア人メインの作品となりアクションは見応えありましたが、これも期待したほどではありませんでした。

本作『エターナルズ』は冒頭シーンから最高の出だし。”エターナルズ”と呼ばれる神から選ばれた守護者が、地球に降り立つシーンから始まるのですが、アクション描写がワクワクするんです。
しかも、主要キャラが10人という大人数でありながら、冒頭シーンだけでそれぞれの能力や特徴を全て把握させる演出と構成が素晴らしいんです。
本作も劇場に2回観に行ったのですが、どちらでも冒頭のアクションシーンで謎に泣いてしまいました。
『ノマドランド』でアカデミー賞作品賞・監督賞・主演女優賞と映画賞を席巻したクロエ・ジャオが監督。もともと日本のアニメファンということもあり、キャラの中には『幽☆遊☆白書』の霊丸を模した指から光線を発射するキャラクターもいるなど、戦闘描写もたくさん楽しませてもらいました。

③すばらしき世界/役所広司の圧巻の演技力と仲野太賀の存在感が目を見張るーー人の優しさに包まれる2021年を代表する邦画

『ゆれる』や『永い言い訳』という傑作映画を世に輩出し続けてきた西川美和監督の最新作。これまでは全てオリジナル脚本でしたが、今作では初めて『身分帳』という小説原作をもとに製作された映画です。

役所広司が演じる主人公の三上という男は、殺人の罪で人生の大半を刑務所で過ごした極悪人……というイメージがありながら、実は人に優しく、シャバで必死に生きていこうという強い気持ちを抱いています。
彼が社会で真っ当に生きようともがく中で、最初はテレビ番組のネタとして近づいた仲野太賀演じる津乃田など、個性豊かな人々が三上を支えていきます。

社会から爪弾きされる元犯罪者。シビアな作品になりそうなところ、笑いあり涙ありとエンタメ映画としても十分に評価できる作品です。
私が福岡出身なんですけど、この三上という男が福岡出身の設定で、役所広司が長崎出身ということもあり、福岡弁を自在に操るセリフ回しに故郷を懐かしんだというのもポイント高いです。
ラストの展開に賛否が分かれる可能性はありますが、三上という男の笑顔が今でも脳裏に焼き付いて離れないぐらいこの作品の映像が残っています。傑作!

②アナザーラウンド/人生落ち目な中年たちが前向きになっていく人生賛歌! 社会派な面もありながらとにかく笑える

この映画は観終わった直後、「あ、これは年間1位だわ」と確信したぐらい満足度が高かった作品です。
「酒を飲んで人生を豊かにする」という無茶苦茶な試みで、人生を上向かせていこうと邁進する4人の高校教師たちが織りなすコメディ映画。

アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した世界的にも注目度の高い作品。
アカデミー賞の授賞式が4月でしたが、日本での公開は9月と5ヶ月も遅れてでした。

待望の日本公開をワクワクしながら鑑賞しに行きましたが、特に前半部分は大爆笑してしまうぐらい笑いっぱなしで最高に楽しい作品でした。
しかし、アルコールを摂取して授業に臨むという設定上、アルコール依存症など社会的な問題点を追求していくのは自然な流れ。後半は彼らが苦難に陥っていく模様を見ていくため、ずっと笑い続けるコメディ映画で終わらないのもミソです。

ただ何者でもない人たちがアルコールをきっかけに自信を持ち、人生をどうにかしようともがく姿に心を奪われたし、なんと言ってもラストのマッツ・ミケルセンのダンスシーンが最高なのです。
予告でも少し流れるシーンではあるのですが、映画を一通り観たことであのダンスシーンがとても意味を持っているものだと認識できます。
あまりにもこの『アナザーラウンド』という映画が好きすぎて、noteも書いていますので、興味ある方は是非ともご覧ください。

①草の響き/足りない自分に悩みもがき走り続けるーー東出昌大渾身の演技に魅せられ心に残り続けた今年ベストの傑作

『アナザーラウンド』を観た直後に「年間ベスト」だと確信してから2ヶ月後。
『エターナルズ』も最高に楽しかったのですが、ベスト3に入る作品ってのは自分にとっての特別である必要があります。

私が映画でいつも「好きだな、この映画」って思うポイントは主人公が完璧ではないこと。やはり人間ってのは完璧な人ってのはいなくて、何かしらの弱点や負い目がある人が多いと思います。
東出昌大演じる主人公の工藤和雄という男は、精神を病んだことで運動療法に取り組むことに。そこから毎日ランニングをし続けます。
奈緒演じる妻・純子や大東駿介演じる親友・佐久間研二との距離感と、この3人の関係性が実に心地良いのです。

116分という上映時間の中で、彼自身が持つ足りない部分やそこに向き合う覚悟を見せられ、やはり人間は完璧ではない、和雄のようにもがき苦しむ人間がいるってのが当たり前なんだと思わされるんですよね。
さらにタイトルに”響き”と入っている通り、映画館のスクリーンで鑑賞した時、スケボーの滑走、ランニングの靴音、草の響きと随所に音を楽しむシーンが挟まれていたのも好印象。
とにかく理屈でどうこう考えるよりも、直感的にこの映画好きだなと思わせる魅力があります。

完全じゃないことに対しても、誰が悪いとかもないんですよね。
この映画が円盤化するかは不明ですが、人生において何か不安を覚えたときにこの作品が観たくなる気がします。なので、Blu-ray発売してほしい!
とにかく東出昌大がすごいです!

◆2021年ジャンル別ランキングまとめ

【邦画編】

❶草の響き
❷すばらしき世界
❸ベイビーわるきゅーれ
④偶然と想像
⑤Arcアーク
⑥ドライブ・マイ・カー
⑦街の上で
⑧まともじゃないのは君も一緒
⑨名も無い日
⑩かば

【アニメ編】

❶ 映画大好きポンポさん
❷ トゥルーノース
❸ シン・エヴァンゲリオン劇場版
④ トムとジェリー
⑤ サイダーのように言葉が湧き上がる
⑥ JUNK HEAD
⑦ スペース・プレイヤーズ
⑧ 劇場版七つの大罪 光に呪われし者たち
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⑨ ロン僕のポンコツボット
⑩ 竜とそばかすの姫

【外国映画編(日米英除く)】

❶アナザーラウンド
❷Swallow/スワロウ
❸ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから
④MISSミス・フランスになりたい!
⑤GUNDAグンダ
⑥悪なき殺人
⑦サイコ・ゴアマン
⑧聖なる犯罪者
⑨殺人鬼から逃げる夜
⑩ジャッリカットゥ 牛の怒り

<おわりに>

いかがでしたでしょうか。
年明けて数日が経ちましたが、2021年を締め括る意味でも年間ベスト10をまとめてみました。
基本的にはどんな映画でもいいところを探すタイプなので、映画ファンの間では「今年は豊作だったか不作だったか」みたいな意見交換をすることもあるのですが、個人的には2021年も十分に良い作品とたくさん巡り会えました。
少なくとも今回紹介した作品は全て傑作といえます(アニメ編で挙げた『ロン 僕のポンコツボット』と『竜とそばかすの姫』はダメでしたが…)。

そして2022年は始まっています。
1月7日には多くの映画ファンやMCUファンが待ち侘びている『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』が公開されます。私は深夜最速上映のチケットを取ったので、6日深夜(7日)に観に行ってきます!
最後に、個人的に期待している2022年公開予定の作品を列挙して終わりにします。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!

【2022年の期待作品】
・ハウス・オブ・グッチ
・クライ・マッチョ
・355
・ウエスト・サイド・ストーリー
・ドリームプラン
・THE BATMAN ザ・バットマン
・ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス
・シン・ウルトラマン
・沈黙のパレード
・SLAM DUNK スラムダンク
・スペンサー
・スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース(パート1)

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